…時代考証で結局時間かかってるじゃないですかヤダー!
酷い、部屋だった。
薄明りしか差し込まず、身動きをひとつ捩るだけで土埃が舞いそうな汚れ具合。
部屋の隅に乱雑に積まれた、それらは以前までの住人らが遺して行った品々らしく、それを改めて曝してやろうなどという酔狂はアイザックには微塵も無い。
だが、少なくとも『彼女』を呼ぶには不適切な部屋である。
彼なりの矜持で以て、片付けておくべきだった、と微かな後悔を滲ませていた。
「んっ、あっ、いいっ、そこっ、そこぉっ」
そんな後悔など露とも知らず、栗色の髪を持つ少女はアイザックに馬乗りになって上下に揺れる。
幼げな外見とは裏腹に、伴って揺れる乳房は特大の果実のように豊満だ。
薄桃色の尖端は衣服に遮られることも無く顕わに震えて、今にも果汁が滴りそうなほどたわわに実っている。
その豊満な果実が、少女の緩慢な仕草に合わせてゆっさゆさと雌の象徴を主張するのだ。
いくら後悔という
「んあぁっ、やぁんっ」
目を奪われるがままに、アイザックは上体を起こした。
雄としての本能に従って、ふたつの果実へとむしゃぶりついた。
雌としての欲望に従って、ヴェネラナは嬉しそうな嬌声を上げていた。
■
余り表沙汰には出来ず、隠れることを前提としているのだから、部屋が薄暗いことは当たり前だ。
そもそも此処はバアル領の一部で、彼女は領主直系のご息女に当たる。
とはいっても、彼女の名はヴェネラナ=バアルでは既に無いのだが。
領民であるいち悪魔、正しくは『ある仕事』を任されている領家の使用人のひとりがアイザックだ。
下手な相手に知らされれば、物理的に首が飛んでも可笑しくない。
ヴェネラナだけならば彼女の
だからこそ、アイザックはその辺りの隠蔽には一切の気を抜くこともない。
細かい部分の工作は省くとして、家格の足りない彼だが
今は悪魔が天界へと徐々に反旗を翻し始めた時代。
明確に言うと、人間が神への信用を失い始め、天界の主税が削がれ始めている時代だ。
その結果、コキュートスへ封じられていたルシファーが解放され戦争を仕掛けられたために見事にタイミングを外してしまい、もう一度また戦争へ、と誘えるほど悪魔にも力が溜まっていないのだ。
冥界という『莫大な所領』を確保してしまった悪魔らは其処へ引き籠ってしまい、更には人間の真似事をして貴族などという格差社会を敢行しているのだ。
実力主義は徐々にと廃れて、形骸化し始めた格式社会に腐り始めていることに、彼らは未だ気づいていなかった。
話を戻すが、アイザックは何気に都合7世紀ほど生きている古参悪魔でもある。
それこそ悪魔社会に数多く居る二代目に匹敵するレベルで実力も意識も伴っている、という今にも珍しい『老害ではない老人』だ。
見た目は20代くらいの青年なので、全く以て古い悪魔に見られたことも無いが。
そんな海千山千を差配出来得る彼なので、いくら人妻とはいえ少女のような感性を失わないヴェネラナではひとたまりもない。
更に付け加えるならば、人間の感覚であり天界の定めた律である一夫一妻の決まり事に反旗を翻すのが悪魔でもある。
むしろ貞淑を貫く方が異端なのだが、ヴェネラナの主人であるジオティクス=グレモリーは彼女一筋であるために、ヴェネラナは妻としてそれに従っているのでは、と言えなくもない。
■
そうしたヴェネラナの小柄な肢体を抱きかかえて、アイザックは彼女の胎の内を擽るように搔き乱した。
結合した男の象徴は、悪魔として淫猥を引き起こす程度に雌の身体を悦ばせられるのだ。
少女の心の澱を削ぐように、肉襞を穿る快感がヴェネラナの背を仰け反らせる。
「ンォ゛っ!? ォ゛っ! ァッ! ァヒッ! ン゛ッ! イィ゛ッ!?」
アイザックの身体へとぴたりと寄り添い、ヴェネラナは狂ったような嬌声を上げた。
双丘がつぶれて酷く苦しそうだが、細い腰を抱きしめた腕は彼女を放そうとはしない。
しかし彼女もまた其処から逃れようともしない。
ヴェネラナは一切の抵抗をせずに、アイザックが放ち注ぐ欲望を全て子宮へと受け入れた。
「アッ、あ……ッ、ん――、ふ、ぅぅ゛~~……ッ」
熱が、じわり、と。
どくどくと脈打つように、粘り気の強いそれが自分の胎を蹂躙している。
そのことをヴェネラナは実感している。
ジオティクスと結婚して結構経つが、こんなに激しくも長く熱い、しかし愛おしく実感できる閨事は味わったことも無かった。
いや、主人も自分を愛してくれている。
だが、其処には貴族として子を遺さなければならないから続く情事、という前提があり、本当に愛してもらえているのかと問い詰めれば、……少し疑いの芽を微かにだが覗かせてしまう。
ヴェネラナがそうした葛藤を繰り返すのは、アイザックの技術が彼女のキャパシティを凌駕していた所為だ。
詳しくは知らないが、ジオティクス=グレモリーは奔放だったヴェネラナを射止めるために色々と手を尽くしたとされる。
当然そこには恋慕があり、結婚にまで漕ぎ着けることで愛情へと昇華したのも事実だろう。
だが、悪魔には子供が出来難い。
愛情の証明として人間が真っ先に連想するのは
今の悪魔社会は、それに浸食されている。
証明でき難いモノを確かめることは、それこそ『悪魔の証明』に外ならず、それを実感できなかったヴェネラナは、自分を『愛しそうに求めて来た』アイザックに見事に絆されていた。
つまりは、経験値の不足が最大の敗因だった。
「ヴェネラナ、残念なことを告げるようだけど、いいか?」
「っ、な、何かしら?」
悪魔らしからぬ背徳心と、主人を裏切るという快感。
そんな彼女が実感したことも無い葛藤に苛まれ始めている頃を見計らうように、アイザックがはじめて口を開いた。
言い辛いことを言葉にしようとしている。
少なくとも、ヴェネラナにはそう見える。
「先に言っておくけど、キミはこのままだと俺の子を身籠れない」
「……? 悪魔は元々『そういうもの』よ? 何を言ってるの?」
アイザックの言いたいことが判らず、彼女は内心で首を傾げた。
行動には移せない。
彼女は未だ、彼の腕の中で温度を感じているのだから。
それよりも、不倫の証明を遺せない、と宣告されるのは意味が解らない。
ジオティクスへの明確な裏切りを証拠として残すことは、流石にヴェネラナだって抵抗があるのだ。
……証拠が残らないからと言って、更に事を重ねようという気は無い。おそらく。
「悪魔は子供が出来難い、だったか。ちょっと正しくないな」
「……どういうこと?」
「確実に残す方法があるのさ、そうでなきゃ悪魔の数は此処まで増えていない」
「…………………!?」
寿命が長いから、生き残りが数多く居るのだと誰かは言っていた。
しかし、そうなるとかつての戦争で数が減らされたのに、今も種族として廃れていない理由にはならない。
何しろ、初代ルシファーを始めとした数多くの『初代』が死んでいるのだから、それよりも脆弱な民衆の生き残れている理屈に合わないのだ。
其処に気づいたヴェネラナは、知らず息を呑む。
アイザックは構わないように続けた。
「俺は残念ながら根本的に種が違うからな、かつての方法に沿うことは出来ない」
「な、貴方、知ってるの……!?」
「ああ、知ってる」
はっきりと断言した彼を、もういちど馬乗りになるようにヴェネラナは覆いかぶさった。
今度は意味が違う。
しかし何処か苛烈なその表情の下でも、『運動』で汗を孕んだ彼女の肢体は瑞々しい色気を醸していた。
「…………っ」
其処から、言葉が続かなかった。
ヴェネラナは決して愚かではない。
主人に隠れて愛人と閨事を重ねた人妻だが、彼女の出来栄えは決して下劣ではない。
知識へ対する欲求もあれば、状況を打破しようとする行動力だってあるし、推論を重ねられる想像力だって廃れていない。
問題は、ヴェネラナが悪魔全体へそれほどの関心を抱いていないことだ。
それを知ってどうなる、と彼女の内心が問いかける。
知った経緯を何処へ明かすのかと、明かしたとして、自分が其処まで腐心した点だったのか、と。
もう少し未来になれば、彼女にも子供が出来て、悪魔社会全体の将来を憂う程度の『貴族として』の成長だって見込めただろう。
だが、今の彼女にそれを知りたいという欲求は有れど、その先を実感できていない彼女が繋げられるほどの要求にまでは至れない。
不意に、その彼女の身体を、アイザックがもう一度引き寄せた。
ごろりと上下が逆になり、ヴェネラナは抵抗する暇も無く仰向けに。
豊かな双丘が自然と広がるように、放射状に潰れた。
「方法は教える、その為にも、もう一回しないか?」
「……ぇ?」
呆れたような声をヴェネラナは上げる。
呆れたというよりは、文脈の繋がりが彼女には見えないのだ。
返事を聞かずにアイザックはヴェネラナの乳房を弄ぶようにたわませるが、柔らかく優しい手つきに一切の抵抗を彼女はしなかった。
諦めとは違う、彼女だってアイザックの身体を忘れられていないのだから。
しかし、疑問は晴れない。
「もう一回、と言わず何度だって良いんだけどな。ああ、先に方法を教えておくか。――」
「ぇ、――え?」
そんな馬鹿な。
それが聞いた最初の感想だ。
僅かな合間に告げられた『方法』に、ヴェネラナは今日何度目か分からない呆けた声を上げる。
しかし、直ぐに彼女は可笑しそうに笑った。
「ぷっ、ふふっ、じゃあ、もっともぉぉぉっと、セックスしないと、出来ないわね?」
「ああ、その通りだ」
ヴェネラナは笑顔で、アイザックの口づけを受け入れる。
少女の太ももを抱え上げて、浅黒い肌の青年は奮起を繰り返した。
実際のところ子供がどうのこうのという『理由』の方はこの時のヴェネラナにはどうでもよく、それでも身体を重ねたいと思うくらいにはアイザックのことが気に入ってしまっていたのだ。
滅多に誰も足を踏み入れない『使い魔の森』の片隅で、誰も知らない小屋から少女の嬌声が途切れない。
そんな日が続いた1年後、――サーゼクス=グレモリーという悪魔が、誕生した。
父親の名はジオティクス=グレモリー。
後々、絶対に明かされないであろう『もうひとりの』父親の名はアイザック。
アイザック=ジグ=ザトゥージ。
これは『使い魔の森』の管理を任される、使い魔マスターなるけったいな称号を目指すことになる青年の、愛と情事の物語である。
サーゼクスやセラフォルーが過剰なシスコンなのは悪魔は弟妹が生まれるまでのスパンが長くて100歳くらいの差が生じる所為だ、ってウィキで言ってた
だからといって逆にスパンが長すぎると愛着も何も湧かなくなるらしいので、魔王就任が57だったらしいから逆算して250歳くらいの設定で書く
久々なのでエロシーンが難産…!