対魔忍RPGより -愛と復讐を籠めて- 作:対魔忍Receive
天音と紅の話が終わり、2人が座敷から出てくる。
2人の話は平行線を辿るが、やはりふうまの反乱が起きない平和な未来などないのだろう。
天音の反乱への決意は固いようだった。
さて、ここからは俺たちの時間である。
座っていた縁側から離れると、先程紅と別れた場所まで逆戻り。
今日は何で遊ぼうかと玩具が入ったダンボールの箱を倉庫から引っ張り出した。
ダンボールの中に入っているのは苦無に忍者刀。更には煙玉に片面に偽装用の人工草が貼り付けられた布。
なお、苦無と忍者刀は子供があたっても痛くないスポンジ製。
煙玉はショボい煙が出るだけであり、人工草に至っては一目瞭然でバレるレベルの偽装であるとは紅談。
確かに触ってみるとプラスチックの人工草はお粗末なもので、お世辞にも偽装で役に立つとは家なさそうなものだ。
つまりは、頭対魔忍教育セットである。
「龍灯! 今日は何で遊ぼうか!」
ダンボールを庭へ持ってきたところに丁度良く帰ってくるのは紅。
天音は用事の為に少し前に別れたそうだ。
おそらくは先程の幻庵の言伝を弾正へ持っていったのだろう。
だが哀しいかなその言伝が弾正の考えを変えるには至らない。
グッバイ、俺の平和な生活。
グッバイ、こうして幼い紅とイチャイチャできる俺の貴重な癒やし空間。
その日の俺は紅と対魔忍ごっこをして遊んだ。
最近、俺の護衛の言葉に反乱と言う物騒なワードが混ざるようになる。
それも当然か。
後少しでふうまの誕生日が訪れる。
原作通りに行くのならば、そろそろふうまの反乱が起こるだろう。
そこで起こるのは五車と言う街全てを巻き込んだ史上最大規模の対魔忍同士の戦いである。後から付けられた反乱という文字など生温い。戦闘に特化した対魔忍が発する全力の技は簡単に地形を変える。特に戦闘系でも雷遁と炎遁などは地形ごと相手を消し去るレベルだ。戦闘が起きた場所の生態系を変えるなど些事なのである。まだ、完全に制御できない水城ゆきかぜですら雲に穴を開け、精密機械を根こそぎ破壊するのだ。熟練の対魔忍が扱うそれなど比べ物にならないだろう。
それ故に、対魔忍は一騎当千として扱われる。
軍隊とは比べ物にならないレベルの破壊力、行動力、隠密性を持つそれは、常人からしてみれば畏怖の対象でしかないのだから。
同じ人間の形をしているだけの化け物。
政府でも極一部の、対魔忍を正確に認識する者たちが恐怖するのも無理はない。
そんなふうまの反乱への心構えをしつつ、今日も俺は紅と遊んでいた。
幼い紅はとても可愛いのだ。
しかも抱きしめれば柔らかく良い匂いがする。
延々と紅と遊んでいたくなる。
紅さん、一緒に住みませんか?
しかし残念。
後十数年後にこの紅さんは、あのふうまの恋人になるのだ。
おのれふうま。
貴様のことは生かしてはおけぬ。
しかし、貴様のことを生かしてやるから、イチャイチャさせてくれ。今だけは。
今だけは、この可愛い紅を独占させて欲しい。今だけは。
「はははっ! 苦無があたった龍灯の負けだなっ!」
ぽこんと俺の頭に当たったのは紅が投げた苦無。
数年年上とはいえ、紅はこの頃から強かった。
と言うか強すぎではないだろうか。
幻庵直々に教育されてるとはいえ、忍者刀でボコられ、苦無でボコられ、まるで勝てない。
しかし、手加減してくれているのか後少しで勝てるくらいにはギリギリの戦いを演じてくれるのだ。
その強さと優しさに泣きたいです。
いや、元サラリーマンが子供とはいえ対魔忍に勝てるわけないのだが。
負けて当然である。
くそう、こんなできた子がふうまのハーレム入りなのか。
世界は無情である。
朝からこの離れを訪れた紅と一日遊び倒した俺は、紅と一緒に風呂に入っていた。
互いに体を洗いあった後、湯船に浸かる。
紅が付いていれば天音が付いてくることはない。
有事の対応の為に、いつもより近くにいるのは変わらない。
さて、今日は紅の不安を取り除くために奮闘しようと思う。
今日の紅は何処か暗かった。
目が見えない分、音と気配で判断するしかない俺にとって紅の感情はわかりやすい。
「紅お姉ちゃん、何かあったの?」
いつもはお風呂でも遊ぶ紅が口を開かないとなれば相当だろう。
普段の明るい紅とは思えないほどに暗い彼女を気遣うように切り出した。
「龍灯……、わかってしまうか。 実はな、明日から暫く会えないんだ。 幻庵様から、暫くここに来る時間を修行にあてると言われてしまってな」
沈んだ声色で話し始めた紅。
その内容は俺が予想していた通りのものであった。
修行期間はふうまの誕生日の前日まで。
つまりは、そういうことだろう。
「暫くここに来れないのは悲しい。 でも、また龍灯と遊べる日まで我慢するよ」
「うん、僕も紅お姉ちゃんを待ってる」
なんて健気なんだろう。
俺、泣きそう。
紅の為ならいつまでも待てる。
俺はそう言える。
落ち込んだ紅を励ますように、俺は紅の背中を優しく擦り続けた。
風呂から上がり、寝床についた俺達は同じ部屋で2人で仲良く寝ていた。
抱き枕のように、紅に抱きしめられている俺だが、とても良い気分である。
柔らかく良い匂いがする紅に抱きしめられるとか最高の体験はふうまの彼女になってしまったら二度とできないのだ。
大事に覚えていようと思う。
そんな最高の体験をしている俺だが、将来を考えれば憂鬱である。
ふうまの反乱はもう目前。
その反乱の先、俺は生きていられるだろうか。
もしかしたら、RPGでも俺という登場人物は存在していたが、ふうまの反乱を生き延びることができなかったのかもしれない。
その可能性を考えると、俺はどうしても前向きに考えることはできなかった。
反乱で死んだら終わり。
反乱を生きてもその先は真っ暗闇。
俺は、どんな選択をするのが一番なのだろうか。
「私は、帰ってくるからね。 帰ってきて、龍灯とまた遊ぶからね。 約束だよ」
「うん、(ふうまがいるから俺のことは忘れちゃうと思うけど、)待ってるよ」
朝、天音が作ってくれた朝食を終えた俺は屋敷の玄関で紅と約束をすることになる。
何かを悟ったような紅の約束は、応じなければいけないと思わせるには十分なものであった。
だが、約束はできても俺は明日もしれぬ身。
紅は次であったときはふうまの彼女。
ふうまと腕を組んでラブラブな場面を見せられたら、枕を濡らしてしまうかもしれない。
俺、目は見えないけどね。
枕を濡らすのは確定事項だ。
幼い2人の口約束。
それが、将来を大きく左右する約束になるとは、この時の俺は予想すらしていなかった。
ふうまの存在を、未来の紅を知っている俺からしてみれば、この約束など過去として消えて当然のものであったからだ。
ふうまの反乱の時が刻一刻と近づいているのが手に取るようにわかる。
理由としては簡単。
護衛や時折災禍や天音に用がある弾正からの連絡役が俺の近くで口々に話すからだ。
俺の近くで機密を口にするとか舐めてるとしか思えない。
お前ら身内に裏切り者いた時どうするんだよ。
だが、誰が見た目は三歳児、しかし中身は大人だと思うだろうか。
ちなみに頭脳は一般人。
子供だから大したことはないだろうと思って話す彼らから聞こえる内容は、段取り、必要物資、補給路など既に反乱を起こす前提で進んでいた。つまり反乱を起こすのは既に決定したことなのだ。
反乱を止めることができなかった幻庵は反乱に加わる決断をしたようで、時折心願寺家の情報も聞こえていた。
反乱に反対する対魔忍の一門の情報も流れている。
主だったところは対魔忍のメインヒロインである井河アサギ、その妹井河さくらを擁する井河一門。
エドウィン・ブラックに将来壊滅させられるフラグが立っているまだ全盛期だった頃の甲河一門。甲河アスカはこの時まだ幼いので戦場に出てくるはずもなく、出てくるとしたら甲河朧、通称真朧の方だろう。朧さんまだ五車にいますよね。いるはずだよね。
他にはY豚ちゃんで有名な水城ゆきかぜがいる水城家だったり、聞いたことがあるようなないような大小様々な一門である。
聞いている限りだと、まだふうま一門の方が数が多いと言える。
ふうま一門は戦闘狂と言うか戦大好きな人たちが多いので、戦闘系対魔忍が多いのだ。
やはり頭対魔忍。
しかし、現実は非情かな。
今回の反乱を起こすために念入りな下調べを行い、様々な準備をした上でいざ始めたふうまの反乱。
結果としてはふうまの大敗で終わるのである。
理由としては井河と甲河が対ふうまの為に作り上げた反抗連合は、あの井河と甲河が反抗するならばと参加表明をする一門が続出することで雪だるま式に数を増していった。結果、ふうまにとって多勢に無勢と言えるほどの数の優位を築くことになる。これまで対魔忍最大規模を誇っていた為に横暴を働く対魔忍が多かったもの要因の一つだろうか。そこに追い打ちをかけるのはふうま八将のうち心願寺幻庵に次ぐ重鎮と呼ばれる紫藤頼母の戦死。
誰もが夢にも思っていなかった猛者の戦死はふうまの戦士たちに精神的衝撃を与えた。
この時点ではまだふうまの大敗は決まっていなかっただろう。
敗北するにしてもまだ対魔忍の強者として存続することができたであろうふうま一門。
その分岐点において、ふうまにとって致命的とも言える選択肢を選び取ったのはまさかの戦死したふうま八将紫藤頼母の息子、紫藤甚内であった。彼の裏切りにより、ふうまの情報が全て反抗連合に流れたことが戦いの趨勢を決定的なものとした。彼はこのまま敗北した場合と、自身が持ちうる情報を全て売り渡すことで戦闘を収めた功労者となることで得る地位を天秤にかけた結果、家を残すことを選んだのである。
戦いにおいて情報は何者にも代えがたいものであり、相手の情報など喉から手が出る程に得難いものである。
相手の作戦を知れば、いともたやすく勝てるだろう。
相手の配置を知れば、より効率的な対抗するための配置が可能となる。
相手の補給路を知れば、襲撃することで相手の弱体化ができる。
それほどに情報とは戦いを決める上で重要なピースとなる。
古来から戦において、情報を握られた側に待つのは敗北のみと言われるほど。
それが突如、ぽんっと敵の裏切りによって得られたらどうだろう。細作を放つコストも、時間すらもかからないノーリスクで得られた情報。普通であれば相手の作戦かもしれないと疑われるそれは、対魔忍にとって真実かどうかを調べるなど造作もないことである。相手を操れる対魔忍もいれば、相手の視界を乗っ取れる者もいる。精神を操れる者もいれば、記憶を見ることができる者もいる。
相手を調べる方法など、いくらでもあるのだ。
結果として、その記憶を調べ上げられた紫藤甚内の情報は正しいものであるとされ、即座に戦場に広まることとなった。
紫藤甚内が持ち得る情報が全て奪われたふうまにとって、大敗とは既に決定した未来となる。
ふうま八将を次ぐ立場にいた甚内の持ち得る情報とはそれすなわちふうまにとっての全てでもあったのだから。
戦いの趨勢を決めるには十分すぎるものであった。
結果として反乱の首謀者であるふうま弾正は戦死。
ふうまの誇る猛者たちの多くが戦場に散り、一門を構成する家としての形を保てないほどに疲弊した家も出た。ふうまの嫡子であるふうま小太郎と時子は近衛の大半を失いながらも反乱を生き延び、ふうま一門をかろうじて残すことに成功する。ふうまの対魔忍は散り散りになるほどに追い立てられ、外部で残党を組むほかなかった。戦いの中で抜け忍となる者も続出し、米連へと渡るものも多数。名門としての名は残るも、かつての栄光など見る影もないくらいに落ちぶれる。
対魔忍の内乱と政府に処理されたこの反乱は、対魔忍の勢力図を大きく塗り替えることとなった。
これが、対魔忍最大規模の勢力を誇るとされたふうま一門の反乱の顛末である。
反乱失敗の要因は、他にも細々としたものがある。
ふうまの血筋は野心家が多く、より上の戦功をあげようと互いに出し抜きあったら自滅した件。
そもそもふうまの反乱によってできる対魔忍の独立など興味なく、渋々反乱に付き合った対魔忍いましたな件。
相手が自分より勢力が小さいからと、連合などたかが烏合の衆だからと舐めてかかったらボコボコにされた件。
そもそも原作でも対魔忍トップクラスの実力を誇る井河アサギ、井河さくら、水城不知火、甲河朧の4名が連合にいた件。
一度上げ始めたらきりがない。
それでも反乱を成功させる確率があっただけ、頭対魔忍だったとしても実力はあるのだろうと思う。
紫藤甚内の裏切りがなければ、相討ちに持っていくくらいの戦力はあったのだとは思いたい。
メタい話になるがそもそも頭対魔忍の筆頭にして原作最高クラスの戦闘力を持つアサギが相手なのだ。いくら若いといえど誰も勝てるはずがないだろう。だって勝っちゃったらそこで「対魔忍アサギ -完-」である。いや、バッドエンドルートとしてならありなのだろうか。
もし仮にアサギを止められたとしても、アサギとさくらが強襲を、不知火が遊撃を、朧が指揮を担当していた場合、他の2人を止めることはできないだろう。どれか一人を止めるだけでかなりの戦力が消費されるのは目に見えている。残りの2人を止めるだけの戦力は残らない。
戦いに入る前からどうにかしておけば良いものを、頭対魔忍にとって戦場で勝ってこそ誉れとか、やはり頭対魔忍。
お前ら本当に忍者か。
さて、ここまで説明している俺だが、とても暇なのだ。
反乱が起きるまで秒読みなのか、既にこの離れに災禍も天音もいない。
護衛も最小限に抑えられ、源さんを筆頭に数人という少数精鋭状態。
この離れを訪れる者などいるわけもなく、新しい情報すらも得られない、紅とも遊べない俺にとって刺激のないこの時間は拷問に近しいものがあった。
一度あまりの暇さに屋敷を歩いてみたが、源さんに優しく咎められた。
源さんに「今暫くのご辛抱です」なんて言われちゃ良い子になるしかないよね。
たった数日という子供の俺にとって長い長い時間の後。
この五車という街を血で染め上げる戦いが、始まった。
皆さん今年のジューンブライドはゆきかぜに決まりました。
そろそろ来ると思ってたら来ちゃった件。
自然に人が来過ぎな感じしますがどうなんでしょう?
次は凜子とか来そうで怖い。
皆さん健やかな対魔忍ライフを。