高山流水さん、ザキトシさん、いつも誤字訂正ありがとうございます。
すぅすぅすぅ
「さて、どうするか」
部屋にもどったオレは目の前の光景を見て独り言ちた。
オレのベッドでオレの枕を抱いて丸くなりながら童女のような笑みを浮かべ幸せそうに寝ている坂柳を見て独りごちた。
「想定外だ」
部屋に入ると同時に坂柳が出迎えてくるか、隠れて驚かせようとしてくるかのどっちかを想定していたのに、現状はコレだ。
すぅ、すぅ、すぅ、とても気持ち良さそうな寝息を聴きながら、二度見した。寝ている坂柳。枕を抱き締め、手に見覚えのある男物の茶色のハンカチを握りしめて熟睡している坂柳しか見えない。自分の視覚が異常をきたしている可能性は消え去った。
「何でだ?」
あの電話の後に、男のベッドの上で熟睡。制服と何時ものガーター姿という格好で熟睡。スカートがめくれて桃が見え隠れしている姿で熟睡。
色々な意味で、ありえないだろう。
無防備すぎるというか、何で制服なんだというか、今から性交すると宣言していたのに寝るのかとか、何から突っ込めば良いのか分からない。
無防備さだけでも、ありえない。今から坂柳とオレが性交するという段取りを神室がつけた今、オレが部屋に戻り次第性交するのだ。そのことを本当に認識しているのかという疑いしか抱けない。
緊張感は無いのか、男のベッドで寝ていれば襲われるという危機感はないのか、性交する段取りをつけているのに。
「寝たままで、このままで貪ってくれってことか」
もしやと思い口に出すが、童女の笑みを浮かべた坂柳からは安らぎしか見えない。
このまま貪れば必死で抗ってくると確信ほどの安らぎしか。
ならば
「オレのベッドで寝ていてもオレが襲わないと思っているのか」
そうとしか考えられない。
そこまでオレを信頼しているのか?こういっては何だが、自分でも信頼できる人格をしているとは到底思えないのだが。
神室が頭を抱えるわけだ。
あまりの据え膳っぷりに、正直オレも少し頭痛がする。
神室が出来る限り優しくしてくれと言っていたのは、これも見越していたのだろう。
神室と誓わなければ、外堀どころか内堀まで埋めた相手への滾りに任せ寝込みを襲い貪ったかもしれない。
「しかし……」
溜息交じりに『まずは起こそう』と意識を切り替え、ベッドの脇まで歩いて坂柳を見下ろす。今から性交する少女を見下ろす。獣欲を意識して込めた視線で見下ろしながら覆いかぶさる。
「可愛いな、こいつ」
寝返りを打った姿勢のため、太腿が見えるところまで制服のスカートが捲れた坂柳を見てだらしないという言葉さえ頭に浮かばなかった。
坂柳有栖という少女が可愛らしい少女だということを再認識する。
人によって好みは異なるが、顔立ちの造形だけ見れば、坂柳の容姿はオレにとって好ましい。
では、首から下はと言うと。
静かに首から下に目を向ける。
小柄なため腕を組んだり抱き合うのに難儀しそうであるが、その程度の難儀は男女の性別の違いで括るべきものだ支障にすらならない。小柄で細身な体はマイナスではなくプラス要素だ。
胸は、彼女自身が貧相と言っていたように、率直に言って服の上からでもはっきりと貧乳とカテゴリーすべきものだ。この胸に顔を埋めて――他の少女たちのように――柔らかな感触に包まれて楽しむというのは少し厳しいだろう。が、特に気にならない。
坂柳のような性格の少女を、貧乳ぶりをイジメてやるのは楽しめるだろうし、僅かに触れる肌の感触が乳房の大きさなどどうでもよく思える。
「すごいな」
恐ろしいほどすべすべしているのに、しっとりと湿っているように柔らかい。端的に言ってプルプルしている。
それが幼さによるものか、運動が困難な坂柳の資質かは分からないが、ベビースキンの肌はオレにとって好ましい。
乳房の方も小ぶりではあるが張りと弾力があった。成長期の硬さが僅かに残るのも良い。
そのまま視線を下半身に向ける。
運動不足なせいか、それとも生まれつきのものか、はたまた両方か、太腿はむっちりしている。触れてみると指が沈み込んでいきそうだ。
「う、ぅん」
太腿の刺激に呻く坂柳の声は女の色がある。
それに、太腿だけではない。ふくらはぎはスラリとしていて、足首は引き締まっている。丸くなった姿勢の為に強調された臀部も、よく見れば骨盤のしっかりとした安産型へと育っていっているものだ。全般的に幼いと言って良い坂柳だが、性に関するところはしっかりと女になりかけている少女のものだ。
日焼けから程遠く、血管が透き通るほどに透明な肌。白すぎて健康的ではないと思える未成熟な儚さに反する良好な肉付きが、逆に坂柳を魅力的に見せている。
外見よりも性格の方がはるかに重要だ。
強かさと超然さと冷徹さを持ちながらの明晰な頭脳は、オレも幾度か感心したほどのモノ。だが、それは表面でしかない。
攻撃的や冷たいともとれる心の奥底に、神室との電話の時見せた純粋すぎるほどの純な少女の可愛らしさを持っている。
「………………良い娘だな」
総論としてそこに落ち着く。少なくとも抱くことは大歓迎だ。抱いた後で行きつくところの数々のことにも不満など欠片もない。逆にオレでいいのかと申し訳ないと覚える。
さらに、一歩近づく。
うっすらと目を開ける坂柳。
屈んだ視線のオレと目が合う。
「綾小路、くん……」
へにゃり、そんな音を立てたような気がするほど坂柳の顔が柔らかく綻び、ぽすんと胸に重量を感じた。
すぅすぅすぅ
「……さて」
抱き枕を放り投げてオレに抱きついた坂柳。腕を首に回して首筋に顔を埋めるようにギュッとオレを抱きついてくる。
胸板に伝わる柔らかさに貧乳では胸に顔を埋められないという自分の愚かな決めつけを撤回する。胸の鼓動が他の娘より大きく感じられる特色を含めて、これは揉みしだいて舐めしゃぶりたい乳房だ。いや、坂柳の全身が柔らかい。少女らしい芯を持ちながら柔らかな肢体。肉付きが良くなくとも柔らかになる女体の不可思議さに、それを確かめようとーー
すぅすぅすぅ
「……」
下半身を撫で付けようとした手を止めてしまう。あまりに幸せそうな寝顔に情欲はブレーキをかけさせられた。
制服で男のベッドに寝転がりあられもない姿を見せてから抱き着いてくるとか、誘っているとしか思えないが、寝息を立てているのだから違うのだろう、きっと。
「……どうすべきか」
抱き着かれた姿勢のままベッドに体を移し坂柳に体重をかけないように覆い被さると独り言ちる。眼下にはオレが作った陰の中、無垢な顔で寝息を立てる少女の顔。少し、悪戯心が沸いた。
この状態で目を覚ました坂柳がどうするか試してみよう。