※この作品はR-18です。

ようこそ淫蕩な教室へ   作:サリエリキキ

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カレンはルルーシュの嫁さん、評価付けありがとうございました。

以前頂いたアドバイスのとおり五千文字前後にしてみました。
しかし、出来ないと思ってたのに、人間二時間強で書けるものですね。

一之瀬さんは最初からクライマックスの心境でパニック状態です。


一之瀬帆波の混乱

 店員の案内してくれた場所は完璧に近い。店の隅の死角となっている場所。外からはもちろん店内からも近づかなければ見ることはできない。

 サイズごとでコーナーの区切りをしているこの店ではこの周りは、Fカップ以上Lサイズ以上の大きいサイズ専門で隔離されている。

 二つの試着室が高い棚に向けて斜めに立って、丁度試着室と棚が三角形を形成している。

 棚のすぐ前のここでなら試着する姿を男が見ていても、誰かが近づかない限りばれない。というより試着した女性を相手の男だけが、見れるようにしている専門の場所だな。

 ふうと吐息を漏らす。女性下着売り場に男一人のシチュエーションの精神的圧迫感が安らぐ。

 Fカップ以上などという恵体など早々いないし、そもそも客さえ居ない。店の配慮に感謝しよう。

 

「綾小路くん……」

 

 シトラスの香りとともに例外の恵体、しかも知り合いがどこか覚束無い足取りで出てこなければ店への賛美だけしていれたのに。

 

「ああ。奇遇だな一之瀬」

「うん、そうだね……本当に居たんだね。本当に綾小路くんがここに、いるんだね。」

 

 どこかぼんやりした眼差しできょろきょろと自分が今いる場所が正しいのかと周りを見渡す一之瀬を見ながら、思考を高速で回す。

 男が一人で女性用下着専門店の死角に居る。どう考えてもアウトだどうしようもない。こうなったら、二股男と呼ばれようと桔梗と鈴音に声をかけるしかないか。いやまて。

 

「本当に居た?」

「ケヤキモールの入り口で会った朝比奈先輩がね。教えてくれたんだ。綾小路くんがここで困ってるみたいだって」

「困っているみたい?何のことでだ?」

 

 静かに聞き返すが、内面では硬い意識を固める。

 確かに困っているが、それは「鈴音と桔梗の試着した下着姿をどうやって評価するか」の一点でしかない。

 ここで、一之瀬の助言など聞けるはずもない。それが分からない朝比奈ではない。生徒会の一員で人望の厚い一之瀬に、女性の下着専門店で二股をかけている姿を見せるなど狙いは明らかだ。

 一之瀬のオレに対する評価を下げる。これしかない。

 今まで、あの手この手で積み立ててきた信頼は一瞬で消え去るだろう。

 致命的ではないが、かなりの痛手だ。

 

 裏切られたか。

 南雲と付き合うために手を組んだのだから、オレはもう用なしだ。南雲戦で見せたオレの一面に脅威も感じただろう。

 先手を取られるとはな。何より、俺が困っているとそれだけでは嘘はつかないように言葉を選んでのけた。

 ここまで、綺麗に裏切られるとは。朝比奈の評価を内心で急上昇させる。

 

「具体的には分からないけど、朝比奈先輩にはそう見えたんだって。

綾小路くんが、ランジェリーショップに居るからじゃないかな。女の子じゃないのにこんなところに居るんだから。何かトラブルでもあったのかと思うよ」

「確かに男がこんな所に居ると邪推してしまうな。心配かけてしまってすまない。特にトラブルというわけではなくて、少し用があってここに居るんだ」

 

 用か、と一之瀬の唇が動くと、得たりとばかりに顔の前で手を叩く。

本人としては嬉しそうにしているのだろうが、張り詰めた気配が僅かに見える。注意深く見ないと分からない程度の気配が。

 

「そっか、トラブルじゃなくてよかったよー。朝比奈先輩はそういうのほっとけないからね。気にしてたみたいだよ。デート中だからあまり手助けできなかったって言ってたから私が来たんだ」

「態々来てもらってすまないな。こんなことになるなら、朝比奈先輩と挨拶したときに一言でも言っておくべきだった。連れの南雲先輩とは少し話をしたんだが」

 

 南雲の名前を出す。不戦を結んだはずの南雲がどうしたかによっては手を打つ必要がある。

 暗に南雲から聞いてないのかと言われて、一之瀬はどうするか。

 

「あ、そうだったんだ」

 

 ぽんと手を合わせて得心した表情になる。自然な表情だが、違和感ほどではない引っかかるものがある。

 

「南雲先輩から話を聞かなかったのか?」

「南雲先輩は朝比奈先輩と居たけどあまり話してないよ。彼女と一緒に居る彼氏と話し込むなんて変だからね。挨拶ぐらいはしたけど」

 

 おかしなことは何一つ言っていない。一之瀬の様子からは嘘をついている気配もない。

 だが、引っ掛かりが違和感へと変化する。

 

「そりゃ、そうだよな。朝比奈先輩とは何か話をしたのか」

「うーん、いろいろお話したんだけどね。一つだけおかしなこと言ってたから、それが気になってるの。帆波出遅れすぎ。取り敢えず突っ込みなさいって言ってたんだけど、心当たりある?」

「いや、さっぱりだ」

 

 何処か違和感があったが、ようやく得心した。普段通りの無邪気な笑みを浮かべていても、一之瀬の表情がどこか固い。

 最近の視線を何処か合わせない一之瀬とはまるで違う。内面の抑えきれない感情を必死に抑えた固さが徐々に浮かんできている。

 

「あ、うん……そっか……そうなんだ。やっぱり、綾小路君はそう言うんだね」

 

 さっきの「帆波出遅れすぎ。取り敢えず突っ込みなさい」がなんらかのトリガーだったのだろう。

 オレの返答に、笑みを消して傍目で分かるほど張り詰め硬くなっていき何か覚悟を決めたような表情に変わる。

あり得ない、こんな表情を浮かべるようなことは言っていない。世間話の範疇のはずだ。

 

「……そっかあ」

 

 朝比奈が何を話したのか知らないが、今の一之瀬は水が溢れる直前のコップのようなものだ。下手に刺激すると不味い。

 この有り様ではオレの言葉もそこまで響くことはない。煙に巻くことはできないか。やってくれる。

 

固まったままではいられないと、一之瀬はぶんぶんと頭を振って意識を取り戻した。

 

「ま、まあ……何時までもこんな所に居ると不味いよね」

 

 どうやら朝比奈は、鈴音と桔梗のことは言わなかったようだ。

 教えられているのなら、視線を泳がせ二つの試着室から同時に人気があることを確認する必要がない。

 確認した結果、一之瀬はオレが一人だと認識したようだ。

 当たり前か、下着を手にとって似合うかどうか聞いているならともかく、二人とも着替え中だ。

 マン・ツー・マンのデートならともかく二人が試着のために着替え中、その試着姿を堪能するなど一之瀬の性格では思考の上にも上らない畜生の所業だろう。

 覗きでもしているかと疑うのが関の山だろうな。そして、そんな疑いを抱かれない程度の好感は得ているはずだ。

 

「迷ったん、だよね」

 

予想通り、戸惑ってはいるものの覗きではなく迷ったと判断したか。

依然として表面張力の限界ギリギリなのは変わらないが。

 

「いや、迷っていない。心配して来てくれたのはありがたいが、此処でやるべきことがある。女性用下着専門店にオレが居ることに違和感を感じるだろうが、罪になるようなことはしていないししない。

気になるならば何時か話す。だから、オレを信じて見なかったことにしてくれないか」

「……っ、此処でやるべきことは、そんなに大事なことなの?」

 

 何故か話の持って行き方を失敗したようだ。一之瀬から重い張り詰めた気配が僅かにこぼれ落ちた。このまま溢れてしまうかもしれない。

 だが、ここは肯定すべきだな。

 

「ああ、そう「でもっ!」一之瀬?」

 

オレの肯定の一言を打ち消すように、一之瀬が大きな声を出す。

 

「でも……でも……」

 

 溢れ出すこらえきれない感情を押し殺して必死に言葉を探す姿は、あまりにも似つかわしくない。

 何なんだ?かつてないこの一之瀬の姿は?あまりにもらしくなさすぎる。朝比奈が突いただけではここまでにはならない。

 何かを見落としたか。

 

「でも……その、……ランジェリーショップで一人だよ。きっと、好奇の目で見られるだろうから、一緒に居よ…ううん、一度、店から出て私と入り直そうよ。そうすれば、変な目で見られることはなくなるから」

 

 縋るような眼差しと声。あの一之瀬にこんな姿をさせていると知られた場合、オレの平穏な学園生活は消え去る。何とかしなければ。

 一之瀬がただ自分と一緒にいて欲しいと絶叫している気がするが、それは自身を過剰評価しすぎだろう。

 

 

 

 一之瀬の提案に乗る。一之瀬を落ち着かせるだけならばこれが一番だろう。

 一之瀬の提案通りにすれば、確かに奇異の視線にさられることはない。これだけならアリに思える。

 閉店時間が迫っていることと、そもそも鈴音と桔梗を背負って入店しておいて他の女と出て入るなんてのは論外な上に、目撃された場合一之瀬とそういう関係だと思われる可能性があるゆえに選択肢にも浮かばないが。

 

 迷うが、ここは、後々を考えても素直に話しておく一手を打つべきだな。

 

「いや、実はな――」

「準備できたわ」

 

 鈴音の準備が出来たか。良いタイミングだ。

 鈴音に顔だけ出して貰い、一之瀬に見せれば一之瀬なら空気を読んで引いてくれる。

 これなら、二股だとバレることもない。鈴音と恋人と認識されるだろうがそれは仕方ないな。一之瀬なら噂にすることもないだろう。

 瞬時に流れを組み上げ、まずは鈴音に聞こえるように一之瀬に声をかけようとしたオレの耳に、発言者の性格からは想像出来ない負の感情が込められた呟きが聞こえた。

 

「そっか、そうだよね……やっぱり堀北さんか……やっぱりっ!」

 

 何故か全てを理解した表情になると、近くのオレにしか聞こえない声で吐き捨て始めた。

 どうしてこうなったのか分からないが、二つ理解した。

 堀北と付き合っているルートは選べないこと。

 一之瀬が決壊して激情に飲まれたこと。

 

「付き合っていないって、ただの隣人だって言ってたのにっ!」

「……」

 

 情けない。言葉が出てこない。

 脳裏では言い包める手段がいくらでも浮かんでくるがそれは出来ない。

 一之瀬の雰囲気が違う。激情に飲まれていても一之瀬は本気だ。

 オレは、策謀や陰謀を容赦なく用いるし、苛烈な手段もとるが、本気の人間には本気で応えたい。

 三人の少女とそういう関係になっておいて何を言っているのだと自分でも思うが、正直な思いだ。

『確かにそう言ったこともあったが、あれから肉体関係を結んだんだ』などど開き直れるはずがない。男としての一線を越えてしまっている。

 

「私は、私はね……し、信じてたのに!」

 

 ここだ。と本能が絶叫する。一之瀬の言葉が途切れたここで何らかの行動をするしかない。

 

 どうするか。脳内で先程の南雲のアドバイスを思い出しながら、アドバイザー南雲に問いかける。

 

『こう言うときは何も言わずに「すまなかった」と言って抱き締めろ。

 帆波の中では、お前は堀北と付き合っていたのに教えなかったと断定(強調)している。

 ありとあらゆる言葉はほとんど無意味どころか逆効果だ。ただ行動しか許されない。

 あの激情を何も言わずに可愛いと飲み込んで、初めて男は男になる』

 

……名前こそABCで言っていたが、何でこんなに具体的なアドバイスがあいつは出来たんだ。

 

『ワンポイントアドバイスとしては、抱き締めるときはただ抱き締めるだけに留めろ。

髪を撫でるのもNG、尻や腰のように性を連想する場所に手を当てるのは論外だ。

お前の誠意(笑)が試されている時だ』

 

 間違いなく有効な一手だ。一之瀬に通用する可能性は非常に高い。

 ……それが出来れば苦労はしない。この手は採れない。

 

「一之瀬……」

 

 こうなったら、ほぼ無意味でも、正直に二股かけて下着専門店に来ていまから試着姿を見るところだと、正直に聞かせられる部分を言うしかない。

 

 覚悟を決めたオレの前で、パァァーンと木製の巨大な棚が叩かれた。

 あり得ない光景に目を剥く。

 一之瀬が、店の棚を叩いた?あの一之瀬が?

 

「お、おい……」

 

 あの一之瀬から想像だにできない姿にぎょっとなって一之瀬の顔を見る。一之瀬のほほを、涙が伝っている。思わず凍りついたオレに止めの一言がやってくる。

 

「……嘘つきっ」

 

 キッと睨みつけられた。

 唇を噛み締めながら踵を返し棚の脇に一之瀬が隠れる。

 

 おい、待て、待ってくれ、隠れるんじゃない。何がなんだか分からないうちに自己完結しないでくれ。

 いや、それよりも、普通帰るだろう。何で隠れるんだ。

 予想の斜め上にかっとんだ発言と姿に一瞬自失した内に、一之瀬はしっかりと隠れてしまった。

 あれでは一之瀬からはこちらの姿が見ることができても、こちらからは見えない。

 不味い。

 引きずり出そうにも、店員の視線がたまにこちらを向いている状況では、女性用下着を掻き分けて同年代の少女を引きずり出す何て事はできるはずがない。

 説得する時間もない。

 こういうときは、南雲が教えてくれた通りに、すべてを飲み込んでただ一言「すまないな」と言って抱きしめるべきだがそれはできない。

 

「物音がしたけど、何かあったの?」

 

 カーテンの先で声をかけてくる鈴音の存在が説得を許してはくれない。

 情と精を交わした鈴音(ともう一つのカーテンの裏でごそごそ着替えている桔梗)の前で「ただの友人」を抱きしめるなどこれも男としての一線を越えている。

 

 どちらを優先するかだ。

 鈴音と一之瀬か。

 自分の女か友人か。

 

 迷う必要はないな。

 

「いや、何でもない。待ちかねてしまってな。うろついた時に棚を蹴飛ばしてしまった」

「ドジね。まるで、子どもみたい」

「それだけ、楽しみにしてると受け取って欲しいな」

「……バカね」

 

 振り返り、躊躇わず笑みを含んだ声を出す鈴音を優先する。

 

「っ……」

 

 背後の気配が剣呑なものになったが、もう一之瀬のことを鈴音に言うことは出来ない。

 一之瀬の尊厳を守るためにも一之瀬のことは言えない。

 

 同級生が下着の棚の裏に、下着を迷彩にして隠れて試着デートをしているこちらを見ているなどと、どう言えば良いというのか。

 

 後で、鈴音と桔梗には殴られても良い。ここは黙っておくしかない。

 

「そう、なら、出るわね」

 

 とろりとした声を出して顔だけカーテンから覗かせる鈴音は、何時もにも増して魅力的だ。

 首筋まで真っ赤に染めてわずかに伏目にしている姿が仄かな色気さえ漂わせてくる。

 

「首だけか?」

 

 そのままもじもじと胸の前で合わせたカーテンを弄る鈴音が、可愛らしすぎてついからかう。

 

 内心は同時に嵐が吹いているが。

 

 一之瀬に見られながら、鈴音と桔梗の下着姿を鑑賞して感想を言うとか、どんな羞恥プレイだ。




なお、南雲くんに教えてもらった方法なら一之瀬さんは何とかなりました。
一之瀬さんは。


次回は、一週間くらいかかりそうです。
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