えいとくさん誤字修正いつもありがとうございます。
共通の敵の存在こそが彼女たちには必要なんだろうなあと
「実はね……」
沈黙を破ったのは櫛田さんだった。疲れきった表情でぽつぽつと話す。いつもと違って抑揚が少ない、これが素の彼女の口調なのだろう。
「今日の昼まで、私綾小路くんに抱かれてたんだ」
「そんな!?駄目よ、起きていたら、すぐに横になって」
なんて無茶をしているんだろう。今日の昼といえばまだそんなに時間が経っていない。清隆君のことだ何時間もずっと犯したのだろう、すぐに横になって身体を休めないと倒れてしまう。
「ありがとう……でも、大丈夫、ううん、ちょっと辛いから晩御飯作ってもらってもいいかな?」
「もちろんよ」
「本当にありがとう。今度堀北さんがされたときには、呼んでね。私がご飯作るから」
「お願いするわ」
儚い笑みを浮かべる櫛田さんの頼みに快く頷く。今度は私も甘えさせてもらうのだ。清隆君に壊されないためには助け合わなければ。
「今日来てもらったのは困ってるってことなんだ」
「困ってる?」
「綾小路くんが、その、酷すぎるというか、サディスト過ぎるというか、強すぎて」
わかるわ。とてもよくわかるわ、櫛田さん。
「私、綾小路くんが初めての人だから分からないことがたくさんあるけど。明らかに異常だよね彼」
「私も綾小路君が初めての人だけど、彼が異常だということに全面的に同意するわ」
「だよね。体力お化けだし、あっちは凄く巧いし、その……あそこも大きいっていうか恐竜みたいで異常だし」
「やっぱり異常な大きさなのね彼」
私の母も含めて世の中の女性はあんな恐竜を相手にしているのかと戦慄したこともあったけど、当たり前だけど違った。ガチガチして先が妙にテカテカしたあの赤黒い怪物、人体の癖に軟らかくなったり硬くなったり自由自在と別の生き物としか思えない。
おそらく何度入れられても、最初は痛みと衝撃で息が出来なくなるだろう。あそこが彼の形を覚えさせられた私が言うのだから間違いはない。
今更知ってもこれから何度も犯される私の救いにはならないけど、覚悟は決めることが出来るだけありがたい。
櫛田さんは無知な私を笑いもせずに、澄んだ眼差しで頷く。
「堀北さん……今まで綾小路くんが一回したときにどれだけ出したか覚えてるかな……ちなみに私は覚えてる限りで最大5回」
言われて数える。たしかあの日
「私も覚えている限りで最大5回かしら」
「覚えている限りなんだ」
「ええ、覚えている限りよ」
どうしてだろう目の前がぼやけて来た。
おかしいわ、何で櫛田さんの声が震えているんだろう。
「毎回、何回も失神させられて、正確な、数がわからないのっ」
私の声も震えている。
「私もだよ。でもね、聞いた話だと、普通はそんなに出したりしないし、量もっ、あんなにっ」
そこでテーブルに突っ伏して声にならなくなる。
震える櫛田さんの姿が見えない。だって私も手で顔を覆ってしまっているから
お互いに異常なほど涙もろくなっているが仕方ない、初めて悩みを共有できる理解者が居ると分かったのだから
数分後、お茶を飲めるくらいに回復した私たちは、お互いの醜態を見なかったことにして、話を続けることにした。
「率直に言うね。堀北さん、綾小路くん相手に組もうよ。クラス争いにもこれからは協力するから」
「……願ってもいない事だけど、正直疑わしいわね。散々歩み寄る努力をしたのに袖にされ続けた。私としては」
彼女に対して共感するし同志的な絆を感じるが、背中を預けられるかというとまた別の話だ。
「……やっぱり、あれもこれも、あんたにとって歩み寄りのつもりだったんだ。高度な嫌がらせじゃないかと思ってた時もあったけど」
とても失礼な事を言ってくる。確かに私に経験が不足しているのは認めるけど、そんな受けとり方をする彼女にも問題がある。
「あ、ごめん。喧嘩を売るつもりはないんだ。堀北さんとはいろいろあったから、ちょっと気が立っちゃってつい言い過ぎちゃう。ごめんなさい」
少し引っ掛かる言い草だが謝ってくれるとは思っていなかった、私も彼女とはいろいろあったからここは流すべきだろう。
「気にしなくて良いわ。私もいろいろあったから、割り切れないところがあるのはお互い様ね」
……同じ男に抱かれているなんて、複雑な関係だから少しくらいの棘は仕方ないだろう。
信じられないくらいに友好的なのだ。お互いこれでも。
「それに、誰が悪いといえば綾小路君だから、仕方ないわよ。複数の女性に同時に手を出す彼が一番悪い」
「本当だよね。もやもやするだけで受け入れてる、私達に対してもっと尊重すべきだよ」
「全くその通りね」
自分から抱かれると言い出した事について、少女ふたりとも心の中の別の棚だった。
清隆君に対する苛立ちを抑えるために、お互いに一服して気持ちを落ち着かせる。
「疑わしいのは仕方ないから、私の話を聞いた後でどうするのか、決めてもらって良いかな?」
「ええ、構わないわ」
「先に言っておくけど、今回私には裏がない。そんなことしている余裕もないから。正直な話、ここ数日を思い出して、堀北さんには危機感が足りなくてイライラしているくらい。私もそうだったから、尚更」
「危機感?」
何を言っているんだろう櫛田さんは、確かに清隆君との性行為は酷いけれど……
「まず、確認させて欲しいんだけど、このままだと私達壊されるよね。肉体的にも、精神的にも、ぶっちゃけ性癖とか性に関しているところが」
「その通りね」
その点に疑問の余地はない。あれだけの事をされれば誰でもそうなる、何の不思議もない。
あれ?私何でそんな風に?
「うん。そこまでは色ボケしてなくて良かった。何でそう思うのか深く考えてみて貰えるかな」
「?ええ、構わないわ」
別におかしなことはないはずだ。半月前は絶頂さえ知らなかった私の身体と心は、清隆君に塗り替えられてしまっているだけ。
彼にじっくりと嬲られて、今まで知らなかった官能を体に教えこまされながら長時間責め続けられる性行為を、思い出すと今でも体が震える、というか熱くなる。
夜寝ているとき、清隆君のあれを入れたあそこがじんじんと痛むのに、たまらなく疼いてしまい、どうして清隆君がここに居ないのだろう犯してくれないんだろうなんて考えたことさえある。そのときは耐えられたが次は自分で慰めるだろう。その次は押し掛けてから
あの情欲の色を灯した目に見つめられて……
「ねえ、ちょっと堀北さん」
「……え?」
言われてハッと気づく。意識を取り戻して胸の辺りに行きそうだった右手を慌てて下げる。おまけに身体が少し火照ってきている。気付いてしまった。
最近ずっと何をやっていたんだ私は、清隆君に縛られて犯されて壊されてそれを受け入れていたんだ。信じられない、何て醜態を。
「いや、あの、これは……」
顔を真っ赤にしてしどろもどろになる私を見ても、櫛田さんは馬鹿にした様子を一切見せない、いや真摯というべき眼差しで
「まずいよね」
「ええ、まずいわ」
赤くなっている櫛田さんを見て理解する。彼女も同じなのだと、清隆君の色に染められてしまっているのだ。
どうやってかはわからないけど、今日抱かれて自分の状況に気付くことができた。そして、危機感を抱いて色ボケしていた私を呼び出した。
櫛田さんが苛立つわけだ。私は――いや、私達は気付かないまま、進んではいけない坂道を転げ落ちていたのだ。いや、清隆君に転がされていた。
咳払いを一つして、同じく真摯な眼差しで櫛田さんを見つめる。
「だから手を組もうって言ったのね」
「そう、どうかな?」
「賛成するわ。私達の尊厳を守る必要がある」
がっしりと櫛田さんと握手する。
もう、私には彼女に背中を預けることに不安はない。櫛田さんとのいざこざ等、清隆君という脅威に比べると取るに足らない。
認めよう、私は危機感が足りなかった。半月足らずでこの有り様、卒業までは二年近くある。卒業後も考えたら何年いや何十年も、このまま行けば自分がどうなってしまうのか想像するのが恐い。
清隆君に抱かれた時の事を思い出して、ぼうっとしている場合ではない。
決して負けられない。
「結論から言うけど、このまま綾小路君のやりたい放題にさせるわけにはいかないと思うんだ」
「それは……まったくその通りだけど」
でも、具体的にどうやってと言う問題がある。
「念のために言っておくけど、力づくだとどうしようもないわよ。彼」
「そんなに?」
「私が5人居て同時に仕掛けても負けるイメージしか湧かないわ」
今まで見てきた中で三本の指に入ると思っていたほうが良い。それなりの自信があった私のプライドはすでに粉砕されている。今思えばそれを狙って最初のとき拘束してきたのだろう。
「……策略とかは?」
「何時も安全なところをキープしていて、決定的なときは当たり前のように勝利を鷲掴みにするような相手に?」
「……だね」
櫛田さんも、言ってみただけなのだろう。
改めて入学してからの彼を思い出しても恐くて仕方がない。
彼は自分が必要と思ったことだけをしていた。必要ではないものはすべて切り捨てて――いや、この表現は間違っている。必要でないものはそもそも眼中にない、表面上は興味があるように見えても……
「……自惚れじゃないけどたぶん私達は必要としているよね。綾小路くん」
同じことを考えていたのだろう、顔を青褪めさせながら櫛田さんは言ってきた。
「ええ、一番のウエイトを占めているのは性の欲望の対象としてだと思うけど」
「同感、うん、そこが違っていたらどうしようと思ってたから良かった」
「どういうこと?」
高校生の私たちが、相手が性欲の対象で自分たちを必要としていることに共通認識を持って安心しているとは、入学する前の私が今の私たちを見たら狂人だと判断するだろう。
そのくらいの腹が据わらないと、清隆君を相手になんて出来はしないからこうなったことに後悔していない。
「綾小路くんと交渉する必要があると思うんだ。もう少し、優しくと言うか、例えば回数制限してもらうとかして……手加減して欲しいって、私達をめちゃくちゃにしないでって……まだ、高校生なんだよ私達」
「同意するけど……具体的にどうやってするつもりなの?綾小路君を納得させるのは骨よ」
正直不可能に近いと思う。櫛田さんがどういう条件を出したのか知らないが、手加減してくれるような条件はなかっただろう。
半分パニック状態で抱かれに行った私が言えたことじゃないけど、悪党だけど義理だけは守ってくれる彼が手加減しないとはそういうことだ。
「まず、私たちの現状を認識すべきだと思う」
「現状とは?」
「私たちは程度の差こそあっても、そういったことに対して経験不足で知識も足りない。それに比べて綾小路くんはどこで覚えたのか知らないけど両方ともある」
「その通りね。知識もそうだけど、人体に精通していると言えば良いかしら。すぐに私たちの身体の……敏感なところとか弱いところを見つけてくるわ」
「うん。どうやってかは分からないし知る必要もないけどそうだよね。何より綾小路くんにまだ交渉というかお願いできるのって、性行為しかないよね」
「ええ」
彼から見て、一番私たちの価値が高いところはそこだ。だから、そこの価値を押し出して交渉するのは間違っていない。他の事だと彼に響かなくて、どうしようもないからそれ以外の選択肢がないといっても良いけど
―――つくづく堪らない人だ。
何かを決めて優しい物が不要だと思ったら全く出さなるとはいえ、底には優しい物があることがまだ救いと言える。
尤も、最大の問題として今回の私たちのケースでは、優しい物を基準にしている可能性がとても高い。
彼の性行為はサディズムに溢れて過酷ではあっても優しさを感じる。
性的に開発されて調教されていたことに、気付いてしまった身としては泣きたくなるけど
私の考えを伝えると櫛田さんもまったくの同意見だと、私と意見が一致した安堵に顔を緩ませて一度大きく頷く。
「だから、私たちの価値を少しでも高める必要があるよね」
「同感だけど……経験不足を埋めるつもりなら無理よ。私は、綾小路君以外の人に抱かれたくないわ」
「私もだよ」
嫌悪感を隠さない私の言葉に、櫛田さんも顔を歪めて即答する。
私も櫛田さんも、清隆君以外の人に体を許すなんてありえない。考えるだけで身の毛がよだつ。
「でも、何とかする必要がある。だから、これを用意したんだ……」
そう言うと櫛田さんは部屋の隅にあった大きな袋を持ってきた。中に色々と入ってるらしく形が歪んでいる。
「それは?」
「ネットは学校に規制されてるから、先輩から借りてきたんだ。知識だけでもって思って」
そう言うと、結び目を解いて袋の中身をテーブルの上にぶちまけた。
「こ、これって……」
テーブルの上にある品々を見て、私の思考は一時停止してしまった。
「お、思ったより凄いね……ハードなものをお願いって言ったけど予想以上」
それは紅潮して固まってしまっている、櫛田さんも同じなのだろう。
「ハードって」
裸の女性が表紙に写った雑誌のような大きさの本、四角いケースにも外国人らしい女性の裸が写っている。
初めて見るけど、これが、エロ本とかエロビデオと言われるものだろう。
ただ
「どうやって入手したのかしら」
「そんなことどうでもいいと思うよ。店員の人とかに多めにポイントを渡して私物を譲ってもらうとか色々あるし、そもそも堀北さんが気にしているのは別のことだよね」
「……そうね。ごめんなさい。自分を誤魔化すのは止めにする。私が本当に気になっていたのは」
分かっていると櫛田さんが頷いて一番上の一冊の本を取る。表紙を見ると間違いない。
「……この人縛られているのよね」
それも、私みたいに手首とか足首とか胸の上下だけじゃなくって全身を
「……そうだね……えっと亀甲縛りって言うらしいね。表紙に書いてある」
痛々しくも気持ち良さそうにしている女性の写真を見て、思わず清隆君に縛られたところを手でなぞってしまった。
私もいずれこんな風に縛られるんだろうか、縛られて身動きもできずに彼のもので……
ハッとして前を見ると、櫛田さんも同じことを考えていたのだろう、ハッとした表情でこちらを見ている。
「……次行こうか」
「そうね……ところで」
「何かな?」
「これって……ハードなのよね。つまり、普通じゃありえないということで間違いはないわよね」
「……先輩も、プロの人がしているから素人は真似しちゃだめだって言ってたね。あっ、次はこれにしようよ」
お互いに何も見なかったことにして次に取り掛かる。櫛田さんも内心は羞恥と清隆君への怒りで一杯だと思うけど。
なんて人なんだろう、当たり前のような顔をして私たちにアブノーマルなことをしていたのだ。まだ、処女を奪われて間もない私たちに。噂半分で、縛るという行為があると信じた私が馬鹿だったとはいえ怒りは収まらない。
怒りに震える手で櫛田さんが持ち上げたのは
「…………」
思わず絶句してしまった。
男性が女性に入れている写真だった。しかも――そこは
「あ、アナルセックスかぁ」
「…………」
「いや、こんなのプロの人じゃないと無理だよね」
「…………」
「お尻の穴だよ、お尻の穴。信じられないよ」
「…………」
「うわぁ、道具なんてものがあるんだ。痛そう」
「…………」
「こんなところで気持ち良くなるなんて……」
「…………」
「あの……堀北、さん」
何か、答えないと……櫛田さんが変に思ってしまう。
なのに何て言えば……清隆君としたときに前と一緒に弄られてイッてしまったと言えばいいのだろうか。
それとも……手を縛られて犯されているときに、ビー玉くらいのシリコン玉をお尻の穴に入れられて、お尻に力を入れて泣きながら出したと同時にイッたとでも言えと。
それとも……まだ写真みたいに犯されてないから大丈夫だと
そんな、ことを、言うなんて、どうすれば、出来る筈が……
ぽんと肩に暖かいものが置かれた。
ハッとしていつの間にか俯いていた顔を上げる。
涙で霞む視線の先に優しい笑顔を浮かべた櫛田さんが、何も言わなくて良いと首を横に振るのが見えた。
「こ、この本はもういいよね」
さっきのことを忘れることにする。アナルって何のことだか私も堀北さんも知らないことになった。
清隆くんに対する絶対許さないポイントは溜まったけど、いや本当に刺したほうがいいんじゃないだろうか、あの男。
ぽいっと捨てて次の本に手を伸ばそうとすると、堀北さんが手を伸ばしてきた。
「ありがとう。もう大丈夫、次は私が探すわ……これなんかどうかしら?」
憔悴しているはずの、堀北さんの健気さに泣けてくる。何で私はこんな娘を邪魔な奴だと思って、退学させようとしていたのだろう。
どれどれと言いながら堀北さんが差し出した本を見て固まる――
「SM?」
「…………」
「スパンキングって、手で女性を叩くなんて」
「…………」
「これは?鞭に蝋燭って痕が残るじゃない」
「…………」
「上級は、嘘でしょう、逆さ吊りにして男の人のを女性の口に」
「…………」
「駄目ね。これは参考にならないわ。時間を無駄に……」
「…………」
「あの……櫛田、さん」
何か、答えないと……堀北さんが変に思う。
なのに何て言えば……清隆くんとしたときに犯されながら、お尻を叩かれてイッてしまったと言えばいいのだろうか。
それとも……手を縛られて乳首に洗濯ばさみをつけられながら犯されて、泣きながらイッたとでも言えと。
それとも……道具なしで逆さ吊りにされて、全部ついさっきまでやられたんだとでも
無理。視界が、潤んで、前が見えない……
暖かくやわらかい感触が私の顔を埋めてくる。
ハッとしていつの間にか俯いていた顔を上げる。
優しい笑顔を浮かべる堀北さんの胸の中で溢れる涙をすべて出した後
私たちはお互い吐き出すものを吐き出した。
「動画は止めておこうか」
「そうね……」
今更だけど、刺激が強すぎるものはなるべく避けたほうが良かったかもしれない。いや、それでは駄目だ。
清隆くんが相当酷いことをしていると、分かっていたつもりだけだった。
知識を得て甘かったと悟る。清隆くんのことだ、身体に傷が残らなければ良いくらいに考えていると想定しておいたほうが良い。
「……いえ、見たほうが良いわ。少なくとも心構えだけでもしておきたいから」
「……だね」
堀北さんも同意見か、とりあえずここにある資料の内容はされるかもしれないと考えておいたほうが良い。
大人のおもちゃなんて手に入らないだろうから、それ系はないだろうけど他はするだろう清隆くんなら
それはそれとして、覚悟を決めるためには口に出すのが一番だ。
「じゃあ、もう一度言っておくね。私は……SM行為を清隆くんにされたことがある……軽いものだけどね、まだ」
顔を背けて、最後のほうが早口で小さくなったがこれくらいは許して欲しい。素面だと、恥ずかしいなんてものじゃない。
「私も、もう一度言うわ。お尻の穴を清隆君に弄られたことがある。犯されてはいない……まだ」
堀北さんも覚悟を決めたのだろう、小声の早口で顔を背けながら言い切った。同じく真っ赤だが突っ込まない優しさが私と彼女にはある。
彼の名前をお互い口に出すことが、深まった私達の絆を表している。ぶちまけた甲斐があった。
改めて聞くと酷すぎる。堀北さんも私と数日違いで、初めて犯されていたと知ったときには驚愕した。
お互い初めてを失ってから今日に至るまで、ありとあらゆることを、それもひどく短期間で経験したんだと。しかも、そのことを堀北さんは知っていて私が知らなかったとか、もう何も言えなかった。
間違いなく清隆くんは私たちに知らせずに、認識の違いを責めて苛め抜くつもりだったと堀北さんと意見の一致を見た。そうやって仲違いさせて私達を苛めるつもりだったんだ。
私達はその思惑から逃げられずに嬲られていたに違いない。危なかった、間一髪で逃げられた。
あの野郎の誤算は私たちが手を組んだことだろう。
共通の敵の存在は、些細ないがみ合いなんて吹き飛ばすんだって実感した。この問題は共通の敵があまりにも強大すぎることだけど、何とかするしかない。今は片方しかされていないけど、間違いなくこの先されるに決まってる。
……お尻の穴とか考えたくもない。せめて軽いSMなら、まだ、なんとか……
いやいや、堀北さんを変態みたいに考えるなんて間違ってる、悪いのは全部清隆くんだ、私達は悪くない。それよりも
「本当に信じられないよ。最初から縛るなんて……うん。しかも、こんな恥ずかしいこと言わされて……そうだよね。ありえない……」
「信じられないけど、キスもしないで……そう、いきなりお尻の穴に指を……いえ、殴ったのだけど、急所を外されて……」
そうやって三十分ほど愚痴って更に仲良くなった私達は、そういえば動画を観ようとしていたんだと思い出した。
「じゃあ、動画見よっか」
「ええ」
思考を切り替えて動画に臨む。
さて、何が出てくるのか。これはあんまりハードじゃないって言っていた先輩を信じよう。
――十五分後
短い一本を観終わった私達は顔を見合わせる。
「「羨ましい」」
何でだよ本当に
「AVを観て思ったんだけどさ。セックスって普通はああするんだよね。気絶しないのが当たり前だよね?」
「そうよね。入れたまま何度もしないなんてと訝しんだり、十分もしないで終わるなんてありえないと思う、こっちが異常なのよ……あれのサイズだけじゃなかったんだわ」
「そうだよ。私達って、普通はもっと優しく抱かれていいはずだよね。これみたいに。抱き合ってキスして胸とかあそこを触ってもらって、あれを舐めたあとで、一回くらいした後抱き合ってビロートークするのが普通だよ。Tレックスは諦めるけど、他はさあ……なんでAV女優を羨んでるんだろうね。私達」
「職業で差別したくはないけど、全くだわ。胸やあそこを弄られて失神させられた後、何度も出されて何度も失神させられるのは違う。認められない。最低でもシャワーくらいは浴びてからよ……なのに、初めての時から」
「そうだよ!初めてだったのに、あんな酷いことして!」
「そうよ!女心を何だと思って!」
堀北さんもか、私達が年頃の女の子だと清隆くんはわかっていない。ここが一番の問題なんだよね。
匂う体でケダモノのように泣き叫んでから貪られるように犯されるなんて、思い描いていたセックスとは違いすぎる。少女趣味とか言われても良い。女の子なんだよ私達は。優しくしろよ本当に。
清隆くんに抱かれるのは好きだし溜めたストレスがどうでもよくなるし気持ちいいから、したいんだけど。やり方がさあ。
ヒートアップした私達の愚痴はまだ止まりそうにない。だけど動画の続きが流れて自然と黙った。
お互い、真剣に動画を睨むようにして観る。
少しでも知識を得て価値を上げるために
「胸で挟むんだ」
「何かで濡らす必要があるわね」
「うん……乳液でいいのかな」
「良いと思う、これなら私たちも出来る」
互いの胸に目をやって頷く、十分な大きさが私たちにはある。
「うわ、フェラチオって玉も舐めるんだね」
「そうね。手で触ったことはあったけど、口ではしたことがなかったから今度やってみるわ」
「そうだね。私もやってみるから、後で意見交換したいな」
「喜んで」
目を合わせる必要はない、私たちは分かり合っている。
「身体にボディソープをつけて、相手の身体を洗うんだ」
「大変そうだけど、これはやってみたいわね」
「お風呂でか、私したことないなあ……」
「私も……」
あの筋肉質な身体に自分の身体を擦りつけることを想像して、二人とも顔を俯かせる。
「男の人の上に乗るとこうなるんだ」
「騎乗位って言うらしいのだけど、男の人の視線で見ると恥ずかしいわねこれ」
「うん……それよりも、綾小路くんの自分で入れる自信はある?私はないよ」
「……私も自分で入れて失敗したら裂けると思うから自信はないわ」
多少慣れても入れるときは全て身を任せたほうがいい、Tレックスに壊されると共通認識を改める。
「「……あっ」」
場面が変わって思わず、動画を止める。そこには三人の人物が映っていた。二人の女性が一人の男性を責めていた。男性の顔は恍惚とした面持ちで、とっても気持ちよさそうで嬉しそうにしている。
清隆くんにもこういう顔をしてもらいたい。
――違う。これなら何とか交渉できるかもしれない。
「「これよ!!」」
私たちの声は見事なほど綺麗にハモッた。
これなら参考になるというか、手持ちでどうこう出来そうなのはこれしかない。
今日は休んで、明日の夜二人で責めるしかない。それでも、多分負けるだろうけど意地は見せられる。
それで、もう少し普通に優しく抱いてもらえるようにねだろう。
「確かに三人でなんて恥ずかしいけど、そうすれば、少なくても――」
「学校や外で何てことは避けられるわね」
間違いなく清隆くんにされる近い未来を回避しなければ、女の子としてというより人としての尊厳が無くなる。
確かに私は何処でもとか言ったけど言葉の綾だ、本当に外で犯されるなんて考えていなかった。信じられないほど恥ずかしい文書も読まされたけど、甘く見ていた。
甘かった、清隆くんはやる。もう時間がなくなっている気がしてならない。
彼と一緒に過ごすのは好きだ。壁を作る必要のない相手としていつの間にか受け入れていた。だから、せめて室内でとどめて欲しいと思う。
資料にあった全裸首輪付散歩なんてされてたまるか。そんな時間があるなら、普通にデートさせろ。
基準が壊れていると自分でもわかる。でも仕方がない、私たちは必死だ。
清隆くん以外の人に見られたくないから、外で裸は止めて欲しいという願いだけはかなえて欲しい。
資料を全て読み終えて知識を仕入れて満足して、明日どうするのかの話し合いが終わると、ふと思った。
「そういえば、綾小路くん今何してるのかな?」
「え?多分自分の部屋にいると思うけど、連絡してみましょうか?」
「……さすがに今日はちょっと……」
まだ犯されてから三時間も経っていない今は無理だ。声を聞くだけで、散々虐めぬかれたことを思い出してしまう。
完全にトラウマになっている私を見て、堀北さんは理解した人間特有の顔をした。そう、彼女もつらい思いをしているのだ。
「……そうね、もう横になったほうがいいわ。夕ご飯は作って冷蔵庫に入れておくから」
「ありがとう……ちょっと思ったんだけどさ」
「何かしら?」
「綾小路くん、さっき堀北さんが言ってたもう一人のところに行ってたりしないよね」
堀北さんにぶちまけられたときに、最低でもセフレがもう一人増えると聞いて、複雑で苛立ってムカつくけどその対象は清隆くんだ。増える子は私と堀北さんの二人で誰なのか調査するけど、怒りさえわかない。
きっと酷いことをされているだろうし、あんなTレックスの相手をさせられるとか、僅かに同情さえしてしまったし、私たちの負担が少なくなるという実利面もあるからだろう。
もし優しくされていたら?清隆くんの罠に決まっている。一人に違う待遇を与えて、潜在的な裏切り者にするなど清隆くんは呼吸のようにすると二人で話し合った。
妬ましいけど、女の子は許せる、たぶん、きっと
あの野郎は、本当に何とかしないと犠牲者が加速度的に増えていく気がするけど
「……さすがにそれはないと思う。あなた相手に何時間もして、すぐに次なんて人間じゃないわよ」
「だよね。ごめんね変な事言って」
「疲れているからよ。さあ、すぐに休んで」
「ありがとう」
お礼を言ってベッドに入るとすぐに眠気が襲ってくる。そのまま私は意識を手放した。明日の決戦を思い浮かべながら
手遅れな二人による同盟でした。