高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。
ちょっとスランプ入ったので活を入れるために、坂柳の後でするつもりだった話を、少し未来の話を投下します。
一之瀬の話を楽しみにしている方には申し訳ないのですが、忙しくなったけど、ここまでは頑張ろうと自分に言い聞かせるために、お付き合いしていただければ幸いです。
少し先の話①
「小柄だが均整のとれた──」
静かな図書館。斜め向かいの席に陣取った少女が、本を読みながら此方に聞こえるようにポツリと呟く声を無視して、目下の本に意思を傾ける。
「ベッドの上の嵐を知っているのは──」
今読んでいるのは情報技術の専門書だ。綾小路に敗北してから、今まで軽視していた知識、それもありとあらゆる知識に手当たり次第に手をだし始めた。
知識を得始めて、直ぐに自分はこういう知識を持った連中を『使う者』と看破したが、飽きもせずに続けている。
知識を得る度に見えてくる綾小路の遠い影を掴む為に、飽きるなどと思考にすら上らない。
「二人は軀と軀で語り合ったようで──」
徒然と続く声がうざったく、気晴らしに、綾小路と手を組み桔梗を破滅させたことに思いを寄せる。
綾小路が桔梗を拾ってモノにしたことに、思うことがないわけでない。
確かに容姿の良い女だが、俺ならばあそこで後腐れなく始末しただろう。
ある意味、失望を覚えたと言って良い。綾小路には、性欲などに判断を左右されない超然としたモノを期待していた。
「充分すぎるほど充分、受け入れる準備が整ったところで──」
桔梗に個人情報を握られた馬鹿な連中の危機感を、一人一人に桔梗に謝罪させて和らげた上で、絶対に情報を漏らさないと保証するまではそうだった。
クラスの連中の立会人として立ち会うまで気付かなかった自分に笑えてくる。
あいつは、性という名の鎖で桔梗を縛り付け完全な手駒にしたわけだ。
それも、桔梗の手札である個人情報を完全に握りしめて。
これ以上は漏れなくとも、今までに桔梗に秘密を漏らした連中は、漏らした情報が軽いやつはまだしも、重いやつはいずれ始末する必要がある。
手駒が少なくなってしまったわけだ。
「意を決して、すでに赤くふくらみきった──」
桔梗という善人に対する信頼が崩れた所でパニックに陥った連中をフォローする人身掌握に動いた結果、クラスの連中から俺の信用は高まったのは狙い通りだったが、後手に回ったことは否めない。
いや、だからこそ綾小路の奴は俺を巻き込みやがった。
クラスメイトから信用を得るためには、俺の悪行を知る桔梗を始末した上で、桔梗に秘密を漏らしてしまった連中をフォローしてやる──わざわざクラスの連中と桔梗との話し合いに立ち会い、それとなく探る桔梗からこれ以上個人情報を漏れないようにした──必要があったから手を組んだが、その『信用』を得た連中のうち何人か始末するなら、今回で得たものは僅かに+という程度だ。
してやられたことには変わりない。不快な思いと愉快な思いを同時に抱く。
(信用、信用か)
かつての自分とは違い、今の自分はそんなあやふやなモノが必要と理解し、それを得るように振る舞うようになった。
結果、恐怖だけで支配していた時よりも、クラスの連中は俺の指示に従うだけでなく、進んで協力するようになった。
真っ先に表返った石崎などは「やっぱり綾小路と組みましょうよ」と進言しているが、「綾小路がいざというとき裏切ったらどうするんだ。奴と組むのは、裏切らないよう互いの利害を一致させた時だけだ。一時的がせいぜいだ」と返すと大人しく、いや、さらに俺を信用するようになった。
「生身の男と女が裸で触れ合っている、一代かぎりの知恵であり、文化である──」
以前とは違い、ある程度説明して納得させる。情報が漏れる可能性(ならないようにしているが)と面倒というデメリットを得たが、スムーズに物事が進むメリットも得られた。
信用させつつ支配する道が見えたのだから、今回の件は総合してプラスで終えることが出来たと言える。
今回の明らかな失策、一つしかしていない失策を除けばだが。
斜め前に陣取る
「朝の光を遮光したベッドのなかで──」
信用されるということは頼られるということでもあり、頼られると言うことは面倒なことを背負いこむことでもある。
だからと言って、底知れないのに静かという矛盾したオーラを漂わせて、淡々と浮気心中本を人前で音読するクラスメイト、椎名ひよりを「何とかしてくれ」といわれるのは、たまったものではない。
(伊吹は大した奴だったな)
惜しい奴を亡くしてしまった悔恨を覚える。
一昨日寝込んでしまった伊吹が相手をしている間は、学校に居る時のひよりはマトモだった。
少なくとも、俺には不自然な所は見えなかった。
だが、違った。伊吹が己の身を必死に削っていただけだった。
「ギー・ド・モーパッサン『女の一生』が……スタンダール『赤と黒が』……ジュリアン何て名前のフランス人は死ねば良いのに。『一粒の麦もし死なずば』……いや、男も女も奔放にイケるアンドレ・ジッドをどう思うかって言われても……」
伊吹が倒れた日に電話しても、会話にさえならず、延々とうわ言でこんなことを言い続けられ「養生しろ」と電話を切った瞬間全てを理解した。
「──のものを受け入れてからは、悦びを訴えながら、何度も上体を起こして鏡を覗き──」
毎晩、ひよりに国内外問わない不倫小説を音読されて聞かされてから感想を答える苦行をこなして、ひよりのメンタルを安定させ続け、限界が来たのだと。
今、それをやられているからわかる。たまったものではない。
何が嫌だと言えば、ひよりの音読はおそろしく巧いのが嫌で仕方ない。
滑舌は滑らか、それでいて込められた情感が溢れる言葉の奔流は、まるでその情景に自分が居るかのように引き込まれて止まない。俺でさえそうなのだ、ひよりに甘い伊吹では一溜りもなかっただろう。
気付けば沼に引きずり込まれるように抜け出せなくなっていた──いや、ひよりを見捨てられなくなっていた。おそらくは、ひよりの目論見通りに。
(金田は逃げだした。アルベルトと石崎はこういうことで頼りにならない。女子どもは)
「龍園くん」
「何だ」
クラスの女子の誰を生け贄にするかと脳裏に浮かべていると、突如音読をやめたひよりが静かに語りかけてきた。
「ここまで来ていただけたのに、益体もないことを聞かせるばかりでごめんなさい。不快に思われたでしょう。でも、恥ずかしながら、私は友達が少ないんです。同じクラスで同性の友人と言える相手は伊吹さんしか居なくて」
すまなさそうにしながら、俺が相手をしなければ伊吹──自分が与え続けた心労で倒れた伊吹の所に行かざるをえないと、伊吹を人質にする
思考を読まれたことなど、もうどうでもいい。俺を逃がすつもりはないことに比べれば些事だ。
「お前でも、違うクラスに友人くらい居るだろうが」
「確かに居ますが、ご覧の通り今の私は不安定です。他クラスの友人に、何かしらの秘密を漏らしてしまうかも知れませんし、そもそも今の私を受け止めてくれる相手は限られます……誰にでも優しい人。例えば、櫛田さんとかに」
ここで騒動を起こしたばかりの桔梗の名前を出す辺り、こいつは本当にイイ性格していると思う。
「桔梗に情報が漏れないようにするために深く会話をしないようにすると、クラス全員で注意し合うことにしただろうが、お前も納得したことをひっくり返すな」
「はい。龍園くんが、そう指示して、あの時は受け入れました。でも、今の私には」
無理なんです、と自分と俺に言い聞かせるように呟くひより。
櫛田が、綾小路のモノになったと確信してからひよりはこうなっていた。それが、伊吹の奮闘で表には出なかったのは、色々な意味で幸いだったが、同時に俺の未熟を突きつけられた。
(綾小路のヤツならこんな無様はやらなかった)
ヤツとの差に歯がみしながら失策を認める。
今回、ひよりには何の役割も与えなかったのは失策だった。遠ざけておくか、いっそのこと最前線に使うべきだった。ひよりが綾小路にどういう感情を抱いているのかわかっているから、放置したのだが。それは、ひよりの性格を読みきれなかった俺の失策だった。
いや、櫛田一人ならまだ良かった。ひよりなら、奪い取れば良いと割りきり動いただろう。しかし──
「軽井沢さんに櫛田さんに一之瀬さんに堀北さんに坂柳さん……そうそうたる面子ですね」
指を折りながら一人一人の名前をあげていくひより。
綾小路の馬鹿が、短期間で面倒臭い連中に連続で手を出してんじゃねえ。そこまでしたなら、ひよりにも手を出せよ。
心の中で毒づくが、俺には綾小路がそいつらに手を出した確信がない。ひよりにはあるのとは大きな違いだ、これでは踏み込めない。
「一対一なら各個撃破可能なのですが、現状は本丸に近づくことさえ厳しいと言わざるを得ません。並大抵の策で仕掛けては敗北するのは私でしょう。
場所を問わず血を流すことを厭わなければ、勝利する道筋も有るのですが。それをした場合、本丸の心証を害する恐れがあるので実質不可能です。
本丸に、綾小路くんに、近づくことも出来ずに敗れては意味がありません」
いや、綾小路相手に証拠どころか確信さえ持たずに、ちょっかい出すのは愉しそうだからやっても良いが。
既に撃破が容易い順番を決めている上に。
──全く同感の順番だ、一年、いや半年前なら一之瀬と鈴音の順は逆だったが、鈴音の成長には驚かされる。
容易い順に名前を読み上げなから、具体的にどう仕留めるかまで想定して、血を流さない理由を綾小路の理性にだけしか求めていない。
──人前で流血騒ぎを起こす奴など、綾小路は理性で切るからこれも同感だ。
そんな、並大抵の手段でなければ勝利してのける自負を持つひよりの為にわざわざ労力を割く必要が
(チッ)
ある。クラスの連中からの信用を得るためには、誰にでも「流石は」と思われる必要がある。最近、クラスに目に見える貢献をしたことで目付きを変えさせたとはいえ、その程度だ。まだ足りない。
クラスの雰囲気を悪くするひよりを何とかするのは必須だ。
(クソが)
「龍園くん──」
「何だ?」
「あなたがどう思うか、感想を聞かせてください。
女体の肉と壁に吸い寄せられ、巻きつけられたまま最後の精が火玉とともに散っていく──
いよいよここからは、ともに死へ旅立つための最後の饗宴である──
いかがですか感想を聞かせてください?」
前振り無く話題を変え、浮気心中本を手に持ちながら澄んだ視線で俺を見つめながら、心中のシーンを巧みに語り、感想を要求する
言葉遊びをせずに素直に答える。
「たった一つしかないモノを、意味無く捨てる阿呆だろう。語る意味もないな」
「伊吹さんと同じことを言うのですね。意味はあります」
「……ハッ、何が意味だ。死んで何の意味が──」
「最後の瞬間、互いだけを見て想い温もりを感じる。それ以外に何も無く、他の誰も何も必要としない。二人だけの世界。
その世界の終わりの一瞬に形容できない全ての意味が詰まり、至福のなかに人生のクライマックスを迎える。残るのは、二人の失われていく温もりだけ。
これ以上の意味を、今の私には想像さえできません」
「……」
言葉を遮り静かに浮気心中の感想を語るひよりの瞳に、何らかの感情があれば無言では無かった。
だが、ひよりの眼差しには、怒りも、妬みも、絶望も、喜びも、希望もなく。
ただ澄んだ、曇りなど一切ない澄んだ、何色にも染まらない透明な光だけがあった。
この光がどう染まるかと想像するだけで、綾小路に敗れた時以来の恐怖に背筋が震える。
「これを読み上げた後で、最近そう思うと言ったら、伊吹さんがずっと側に居てくれたんです」
「だろうな……伊吹の奴は何だかんだ言って甘いからな」
「違います。優しいんです」
「ハッ、そうかもな。俺には真似できねぇよ」
言外に俺はやらない、と答えると、ひよりは生け贄を逃したことに残念そうなため息をついた。
「……そうですか」
伊吹には少し優しくしてやろうと決意しつつ、理解したのは二つ。
ひよりは俺にはどうしようもないこと。
ある意味でいい機会だということ。
「その伊吹さんが倒れてしまい、看病しに行っても遠慮されてしまって部屋にも入れてもらえず、途方にくれてしまうんです……こういうとき、よく一緒に本を読んでいた綾小路くんは、忙しい……そうです。忙しいそうなんです。最近、ここ一ヶ月は、私と本を読めないくらい
手に持った浮気心中本を優しい手付きで撫でながら、
「ああ、そうだな。忙しいだろうぜ。
「……よく、ご存じですね」
何かに気付いたようにハッと目を見開く。
「まさか、平田くんだけでなく龍園くんも……」
「お前は馬鹿か、んなわけねえだろ」
「でも、平田くんは……」
「俺と平田を一緒にするな。平田は夢中になった奴が、掛け替えの無いたった一人になった奴が、たまたま同性だっただけだ。俺とは違う」
「でも、龍園くんも綾小路くんに夢中ですよね」
「確かに綾小路を打倒することには夢中だが、俺と綾小路の間にはそんな感情は入り込まねえ。俺からも、何より綾小路からもな」
「……断言、出来るのですね」
冷静さを失い、アンドレ・ジッドを含めた様々な浮気本に染まったひよりは、男にさえ情愛を交わしたのかと疑い、理解しあっていることに嫉妬している。
俺が綾小路となどと、おぞましいことを想像していやがる。
だから、今から言う言葉を口にだすと考えるだけで、吐きたくなるが仕方ない。
ああ、愉しくて仕方ない。
「ククク、これでも友人だからな。あいつのことはそれなりに理解しているし連絡も取っているぜ。さもなきゃ友人と呼べるわけないだろう」
「……そうですか、龍園くん
一瞬表情を引き攣らせるひよりと、綾小路を友人呼ばわりした気持ち悪さには構わず、愉しく笑う。
「ククク、わざわざ思い出す必要もない。つい昨日のことだ」
「き……き、の、う」
「ああ、昨日の夜だ」
「昨日の夜、昨夜、ゆうべに……何の話をしたのですか?」
ククク、おいおいひより、本を持った手が震えているぜ。
何てことは言わずに、綾小路との会話を思い返す。
「特に面白いことは話してねえな」
「は!?」
遂に瞳に光が灯る。嫉妬の光が。
俺を嫉妬の眼差しで見つめるひよりをからかうのは愉しくて恐いな。病み付きになりそうだ。
争いごとを嫌うひよりは、能力はあっても手駒としては不適だった。
「今日の夕飯は自炊かとか、無料食品なんだったとか、そんな話だ。面白くもなんともない話だろう……友人同士の他愛もない駄弁りだ。そんなものわざわざ覚えておく必要ねえな。違うか?」
「そうですか……そう、ですね」
だが、今、俺に対してすら、恋の心意を燃やし嫉妬するひよりは違う。
友人の伊吹を人質に取り、恋敵を破滅させるために非道な手段を是とするくらいに手段を選ばない。
極めて好ましい変化だ。
ならば、俺がすべきことは。
「何だ、お前は違うのか」
それはそれとして、最近男との会話に飢えているとしか思えない綾小路が、ひよりに態々連絡するはずが無いと知りつつからかってやる。
「……」
ひよりは、綾小路が連絡一つしてくれないことを無言で唇を横一文字にして肯定した。
まあ、当然だろうな。今あいつが求めているのは、モノにした女達との交流と、男友達との会話だ。そして、あいつの本性を知る男友達は少ない。
だから、女友達のひよりとは道行く途中で会った時に会話くらいはするだろうが、能動的にはしない。
「クックック、そうかそうか、そうだろうなあ」
「っ……」
からかう声に、激情に任せて唇を噛み締めたひよりは、次の台詞で目を丸くした。
「なら仕方ないな。貸し一つで、泥をかぶってやろう……「え?」……用件があるからと人払いさせた綾小路の部屋に俺が一人で入った後、お前を呼び寄せて、適当な理由をつけて俺だけ帰ってやる。本丸に直接あたってからはお前次第だ」
「素晴らしい、それでお願いします。龍園くん、貴方は素晴らしい友人です。喜んで借りにさせてもらいます」
俺がすべきことは、愉悦を覚えながらひよりの策に乗り、様子が変なひよりに何かあったら綾小路に教える、という昨夜綾小路と結んだ合意に解釈の余地を設け、実質的に綾小路を売ることだ。
俺に今の発言をさせるために、伊吹に頼み込んで口裏を合わせ、クラスの雰囲気を悪化させたひよりの策に乗ってやる。
本当に憔悴はしていたが、伊吹はまだ壊れてはいない。ひよりに壊れる半歩手前で踏み留まらされて、壊れた演技をしているだけだ。クラスの有象無象ならともかく、友人を壊さない一線をひよりは護っている。
伊吹を憔悴させて協力しなければ止めを刺して壊すと、人質にはしたが。そうでなければ俺を動かせない打算によるものだ。その程度の打算は誰でもしているし愛嬌さえ感じられる。
だからこそ、このまま突き進んでもらいたい。理性が切れていても、良識を保ちながら、ダーティに対応出来る知恵者は欲しい。
貸しを明言させた時点で得るものは得た。口約束を破るなどという俺からの『信用』を失くすような愚行はひよりは犯さない。
恋敵がいる限りはひよりは『信用』できる。
ひよりが闇落ちして俺にはどうしようもなかったなどと、本当に真実でも綾小路には通じないだろうが、幸いにしてその綾小路はこの場には居ない。
ならば俺とひよりとで話を詰めて、ひよりと一対一になる場を用意してやり、俺はただ恋のキューピット
それがどう転んでも一番愉しめそうだ。
俺の黒い笑顔に、ひよりも憂いを取り除かれた満面の笑みを咲かせた。
まあ、ひよりがとち狂って初手心中を強行しても、奴なら死なないだろう。自分のまいた種だ、せいぜい苦労して刈ってもらおうか。
──一方その頃、綾小路の部屋で
「うぐっ……くっ……うっ……こ、こんな、ところで……こんな格好っ……」
便座の上に拘束されて座らせられた少女の苦悶の声が響く。
便座の上に膝立ちの姿勢になるように膝を閉じ合わる形で縛られた縄の数々、それらの縄のうち足首の縄が手首と繋ぐように結ばれたことで、股間を広げたままピクリと動かせない。
その上で、亀甲縛りで乳房から股間まできっちりと縄目も綺麗に縛り上げられ、便座の上に座る様は、肌の美しさも相まって彫像のようだ。
まあ、彫像というにはあまりにもいやらしすぎるが。
「うあっ! い……痛っ、いたい」
股を閉じようと試み、すらりとした健康的な太ももに毛羽立った荒縄がギリギリと縄目を刻み付けるように食い込み、鈴音の端正な顔が苦痛に歪む。
「もがけばもがくほど食い込むぞ。それとも、食い込ませたいのか?」
「っ……」
「こんな風に」
ふいと、唯一動く顔を横に向けて意思表示に変える鈴音に、オレは胸の谷間あたりの結び目を上に持ち上げる。
「ああっ!!」
ぎしり、という軋みを立てて荒く毛羽立った荒縄がさらに乳房に食い込んで、鈴音が苦痛の悲鳴を上げる。
「ひっ!」
ぎし
「いっ!」
ぎし
「痛いっ! 痛いからやめてっ!」
辞めるわけなくへその上あたりの結び目に手を伸ばす。
「ま、待って、本当に、まっ……んっ!」
腰から秘所に回った縄が、かすかな音を立てて秘所に食い込んで、処女を失って大分たつのに未だぴたりと閉じた大陰唇の割れ目の間に滑り込んでいく。
「ひっ……だめぇ──っ!!」
敏感な部分を毛羽立った荒縄にこすられる恐怖に鈴音が悲鳴を上げる。
身動きの出来ない者をなぶっている状況はたまらないものがある。聞こえる悲鳴に背筋をぞくぞくさせ逸物を滾らせる。
「あそこの毛がないとくっきり見えるな」
「あ、あなたが……あなたが剃ったんでしょう……ひぐっ!」
言葉責めの羞恥に体を反らそうとして、大陰唇の割れ目に滑り込んだ縄が食い込んで敏感な粘膜に触れ、くちゅりと音を立てた。かあぁと音を立てて全身が朱に染まり、羞恥に目を見開き体をくねらせる。
「いっ! いやっ! いや、痛っ……痛いっ……!」
痛みにもがけばもがくほど、ぎしぎしと音を立てて、体中の縄が白磁の肌に食い込んでいく。
「動かないほうがいいぞ」
そう言いながら、今度は胸と股間の間、へその上にある一際大きな結び目に手を伸ばしつかむ。
「ひっ……や、やめっ」
引きつった悲鳴を上げる鈴音と目を合わせ、目を細め
ぎしっ
「いっ……やぁぁぁっ! 痛っ! いたいわっ!! あっあぁぁっ!!」
一際強く引っ張られ乳房と秘所を同時に絞られた痛みにのたうつようにもがき、そのお陰で全身をさらなる苦痛にさらす鈴音。
「もう一度言う。動くな」
「うっ……ううっ……うっ……」
「返事は?」
「うっ……この、サディスト……はい……」
ぎしっ
「ひぃぃぃぃっ!!??」
遂に大陰唇の割れ目に食い込んだ縄の上の結び目を持ち上げられてしまい。敏感な粘膜を毛羽立った荒縄にこすられた刺激に、鈴音は全身を震わせながら股間から透明な汁を垂らす。
「……ぁ……ぁ…………」
こんなことをされているのに快楽を感じていることに信じられないと見開いた目で語りながら、ビクビクと全身を震わせる鈴音の耳元で囁く。
「返事になってないな」
「は、はい……うごか、ないわ」
荒い息を吐きながら従順であるふりを始めた鈴音に満足げに頷き離れる。
ふりに騙されたようにした方が後々楽しめるからな。
「ああっ!? ま、待って、触らないでっ!」
荒縄で根元から搾り上げられ、中に詰まった肉が搾り出されてパンパンに張り詰めた乳房に触られ、鈴音が悲鳴を上げるが。
「はっ……はううっ」
流線型の形が美しい乳房が荒縄で紡錘形に搾り出されたのを、脇のほうから添えるように、搾り出された肉を更に持ち上げながらやわやわと優しく揉まれると、ついつい甘い吐息を漏らしてしまう。
「んんっ……んっ」
亀甲縛りで搾り出される痛みが、優しく揉まれるだけで痛みが和らぐだけで収まらず、快楽を感じてしまう自分の体。その姿をオレに見られていることに、鈴音は恥ずかしそうに俯き、せめて嬌声をあげまいと唇を引き締める。
「んぁ、んっ……んんんっ」
さっきよりもちょっと強めの愛撫。
決して巨乳と呼べるほど大きくはないが、形が良くて見掛けよりもたっぷりとした肉が詰まり、なおかつ弾力に富んだふくらみをこねまわすように愛撫する。
ぐにゅぅ、と指をめり込ませても、反発するようにすぐに押し返して元の形に戻り
「あっ、んっ、んぁっ……んっ」
下から弾き上げると、弾力を持って跳ねて元の形に戻るのがたまらない。
「柔らかくて弾力の有る胸だな。本当によく弾むから見ても触っても愉しい」
「んっ、んぅっ」
言いながら両手で、縄で膨らまされてぱんぱんの二つの乳房を弄ぶ。
揉めば弾けるように跳ね返し、しっとりとした肌をさすれば、ぷるんっと震えて応えてくれる。
「縛られて硬くなるはずなのに、前より一層柔らかくなった。感度も上がっている」
「んんんっ、んっ、んっ」
「唇を引き締めても、揉む度に可愛い声が漏れているぞ」
それでも唇を引き締め続ける鈴音に、いじめたくなる。
根元から先端に向けて荒縄で圧迫されながら縄型を刻み込まれている乳房を揉みしだいていると、手のひらにつんと浮いた硬い突起が触れる。
「ひゃん! ……っ……んっ、んふっ……んっ、んんっ」
「感じているな鈴音」
「っ……んっ」
「唇を引き締めても、しっかりと乳首が立っているぞ」
時々、指と指の間に挟まり、ひっかかるように、ぷるっ、ぷるっと揺れる慎ましくピンと勃起した淡いピンク色の突起に鈴音の注意を寄せて、鈴音の胸の谷間に顔を埋める。
「ちょ、ちょっと……! な、何、何てところを嗅いでっ」
今まで胸はもちろん腋どころか秘所の匂いも何度も嗅いだのに、未だに慣れることなく抗議するほど純情な鈴音の甘い香りを胸いっぱい吸い込む。
「相変わらずいい香りだな。落ち着く匂いだ」
「そ、そう、ありが、とう」
自分の体臭を褒められ、思わずかあっと頬を火照らせて、もぞもぞと体を動かそうとしても縄によって動きが封じられている鈴音は、何時ものようにオレの動きを制することができない。
「ぁんっ!? ……だめっ、いきなりそこは……だめよっ、あぁ……っ!」
プクリと張り詰めた乳首を唇で挟み込み、表面を舌でなぞりながらコリコリと唇で圧迫する。
「ぁあっ!? す、すっちゃ……だめぇっ、んんっ」
搾り出された乳房をやわやわと揉みながら、先端で硬くとがった乳首に吸い付くと、鈴音の口から驚きと悦びの喘ぎが漏れる。
冷たいと思われることもある硬質の美貌が押し寄せる快楽にゆがみ、肢体から発情した女の香りを漂わせ始める。
いつもは冷静かつ理知的な鈴音が自分にだけ見せる牝の反応に、オレは何度抱いても心を震わせられる。
「だ、だめよっ、ち、力が抜けてっ、……体から力が抜けたらっ……縄が食い込んじゃ……あっ! うんっ、あ、くぅっ!」
便座の上で鈴音の腰が怪しく動くのに合わせて、乳輪ごと音を立てて吸引すると、ぽたりと便器の水溜りで音が鳴る。
「ち、ちがっ!」
羞恥で真っ赤になった鈴音の制止より早く、指で赤く染まった大陰唇を左右に開く。
ピチャッぽたぽたっと淫らな音を立てて、鈴音の秘所の本堂を隠していた最後の扉が開き、桃色のヒダと柔肉の小陰唇、その奥にある膣口が覗き見える。
「ぽたりぽたりと奥から奥から垂れているな」
「み、みちゃ、見ちゃダm……あうぅっ!?」
身動きした途端に最後の扉がなくなった秘所に荒縄が食い込み、敏感な秘肉を毛羽立った荒縄に刺激される衝撃で均整の取れた肢体が跳ね上がり、背骨がきしむほどのけ反った。
「あっ、ああっ……あっ……」
あまりのことに、鈴音は端正な容貌を醜く歪ませながら、下半身をガクガクと小刻みに震わせる。
「こんなに濡らすとはな。縄が気持ちいいのか」
「ち、違うわっ……違う、違うっ、違うわっ! こ、こんなの、気持ち良いわk……いっ、ひぃ……!!」
縄を掴んだオレによって、充血したクリトリスを皮ごと縄で擦りあげられ、鈴音の背がぐうっと仰け反る。
その行為でまたも全身の縄が締め付けられ、苦痛に呻きながらも
ぽたりぽたり、鳴り響く水音が、こんなことで快楽を感じているのだと他の誰よりも鈴音にそう思わせる。
「体中縛られて乳首を舐められて、ついにはまんこまで縄で撫でられて、腰震わせながら水音するくらいの大粒の愛液垂らしておきながら、違うといわれても信じられないな」
「そ、そんなっ、あぁぁっ! ……違うのっ……違うわぁっ!? ふあぁっ、あっ!? ぁあぁあっ!?」
縄で秘所を擦られ続けると、鈴音はその肢体を震わせながら、何度も甘い鳴き声をトイレに木霊させた。
「あああっ!?」
緊縛した体を左手で抱えながら、口で乳首を交互に吸い付き、右で秘所を縄で刺激すると、鈴音はつま先までピンとして刺激に溺れる。
自由になる顔を上下左右に動かしながら、高まる性感に確実に追い詰められていく。
「だめっ……だめよっ!?」
上気した顔で自分の乳首に吸い付くオレを見詰めて、首を振るがどうしようもない。
クリトリス、膣口、秘肉という最も敏感な部分を擦りあげる縄責めの快感に抵抗しようとしても、びちゃびちゃぽたりぽたりと大きな音が股からしている。痛いほどしこった乳首が乳輪ごと吸引され、ざらざらとした舌で舐めあげられている。
「一度イッておけ」
その様を見て取ったオレは、鈴音の愛液で毛羽立った縄が濡れてしまい責める効果が薄くなった秘所に顔を持って行く。
「いやいやっ!? い、今っ、そこっ、縄の毛が付いてる、かもしれないし、何より汚っ……あうぅっ、な、舐めちゃ、駄目ぇぇっ!? ……ひぃぃんっ!?」
「確かに汚れているな、白く粘つくようになった愛液が全体にこびりついているからな」
軽くぺろりと舐めると、端的に品評して縄で大陰唇が閉じないようにして、芳しい牝の香りが充満している秘所に舌を突き入れ、ヒクヒクと蠢く秘肉から白く濁るようになった愛液を舐め取るようにして愛撫する。
「ああ、いやっ!? 舌が、入って……ああ、くちゅくちゅ音がしてっ……だめよぉっ、音立てないでっ! か、かき回したらだめぇっ!」
腰の疼きがどんどんと強まり、全身が燃えるように火照り、心臓がうるさいほどに鼓動を鳴らす。
それが何を意味しているのか、ここ一ヶ月で思い知った鈴音の秘所は、秘所を掻き回されて鳴り響く水音と、ねっとりと秘肉を這い回る舌の愛撫に応える。
鈴音の秘所は絶頂の予感に、生き物のように、ねじれ、ゆがみ、蠢き、収縮して蜜を後から後から垂れ流しながら締まりだす。
「だ、だめっ! こ、これいじょ……っ! いっ、あっ、ぁぅ!」
オレがクリトリスを皮ごと押しつぶすように吸い付いた途端、鈴音の緊縛された美しい裸体がピンと突っ張った。
「あ、い、いやっ……あぁぁっ!!」
ガクリと全身をオレに委ね、鈴音は痙攣のように震えながら、ぽたりぽたりと秘所と便器の水溜りで伴奏を奏でた。
「……ぅ……ぁ……」
「縄だけでは絶頂しなくても、快楽は感じられるようになったな」
「……ここで縛られる前、三回もイかせられたからよ」
この期に及んで、ふいと横を向いて反抗できる鈴音は大したものだと思うし滾らせてくれる
「もう良いでしょう……縄をほどきなさい」
「何をいってるんだ。何のために便座の上にいると思っている。お楽しみはこれからだ」
鈴音からは見えない廊下に置いた物を持ってきて並べ出す。
「……何よ、それ?」
高性能パーツで作った自作ノートパソコンや何時もの黒い鞄等、目に引くものは他にも有ったのだが。鈴音の目は、オレが手に持った無色透明な医療用ボトルと、オレの足元に置いた新品のポリバケツから外れない。
鈴音の勘が、あれが一番危険だと叫んでいるからだ。
そんな鈴音の勘に敬意を払うために、医療用ボトルの中身をポリバケツに空けながら端的に答える。
「グリセリン浣腸液だ」
「……ぇ」
何を言われたのか理性が拒み、炭酸が抜けたような声を出す鈴音に、バケツに移したグリセリンを水で薄めながら再度答える。
「グリセリン浣腸液だ」
「……じょ、冗談よね」
見る見る鈴音の顔が青ざめていく。
「そ……そんなのっ……そんなので……何をするつもり、なの、よっ」
鈴音の怯えを含んだ震え声に直ぐには答えず、鞄から巨大注射器を一本取り出し、ポリバケツに容れたグリセリン浣腸液を吸い込ませる。
太さ直径3cmある注射器の黒いゴム製の先端は、その太さを肯定するように、かなりの勢いでグイグイと浣腸液を吸い込んでいく。
「これから、この注射器に入ったグリセリン浣腸液を鈴音の尻穴に挿入して、腸壁を刺激して蠕動を促進させて排便を促す」
「……や、やめっ……」
具体的に言葉にされ、蒼白になる鈴音の前で注射器が満杯になる。ポリバケツにまだ半分ほど残したまま。
まだ薬剤が残っているポリバケツと注射器とオレの顔に視線を回すして額から汗を垂らす鈴音に尋ねる。
「浣腸の経験は?」
「あ、あるわけ、ないでしょう……わ、私はっ、そんな物の世話になる必要なんてないわっ……」
「快便とは健康的で結構だな」
「そ、そうよ。だ、だから、やめて」
一人の少女として「うるさい」と否定せず、恥を忍んで肯定した鈴音の必死な声にそうかと頷く。
目を細くする。視線に温度があるならば氷点下だと思える鋭い眼差しに、身を捩って逃げようとしても荒縄で拘束されているため身動きさえ出来ない鈴音が竦む。
「注射器の容量は1L。最初にしてはキツいだろうが、漏らしてもなんの問題もない。その為の便座の上だ」
市販のグリセリン浣腸液が120mlだと言わずに、最早言葉もなく引き攣った顔を振るだけの鈴音に向き直り宣言する。
「さて、本日のメインイベントの準備だ」
耳をつんざく悲鳴が部屋に轟いた。
大体3話くらい書かせていただきます。