「ねえ、ちょっと脱いでみせてよ」
夏休みの昼下がり。
冷房の効いた部屋でゆったりしていた時、幼馴染のサキがそんな事を言い出した。
漫画を読んでいたボクは、一瞬自分の耳を疑った。
視線をあげ、部屋の中を見渡す。
室内には四人の幼馴染がいた。
幼少期から続くこのグループのリーダー的な存在のサキ。
場を盛り上げるのが上手いアカリ。
頭が良くて真面目なミツキ。
大人しくて控えめでボクと一番気が合うユナ。
その全員の視線がボクに向けられていた。
「ちょっとでいいからさ、脱いでみせてくれない?」
静寂を破るように、サキが言葉を繰り返す。
彼女の瞳には加虐的な色が宿っていた。
「な、なにを?」
「ズボンとパンツ」
間髪入れずに答えるサキ。
「ど、どうして?」
「見てみたいから」
あっけらかんと言うサキに、ボクは言葉を失った。
彼女は、いつもそうだった。この幼馴染グループの中で、唯一の男であるボクをおもちゃのように扱う。
けれど、さすがにこれは限度を超えていた。
「ミ、ミツキ……」
いつもサキを宥めてくれるミツキに視線を向ける。
そもそもここは彼女の部屋だった。彼女ならサキをとめてくれると思った。
けれど、ミツキは僅かに視線を逸らして無言を貫いた。
ミツキの反応に気を良くしたようにサキが言う。
「いや、本当に見てみたいだけなんだって。それって実際どういう構造してるわけ?」
「そもそもナギって本当についてるの? そこから疑問なんだけど」
アカリが笑いながら立ち上がり、自然な動作で部屋の鍵を閉める。
鍵の閉まる音が響くと部屋に沈黙が落ち、全員の視線がボクに集中した。
ボクは視線を彷徨わせ、部屋の隅でじっとしているユナに助けを求めるように視線を向けた。彼女は頬を赤く染めながら、何かを期待するようにじっとボクを見ていた。
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
鍵を閉めたアカリが、そのまま僕の背中まで移動して後ろから抱きついてくる。まるで腕の動きを封じるように。
「ちょ、ちょっと。だめだって!」
「ほら、サキ」
抗議の声をあげるボクを無視して、アカリがサキを呼ぶ。
サキは立ち上がると、ニヤニヤといつもの悪そうな笑みを浮かべた。
「いや、ちょっと本当に見るだけだから。そんなに嫌がるなよ」
サキはそう言って、ズボンのベルトを外し始めた。
金属の擦れる音が響く中、座ったままのミツキとユナの視線が突き刺さるのがわかった。
「ミ、ミツキ、た、助けて!」
一縷の望みをかけて、助けを乞う。
しかしミツキは薄っすらと頬を赤く染めて、外されていくベルトをじっと見つめたまま彫刻のように動かない。
ベルトが緩められ、サキの指がズボンの中に入ってパンツのゴムを掴むのがわかった。
「ほら」
掛け声と同時に、冷たい空気が下半身に触れた。
ユナの小さな悲鳴が響き、ボクを後ろから拘束するアカリが歓声にも似た声をあげた。
一瞬で顔が茹でダコみたいに真っ赤になるのがわかった。
「~~ッ!」
正面から見ていたミツキが、前のめりになるように床に手をついてボクの下半身に顔を近づけてくる。
「え……ちっちゃ」
ミツキの小さな声が、室内にやけに大きく響いた。
その一言で場が凍ったような感覚があった。
ボクは顔を真っ赤にしたまま、何も言えず俯くしかなかった。
「い、いやいや。男子はここから刺激を加えたら大きくなるんだって」
すぐ後ろでアカリがフォローするように明るい声で言う。
ボクは羞恥心で抵抗すら忘れて力なくぐったりとしていた。
「なんだ。ちゃんとついてるじゃん」
サキが笑いながらボクの股間に手を伸ばす。
驚くほどの温かさが肌に触れ、背筋に電流のようなものが走った。
ボクの身体が震えるのを見て、サキがニヤニヤと笑みを浮かべる。
「お、良い反応するじゃん」
熱すら感じるサキの手に、ゆっくりと力が込められていく。
「……痛っ」
サキの手に強い圧力がかかり、反射的に声が漏れた。
驚いたようにサキの手が離れる。
「ご、ごめん。力加減わからなくて……」
サキはそう言いながら、そっと撫でるように優しく触れる。
思わず声が漏れた。
「……んっ……待って。これ以上はダメだって」
「何がダメなんだよ。大きくなってんじゃん」
サキの言う通り、下腹部に血流が徐々に集まっていく。
「ほら、ミツキ。男子はこうやって大きくなるんだって」
「え、あ、うん」
ミツキとユナは顔を赤くしながらも、熱に浮かされたようにボクの下腹部を食い入るように見つめ続けている。
「待って、本当に……ダメだからっ……」
全身から力が抜け、後ろからボクを拘束するアカリに体重を預けるように倒れ込む。
「ナギってこうして見ると、本当に女の子みたいだよね」
後ろからアカリの囁くような声。
「ち、近くで見てもいい?」
顔を赤くしたミツキが這い寄るように近づいてくる。
「だ、ダメだって……待って。本当に、ダメっ」
懇願してもサキの細い指は止まることなく、ゆっくりと動き続ける。
その間に吐息がかかるほどまでに近づいたミツキが、股下を覗き込むように頭を下げた。
「うわぁ……本当に袋みたいになってるんだ」
サキの手に加え、ミツキの手がそっと触れる。
くすぐったさのようなものと、快楽がごちゃ混ぜになっていく。
「……ナギはこうされると気持ちいいの?」
純粋な好奇心を満たすように、ミツキが問いかけてくる。
「……気持ち良いけど……もうやめてよ……」
「でも気持ちいいんでしょ?」
からかうようなサキやアカリと違い、気遣うようにミツキが微笑む。
「もっとやってあげるよ」
「待ってっ! 本当に、もう、出るからっ!」
「え?」
ミツキが首を傾げると同時に、強烈な射精感がこみあげてきた。
「ダメっ! ……んっ……」
気づいた時には、目の前のミツキの顔に向かって出ていた。
ボクの白濁液を正面から受け止めたミツキが小さな悲鳴をあげ、手を離す。しかし、その間もサキは手を止めない。
「サキっ、待って、もう出てるから!」
サキはボクの表情を上目遣いで観察しながら、そのまま手を擦り続ける。
尿道に残っていた精液が、サキの手によって一滴残らず搾り取られていく。
「こうしたほうが、気持ちいいんだろ?」
「だ、ダメだってっ!」
終わる事がない射精感に、脱力してその場に倒れ込みそうになる。
後ろからボクを支えているアカリが興奮したように呟く。
「へえ……そんなに気持ちいいんだ?」
アカリがゆっくりとボクを床に倒すと、ボクはその場で丸くなって何度も荒い呼吸を繰り返した。
横に目を向けると、顔中を汚したミツキが顔についた白濁液を手ですくいとっているところだった。
彼女は指についたそれを暫くそれを眺めると、そっと口に含んだ。
「……味はしないかも」
「へえ。臭いは? よくイカ臭いとかいうけど」
興味深そうにアカリが口を開く。
「んー。臭いも特にないかな。時間が経つと出てくるんじゃない?」
ミツキはそう言いながら何度も指を舐めて、それから諦めたようにユナに目を向けた。
「ごめん、ユナ。ティッシュ取ってくれる?」
それまで情事を遠巻きに見つめていただけのユナは、驚いた小動物のようにティッシュ箱に飛びついた。
「だ、大丈夫なの?」
ユナが恐る恐るといった様子で、ミツキの顔を優しく拭く。
「まあ。ナギのだし。別に汚くもないよ」
ミツキはどこか淡々と答えながら、それより、とカーペットの上で横たわるボクに目を向けた。
「ナギは大丈夫なの?」
「……うん。力が抜けただけだから」
射精直後で放心していたところに羞恥心が突然戻ってきて、ボクは身を起こすと慌ててパンツとズボンを履き直した。
「ナ、ナギくん? 本当に大丈夫?」
ユナが心配そうに顔を覗き込んでくる。
ボクは羞恥心でたまらなくなって、ついと視線を外した。
「う、うん……だ、大丈夫だから」
「ところでさ」
サキの声。
振り返ると、ニヤニヤしたサキと目が合った。
「ナギって、他人の手で射精したの今回が初めてなわけ? 彼女とかいないよな」
「……そうだけど」
答えると、サキは満足そうに笑った。
「へえ……」
じゃあさ、とサキが言葉を続ける。
「これから一人でする時は私のこと思い出していいぞ」
「な、何言って――」
ボクの声を遮るように、後ろからアカリの声が届く。
「それとも、これからは抜いてあげよっか?」
いつもの冗談だと思った。
けれど、振り返った先には恥ずかしそうに笑うアカリがいた。
からかうための冗談ではなく、本気で言っているのだと理解してしまった。
咄嗟に周囲を見渡す。
サキ、アカリ、ミツキ、ユナ。
その場の全員が、若干の気まずさに耐えるように視線を逸らしながら、けれどアカリの提案を否定しようとしなかった。ツッコミを入れて冗談として処理しようとは誰一人しなかった。
高校一年生の夏休み。
冷房のよく効いたミツキの部屋。
幼少期からずっと一緒だったボクたち幼馴染グループの関係は、大きく変わろうとしていた。