「これから、こうしていくが文句はあるか」
呼吸が収まるまで二分くらい待ってから声をかける。
抱き締めただけで愛撫は勿論、頭を撫でることなくただ体温で包み込み続けた。
「い、いいえ。な、ないけど、あ、あなたにそういう風に見られていたなんて思わなくて、す、少し、そう少し驚いてしまって」
結果、鈴音は頬を赤らめ、視線を斜め下に下ろして左右にさせ、緩みそうな唇をきゅっと結んでいる。
このまま、ベッドに放り投げて愛でたい。
頭の中で走る思考から意識を逸らし、口を動かす。
「なぜ、事実を言っただけなのに驚くんだ」
「だ、だって、い、いきなり……っ……そ、そう……そう、そうよ!あ、あなたがこんなことをするなんてまだ信じられないわ!あ!?まさか誰にでもこんなことを?」
早口で目を泳がせて、私は焦っていると全身で絶叫する鈴音は愛らしいな。今までは感じなかった想いが自然と浮かび上がってくる。
「オレが好みと見たら口説きにかかったり、ボディタッチしていくのか?その姿が想像できるのか?」
前に似たようなことを言ったような気がするが、あの時とは違い、鈴音は顔を強張るのではなく可愛らしく頬を染めていく。
他者によるものではなく、自分によって引き出される可愛さとはここまで高揚させてくれるものなのか。
「……想像つかないわね。なら良いのだけど、どうして、こんな……」
いい加減目を合わせないか鈴音。真っ赤になったまま目逸らして、何時もの強引さと理不尽さを織り混ぜた強気な態度に恥じらいを混ぜるのは反則に近い。
オレの欲望が抑えきれない。
素直にならない鈴音を素直にさせるためにも、ちょっとだけ気分転換しよう。
「切り替えたと言っただろう。鈴音、ちょっといいか」
「な、なに?」
腕の中で緊張に全身を強張らせながらも、鈴音は無警戒に聞いてくる。問いかけるように、少し上目遣いに見上げてくる幼さが含まれた眼差し。緊張しながらも、オレに対して信頼を寄せている想いが伝わってくる。
そんな鈴音を、オレは有無を言わさず強く抱きしめる。
幼さが残る中にもしっかりとした肉付きをもつかなり大きな成長途中の乳房が、ムニュと音を立てて形を変える。
「ひゃああああっ!?」
女としての色気皆無な、悲鳴を上げて暴れようとする鈴音を押さえ込んで、驚くほどくびれている腰をなでるようにきつく抱擁して抵抗の余地を奪う。これだけの細さだからこそ、平均よりやや大きい乳房のしっかりとした谷間が強調されたまらない。
首筋に顔を埋めて、購入したばかりのオードパルファムのすずらんの香りに混じった鈴音の甘い香りを吸い込み、腹のそこで味わいながら、軽いいたずらを仕掛ける。
「ひゃんっ!?あ……あぅっ、やっ……ちょっ……」
「いい匂いだな。失礼だが何かしたか?」
「え?プレゼントしてくれた香水つけたけど……それが?」
「いや、ただでさえいい匂いが、信じられないくらいいい匂いになっていてな。素材が良いとここまで引き立つか、流石だな鈴音」
「ふぁっ!?」
「みずみずしく可憐で清楚なすずらんの香りは、お前によく似合っているな。プレゼントした甲斐があった」
「あありが──っ」
流されかけて唇を噛み締めて流されまいとする。そんなことをされると責めるしかない。
「花言葉は、『純粋』『純潔』か、お前に相応しいな」
「な──っ……い、いきなりっ……す、すずらんの花言葉はそれだけじゃ──っ、ひゃぅっ──っ」
鈴音の口から、最近よく聞く艶めいた声が漏れる。その声を周囲に響かせまいと唇をきつく結んで抵抗してくる。
当然、オレは不埒な行為を止めはしない。触感だけでなく、匂いを嗅ぎ嗅覚を満たして、紡がれるくぐもった声を聴覚で堪能して、好き放題にもてあそんでから腕から鈴音を解放する。
が、腰砕けになった鈴音が耐えられるはずもなく。崩れそうになり手近──オレの腕にすがりつくように戻ってくる。
「おかえり」
「あ……あう……あぅぅ」
「そんなに縋り付かなくても、オレはどこにも行かないから心配するな」
「あ、あなた、あなたねえ……い、いきなりっ…いきなりぃっ」
あまりのことに、ぷるぷると震えることしかできない鈴音に囁く。
「いきなり?何がいきなりなんだ?。声が小さくて聞こえないな」
「い、いきなりっ……じょ情欲にまみれてっ、ここっ、外で」
「やっぱり聞こえないな」
静止の言葉を、聞こえないとアピールしながら顔を近づけると逃げようとする。逃がすわけないだろう。
「……あっ……ダメっ」
「何が駄目なんだ。ちゃんと声に出して聞こえるように言ってくれないか?」
「さっき、ついさっき、体力の限界の私にそんなことはしないって言ったわよねっ。あれは!?」
「すまんな。前言撤回する。あれは無しだ」
男らしく言い訳などせず、断固とした口調で方針の転換をしたと伝える。
「ふ、ふざけっ……だ、駄目っ、耳噛んじゃ……やめっ、しゃぶら……あんっ……んっ、ぅぅ」
怒りと羞恥と快楽に、顔どころか全身を赤く染めてぴくぴくと震えながら身をよじろうとして、試着の下着を皺にしてしまうと気にしてよじれないあたり、鈴音は鈴音だな。この下着、気に入らないとか言っても有無を言わさず買ってプレゼントするつもりなのに。
「しっかり声に出して言えないなら仕方ないな。すぐ近くに店員が居るのに、このまま首筋か頬っぺたに吸い付いて、衆目に晒すくらいのキスマークを作ろうか」
「あ、あなた、そ、それは駄目よ。高校生がして良いことじゃ…ふあっ」
散々やることやったのにこの反応。こういう可愛らしいところを周囲に見せれば、鈴音を人気者として取り巻く者も増えていくだろう。
でも、そんな誰も知らない鈴音の顔を独占していたい気持ちしかオレにはない。誰にも明かす必要はない明かしたくない。
責めなければ。決意を新たに攻め手を変える。
「なら、こっちにするか」
「ひぁっ……ダメっ耳っ、耳、息吹き掛けっ」
長い艶やかな黒髪から見え隠れする透き通るようなうなじが、息を吹けば筋を盛り上がりながらぷるぷると震える。
「ひあっ!? ど、どこに舌を入れて……っ!」
鈴音の耳を舐めていた舌を、するりと耳の中へと侵入させる。空洞でなければいけない空間を異物が占拠し、唾液にぬめった舌は細かく少女の耳奥を犯す。耳に感じる違和感は、そのまま背筋を走って体全体に拡散していく。それが気持ち悪いのかくすぐったいのか、鈴音には判断が出来ないほどの刺激。
「っ……ひんっ……やめ……っ」
艶っぽい顔で目を閉じるなよ、お前の幼さが含まれた硬質の美貌でそれをやられるとたまらないだろう。
「お前、本当に可愛いな。うなじは血管見えるくらい白くて透き通って、髪は艶やかで絹のような肌触りで耳の中まで旨い」
「あ、あぁ、うぅ」
顔を胸に埋めて「何よ。いきなり、酷く、いえ、えぐくなって」とかぼそぼそ言っている。可愛すぎるだろコイツ。
熱い吐息がかかる度に煩悩が増していく。
ふぅぅと、強く息を吹き掛ける。
「あっ……やあっ……お……願い」
「で、どっちにする?ああ、吸い付きながら息を吹きかけることも出来るが」
「……こ、この鬼畜、鬼畜にもほどがあるでしょう……ひゃあっ……く、首筋っ吸い付いっ」
「声が小さいな」
「あ、あなた、ここが何処だと……あぅ、うう、んんんん……!」
店で衆目があると分かっているから、責めるんだ。
「面倒だな……両方いくか」
「……だ、駄目、店じゃ駄目よ。店員に見られたらどうするつもりなの?」
「今の発言、店員が見てなければ良いと受けとるが構わないか」
「……は、離しなさい」
ぬけぬけと尋ねると、鈴音は真っ赤な顔で解放を命じてくるが、声に力はなく足腰にも力が入らずにガクガク震えている。
無論、そんな状態の鈴音に従う必要はない。頭を回し、静かに店内を見回す。
「店員は、見ていないようだな」
滑らかな背中を撫でながら言い放つオレに、危機感を抱いた鈴音が慌てて懇願してくる。
「……まっ、待って……し、下着が汚れるかも」
「汚すのか?何で?どうして?」
「────っ」
自身の体液でなどといえるはずがなく、声のない悲鳴を上げる鈴音をさらに責める。
「……声が小さすぎるな。両方だ」
「──ゃっ……ひぁっ」
「匂いだけじゃないな、肌触りも極上だ。このままずっと抱きしめていたくなるな」
「だ、ダメっ、ひ、人が見てっ……いひゃぅっ」
「誰も居ない」
間髪入れずに返した言葉に、パクパクと口を開いては閉じるだけになった鈴音を責め立てる。
この半月ほどに与えた凄まじい淫行で快楽を覚えたばかりの体は、生来の抜けるような滑らかな柔肌をしっとりとオレに馴染ませて離さない。
女として入り口に立ったばかりの性感は、そこを優しく刺激されることでしか快楽を感じられなかった秘所などの性感体よりも、背中などをソフトタッチされた方が受け入れやすい。刺激に身悶えする度に快楽のボルテージを跳ね上げていく。
「やっ、やぁっ、ここじゃ、やめっ……ひぁぁっ」
男が抱く劣情に一々付き合っていては女の身が持たないと抵抗するが、昨晩に溺れた情欲の残り火が愛撫によって燃え盛ってしまい身悶えする。
開発され花開いていく少女だけに与えられた絶妙な反応に酔いながら責める。
「や、ぁっ…~~っ」
嬌声を上げないように、唇を噛み締めてオレの胸により強く顔を押し当ててくる。
試着室の鏡を見ると、息を吹いたり吸い付く度にぐなぐなになった体を、鈴音が時々ハッと意識を戻して力をいれて、すぐに力が抜け淫らにくねらせる。
熱を持ち、じっとりと汗ばんでいく体を丁重に愛撫する。女の熱と男の熱が混じり合い、言い知れないもどかしさに震える裸体。
陥落直前だな責めなければ。
「やっ、駄目っ、そこは、だ、駄目っ、まだ、買って……あ、ぁぅ」
下着越しで臀部を掴む。鍛えられた鈴音の臀部は女の油で盛り上がっていながらも引き締まっていて、やわらかさと同時にしなやかさを感じられて、顔を埋めてしまいたくなる。
「やっ、やあっ、あっ、っ~~」
昨晩、顔をうずめたときの感触を思い出しながらもみしだくと、嬌声をかみ締め声を出さないようにあがく。
無駄なことを。
──盛りに盛った獣同然の思考に苦笑混じりの思いを抱く。
南雲が言っていたようなデリカシーのある行動ではないだろう。
煩悩を抱いてみれば、性欲に従順になる自分、他人に見られるリスクを考えない愚かさ。
だが、停滞していた自分は間違いなく前に進んでいる。愚かな生を謳歌している。
腕の中の柔らかな感触に、オレは生の喜びを存分に感じ取っている。
「う……ひうっ!……胸っ触ったら……んんっ」
決して胸の先端には触れない愛撫。 鈴音の乳首がまるで刺激を望むように、オレの指が近くに来る度下着越しで分かるほど硬くなっていく。
乳房の周囲をなぞり、しっかりとした丘を登らせてその中央へと指を走らせる。その頂点へと触れる寸前で。
「あっ!?ふぁぁっ……ひんっ!?」
指は離れていく。乳首への刺激を予想して期待するように強張った体が自然と脱力していき、その隙を突いてオレの舌は鈴音の耳奥へ侵入して彼女を責める。
「だ、駄目っ……んっ……も、もうっ」
快楽と恥辱と怒り、何より声を出すのを抑えるのに必死で呼吸をせずにいたために、紅くなった顔で思い切りオレの胸に埋め服を噛みしめてくる。
絶頂の声が少しでも漏れないようにすると、諦めたように来る絶頂を少しでも味わおうと、絶頂の前兆に激しく悶えながら乳首への刺激を請うように胸をそらす鈴音――生を与えてくれた象徴の一人である少女を、店の中で絶頂させて凌辱するために止めを。
「誰も……居ない……私…は…?」
いざというとき、背後から夢遊状態から僅かに回帰した声――深淵の底から相手を引きずり込まんとするかのごとき底冷えのする声とともに感じる苛烈な気配。絡みつくような視線に意識を戻す。
そういえば居たな一之瀬。
もし、口に出せば挽回不可能なことになった台詞を飲み込んだ。忘れては居なかった。ただ、一之瀬が呆然として背後からの威圧感が消えた後は、その間ずっと鈴音を攻めることに重きを置いて優先順位が下だっただけだ。
まあ、問題はない。一之瀬がオレにどういう思いを抱いているにしても、今までやったことは悪い手ではなかった。
「……そっか、私なんて、忘れて、たんだぁ……そっかぁ」
――そう問題はない。今までの人生で聞いたことがない、底冷えするほどの情念を込められた声と視線による背筋の震えなど大したことはない。