※この作品はR-18です。

ようこそ淫蕩な教室へ   作:サリエリキキ

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高山流水さん、いつも誤字訂正ありがとうございます。


 全裸にした時に彼女の心の内を明かそうと思っていたとはいえ、長くなりすぎて分けることになりました。
 エロが進まない。

 本人は悪と思っていても客観的には善良。


一之瀬帆波⑥

「にゃ、にゃあ……」

 

 ホックを外して、ブラジャーを取り外す。極めて日常的で、目をつぶっても出来ることが、今の帆波には涙混じりの呻き声をあげるほど恥ずかしくて出来ない。

 何も言わずただ見つめているオレと、ちらちらと何度も視線を合わせては外しながら、カチ、カチとホックを外そうとしても、なかなか外せない。

 ただ、焦りだけが心を逸らせ、指一つまともに動かせない瞬間に声をかける。

 

「どうしたんだ帆波」

 

 絶妙のタイミング。しかも、無表情ながらも瞳には優しさを湛えている。散々嬲られた後で静かに優しげに言われると、恐怖を掻き立てられ精神的に従属していくと理解しきった上での行為だ。

 帆波も例外ではなくビクッと大きく一度震え、ふるふると震えながら涙目でにゃーにゃー鳴いている。

 

「脱げないのか、なら、オレが脱げやすくしようか」

「いま脱ぐっ! 脱ぐよっ!」

 

 後ろに置いてある手鏡をしまった鞄を見ながら脅すと、あせったように帆波が答える。ぎゅっと一度思い切り目を閉じ呼吸とともに目を開ける愛らしい動作に、背筋がぞくぞくと震えてしまう。

 ……我ながら処女にすることではないと思うが、愉しくて止められない。こういう風に人間性を獲得してしまうとは思わなかった。

 

「あ……」

 

 カチリとブラジャーのホックをようやく外す。散々揉まれ肩紐が緩んでいたブラジャーは、思わず押えようとした帆波の腕をすり抜けるようにはらりと地面に落ちる。

 ブラジャーから解放された乳房が、ブルンと大きく弾む。

 しかし、帆波はブラジャーを取ったと同時に、手で乳房を隠してしまう。刹那。

 

「隠すつもりなのか?」

 

 静かに優しげに問いの形を取って命令する。

 

「ぁ……ぁぅぅ」

 

 涙目でこちらを見つめながら、ふるふると震える腕を鏡に乗せる。帆波の乳房が露になった。

 

「ほう」

 

 思わず感嘆の声が出る。

 体に不釣り合いな大きな乳房が、上体を倒しているため釣り鐘の形になっているが垂れることなくピンと張っていた。

 活動的に動いているはずなのに、その肌はまるで白磁のように白く、瑞々しく張りがある。

 上端はなだらかな隆起で盛り上がり下端は弧を描いて持ち上がっている。女性の乳房の造形で一番美しいとされる、ツンと上を向いた乳房。みっしりとした重たさと重たく、少しのたるみもない、柔らかさと乳房独特の張りを兼ね備えた最高級の乳房。

 先端には乳房からしてみれば小さい普通サイズのベビーピンクの乳輪があり、その中心部には快楽で充血していても未だ薄桃色を保った乳首が尖っている。

 そんな乳房にオレに揉まれた赤い手形が刻まれているのが、生来の肌の白さを引き立てオレを興奮させてくれる。

 

「お、おにいちゃん……ど、どうかな?」

「魅力的で綺麗な胸だぞ帆波」

「そ、そう……」

「どうかしたのか?」

 

 不安そうに俯いて無言になった帆波に尋ねる。

 

「え、あの、ね……わ、私の……その、その、ね。お、大きいでしょ」

 

 呼吸する度に、ゆっさゆっさと揺れる乳房を鏡越しで見詰めながら言ってくる。

 男を滾らせる姿を見せながら、いきなりそんなことを言われても、オレにどんな返答を求めているか分からずとりあえず誉める。

 

「あからさまに言わせてもらうが、大きくて張りがある綺麗なおっぱいだな。それがどうかしたのか?」

「……う、うん。お、大きいの嫌だっている人居るらしいから、おにいちゃんも、ひょっとして大きいの嫌かな? 気持ち悪いかな? って思ったんだけど……正直、足元が見辛くなって躓いたりするくらいに動くのに邪魔だし、バランス悪くて仰向けで寝ると息苦しいし……いっそのこと小さくしたいなあっ、てね……でも、小さいのを大きくする話はよく聞くけど、大きいのを小さくするのは手術しか方法ないかr「帆波」にゃ?」

「オレはお前の大きなおっぱいが好きだ。ずっと見ていたいくらいに好きだ。だから、大きくて綺麗なおっぱいが似合っているバランスの良いスタイルと一緒に見せて欲しい」

 

 まさか、帆波が自分の乳房にコンプレックスまでは行っていなくても、嫌われるのではないかと考えるくらいに邪魔に思っていて、小さくしようなどと考えていたとはな。

 巨乳が苦労するとは理解しているが、この豊かなのに美しい乳房を小さくするなんて許せるはずがない。

 歳を取っても垂れないように、手軽に胸筋を鍛えるための器具を幾つか考え作ろうというオレの決意を無にはしない。出来るわけがない。

 そもそも、人類が巨乳好きなのは綿々と脈打った歴史が証明している。太古の昔から巨乳好きでなければ、生存の足を引っ張る巨乳遺伝子が伝わるはずがない。

 だから、オレが帆波の巨乳を護ろうとするのは雄の、否、人類の本能だ。抗う必要もなく、抗えるはずがない。

 

「ほ、本当?」

「ああ、オレは帆波の大きいおっぱいが大好きだ」

 

 頭の中で馬鹿なことを考えながら、らしくなく食い付くオレに帆波は若干引いたようだが、オレに自分の巨乳を受け入れられたことに安堵の色を灯す。

 まあ、帆波の豊かな乳房も、桔梗の大きめの乳房も、手の平から少しはみ出る鈴音の乳房も、恵のすっぽりと手に収まる乳房も、情を交わした女性の乳房は全て好ましいのだが、それは言ってはいけない。

 

「そ、そう、なら、どうぞ……」

 

 ホッと吐息をつくと羞恥に耐え切れず、ぎゅっとまぶたを閉ざした帆波をいいことにじろじろと視姦しながら言葉で責める。

 

「ずっと、見たくて堪らなかったんだ」

「え……?」

「ただでさえ優れた容姿をしているくせに、いつもいつも無防備に近づいてきては、いい匂いを漂わせて腕や肘とかに当ててきた部分だからな。服の下がどうなっているのか、ずっと見たかった」

「そ、そう、だったんだ……」

「いつもいつも歩くたびに重たげに揺れるおっぱいを見たかった、触りたかった」

 

 責めているつもりが色狂いの愚痴になってしまった言葉を、帆波はどう解釈したのか言い返すように口を尖らせる。

 

「……バレンタインデーの後なら、言ってくれれば見せたよ。それが私だけならだけど」

 

 暗に四股を責められ、ぐうの音も出ず思わず沈黙してしまったが、帆波は責めるつもりもなく自然と言葉に出したらしく、そのことを気にせず続ける。

 

「それに、今まで人に当たったことあっても……触らせたのはおにいちゃんだけだし……男の人に見せたのもおにいちゃんだけだよ」

「そうか……」

 

 見当違いでかなり凄いことを言っているが、これはこれでぐっと来る。

 

「なら、オレがお前の最初で最後の男だ」

「おにいちゃん……」

 

 優しく帆波の輪郭をなでながら、形の良い耳元で真剣に囁くと、帆波はぎゅっとつぶった目を開いた。半眼になってジロリと睨み付けられる。

 

「ちょっとグッときたんだけどね。堀北さんたちにもそういうこと言ったでしょ」

「ああ、言った。最低だよな」

「うん、最低だよ……あ……」

 

 ランジェリーショップでの一幕を見られた帆波に否定などしようがなく、あっさり認めて、そっと腰を優しく抱きしめて言葉を続ける。勿論、性的な箇所には一切触れずに抱きしめる。

 いい機会だ。脱がせる前に帆波に返事を貰おう。

 

「それでも言わせてくれないか」

「……」

 

 鼻と鼻がくっ付きそうな距離に帆波と顔を近づける。ぼぅと赤くなっても、呆れと疑いの色を消さない帆波を可愛く思う。

 

「さっき言ったきりで、ロクな返事も聞かずにお前の体を弄んだ多情な性欲塗れの最低なオレに、もう一度言わせてくれないか」

「おにいちゃん……」

 

 鏡に映る自分の露出した乳房に一切視線を向けず自分の瞳を見続けるオレに、帆波の呆れと疑いの色が薄まる。

 

「お前が好きだ。オレにお前の最初で最後の男にならせてくれ」

 

 こちらがなってやると上から目線の言葉を、さりげなく変化させ、出来る限り真摯な表情にして真摯な言葉だけを口に出す。

 

「……………………二度目だね。表情が硬いけど無表情じゃなくて、少しだけでも言葉に感情が込められてる……精一杯のことして貰った……二度目、か」

 

 長い沈黙の間、オレの視線を受け止め続けた帆波の瞳が、ふっと優しく揺れた。

 無表情無感情ではなく一歩進んだ事を、帆波に噛み締めるように喜ばれたことが嬉しいと思う。思えるようになった。

 そんな取り留めない思考は、オレの言葉を受け止めた帆波によって片隅に追いやられた。

 

「おにいちゃんに好きって言われるだけで、私からはこんな風に顔見てハッキリ言ってなかったよね」

「……何をだ?」

 

 返事が分かりきったことでも、聞かなければらならない時がある。それが今だ。

 花が綻ぶような柔らかで幸せでどこか硬い満面の笑みを、帆波が浮かべる。

 

「私、一之瀬帆波は、おにいちゃん、綾小路清隆くんが好きです。兄みたいな意味じゃなく、異性として男の人としての綾小路清隆くんが、好きです……」

 

 さっきまで何度か口にした「好き」とは決定的に違う恋慕を言葉に込めた。

 

「……本当に、私と、するんだよね? おにいちゃんと私がするんだよね」

 

 オレの頭に頬をすり寄せ、帆波がどこか畏れ戦くように囁く。

 決定的な関係を結ぶ直前、ようやく帆波の全てを吐き出させることが出来ると理解し答える。

 

「勿論だ。オレもお前が好きだから、抱きたい」

「そうしたら、もう元には戻れないよ……怖くない?」

「帆波は戻りたいのか」

 

 パンティの両脇に手をかけ躊躇わずに下ろす。汗が籠り、じっとりと蒸れた香りが、一瞬、漂い、消える

 尻たぶから布が抜け落ちるとき「んっ……」とくすぐったそうにしながら、プリンとした尻を露出した。

 吐息を一つ、ゆっくりと腿を閉じた帆波の足元に、トロリとした愛液の糸を引きながらパンティが落ちる。

 それが、答えだった。

 

 

 

 帆波の生まれたままの姿に、思わず息を呑む。

 努力だけでは決して得ることができない、見事な体。

 それは光り輝くような、美しく魅力的な裸身だった。

 他人には決して晒されない、水着や下着に包まれていたところ。

 僅かに日に焼けた珠のような肌。その肌に確固とした色彩を与えているのは、二つの色彩のみ。豊満な乳房の頂にピンと立つ、桜色の乳輪にあるピーナッツ大の乳首。その豊満な肉体と比べると、ひっそりと盛り上がった恥丘に茂るピンクブロンドの繁みだけ。

 その二つの色彩が、見れば見るほど赤く彩る帆波の肌を何倍にも美しく演出していた。

 

「恥ずかしくて、死んじゃいそう……」

 

 明かりの下で獣のような立ちバックの姿勢で初めて男の前で全裸になった恥ずかしさに震える帆波の唇が、そう言葉をつむいだ。

 直接視認できる背後からと鏡に映る前から、何一つ隠すことの出来ず羞恥に赤く染まった帆波の秘所を余すことなく見る。

 

「は、ぅぅ……」

 

 背後にいるオレが大事な所に熱い視線を向けていることを鏡で見せられる帆波が恥ずかしさに呻くような声を出す。

 大事なところをくまなく見られていると思うと、下半身が激しく震わせて隠そうとしてしまう。

 

「なんだ、帆波。足が疲れたのか? なら、支えてやろうか」

「にゃ、にゃぁあ」

 

 その途端に始まる言葉責めに、ビクリと全身を震わせしゃんと下半身をたてる。

 遠慮せずにしゃがみこんで帆波の秘所を覗き込む。

 

「ほ、本当に、死んじゃうよぅ」

「もっと尻を高くあげろ。まんこがよく見えない」

「ひ、ひんっ」

 

 羞恥に震える帆波に要求をさらに上げる。

 

「も、もう、これくらいでいいでしょ、おにいちゃん……そ、そんなにじっくり、見ないで……」

「……無理だ。帆波が綺麗すぎて目が離せない」

「はぅぅ」

 

 羞恥のあまり泣き出しそうな自分と、オレのモノとして征服されていく喜びに浸る自分。心の中で相反する感情がせめぎあい絡み合い、帆波の理性は崩されてしまい。

 耐え切れないと、額を鏡に擦り付けるようにして必死で腰を持ち上げる。そんな帆波に、興奮のあまり逸物が服を破りかねない昂りを覚えながら答える。

 

「そのままの姿勢を保つんだ」

「う、うん」

 

 薄い肉付きのヒダなどは一切はみ出ておらず色素の沈着もない大陰唇の上部の低い秘丘は、濃いピンクブロンドの茂みが覆っている。鈴音と同じく手入れをしていないようだ。鈴音よりは濃いとはいえ、こちらの方も薄めだから必要ないのだろう。

 愛液に濡れた薄めのピンクブロンド色の繁みは肌に張り付き、クリトリスを隠している。

 陰毛から除く隙間から、陰唇の左右に均等の取れたふっくらとした肉形の良さが伺える。

 肩幅に開いていている上に、幾度か絶頂をしていても薄桃色の綺麗な直線を描いた細いスジは、ビタリと閉じていて、注視しなければ、大陰唇の間にあるツヤツヤしたピンク色の粘膜を見ることが出来ないほど開いていない。

 豊満な肉体と比べてあまりにも幼い秘所。

 そのピタリと閉じた陰唇から垂れる粘度の高い無色の液体が、雄の衝動を掻き立てて止まない。

 

「ふぅぅ、ぅぅっ、はぁぁっ」

 

 総合して、熱い吐息を吐き続ける帆波の年齢から考えれば、幼いという意味で、歳不相応な裸体だ。

 一見して少女をとっくに通り過ぎ、成熟した女の体をしているこの体が、よく見ると未だ青い未成熟な硬さを残し過ぎたものだということも、雄の衝動を掻き立てて止まない。

 

「ぁ……」

 

 そんな自分の裸体の全てをさらけ出した帆波の体を、華奢な肩を覆うように背中から抱きとめ髪に顔を埋めてまさぐる。ピンクブロンドの髪から覗いたうなじから、帆波の香りが立ち上ってくる。

 むっちりした肉の奥にある良質の筋肉が、抱きとめたオレの体に反応して強ばる様も愉しい。

 男の獣欲を刺激する芳しい香りを嗅ぎながら、視線を下げて手を伸ばす。

 

「んっ」

 

 右手の人差し指をプリンとした唇にあて形の良い顎を経て喉元を通してさらに下へなぞり、豊満な体を指で思うように描く。

 そんな動作を鏡に映されて見てしまい、頬を火照らせ呼吸を荒くする帆波の可愛いらしさを、目と指と耳と鼻で味わいながらさらに下へ。

 

「ふんっ」

 

 鎖骨から乳房の谷間に流れていくオレの指先を鏡越しで見つめる帆波の熱い視線を感じながら、モデル顔負けのほっそりした括れを経てさらに指を進める。

 

「んっ……お、お尻っ」

 

 ほっそりとくびれた腰に不釣り合いなほど、ぎっしりと肉が詰まっている弾けるようなキュッとお肉が上を向いた、ハートを逆さにしたかたちの臀部は、僅かに汗をかいている肌と合わせて剥き卵のようにプリンとしている。

 優しく撫でてやると帆波はふるふると震えて恥ずかしげに呻く。

 

「んあっ……」

 

 尻肉に手のひらを添えて握りこむと、指が沈み込んだと思うと弾き返してくる。乳房とはまた違う、凝縮された若々しい肉特有の感触。

 水を垂らせば弾き返しそうな張りのある縦に丸みがおびた尻を、加減しながら揉みしだく。

 すると、少し上向きになったお尻は、揉む度にたっぷりと蓄えた肉を歪ませ、割れ目の奥にある弄られて赤く充血した尻穴の皺を丸見えにしている。

 

「ひんっ、あっ、んんっ、んっ」

 

 その光景と、たしかな弾力が心地よく、こうしていつまでも揉んでいたくなるが、この鍛えられた引き締まる大きな尻は叩いてこそ、意味がある。

 後で思う存分叩こうと決意しながら、帆波の火照った頬に顔を近づける。

 

 

 

 

「ま、待って……」

 

 そのまま口付けしながら胸と秘所を愛撫しようとするオレを帆波が軽く押して止めた。何気ない風を装っていたが、やけによそよそしい。尻を叩く邪な想いが感づかれたのではない。

 今まで愛撫をしていた時もあった、何処か距離を取っていた部分が遂に露呈したのだ。

 セックスは多分に精神的なもの大きい。なのに、帆波はどこか肝心なところでセックスにのめり込めず──雌に成りきれなかった。その部分を露呈した好機に問う。

 同時に、帆波に『おにいちゃん』などと呼ばれてオレが浮き立っていたとはいえど、抱いて欲しいと言って何度も性欲を高めておきながら、いざこれからと言う段階で何時も焦らしてのける帆波の天性の男殺しっぷりに戦慄する。

 

「どうした?」

「……もう戻れないよね」

「オレは戻りたくない」

「うん。私も戻りたくない……だから、戻れなくなる前に言っておかないと駄目だよね……私の全部を」

 

 髪をなでながら露呈させるための俺の言葉に、帆波は自分の奥底に隠していたことを表に出すために、囁くように言葉を返してきた。

 

「おにいちゃんから見て私ってどんな子かな」

「……忌憚のないところを言わせてもらうが」

 

 当たり障りの無い評価をする選択が一瞬脳裏をよぎったが、帆波の何処か淀んだ目を見て止めることにした。

 

「うん」

「頭が切れて責任感もある上に腰が据わっている優しすぎる善人だな。明らかな美点の反面、他人に冷徹になれず甘えることを知らない欠点を持っている。だから、まず周りを傷つけない方向へ思考を向けてしまい、肝心なことを一人で抱え込んでしまう。それなのに、能力と人望が高いせいで周りに自然とリーダーとして扱われて拒絶できない。

 つまり、ほとんどのことを巧くやっても、最後に大きな失敗をして周りを巻き込んで取り返しがつかなくなってしまう──単独でのリーダーとしては毒でしかない補佐役タイプだ」

「そっか……にゃはは。やっぱり、おにいちゃんは凄いね。欠点は大当たりだよ……でも、美点は、違うよ」

 

 長所が4つも5つも有るというのはそれだけで欠点だ

 とまでは言わないにしても、割と加減しない評価をしたのだが、帆波は欠点を指摘されたことが嬉しそうにちょっぴり舌を出して笑った。

 

「……私ね、皆が思うような綺麗で優しい心の持ち主じゃないんだ。本当はその逆で、もっと醜くて浅ましい面倒な女の子なんだ。甘えることを知らないんじゃなくて、甘える必要がないんだって強がって生きていた面倒な子。

 お母さんと妹の前では聞き分けの良い、素直で強い子……友達の前では、優しく思いやりのある頼れる子。そうでいようと思ってずっとそうしていたんだ……そしたら、いつの間にかそれが自然にできてて、自分でも自分はそういう人間なんだって思うようになった……でもね」

 

 二人きりの部屋の中で、心の奥底を露呈した帆波の声が虚ろに響く。

 

「でもね、私の胸の奥では、いつでも、私のことを嘘つきって詰ってた。少しでも、悪いことを考えるとそれが溢れてしまいそうで、押さえ込んで、考えないように見ないようにしてた……」

 

 龍園くんに負けるわけだよねと弱弱しい声が部屋に響く。

 

「……苦しかった……誰も、自分をわかってくれないことが。万引きしたときもそう。妹のことを理由にして、妹思いな自分を維持しようするためだって心のどこかで囁いてた……お母さんに叱られたときも、普段妹より私を後回しにしていたお母さんが私を見てくれて嬉しいって心のどこかで思ってた。

 その事を、あの時クラスメイトにも言わなかった。言わずにいたんだ。言えばもう取り返しがつかなくなると思って……結局、私はみんなを信じてしていなかったんだよ。全部さらけ出せなかった」

「それは人として当たり前のことだ」

「うん、清(・)隆(・)く(・)ん(・)はそう言ってくれるよね」

 

 おにいちゃんでなくオレの名前を呼んで、帆波は吐息をついた。

 

「やっぱり……そう言って受け入れてくれる。だから、私は、清隆くんが好き。私の黒い想いも何でもないことのように全部受け止めて、私を甘えさせてくれるから。

 ……ずっと、待ってたんだ。私の真実をさらけ出せる人が現れるって、理解してくれる人が現れるって……ずっと探してたんだ。そんな人が居て、きっといつか巡り合えるって。そう信じて生きてきたんだ……」

 

 オレにもたれかけながら、指でオレの髪をまさぐり絡めとる。逃さないというように。

 

「あの時、扉の向こうでただ黙って受け止めて助けてくれたときから、私の心の中には『綾小路清隆』って言う名前の男の子が……ずっと、君が、いたんだ……」

「……」

 

 帆波の想いを受け止めるために無言で髪をなでていても、帆波は温もりに自分を委ねない。まだまだ、語らなけらばならないことがあると。

 

「それなのに、私は愚かだった。心ではいつも清隆くんを思って、清隆くんばかり見つめていたのに、その想いが何か気付かなかった。私は恋をしたことがなくて、どうすればいいのかわからなかったから

 ……ううん。それだけじゃなくて、私は恐かった。清隆くんなら受け止めてくれるだろうって思ってたけど。もし、自分の真実を見せたら……嫌われてしまうかもと思ってたら、恐かったんだ」

 

 微かに、帆波が震えた。

 

「そうしているうちに気付いたんだ……私のほかにも、清隆くんに特別な思いを抱いている女の子がいるって……それもひとりふたりじゃなく、何人もの女の子がそうだって……それがわかったとき、私はね」

 

 帆波の震えがとまり、オレの髪を絡めた指も止める。これから、一番つらい想いを打ち明けようとしているために、全身を止めた。

 

「その子達を憎んだ……私が生徒会やクラスのリーダーを頑張って、一所懸命頑張って自分の時間を使っている間にみんなっ

 ……みんな、みんな、清隆くんに近づいていく……同じリーダーなのに同じクラスってだけで堀北さんがいつも清隆くんと一緒にいるのも、桔梗ちゃんが色んな男の子と同じようでどこか違う態度をとるのも、平田くんと別れてすぐに清隆くんにすりよった軽井沢さんも、佐倉さんが純粋に清隆くんを慕うのも、フられたくせに未練たらたらで清隆くんを見つめる佐藤さんも……全部、嫌で、憎くてたまらなかったっ!」

 

 ゆっくりと顔をこちらに向けようとすると抵抗してあちらを向く帆波の横顔を見つめながら、帆波の生々しい感情の叫びをただ聞いて受け止める。

 あの日、扉の向こうで声を押し殺して泣いていたときと同じように。

 

「特に軽井沢さんは許せなかった。平田くんで良いじゃない、何で別れたの……何で別れた後、よりによって清隆くんに擦り寄るの。ずるいじゃない、私が、想う直前に、別れて擦り寄るなんて、ずるいっ! ……そう思うと、彼女が許せなくて……でも、軽井沢さんは、まだ許せないだけですんだ」

 

 帆波の瞳に光るものが浮かんだ。

 

「ごめんなさいっ」

 

 帆波は突然、謝った。

 

「私、見てた。あの雨の日の次の日、堀北先輩と清隆くんが話したの見てた。偶然、清隆くんを見かけて、嬉しくなって遠くから付いていって見た。

 堀北さんが髪切っていて遅れてる間、清隆くんが堀北先輩と話し合って間に合わせてあげたお陰でっ。堀北さんと堀北先輩が兄妹らしく抱き合って仲直りするのを、この目で、遠くからずっと隠れて見た。見ちゃいけないって分かってたのに見てたっ」

 

 血を吐くように叫ぶ帆波。

 そうか見られていたかと、他人事のように思う。

 他人のプライベートを言い触らすことの無い帆波に見られていたのならば、鈴音と学にはそこまで問題ではなかっただろう。

 今、この場、つまり個人的には問題だが。

 

「……その後、堀北さんを、泣くのを耐えて意地を張っていた堀北さんを清隆くんが泣かせてあげたのも見たんだ。距離を開けてたから、何を言っているのか分からなかったけど、清隆くんは何か優しい言葉をかけて上げたんだよね」

 

 質問の形を取っていても、実質確認の言葉に頷くと帆波が唇を噛んだ。

 

「やっぱり、そうだよね。そうだったんだよね……私ね、泣きながら蹲る堀北さんを、ただ傍に居て受け止めてあげた清隆くんを隠れて見てたんだ……それで思ったんだ。その時、心の底から思った」

 

 ギリッと、歯ぎしりの音が部屋に響く。

 

「妬ましいって……堀北さんが、お兄さんと仲直り出来て良かったなんて欠片も思わなかった。人のプライベートを覗き見て申し訳ないなんて思わなかった」

 

 帆波は唇を噛み、流れる涙をぬぐうこともせず言葉を続ける。オレに裸体を預けてオレの体温を余すことなく吸い付きながら続ける。あの時とは違うと全身で叫びながら。

 

「ずるい。ずるい。ずるいよっ! ……私は扉越しだったのに、自分はすぐ傍で、体温感じられるくらいのすぐ傍で! いつもは隣人何て言っているのに、肝心なときでは心の柔らかいところを曝け出して受け止めてもらってっ! あんなときに泣かせてくれた上に、黙って横に立って受け止めてくれるような人がどれだけ居ることも知らずにっ! 感謝もせずにふてくされてっ! 

 ……そのあと軽口叩き合って、いつも通りの絶妙な関係に戻ってっ。遠慮のいらない妬ましい関係に戻って……清隆くんがそうしてくれるってわかってるから、知ってるんじゃなくてわかってるからっ! 感謝もせずにふてくされて……っ、甘えてっ!」

 

 あの時のことはそんな色気のあるものではなかったはずだ──いや、誤魔化すのは辞めよう。一歩進んだ今なら誤魔化すことはない。

 どうでもいい他人ならあんなことはしなかった。

 鈴音だからあんな行動を取ったのだ。

 帆波のときに、色々心を砕いたように。

 好意を持っているからこそ、簡単に抱きしめるようなことをせず、見守りながら側で好きなだけ泣かせた。

 そうすれば、後々、一瞬抱きしめるだけの関係で終わらないと確信していたからだ。

 鈴音が欲しいから、ああしたのだと今なら分かる。

 

「なのに、なのに、何時も、いつだって、綾小路くんのことどう思っているのか聞いたら『彼とはただの隣人よ』なんてっ、答えて……っ!」

 

 何時も何処でもそう答えてっと吐き捨てる帆波に、そっと頬に手を当ててオレの方を向かせようとすることを、帆波はもう止めなかった。

 

「そんな、堀北さんが、今日、あの時、下着姿で、更衣室から、出た時、私は思ったんだ」

 

 オレの目をみながら激情に一言一言噛み締める。

 

「堀北さんなんて居なくなればいいのにって……」

 

 帆波の体からふっと力が抜け、瞳を包んだ光が零れ落ちる前に、その肩を抱き寄せる。

 

 

 

 

「さっき、色々な女の子の名前を出したよね」

「ああ、言ったな」

「佐倉さんと佐藤さんはあからさま過ぎたから清隆くんでも気付くと思ったから言ったけど、今言った子達以外にも清隆くんを好きな子達が居るんだよ。……でも、私は絶対に言わない。その子達が諦めてしまえばいいから」

「そうか」

 

 髪を撫でながら、俺は言葉を返す。

 

「……わかったでしょ……私が、甘えたがりの面倒な子だって。清隆くんみたいな甘えられる人に、一度でも抱かれたらきっと清隆くんのこと一生忘れない。いつも清隆くんの傍に居たくて、束縛しようとする。皆が思ってるような。物分りの良い子じゃない。

 ……面倒臭いよ、間違いなく」

「安っぽい女よりは、そっちの方がいい」

 

 受け止めるというオレの言葉に、帆波は思いつめた目になる。

 

「堀北さんたちと表面では仲良くできても腹の中で舌を出すよ。私だけ見て欲しいってね。

 ……さっきまでもね。私、わざと恥ずかしがって焦らした時もあるんだ。

 そうすれば、堀北さんや桔梗ちゃんも軽井沢さんもして貰って無いことがしてもらえるからって……お尻の穴なんて他の子は最初にされなかったよね?」

 

 肯定の意を込めて頷くと、帆波は優越感に満ち足りた笑みでやっぱりと呟く。

 

「私はね。自分の願望をかなえるために清隆くんを利用したんだ……」

 

 瞳を思いつめた色にしたままで。

 

「こんな面倒な私を清隆くんはどう思う? まだ、抱きたい? 本当に、受けとめてくれるの? ……無理しないでいいんだよ」

 

 無理しないでいいと涙を零した。

 が、

 

「いや、どう思うも帆波は善良で可愛いくて抱きたいから受け止めるとしか思わないが」

「にゃ??」

 

 これほど容姿が優れた少女が全裸で立ちバックの姿勢で居るのに、ここで男が止められるかという点については、後ほどじっくりと帆波に教え込むとして本題を話そう。

 帆波としては真っ黒な自分を曝け出し距離を置かれても構わないつもりで言ったようだが。

 オレとしては、愛撫しても、割りと酷いことしても、ジワジワとしか染まらず、今一つセックスが踏み込み切れなかった大きな理由が、帆波の心にあったと明らかになっただけだ。

 だから、それを受け止める。

 

「帆波」

「あ」

 

 指先でそっと涙を拭い、後ろからすっぽりと帆波の体を腕の中に入れる。

 

「いいんだ。それでいい。帆波に悪い所なんて、ひとつもない。人を好きになったら、独占欲や所有欲が沸き起こるのは当たり前だ。好きならば好きなほど、自分を、自分だけを見つめて欲しいと思うのが人間だ。違うのは、そういう感情を表に出すか出さないかで、誰もが周りに嫉妬して相手を支配したいと思っている」

「……清隆、くんも?」

「ああ、オレもだ。帆波のことをそういう風に想っている。嫌か?」

「んっ、ううん」

 

 そっと帆波の顎に手をやりこちらを向けても、もう帆波は抵抗せずにしなだれてくる。

 

「だろう。だから、オレは帆波にそこまで想われて光栄だ」

 

 人間は自分が傷つくのを恐れ忌避するようになっている。己の過ちや黒い感情を認める前に、「あいつが悪い」と他人のせいにする安易な道に逃げる。

 オレの胸の中でしゃくりあげる帆波の頭をできる限り優しくなでる。

 他人を傷つける前に、まず自分を傷つけることができる帆波が善人ではなくて、誰が善人だと呼べるのだろうか。

 

「本当? ……」

 

 己の暗闇の部分と向き合い、羞恥と自己嫌悪に苛まれ続ける帆波は、本当の意味で美しい心を持っている。

 

「ああ、本当だ」

 

 これを否定するのは、ただの独善だろう。

 

「なら、今から、一日の間だけでも、私以外の女の子を想わないで、私だけを見てくれるの」

「当たり前だ」

「本……あっ」

「帆波のこと以外見ていないし考えてもいない」

 

 そう言いながら帆波の乳房を握りしめて優しく口付けると、帆波は「そっかあ……」と切ない瞳を細めて受け入れた。




 この話、半分くらい椎名さん用で書いていたのですが。
 椎名さんは、こんなに易しく(誤字にあらず)無いので流用しました。
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