HK416は完璧主義者かつ世話焼きである。そのことは同じ小隊にいるG11とのやりとりからわかる。寝惚け眼のG11に小言を述べながらも引っ張るように彼女をアシストする。割とよく見る光景だった。
「指揮官、こちらの書類は終わりました。手元の書類もわたしがしましょうか?」
報告を行いながら処理を終えた束を俺の机の上に置く。どうやら、世話焼きの対象は指揮官である俺も含まれているようで彼女を副官に置くと度々そう聞かれる。そこまで仕事が遅いわけでもないとは思うのだが。
俺は「大丈夫、自分でどうにかする」とこちらの分の仕事まで416に任せるのが申し訳なくて遠慮させてもらった。
「……そうですか。でしたら、コーヒーは要りますか?」
そちらについてはお構いなくと言ってお任せしてもらうと彼女はコーヒーを淹れにオフィスから出て行った。
彼女がいない間に両腕を上げて背筋を伸ばして凝りをほぐす。伸ばした時にあちらこちらで出てくる関節のクラッキング音とともに思わず変な声まで出てしまい、彼女がいなくてよかったとホッとする。実際見られたところでどうということはないだろうが人形であれ女の子、あまり情けない姿は見せたくない。
腕を下ろして彼女が終わらせた書類の束を上から数枚手にとって確認する。記述箇所には極めて模範的かつ丁寧な文字で記されており、見ている側としても読みやすい。そして仕事が早いときたもんだ。この仕事をしている身として少し自信がなくなる。精進しなくては。
「指揮官、コーヒーをお持ちしました。砂糖とミルクの量はこれでよろしかったでしょうか」
今は副官として就いているためか硬い口調でコーヒーをこちらの机に置いた。零して書類の束を汚さないように反対側にマグカップを置いた。
礼を言って一口いただくと乾かしていた喉が潤う。砂糖の分配も多過ぎず適切な糖分補給になっている、と思う。というか多分なっているのだろう。妥協をしない416の性格から考えても不思議ではない。
美味しかったよ。ありがとう。
そう伝えると彼女は表情を少し緩めた。
「そうですか」
416はそのまま座っている俺の背後に移動する。何事かと振り向こうとする前にガシッと両肩を後ろから掴まれた。いきなりの行動に驚いて硬直している俺をよそに、416は吟味するように両肩を揉み込む。
「肩、つらいんでしょう? 長時間のデスクワークは人間には毒ですよ。体が鈍らないためのメニューでも組みますか?」
見てないところで凝りをほぐしたつもりでも416にはそれを見破られていたようだ。彼女の問いにそれは大丈夫と答え、416の肩揉みを堪能することにした。したのだが、これまた適度な力加減で按摩を行うものだから血行が良くなって身体中がぽかぽかしてきた。徐々に虚ろになっていく意識に船を漕いでいると彼女が耳元で囁く。
「大丈夫ですよ。あとはわたしが全部やっておきます。……だから、あなたは何もせずにわたしに任せておけばいいのよ」
まだ仕事をしてなきゃいけないのに体が全く動かない。上げるためのカフェインは効き目が全く出ず、416の言葉に絆されたことによって逆に急降下していく。
「おやすみなさい指揮官」
▽
意識が覚醒して眠たい目を擦って顔を上げると書類の束が綺麗にひとつにまとまっていた。位置からして416が提出したものを置いた位置と重なっている上、その時よりも束が厚くなっていたので本来俺がやるものも含まれていたのだろう。
なんてこったと眠気を振り払うように首を振っているとコトリと机に何かが置かれる音がした。そちらに目を向けるとハンバーガーとポテト、コーヒーのセットが置かれていた。
「指揮官の分も持ってきたわ。食べれるかしら」
416が顔を覗き込んでそう尋ねる。業務が完全に終わって、口調はお仕事モードから砕けたものに切り替えたらしい。時間を確認すれば夕食にはいい時間帯だった。それに空いた腹にはバーガーや揚げたポテトの香ばしい匂いは効く。思わず夢中になって食べていると416が横でくすくすと笑いながら俺の頬に手を伸ばす。
「パンくずがついてるわよ」
紙ナプキンで口元を拭かれた。いい歳が子供扱いされてて少し恥ずかしい。
夕飯のあと、彼女に向けて言葉を送った。今日は何から何まで手伝ってくれてありがとうすごく助かった、と。416はそれにキョトンとした顔で受け取り、頬を緩めた。
「……そう」
後片付けを終えて俺と416は部屋に戻り、これで今日一日もほぼ平和的に終われるだろう。
部屋に戻ると俺は備え付けのシャワー室で一日の汚れを洗い流していた。頭から温かいシャワーを浴びると疲れもわずかに落としてくれているようで心地が良い。予洗いが済むとそのままシャンプーのボトルに手を伸ばそうとするとシャワー室のドアが開かれた。
「お邪魔するわ」
先ほども聞いた声に振り向くと一糸纏わぬ姿の416がシャワー室に足を踏み入れていた。彼女の背丈はモデル並みの長身であり、着用している帽子を脱いでいるせいか青色の髪は灯に反射して宝石のように輝いている。そして何より目を引くのはそのスタイルの良さで、その豊満な白いバストにはボトルに伸ばそうとしていた手を方向転換させたくなるほどだった。
なんとか性的な衝動を押さえ込んでどうして入ってきたのか尋ねると彼女は答えた。
「指揮官の体を洗いにきたのよ。おかしい?」
そりゃおかしいだろうと俺は即座に答えた。人形といえど男と女、間違いを犯してしまったら色々と拗れかねないと言うと彼女はおかしなものを見る目を向けつつ答えた。
「それが何か問題? 要するに指揮官がほんの少しだけ我慢すればいいだけのことでしょ? ほら、頭を下げなさい。洗ってあげるから」
そういうと彼女は俺の横を通ってシャンプーボトルのポンプを押し、手のひらにペースト状の洗剤を乗せて泡立たせる。なんたる強引な理屈だろうか。
俺は覚悟を決めて頭を下げて洗ってもらうことにした。
「そう。そのままジッとしてて」
こしゅこしゅと髪になじませるように彼女の指が通っていく。その洗い方は、やはり女性のAIだからか、はたまた彼女の性格が影響しているのか入念に洗ってくれる。
肩もみの時と同様に力加減が心地よすぎたため、俺は同じ轍を踏まないように目を開く。それが失敗だった。
彼女は俺と向き合うようにして俺の髪を洗ってくれている。さらに俺は彼女の前で頭を下げている状態のため、ただでさえ近い距離がグッと縮まっているのである。するとどうなるか。
俺の眼の前では二つの白い山がゆさゆさと間近で揺れていた。圧倒的な質量と大きさにゴクリと喉を鳴らし、その頂にある桃色の尖りに衝動的に顔を近づけてしゃぶりつきたくなるのをなんとか抑えて俺は再び固く目を閉じた。
正直なところもう少し見ていたかったのだが万が一バレて彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。それに思わぬものを見て眠気は吹き飛んだため、目を閉じたままで頭皮を揉み込むようにしっかりと洗髪されても執務中の時のように落ちることはなかった。
「これで洗い終わった……と」
シャワーで濯ぎ残しがないように洗剤を落としてもらうと俺はひどく安堵した。これでなんとかこの気まずい状況から抜け出せる。そんなことを考えていると416は追撃を始めた。
「じゃあ次は体の方ね。少し腕を広げてくれるかしら」
まじかお前。
俺は頭を抱えたくなるのも抑え、もうどうにでもなれとヤケクソ気味に脇が入りやすくなる程度に腕を広げる。無論、目は閉じたままだ。見えない中でポンプを数回押す音の後でスポンジで泡立てる音が耳に届いた。
しかしなかなかスポンジが当てられなくてそこまで泡立ちが悪かっただろうかと考えているとぐしゃりと泡が当たるのを感じた。しかしそれだけでは終わらず、当たっているスポンジの感触は妙にふにふにすべすべしていて、ただでさえ距離の近かった彼女の呼吸する音がより鮮明に聞こえる。
体に当てられたスポンジはぬるぬると滑り、それがこそばゆくて体を捩らせると逃すまいと背中に腕を回して密着する。それに驚いて目を開くと理解してやっているような笑みを浮かべた416の顔が至近距離にあった。
「もう、動かないで。しっかり洗えないじゃない」
こちらの肩に顎を乗せてそのままスポンジを持った手を動かした。姿勢としては不安定な状態なのに不足なく背中を擦り洗う。しかし、問題はそこではない。俺の胸板に直に当たっている彼女の二つの山がくしゅくしゅと泡を立てながら擦られていて、人形だというのに少女のように甘く香る髪が俺の鼻に当てられ、幸福感で頭がどうにかなりそうだった。
「ねえ、指揮官」
416が背中に回していた片腕を離して耳元に吐息して聞いてきた。
「……どうして固くしているのかしら」
彼女はそう囁きながら離した片手で陰茎を軽く握られて変な声が出てしまった。普段戦場で銃を扱う人形の手だというのに柔らかく、その指はボディソープでぬるぬるさせながら俺の陰茎を撫でるように絡める。
「わたしはただ指揮官の体を洗っているだけよ。だというのにこんなに大きくさせて……気持ち良さそうな声を出して、何を考えているの」
あまりにも酷い言い分である。
気持ち良さそうな声をしているのはそんな風に下腹部に触れているせいだからであり、反応してしまったのは416の体があまりにも女性的でたまらなかったからだ。と正直に答えると彼女はうれしそうに声を上げて俺と向き合った。
「わたしの体に興奮したってことかな。ふふ、そうよね。わたしの体もスペックも完璧だもの。……指揮官」
両腕を俺の首に回して彼女は誘った。
「ベッドに、いきましょう?」
▽
洗剤を流し落として体を拭き終えると俺たちは裸のままベッドに向かった。シャワー室よりやや乾燥しているその外は少し寒気を感じた。416はその肢体を隠そうともしないまま尋ねる。
「横になって。わたしがちゃんと指揮官のことを気持ちよくしてあげる」
そう誘惑を仕掛けるもののなかなか体が動けずにいた。やはり流されるように関係を持つのはまずいのでは? 軍規が、風紀の乱れがと思考をぐるぐる回していると416は少し考え込んだ後に呟いた。
「……そう、そうよね。男の人だものね。そういう意識があっても不思議じゃない、か」
一体何のことだろうと彼女の動きを追うと416は俺のベッドの上で仰向けになる。枕を頭に乗っけて上体がやや傾いた姿勢のまま彼女は下腹部に手を伸ばした。
「きて、指揮官。……あなたの好きにして、いいから」
彼女はそのまま自身の女性器を広げた。その先には、ぬらぬらと生々しく濡れているサーモンピンクの膣内が晒されている。人形を作った技術者はどういう意図を持ってこんな風に設計したのだろう。聞き分けがいい方とはいえ元々プライドが高い方だった416もさすがにこれは恥ずかしかったのか真白い頬を赤らめて視線をそらしていた。
終始余裕だった416が初めて見せた羞恥心に思わず胸が高鳴って、抑えていた獣欲が刺激される。
「……ぁ」
彼女の視線が一点に刺さる。俺は視線を下に向けると風呂を出てからやや萎えていた陰茎がいきり勃っているのが見えた。気がつかないうちに息も荒くなっていて目の前の据え膳を早くいただきたい気持ちに駆られていた。
俺は416に覆い被さって、片手で陰茎を挿れやすくするために固定した。彼女の顔を見ると先ほどより赤い顔でこくこくと頷いていたため、腰を進めた。
「──あッ ん、んぅっ は はいっ、てる……っ」
くちゅりと亀頭が入り、こちらも声が漏れた。奥まで突き挿れればその膣内はひどく温かく、尻を締めていなければ即暴発していたことだろう。
呼吸を整えて腰をゆっくり動かす。しかし引き抜こうとするとそれを拒むようにヒダが絡みついて、突くと迎え入れるようにザラザラとした快感が走る。本当に技術者はどういう意図で設計したのだろうか、民生用あるいは接待用としては満点以上の名器に腰が抜けそうになる。
けれどもまだまだ余裕そうな416の姿を見て、何度も負けるわけにはいかないという思いが強くなり、俺は調整しながら探るように抽送する。
「ん、ぁっ……そんなにっ、ゆっくり……じゃなくてもいいのに。ほんとうはもっと乱暴にしたいんでしょう? こんなにかたくさせているのに、我慢なんかし────んあッ……!?」
探っているうちに、ある一点をさするように腰を動かすと416が嬌声を上げた。彼女も身に起きたことが理解できなかったのか両手を口元で抑えて困惑した様子だった。
その余裕が崩れた姿に嗜虐心がむくむくと上がり、ひたすらに責め立て始める。愛玩用のウィークポイントとして設計されたのだろうその部分に触れるたびに416は身悶え、片腕で目元を隠すようにして、もう片方の手でシーツを握りしめて快感に耐える。
「ひっ、ぎゅ 待っ あッ んんうっ」
突く度に悩ましく揺れる乳房に触れ、揉んでさすると彼女は食いしばって声を抑えた。その様子は膣内にも表れ、きゅうきゅうと陰茎から子種を絞るように切なくうねらしていた。
散々焦らされてきた俺は416に、中に出すぞと宣言すると彼女はそれを止めようとしていた。
「や、やめ……今出されたらっ いやっ やめてっ……!」
隠していた腕をどかして涙目で中に出すことを拒否する彼女にまるで乱暴しているようなシチュエーションにたまらず腰を打ち付ける速度を上げる。
「はっ あっ やだ、やだぁ やっ あ、あっ──!!?」
お預けを散々食らった射精は尿道が破裂しそうなほどに膣内で迸らせていた。416の両手はシーツを強く握りしめていて、体は弓なりにさせながら一際甲高い声をあげた。射精は1分くらい経ってようやく収まり、ずるずると膣内から引き抜いた。
息を整えてようやく正気に戻ると、血の気が引いた。さすがにやり過ぎたかもしれないと自覚してしまったからだ。とにかく416を介抱しようと彼女の方を見るとその光景に言葉を失った。
416は目を閉じて先ほどのこちらと同じように呼吸を整えている最中だった。快感からようやく逃れたのか腕を広げて脱力し、両脚は投げ出されたように広げて、僅かに開かれた膣口から注ぎ込んだ精液がとろりと漏れ出していた。416のその姿に、俺はこの女を抱いたんだという卑しい感情が芽生えて再び血が巡るのを感じた。
俺は彼女の太ももを掴んでその両脚の間に再び入り込む。416は弱々しく両手で俺の胸を押して拒む。
「まって……あたまのなか、整理しきれないの。いま挿れられたらわたし、いッ!? あっ!!」
その制止を聞き流すかのように腰を突き出した。416の反応は先ほどよりも過敏なものになっていた。脚を動かして腰を離そうとする416を逃すまいと腰を掴んで勢いよく突き上げた。
「あぐぅっ!? あっ! んぐっ ひいっ!? ああっ……!!」
もはや声を手で押さえる余裕もなくなったのか嬌声を垂れ流すだけの獣に成り下がった彼女が愛おしくなり、たまらず口づけをした。
シーツを掴んでいた腕を力なく背中に回して拙く舌を絡ませる。ふわふわとした彼女の体があまりにも気持ちよ過ぎて精管から沸き立つのを感じた。
「んむっ、んっ、んうッ、ん、んん──!!」
二度目の射精も彼女の膣内で果たすと416の体はぴくぴくと痙攣したあと動かなくなった。あれだけのことをした後でさすがに心配どころの騒ぎじゃなかったのでチェックするとただAIが処理しきれずにスリープモードに入ったらしい。
それに安堵すると今度は虚ろな表情でぐったりして文字通り物言わぬ人形となった416の姿に興奮してしまい────
▽
ようやく目を覚ました彼女に俺はただただ謝り倒した。スリープモードの状態になっていた416に興奮して犯していたことも正直に告白すると彼女は目を開いて驚いていた。
しかも、拒否していたにも関わらず無理やり行為に及んでいたことも含めてさすがに言い逃れができないと思った俺は頭を下げて謝るしか選択肢がなかった。
しかし彼女は怒ったり悲しむどころか、それとは別のことを考えていたようだった。思考を終えたのか彼女は口を開いた。
「……もし、そうだとしたらそのままにはしておけないわね」
ああ、やはり許されないか。
俺は目を瞑って罰を待っていると彼女に優しくベッドの上に倒された。押し倒した416の表情は暗いものではなかった。
「安心していいのよ指揮官。あなたが他の娘に興奮して襲いかからないように、あなたの性処理もしてあげる。……万が一そうなってそいつが使い物にならなくなったらそれはそれで困るわ」
どうやら許されたようだが不穏なこともついでに穏やかな口調で言われた。あれは数日間溜め込んでいた上に散々焦らされていたためだからであり──
言い訳は右から左に流されたまま、彼女はいい笑顔で宣言した。
「ということで、さっそく今日の分を出してもらいましょうか」
行為は干からびるまで続いたのだった。