原作:ロマサガ1
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概要 真なる〈剣の女王〉とは、ローザリア王国の太祖ローザ・ライマンと、
彼女の体質を先祖がえりの形で受け継ぐ女性戦士のことである。
小型剣:剣の女王は彼女らの身の証にして護身用の剣であるにすぎない。
出生 かってのバファル帝国においてもその名も高き『皇帝の華』の長であった
勇猛にして美しき女戦士ローザ=ライマンは女だてらにたくましいその身体に
とある特異な体質を宿していた。それは常人をはるかに超える高濃度・大量の精気(LP)
と法力(JP)を蓄えられる体質に他ならない。その後もローザリア王家および
その傍流に、数世代に一度の割合でローザの体質と才能を受け継ぐ女性が生まれてくる。
彼女らこそが、真なる〈剣の女王〉なのだ。
能力 〈剣の女王〉は生まれつき多くのLPとJPを宿しており、彼女らが経験を積み、
能力を高めれば高めるほどに後代の〈女王〉に受け継がれるLPとJPは増す。
故に後代になればなるほど、〈女王〉の力は徐々に蓄積され、強まって行く。
宿命 〈剣の女王〉の使命は二つである。
① ローザリア王国を影から守護すること。
② 自身の体質と力を後代に生まれてくる〈女王〉に無事に受け継がせること。
〈剣の女王〉はローザリアの守護者であると同時に、強く美しいその身体は
魔の者にとっての絶好の生贄候補でもある。故に彼女らはマルディアスの歴史の表舞台
に立つことは無く、その存在はローザリア王家の関係者に秘伝の形でひそかに
伝えられてきたのだ。
そしてマルディアス紀元100Ⅹ年、過去最強の力をその身に宿すイスマス出身の
〈剣の女王〉ディアナのときを迎える…。
「あ…あぁ…そ、そんな…これが…あたしの顔…体…」
???『女闘士よ、お前は怯えているのか? 今さらそんな人間らしい感情を取り戻してももう遅い。
汝は理性を忘れ、人の身で神との禁忌の淫楽に溺れた当然の報いを受けたのだ。今さらそれを悔いても仕方の
ないことだろう? これから、お前はその淫楽の代償を払わなければならん。残されたわずかな余生で惨め
な老醜を人目に晒さなければならんのだ。それが怖いか? せいぜい怯えるが良い。そんなことを感じられる
のも今だけだ。』
「うぅ……うっ!」
『かって強さと美貌を誇っていたお前も今や、枯れ果てた女の残骸にすぎない。
もはや何ひとつ残されてはいない』とあいつらにあざ笑われた。
『残された寿命はもって数時間だ。好きに生きるがいい』と言われ、
あの忌まわしい肉壁の世界から外に放り出された、いや、解放された。望まぬ荒淫の快楽と引き換えに、
あたしのすべてを奪われた後に…。
「はぁ、はぁ…ゼェ、ゼェ…」
寒い。体に力が入らない。老眼が翳(かす)む。よろめき歩くだけでも辛い。『せめてもの餞別だ』と言われ、
愛刀を返してもらったが、それを振るう力すらもない。だから、杖代わりにしている。
〝この界隈に、あたしの美貌と剣術に勝てる奴はいないのよッ!!″
そう粋がっていたのが、遠い昔のように感じる。
あの人のいるクリスタルシティの遠景に向かって歩くこと自体があたしの、生涯最後の苦闘だった。
最初にあたしの姿を見た農夫は、魔物だとでも思ったのか、悲鳴を上げて逃げていった。思わず涙が出たが、
頬を伝うこともなく、カサカサの顔肌に吸い込まれていった。
分かっているさ。あたしはあの化け物の凌辱の犠牲となり、この身を人が味わうべきではない淫楽で
しゃぶりつくされた。それと引き換えに精を吸い尽くされたこの体はもう、あいつらの言うとおり、
女体の出し殻にすぎない。
もうこのまま眠ってしまいたい。だが、今倒れたら冥王(デス)の統べる冥府に直行するだけであること
が、今のあたしの朦朧(もうろう)とした頭でも解っていた。だが、それでもあの人に最後に、
会いたい。伝えなければ…あいつが、見かけばかりか、腹の底まで黒い美しい悪魔であること
を…次の生贄に、あの人が選ばれていることを…。
その女は裸身であった。だが、なんと無残な姿であろう。
骨と皮だけのやつれ果てた身体。
顔も、肌もしわだらけだ。
干からびた乳房がぶらりと紐(ひも)の様に垂れ下がっている。
髪は真っ白だ。まるで妖婆の姿
を呈していた。モンスターの邪術<ドレイン>を受けて命を落とした犠牲者はこのような
カラカラに干上がったミイラと化すが、彼女の姿はそれに酷似していた。しかも、その姿で、
かろうじて生きていた。
かっての彼女の端正で凛々しい姿を知り、かつ自身も女性であるディアナにとって、その印象の
痛ましさは格別だった。
ディアナ「アンナ…なんて姿に…」
そう、彼女はかってローザリアの薔薇騎士隊においてディアナの配下に付けられた凄腕の
女闘士であった。男勝りで明るい娘だった。ディアナとも次第に打ち解けてお互いを
認め合った仲だった。それが…髪型と、額冠(サークレット)と、左手に握った刀から辛うじて
識別できるほどに変わり果てた姿と化していた。
アンナはかさついた瞼(まぶた)を開けて、ディアナを見た。
「デ…ディ…ディアナ様」
アンナの声は、枯れてかすれていたが、瀕死の状態にあるというのに、微笑むかのように
唇を歪めた。顔を優しく撫でてくれるディアナの手の感触が、夢ではないことを分からせた。
アンナは残された全ての気力を込めて、言った。
「来…来…来て…くれる…と思って、いた」
「駄目よ。口をきいては…」
ディアナが言った。
「ほら、もっと水をお飲み、ゆっくりと」
ディアナは水筒をアンナの唇にあて、冷たい清水を流し込んだ。今や飲み込むということが、
アンナにとっては、過酷で辛いことだった。エロールの女神官がディアナの横に膝をつき、
女闘士の生気(オーラ)を調べた。
「あたしは…耐えようと…した…ほんとだよ…で、で、でも、気持ち良すぎて……には勝てなかったよ――」
「分かってるわ」
ディアナは彼女の頬を優しく撫でた。
「よく分かってるわ。頼むから、静かにして。これ以上体力を消耗してはだめ」
女神官は、アンナのオーラの具合を診てから、脈をとった。
そして、静かにその腕を戻すと、ディアナの耳にそっと囁いた。
「もう、ほとんど精気が残されておらず、手の施しようがありません。むしろここまでもった
のが奇跡です」
ディアナは、ただ、うつむいて拳を握った。その診たてが誤診であってほしい、
だがそれはかなうまいとすでに気づいていたから…。
アンナ「ディアナ様…気をつけて…あいつらが…次はあなたの番だって…」
ディアナ「あいつらって、誰?」
ディアナはアンナを抱き上げて尋ねた。
「誰なの?」
「サル…イン…神官ども…イスマス…黒い…」
そういうのが精いっぱいだった。アンナは、ディアナの腕の中で、息を引き取った。
ディアナは、あやすように揺すって、自分の胸に引き寄せた。
「死なないで! アンナ、頼むから死んではだめ!」
しかし、もう、アンナは瞼を開けようとはしなかった。
「…さ、寒い…寒いよ…母さん…父さん…ディアナさま…」
ここは冥府の荒野……その妖婆は全裸だった。
邪神の快楽に精気を吸いつくされた女は、魂が魔の磁場に捕らわれているがゆえに、
死後も安らかに眠ることを許されない。
これから彼女は永劫に、自らの身体から失われた、
強さと美しさを嘆きながら、さまよい続ける定めなのだ…。