BBホテップちゃん 作:BBBB
夕陽に染まる波間で僕と相対する最愛の人。
後悔など――今更出来るはずもない、こうなってしまった要因は自身にも少なからずあるのだから――。
「ふふっ、二人っきりですね、セ・ン・パ・イ」
本来の瞳の色とは違う、正反対の真っ赤な瞳をこちらに向けてウットリとした感情がその声色に多分にのっていた。
僕と彼女以外、"誰一人としていない。"
「さあ、センパイ、邪魔者達は一人残らず皆みんな影の中に消して……此処はセンパイと私だけの世界になったんですよ。だから、貴方の可愛くて可愛くて最愛の後輩ちゃんと二人っきりになったのですから――――私を、"私だけを"めいいっぱい可愛がって愛してくださいね」
最愛の人から向けられる笑顔は掛け値なしに最高のものだ――――でも、彼女を僕が望んだことにより……"僕の住むこの県からは生きとし生けるものが全て消えてしまった。"
♦♦♦
――僕はずっと目立たないタイプだった。髪型にも服装にもこだわりが無く、勉強も得意じゃない。運動もそうだった。
それが、偶々親からのクリスマスプレゼントに貰ったゲーム機と……初めてのゲームによって"変わった。"
本当に運命の偶然と言うべきなのか……初めて遊んだゲームで、僕は"初恋をしたのだ。"
二次元の登場人物、それが僕の初恋相手。別にゲームで遊ぶまでに周りに女の子がいなかったわけじゃない。住んでいる所のご近所さんには一般的に十分美人なお姉さんもいたし、同級生も可愛かったと思う。
だけど――恋をする……それ程までに心を揺り動かされたことはただの一度も無かった。
【恋に落ちる時、まるで雷に打たれたかの如く――】
と、とある映画に出て来る登場人物は言っていた。まさにその通りだった……そこから僕は意識して自分の外見を変えて行った。考え方、と言うか何かあった時どう行動すべきか――それを、"僕はそのゲームの主人公が取る判断をなぞることにした。"
――そして、僕は変わって行った。それがものまねという歪なものであっても……現実には存在しない"彼女に好かれたい"と言う一心で。
不思議なもので、変われば変わるほどに、周りからの反応がどんどん大きくなって行った。今で手付かずだった髪をセットして髪型を変え、ファッション雑誌を見ながら普段着る服装を変え、ただの中肉体型を運動をして筋肉を付けながら体力をつけて体を作り、クラスメイト達に挨拶をしながら自分の席の周りにいるクラスメイトに話題を振って話すようにすると、そこから更に関わる人が増えて行った。
そうして……ゲームの主人公=【岸波白野】を僕が真似てそれなりの月日が過ぎた頃――
――不意に
――綻びが訪れた。
――女子からの告白によって。
それは、僕自身にとってまさに想定外の出来事だった。もともと今の自分自身に変わった(つもりな)わけは"現実には存在しない彼女に恋をして、そんな彼女に好かれたかった為だった。"僕自身には彼女しか見えていなかった――――だけれど、現実には変わった(つもりな)僕を……良いな、と思う女の子が現れた。
――現れてしまった。
ついには人気の無い校舎裏に呼び出され、告白された。僕の目の前に立つ女の子は一般的に見てもかなり可愛く、また美人な部類に入る子だと思う。それでも――女の子の心をこめた告白の言葉は僕の心には何一つ響きはしなかった。
僕は告白を断わった。
断り方も……やはり主人公の断り方を真似て。
とは言え、出来る限り断る際に言葉を気を付けたつもりだった。だけれど――僕の考え、認識は甘かった。大甘だった。
僕の中では女の子は、いちクラスメイトでしかなかったが……女の子からしたのなら、何が切っ掛けはわからないけれどある日突然どんどん変わって行って急激に人気が出過ぎた男子。そんな相手が毎日朝は自分に挨拶をして更に休み時間になればたくさんの話題で話し掛けてくれる――――ならば年頃の女の子が何を思い何を望むのか、わかり切ったことだったのだが……こうなるまでの僕自身の変化とはただのものまねであり、ただの模写でしかなかった。
故に……ゲームでは一対一であっても、リアル――現実ではそうではないことを本当にわかっていなかったのだ。
続く。
読んで頂き有難うございました、桜やBBちゃん、そしてメルトリリスにパッションリップを好きな人が増えますように。