※この作品はR-18です。

寝取り寝取らせ、寝取り寝取られ   作:ベーシックハッピー

9 / 11
ここが第二部の転ですかね。そろそろ終わりも近いです。


三浦優美子は知ってしまう

「んぅ、せんぱぁい……」

「まだし足りないのか? この淫乱め」

「だってぇ、先輩のエッチってスゴイんですもん。緩急って言うんですか? 激しさと優しさがいい感じにまざってるんです」

 

 そうこちらを艶かしく見やり、いろはは俺のチンポへ舌を這わす。ゴムを外したばかりのチンポにはさっき出した精子がたっぷりついているのだが、それさえ愛おしそうにいろはは舐め取る。

 本当に変わったな。これも俺に捨てられたくない一心からだろう。ま、俺としてもいろはを捨てるつもりはない。こんないい女、とてもじゃないが今後出会える気がしないしな。

 

「なぁ、いろは。生でしてみたいとか女も思うもんなのか?」

「……私はありますよ? てか、今もそうです。先輩の赤ちゃん産みたいなぁって」

「そうすれば捨てられても寂しくないからか?」

「…………寂しいですよ。でも、先輩との赤ちゃんがいれば生きていけますから」

 

 そう噛み締めるように呟くいろはがとても小さく見えた。その瞬間、強く感じる何かに突き動かされ、気付けばいろはへキスしていた。

 

「せ、先輩?」

「何勘違いしてんだ。お前、俺に言ってたろ。私の全部を捧げるって。なら、人生そのものさえ俺のもんだ。例え子供が出来ようが関係ない。お前は一生俺のもんだ」

「……はい、先輩」

 

 何となくだが、今のが愛してるって事かもしれん。あんないろはは見てられなかった。互いの間に流れる空気がセックスをする感じでなくなったのもあり、俺は気分を変えるためにスマホを手にした。すると、思いもよらぬ相手からメールが届いていた。

 

「……いろは、三浦は葉山が自分以外を選ぶはずはないって言ったんだな」

「はい、私がお昼にヘタレ先輩へ告白しますって言ったら、そう返してきました」

「なら、三浦の理性は揺るがないって事だ。で、さっきのお前に聞いた生で云々は何にあたると思う?」

「……本能、ですか?」

「正解だ。三浦の本能の部分はどうなんだろうな。何せお前が葉山とセックスした時に感じたのは不満ばかりだった」

「ホントですよ。体力だけはあるんでそこは褒めてもいいですけど、他は全然でした。三浦先輩、絶対エッチに不満持ってるはずです」

 

 いろはの言葉に俺は内心で頷いた。だからこそ葉山にバックをさせていないのだ。そう、あれを俺とした時三浦はヤバイと言っていた。

 

 つまり勘付いているのだ。葉山にそれをさせたら自分がどう思ってしまうのか。当然と言えば当然か。三浦は俺のものの大きさを知っている。何となくだが、俺には分かってきた。三浦のあの時の言葉の本当の意味。嘘ではなかった。あれは理性と本能のせめぎ合いだったのだろう。

 

「いろは、日曜出かけるぞ」

「デートですか?」

「ああ、こいつも巻き込んでな」

 

 そう言って俺が見せたメールに、いろははやや間を置いてからその意味を理解したのか楽しそうに笑みを浮かべる。そこには海老名の連絡先が表示してあり、文面には自分で出来る事があれば言ってほしいと書いてあった。なら早速利用させてもらおう。それと万全を期す事も兼ねて葉山にもメールを送ってやるか。

 

「いろは、今夜だが」

「ヘタレ先輩とエッチしてくればいいんですね?」

「ああ。あいつも大分悩んでいたが、ある意味で自分を捨ててる相手なんだから気にせず、むしろお前が捨てるぐらいで相手してやれ。処女捨てるためだけに使われた俺の分までな、と言ってやったら乗り気になってな」

「うわ、大義名分まであげたんですか。で、今から私がメールを送るんですね。三浦先輩とエッチさせないために」

「そこまでは言わん。ただ、あいつも三浦との関係で悩んでんだ。ここらで違う女を相手にさせて三浦の有難みを思い知らせるべきだろ」

 

 きっと今の俺はあくどい顔をしているはずだ。いろはも俺の顔を見ながら小悪魔のような笑みを浮かべている。

 

「先輩ってホント怖いです。ヘタレ先輩のためみたいに言いながら、どう考えても自分のためですし」

「突き詰めれば人ってのはそんなもんだ。そいつの自分勝手が誰かのためになるかならないかで善悪を決められるだけなんだからな」

 

 そう言いながら俺はいろはの胸を揉み始めた。それが合図と分かったのだろう。いろはも何も言わず新しいゴムを手に取り、中身を口に咥えて俺を見る。こうして俺は再びいろはと繋がった。

 

 

 

「にしても珍しくない? 海老名が自分からカラオケに誘うとか」

 

 あーしの言葉に先を歩いていた海老名が振り向く。その顔は海老名もそう思っていると告げてた。

 

「まぁ、たまにはね。優美子の気分転換にもなればいいかなって」

「……ん。ありがと」

 

 昨日、隼人とデートした。でも、いつも以上に噛み合わないような気が拭えなかった。あーしと一緒にいるのに、どこか別の事を考えているような隼人に何度も文句を言った。

 

 そん時はちゃんと謝ってあーしを見てくれるけど、また少しすると他の事を考え出す。でも、一番おかしかったのはデートの最後。いつもならホテルに行くのに、昨日は止めておこうって隼人が言い出してそのまま帰宅。おかげであーしはもやもやしたまま今日を迎えた。

 

「でも、どうして結衣を誘わないの?」

「だって、結衣には優美子の悩み関連は刺激強いでしょ? 男性経験ないのに隼人君関係は無理だって」

「……ま、そうかもしれないし」

「そうそう。結衣が好きなのは隼人君とは全然違うタイプだからね」

 

 その言葉に胸が締め付けられる気がした。そうだ。あーしは結衣の好きな男をある意味盗った。今はどうか知らないけど、ヒキオも結衣を結構意識してたと思う。

 

 でも、きっとあの夜からはあーしがヒキオの中に居座ってる、と思う。それでもあーしが隼人と付き合った事を恨みもせず、ただ見届けて身を引いてくれた優しく強い男。

 

 そう、だからあーしはヒキオを忘れられない。あんないい男、早く捕まえなって結衣には言いたい。だけどそれを言ったら、あーしとの関わりがないはずのヒキオをどうしてそんな風に言えるのか、ってなってヒキオの気持ちを無駄にする。こうして結局あーしは何も結衣へ言えないまま、隼人との時間を大切にするしかなかった。なのに、それももしかしたら……。

 

「とにかく、今日は歌って騒いで色んな事忘れよう。ね、優美子」

「そうするし。海老名、今日はとことん付き合え」

 

 こうしてあーしと海老名はカラオケ店へ入る。そして告げられた部屋番号を探して店内を歩き、それぞれ飲み物をドリンクバーで選んで室内へ。そしてすぐに海老名が一曲入れたのを皮切りにあーしも歌いたい曲を入れていった。

 

 本当にストレス発散しか考えてなかった。いつもならあまり歌わない激しいやつを歌い、いつもなら絶対歌うラブソングを歌わず、ただあーしの中のもやもやしたものを吐き出すように歌った。

 

「あー、喉痛いかも」

 

 マイクを置いて少し休む。海老名はトイレに行っていて、今はあーし一人だけ。ホント、今日誘ってもらってよかった。じゃないと確実思い悩んでた。隼人と付き合うようになってから、デートの時は絶対エッチしてた。頻繁にデート出来ないし、学校じゃイチャイチャさせてくれない事もあって、必ず求め合ってたのに。

 

「どうして昨日はエッチしなかったし。教えてよ、隼人ぉ……」

 

 やっぱりあーしがあまりエッチな事させなかったから? 隼人としてる時にそんなにイケないから? もしそうなら完全にあーしが悪い。全てはあの日ヒキオとしたエッチのせいだから。

 

 優しい隼人と違って荒々しくて自分勝手なヒキオ。でも、ちゃんとあーしの事を考えてくれてるのが伝わるエッチ。隼人もあーしの事を大事に思ってるのは伝わるけど、何かが足りない気がしてしまう。後ほんの少しの激しさが、強さが、荒々しさが欲しいと思ってしまう。

 

「……ダメじゃん。こんなんだから隼人を落ち込ませたんだし」

 

 初めての時はお互い何も知らなかったから上手くいってた。でも、隼人にとって二度目の、あーしのとっては三度のエッチでそれはずれ始めた。気持ち良くない訳じゃない。だけど、足りない。

 

 あの時の、あーしが隼人を裏切っちゃった時の感覚には届いてくれない。そう感じてしまった。最初は隼人も慣れてないし、あーしもヒキオとして間もないからだって、そう思ってた。

 なのに、回数を重ねる内にそのずれはどんどんはっきりしてきた。隼人はあーしを大事に思ってくれてるせいか、エッチの時にお願いをしてこない。

 

 ヒキオは色んな体位をしたがったけど、隼人はずっと向き合うだけ。あーしから言わないと何もしようとしない。それは、隼人の抱えてたものが原因なんだと思う。だからあーしも気にしないで隼人に好きにしていいって言った。それでも隼人はそれが自分のしたい事だからって、そう言って終わりにしてきた。

 

「あー、びっくりしたぁ」

「海老名? 何かあった?」

 

 そのまま気持ちが沈みそうな感じになったところで海老名が顔を赤くして戻ってきた。こういうのは珍しい。いつも変な事を言ってあーしに擬態しろって言わせるような奴なのに。

 

「あ、うん。トイレから戻ってくる時にね、何気なく他の部屋が見えちゃったんだ。で、そこにいたのがヒキタニ君でさ」

「ヒキオ?」

「うん。で、一人じゃなかったんだよ。その、生徒会長の子と二人でいたんだけど、あまりこんなとこでしていい事じゃないような事しててさ」

 

 それだけであーしも海老名の見たものが分かった。にしても、ヒキオがあの一年と? つい最近隼人へ告白するとか言いながら、ヒキオにも手ぇ出してるのか。そう思った瞬間、あーしは妙にムカムカしてきた。あーしの好きな男二人を天秤にかけるどころか、ヒキオの優しさにつけ込んでから隼人へ迫ろうなんて許せない。

 

「海老名、悪いけどコンビニ行ってのど飴買ってきて欲しいし」

「えっ……いいけど?」

「お金は後で払うから。お願い」

「う、うん……」

 

 あーしの雰囲気が変わった事に疑問を抱きつつ、海老名は部屋を出て行った。それを確認してあーしは部屋を出てトイレの方向へ歩き出す。一体どこだ。そう思いながらそれとなく周囲の部屋を見ていく。

 

 と、あった。入口の部分から少しだけ中が見える。その先ではあのいろはって子がヒキオのおちんちんをしゃぶってた。カッとなって部屋へ踏み込もうとした時、はたと気付いた。

 

「あーしが何でヒキオといろはの事で文句言える? あーしが隼人を選んだから、ヒキオは別の相手を求めただけじゃん」

 

 自分の言葉で急激に頭が冷えていく。でも、そんな事お構いなしに部屋の中で二人はエッチを続けていた。

 

 いろはが美味しそうにヒキオのおちんちんをしゃぶってる。それを見てヒキオが嬉しそうに笑って、その頭を優しく撫でていた。いろはの目が喜びで細くなる。ああ、あーしもああされた事がある。ヒキオの部屋で初めてフェラした時、ぎこちないけど優しい触り方であーしの髪を撫でてくれた。

 

「ヒキオ……」

 

 いろはが激しく頭を上下させると、ヒキオは限界が来たのか何かを告げて髪を一撫でする。そして、いろはの頭を軽く掴んで小さく震えた。あーしには分かる。今、ヒキオは出したんだ。

 

 思えば隼人にはあまりフェラをしてない。隼人が言わないのもあるけど、一番は隼人がヒキオみたいに撫でてくれなかったからかもしれない。

 いろはが口をゆっくり放す。そしてそのまま口を開けてヒキオへ見せた。きっと口の中にヒキオの精子がたっぷり入ってるんだ。それを見てヒキオは少し興奮したみたいで、何かいろはへ言ってから頷いた。それを合図にいろはが口を閉じて喉を動かす。それにヒキオは凄く嬉しそうな顔をして頭を撫でると、そのままキスをした。

 

「……そんなの、あーしにしてくれなかったじゃん」

 

 隼人もごっくんした後のキスは嫌がった。ヒキオだってあの夜はしてくれなかった。いろははあーしよりも大事って事? ちゃんとごっくんしたからご褒美って事? それなら……

 

―――それなら今のあーしだって出来る。

 

 そう呟いたところで我に返る。中のいろはと目が合ったからだ。慌ててその場を離れトイレへ向かう。ドアを閉め、鍵をして、あーしはそのままそこでオナった。

 

「隼人ぉ……あーし、あーしはぁ……」

 

 懸命に隼人を思い浮かべようとするけど、どうしても浮かぶのはヒキオといろはの光景。あのおちんちんはあーしのものだったのに。あの嬉しそうな顔も、優しい手つきも、全部あーししか知らないはずだったのに!

 

 悔しいと、そう思いながらあーしは自分を慰める。本当なら昨日隼人とエッチして、こんな事しなくて良かったはずなのに。どうして抱いてくれなかったの隼人。あーしはこんなにも寂しいのに。こんなにも抱いて欲しいのに。

 

「んっ、あっ、欲しい……おちんちん欲しいのぉ」

 

 あの大きくて硬くて逞しいヒキオのおちんちん。ううん、隼人のがおちんちんならヒキオのはチンポだ。きっとそう言ってあげた方がヒキオも喜ぶ。

 そう考えたからか、どんどんヒキオとのエッチが思い出される。今まで思い出さないようにしてたあの夜の事。あーしに本当のイクって事を教えてくれた時の事。あれ以来一度も感じた事のない気持ち良さ。それらを思い出して、あーしは咄嗟に片手で口を押えた。

 

「ん~~~~~~っ!」

 

 ……初めてオナニーでこんなに感じた。ふとオマンコを触っていた手を見れば、そこにはたっぷりのラブジュース。でも、まだ足りない。お腹の奥が熱くて仕方ない。もう一度しよう。そう思った時、トイレに誰か入ってきた。

 

「優美子? いる?」

「っ……海老名? どうかした?」

「あっ、よかった。戻ってきたら部屋にいないから。きっとトイレだと思ったんだけど、中々帰ってこないから心配になって」

「マジごめん。ちょっと考え事しちゃってた」

「そっか。じゃ、部屋に戻ってるね」

「あ、あーしももう出るから通路で待っててくんない?」

 

 ペーパーで拭き取り、海老名が出て行ったのを確認してお手洗いで名残を消す。そして何事もなかったかのように海老名と合流して部屋へ戻った。途中ヒキオ達の部屋をちらりと見たけど、もうそこには誰もいなかった。海老名も同じ事をしてたみたいで、小さく「良かった」と呟いてた。その後はあーし的にカラオケって気分じゃなくなっていたけど、それでも海老名と時間まで過ごした。

 

「じゃあ、明日学校でね」

「ん。気を付けて帰りな」

 

 海老名と別れあーしは一人家路を歩く。まだ体の芯の部分が熱い。中途半端な発散をしたせいか、昨日の分まで余計に熱がある気がする。隼人へ連絡したら迷惑かな。でも、仮に呼び出せてもエッチは出来ないだろうし、出来ても気持ち良くなれない気がする。そう思うとスマホを操作しようとする手が止まる。

 

 隼人の彼女になりたくて、彼の悩みを何とかしてあげたくて、やっとあーしがそれを解決してあげられたのに。そう思いながら、気付けばあーしはある番号をコールしていた。何度か呼び出し音が鳴る。そして、遂に繋がった。

 

『どうした? もう連絡はしてこないと思ったのに』

 

 ああ、あーしの連絡先を消してなかったんだ。そう思って胸の奥が高鳴る。あんな関係になったからこそ、あーしはヒキオと接点を消そうとして最後にメールを一通送った。隼人のためにもヒキオとは連絡を取らない。出来れば連絡先も消して欲しいって。なのに、ヒキオは……。

 

「……消してって言ったじゃん。何で残したし」

『…………誰かさんがもしもの時は迎えに来いつったからだろ』

 

 ダメ。これ以上ヒキオと話しちゃいけない。今のあーしには、ヒキオの優しさは怖い。それにすがったら、頼ったら、もう隼人に戻れない気がする。なのに、どうしてあーしはこの繋がりを切れないんだろう。

 

『そっちこそよく俺の番号残してたな。葉山に見つかったらどうするつもりだ』

「隼人はそんな事を気にするような男じゃないから。それに、今のあーしらがあるのはヒキオのおかげって思ってるよ」

『なんだ。じゃ、知ってるのか』

 

 安心したようなヒキオの声。きっとそれであーしと隼人が揉めないか心配してたんだ。本当に優しい奴。でも、だからあのいろはって一年はヒキオを誑しこんでる。隼人を好きって言いながら他の男とエッチな事をするなんて……。

 

「ヒキオ、あの一年とは縁切れ」

『……どうした急に』

 

 ヒキオの声が若干不機嫌になった。やっぱり、あの一年はヒキオを騙してる。ホントは隼人が好きなのに、保険としてヒキオを確保してるんだ。ああ、すっごいむかつく。

 

「あの子、隼人が本当は好きなんだし。金曜にあーしへ言ってきた。隼人へ告白す」

『知ってる』

「……は?」

『知ってる。あいつが葉山を好きな事も、俺は都合のいい相手な事も』

 

 ヒキオの淡々とした声にあーしは返す言葉が見つからなかった。何で。どうして。そう思うけれど口には出せない。今のあーしにヒキオへ言える事なんてないからだ。

 

『それでも俺は嬉しかったんだよ。人の温かさってやつを、また感じられるようになったから』

「ヒキオ……」

『それにあいつには言ったんだ。葉山には三浦がいる。あの二人の仲には割り込む隙なんてないって。それでもあいつは諦めないって、そう言うもんだからな。俺も、誰かさんを思い出しちまったんだ』

 

 その言葉にあーしは今度こそ言葉を失った。ヒキオがあの一年を可愛がってるのは、あーしを重ねてるから? 諦めた方がいいのにそれをせず、何とか振り向いてもらおうとしてるから? だからヒキオは我慢してるの? またヒキオだけが辛い目に遭うのを、あーしは見てる事しか出来ないの?

 

「ヒキオ、気持ちは分かるし。でも、あーしは」

『葉山を捨てるつもりはないんだろ。だからそのままでいてくれ。俺も何とかあいつを葉山から引き離そうと思ってるんだ。何せあいつは葉山の抱えてるトラウマを知らないからな』

 

 その言葉であーしは思い出した。そうだ。あーしは隼人を支えてあげないといけない。ヒキオだってそれを知ってるからあーし達を応援してくれたんだ。

 なら、せめてあの一年がヒキオの良さをちゃんと分かってやって、隼人じゃなくヒキオの隣を選ぶ事を願うしかない。正直まだ許せない部分はあるけど、ヒキオが動いてくれるなら大丈夫だし。

 

「ん、分かったし。じゃ、あの子の事はヒキオに任せる。隼人の事はあーしがちゃんと見張っておくから心配すんな」

『ああ、頼んだ。しっかり見張っておいてくれ』

「じゃ、切るね」

『おう、何か悪いな。せっかくそっちの気遣いで言ってくれたのに』

「気にしなくていいって。あーしもヒキオと話してちょっと楽になったから。お互い様じゃん」

『……お前、やっぱりいい女だな』

「っ!?」

 

 その言葉を最後に通話が切れた。あーしはスマホを持っていない方の手で顔を触る。少し熱い。それから心臓の辺りへ手を当てる。鼓動が早い。最近隼人相手にも感じなかった何か。それを今、あーしは感じてしまっていた。

 

 

 

「これで良かったの?」

『ああ、十分だ。これで三浦も俺が他の女とそういう関係を作ってるって理解出来たはずだ』

 

 優美子と別れた後、私は家へ帰り彼からの連絡を待っていた。昨日の深夜に送られたメールには、日曜に優美子を誘ってカラオケに行く事が指示されていたのだ。

 

 なのでカラオケへ優美子を誘い、部屋が決まってからメールを比企谷君に送信。それを受けてから比企谷君が生徒会長の子と入店し、店員へ同じフロアの空室を希望したと言う訳だった。空室が同じフロアになかったら面倒だったけど、何とか運良く空室があり、後は私がトイレに行く振りをして彼と連絡を取り合い、情事を見た風に優美子へ告げればいいだけだった。

 

「優美子は何て?」

『葉山は自分がしっかり見張る。だから一色は俺に任せるとさ』

「そう。それにしても、まさかあの子が比企谷君の彼女なんて……」

『傷の舐めあいみたいなもんだ。お互い、本当に傍にいて欲しい相手には届かないもんでな』

 

 その噛み締めるような声に私は何も言えない。優美子が欲しい比企谷君と、隼人君が欲しい一色さんか。たしかに傷の舐めあいだ。それに、今日の優美子の様子からすると、結構過激な事も出来るぐらいの関係になってるみたいだし。

 

「比企谷君、本当にごめんなさい。君の優美子への気持ち、私全然考えてなかった」

『それはもういいって言ったはずだ。それより、もう俺と接点を持たない方がいい』

「えっ……?」

 

 どういう事? そう思っての声に比企谷君は少し言いよどんでから小声で告げた。

 

―――あのタイミングであんな事言われたら、嫌でもエロい事にしか考えられないんだよ……。

 

 その言葉がどういう意味かを察し、私は思わず赤面した。いや、たしかにそういう意味で言ったし、それで彼のブレーキになれればとも思ってた。だけど、こんな風に言われるとは思わなかったのだ。

 でも、同時に思う事がある。やはり彼の本質は優しいんだと。これだって、言わずに欲望のまま私へ迫ればいいのだ。例えそこで拒否されても彼はそこまで堪えないはずだし。それでも、そうしないのは私を思いやっているから。自分が逆の立場ならどうして欲しいかを考えているんだ。

 

「ひ、比企谷君。その、別にいいよ? 私はそれぐらいの事を君にさせたって思ってるから」

『……俺に本気になってくれるか?』

 

 その問いかけの心細い声が、私の心を捕まえた。この人は怖いんだ。一番好きな女性に捨てられ、一番大事にしたい女性は別に好きな相手がいて、だから私へ尋ねてきたんだ。自分を一番にしてくれるかと。捨てないで傍にいてくれるのかと。それは同情ではなく愛情かと。ごめんね、結衣。貴女の想い人、私も本当に好きになっちゃいそう。

 

「……うん、なってみるよ。だから比企谷君も手伝ってくれないかな?」

『っ…………ああ、やれるだけやってみる』

「それで十分だよ。ありがとう、比企谷君。こんな私だけど、よろしくね?」

『こっちこそだ。当分一色と二股みたいになるけど、そこはすまん』

「ううん、仕方ないよ。そっちは私が本気になった時に考えて」

 

 そう、仕方ない。今の時点で私が彼の女性関係をどうこう言う資格はない。それはせめて私が心の底から彼を好きになって、それを彼が信じられるようになった時だ。それまでは私が保険でいい。そう思って通話を終えようとした瞬間、ふと漏らした呟きのような彼の声が聞こえた。

 

―――これで進める……。

 

 一体何の事と問いかける前に通話は終わる。……これで進める、か。もしかして彼も優美子の事を吹っ切ろうとしていたのかもしれない。その相手として私を求めてくれたのかな。そんな事を考え小さく息を吐く。

 

「我ながら早すぎるでしょ。何でもう嬉しくなってるんだか……」

 

 

 

 何も音がしなくなったスマホを見つめ、俺は達成感に浸っていた。本当なら大笑いしたいぐらいだが、生憎ネカフェなのでそれは出来ない。それにしても上出来な程の流れだ。怖いぐらい俺の望む流れと同じで、いっそ恐怖さえ感じる。

 だからこそ油断はしない。慢心もない。常に想定外が起こると身構え、最悪を想定して動くのみだ。今回も一つだけ予想外の出来事が起こったしな。

 

「まさか三浦が俺へ連絡してくるとは」

 

 いろはの話では三浦も彼女の連絡先を知っているとの事。なのでてっきりそちらへ怒りをぶつけてくると思っていたのだが……。

 

「あの感じだと、三浦は欲求不満気味か。ああ、そうか。土曜に期待を外されたからだろうな」

 

 いろはのメールに葉山は表面上は仕方なく、本心としては一も二もなく飛び付いた。しかも、聞いたところによると土曜は三浦とデートだったようで、本来なら夜までのところを夕方で切り上げ、いろはとのセックスを選んだのだ。

 

 ここが男の悲しいところだ。一度知った快楽に弱いのは女よりも男。それも葉山は鬱屈としていたものが噴出しているようなものなので、より一層セックスに貪欲なのだろう。

 

「三浦が葉山と上手くいかなくなった理由は、下手の横好きに近いものもあるかもしれんな」

「絶対そうです。無駄に体力だけはありますからね」

 

 昨日葉山をたっぷりイカせて満足させた奴が言うと説得力が違うな。そう思うも口にはしない。何せ今朝、俺のスマホに葉山からメールが届いていたのだ。

 

 内容は簡単にまとめるとこう。俺を好き勝手弄ぶいろはとのセックスは自分に合っている。理由は陽乃さんを連想させるからではないか。三浦は自分にとってかけがえのない存在だが、故に満足させられていないのが申し訳ない。浮気しといてなんだが、三浦を満足させられる方法はないか。

 

 これを見た時、俺はいよいよ最後の時が近いと感じた。

 

「それで先輩、これからどうするんです? 三浦先輩がせっかく堕ちそうだったのに」

「だからこそ立ち直らせたんだ。三浦にはまだ凛としてもらいたいんでな」

「寝取るには早い?」

「違うな。真実を知るには、だ」

 

 そう、さっきの会話で確信した。三浦はもう限界だ。元々そうだったのかもしれんが、今日のカラオケが決定打となったらしい。いろはと縁を切れというのは、裏を返せば俺は自分の男と言いたいのだ。踏み込まれた時の事を想定してたが、そこは三浦だよく踏み止まった。おかげでこっちも予定を変えずに済んだしな。

 

「じゃ、一体いつならいいんです?」

「いろは、次葉山とする時にやってほしい事がある」

「動画ですか?」

「大筋当たってるが、それだけじゃない。言っただろ。やって欲しい事って」

 

 その言葉の意味をいろはへ伝えると、心底嫌そうな顔をした。それでも俺がそれでどうするかも想像したのだろう。拒否せず、しっかりやってくると納得した。そんな、俺にはもったいない程健気ないろはへ優しくキスをしてやる。いろはも目を閉じて嬉しそうにそれを受け入れた。

 

「……先輩、私、信じていいですよね?」

「信じるな。ただ、俺の傍にいればいい」

「先輩……」

「俺はお前を信じない。だが、傍にいるなら傍に置く。いや、置きたいだな。これじゃ不満か?」

「いいえ、満足です。だって、先輩は私に言いましたから。一生俺のもんだって」

 

 そう微笑みながら告げると、いろはは俺の胸に顔を埋める。その髪を優しく撫でながら、俺は来る日の事を考えて笑みを浮かべた。この歪んだ関係に終止符を打つ時を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。