リアス・グレモリー眷属とライザー・フェニックス眷属とのレーティングゲーム。
結果だけ告げればリアス達は敗北した。
それぞれの力を発揮し、ライザーの眷属を次々に打倒したリアス達。
祐斗は修行で鍛えた剣技を発揮し。
小猫は仙術を用いて。
朱乃は嫌っていた光の力を雷に乗せて雷光を放ち。
一誠は
リアスも、アーシアだって頑張った。
善戦した。ライザーを除いた全ての眷属を打倒できるほどに。
だが、レーティングゲームの経験と
リアスは眷属と共にライザーと戦った。それでも、不死の特性を崩すことが出来ずに一人、また一人と眷属達が
途中、リアスはこれ以上眷属を失うぐらいならと
だが、心が折れかけたリアスを支えたのは一誠だった。
「火月と約束したんだ! 拳が握れる限り俺は最後まで戦う! お前なんかに部長は渡さねぇ!!」
戦意を失うことなく最後まで戦おうとする意志を見せる一誠にリアスも再び戦意を取り戻そうとした。
しかし、現実は残酷だった。
ここまでの戦いで既に一誠は限界を超えていた。
だけど、それでも、一誠は立ち上がった。
血反吐を吐いてでも立ち上がって何度もライザーに向かっていった。
誰が見ても勝負はついている。諦めても誰も責めることなどない。それだけ彼等は善戦した。
それなのに一誠は諦めなかった。
何度殴られて、蹴られて、吹っ飛ばされて、血反吐を吐いてでも立ち上がった。
ライザーもそんな一誠を無表情で相手をした。
リアスは止めに入った。だが、止まらなかった。
一歩、また一歩と勝つ為にライザーに近づく一誠は既に意識を失っていた。
それでも拳を握りしめて立ち向かおう。
リアスはそんな一誠の身を案じて涙ながら己の敗北を認めた。
「火月様、これを」
リアスとライザーとのレーティングゲームが終えてグレイフィアが火月に一枚の封筒を手渡す。それはリアスとライザーの婚約パーティの招待状だった。
「………………………………」
火月は無言でそれを受け取る。しかし、その表情は複雑そうだ。
「………………納得されていませんか?」
「そう言ったらどうにかしてくれるのですか?」
思わず苛立ちをぶつけてしまう。
「リアスお嬢さまは、御家の決定にしたがったのですよ? その意味がわからない貴方ではないでしょう?」
「わかっていますよ! だけど、それでも納得しろというのは別問題でしょう!! あの人は、リアス姫は俺と姉さまを救ってくれた恩人だ! その恩人が望まぬ結婚に強いられて納得できるわけないでしょう!!」
声を荒げる火月。
あの日、リアスと出会わなければ自分も姉も死んでいたかもしれない。リアスと出会えたからこうして姉と一緒に幸せな日々を送れている。
それなのにその恩人が幸せになれないなんて納得できる問題ではなかった。
「だけど、俺の勝手な行動でグレモリー家や俺の眷属、他の皆にまで迷惑をかけるわけにはいかない!」
自分一人だけなら迷うことなく行動した。だけど、今では自分一人だけで済む問題ではない。勝手な行動で他の皆にまでなにより、世話になっているグレモリー家まで迷惑をかけるわけにはいかない。
無力な自分に、矮小な自分に、憤る。
「ふふふ」
突然、グレイフィアは小さく笑った。
「貴方は本当に変わらない。いえ、だからこそ期待してしまうのでしょう」
「グレイフィアさん………………?」
「姫島火月」
「はい!」
唐突に名を呼ばれて思わず返事をしてしまう火月にグレイフィアは告げる。
「覚悟があるのなら会場に殴りこんできなさい。そして、私の義妹リアスをその手で救いなさい」
「! それは―――」
「期待していますよ?」
最後に小さく微笑んで魔法陣でジャンプしたグレイフィア。唐突なことに驚くも火月は迷うまでもなかった。
「ありがとうございます。グレイフィアさん、サーゼクスさま」
そしてリアスとライザーの婚約パーティ当日。
誰もが二人を祝福する会場で突如、扉は破壊音と共に吹っ飛ばされた。
誰もが驚き、視線をそちらに向ける。そこにいたのは巨大な扉を蹴り飛ばした態勢のままの火月とその後ろに黒歌とジャンヌ。
突然のことに騒ぐ会場で火月はライザーを指す。
「ライザー・フェニックス。リアス・グレモリーを賭けて俺と戦え」
「貴様! 自分が何をしているのか――――」
他の上級悪魔や衛兵が火月を止めようとするも黒歌とジャンヌがそれを邪魔する。
「まったく、しょうがない主様にゃ」
「まぁ、それでこそ私達のマスターよ」
妖術、聖剣で火月の行き先を作る二人に感謝し、火月はライザーとリアスに近づく。
突然のことに困惑する悪魔達。
「私が用意した余興です」
そのとき、一番奥にいた紅髪の男性―――サーゼクスが歩み寄ってきた。
「サーゼクスさま、これはどういうことでしょう?」
近くにいたライザーがこの場にいる悪魔たちを代表するかのようにそう尋ねる。
「実はね、ライザー。私個人としては今回の縁談に反対なんだ。ああ、勘違いしないでくれ。別に君に不満があって言っているわけではない」
「では、なぜ?」
「大切な妹の婿になるにはそれこそ強い者が相応しいと思う。そう、例えば私に傷を負わせた彼のようにね」
食えないことを笑顔で語るサーゼクスの言葉にライザーは納得する。
「……………………なるほど。つまりサーゼクスさまはリアスの婿に相応しい夫になる者の強さを証明しろ、と。そういうことですね?」
「ああ、その通りだ。期待しているよ、ライザー」
「いいでしょう。サーゼクスさまに頼まれたら断れるわけもない。なにより私も彼とは一度、戦ってみたかった」
不敵に笑うライザー。
サーゼクスの視線は次に火月に向けられる。
「さて、姫島火月くん。君の望み通り、ライザーと戦う舞台は整えた。だが、そこでリアスを賭けるというのであれば君にもリスクを背負って貰う」
「…………………なんでしょう?」
「そうだね。君が負けたら君を含めて君の眷属はライザーの従者になってもらおうか?」
「わかりました。それで構いません」
即断する火月にサーゼクスは変わらずに笑顔のまま。
会場の中央に急遽作られた空間。
その周囲を会場の悪魔たちが好奇の視線で見守っている。この空間にいるのはライザーと火月だけだ。
「開始してください!」
バトルを取り仕切る男性悪魔が戦いの開始を告げる。
「行くぞ、アルド!」
『応ッ!』
「
ドラゴンの力を具現化させた
―――『
鎧を身に纏い、四枚の翼を広げて両手には雷光の剣を構える。
ライザーも巨大な炎の両翼を出現させて、全身を炎が渦巻き、会場を激しい熱気に包み込ませる。
二人が動いたのはほぼ同時だ。
互いの翼を羽ばたかせて炎と雷光をぶつけ合わせる。ライザーのあり得ないぐらいの質量から放たれる不死鳥の業火に対し、同等の威力の雷光を放って相殺。
互いに初手が相殺されて火月は雷光の剣を投擲するもライザーはそれを躱して接近。炎を纏った拳が火月に迫るも火月も雷光を拳に纏わせてクロスカウンターの要領で拳を相手の顔に入り込む。
二人は同時に後退。すると、ライザーが。
「………………………………正直、お前がここに来ることには驚いた。お前は俺が思っている以上に賢い奴だ。あの結果に納得しなくても反論さえしないと踏んでいた」
「ああ、その通りだ」
「なら何故お前はここにいる? まさか、リアスの『
「かもな」
「……………愚かな奴だな、お前は。いったいあいつの何に影響されたと言うのだ? あの諦めの悪いブーステッド・ギア以外に取り柄のないクズに―――」
「黙れ」
その一言でライザーは強制的に口を閉ざされた。
突如放たれる重圧に似た彼の怒気とオーラに当てられて。
「諦めが悪い? ブーステッド・ギア以外に取り柄がないクズ? あまりふざけたことばかり言うと殺すぞ?」
怒りを込めた声音で告げる火月はライザーに言う。
「確かにイッセーは弱い。魔力も子供以下で、あらゆる方面で才能がなく、ブーステッド・ギアしか頼れる武器がない。だがそれでもあいつは諦めなかった。才能の無さを認め、弱さを認めても強くなろうと足掻いた。いや、足掻いている。自分がどれだけ弱いかわかっているはずだ、才能がないかわかっているはずだ。それでもあいつは諦めなかった!! それがどれだけ辛いかわかるか!?」
「リアス姫も、姉さまも、祐斗も、小猫も、アーシアも、黒歌も、ジャンヌも、勿論俺にだって少なからずの才能が、力があった! だけど、あいつだけが何もなかった!! ブーステッド・ギア以外何もな! それでもあいつは、イッセーは最後まで拳を握りしめて戦った!! 才能がないから、もう詰んでいるから、身体が限界を超えているからと諦めていい理由がいくらでもあったはずだ! それでも俺との約束を果たす為に、仲間の為に、リアス姫の為に最後まで拳を握りしめて戦ったイッセーを馬鹿にするな!!」
咆哮する。
「だから俺はあいつの成し遂げなかったことを成す! イッセーの為に、リアス姫の為に俺はお前を倒す!!」
「………………………………そうか。お前にそこまで言わせる存在なのか、あの『
火月の言葉を受けてライザーは真剣な表情となる。
「リアスの『
「そうはさせないって言ってんだろうが!! アルド!」
『へいへい、存分にやっちまいな!!』
アルドの了承を得た、次の瞬間。
火月は消えた。
「な―――」
消えた、そう思った瞬間、ライザーは地面に叩きつけられた。
「ガハッ! な、なにが………………ッ」
激痛が走る腹部を押さえながら顔を上げるライザーはつい先ほどまで自分がいた場所に火月が蹴りを放った態勢でいた。
それを見てライザーはようやく自分が蹴られたということを認識する。
「バ、バカな………………ッ! 先ほどまでとパワーもスピードも桁違いに上がってるだと!」
残像すら見えなかった火月の攻撃に困惑するライザーだが、火月は足に雷光を纏わせる。
「ガ!」
するとまた今度は背後から現れた火月の蹴撃を直撃する。
それは一方的な蹂躙だった。
ライザーは反応することすら許されずに雷光の力を纏った火月の蹴撃を受け続ける。
火月が持つ
そこに堕天使バラキエルから受け継いだ雷光を纏わせることでパワーもスピードも跳ね上げて強化される。
そこに悪魔の弱点である光が込められた強力な蹴りはいくら不死身と名高いライザーといえでもノーダメージでは済まない。それが連続攻撃なら尚更だ。
目視すら許されない連続攻撃。
しかも、その威力、速度は上がっていく。
処刑と言っても過言ではないその光景に誰もが畏怖する。
魔王に傷を与えたドラゴンの力を宿す姫島火月。その名を、強さを、恐怖を名前と共に心に刻んだ。
そして戦いは終盤。ライザーが次に火月を目視することができた時は既に再生能力も格段に落ちて炎の翼もまともな形をしていない。
「これで終わりだ」
右足に雷光を纏わせ近づいてくる火月にライザーはあわてふためく。
「ま、待て! この婚約は悪魔の未来の為に必要で大事なものだということをお前も理解しているはずだ!! お前はそれを滅茶苦茶にする気か!?」
続けて。
「お前だって今の立場は肩身が狭いはずだ! 純血の悪魔でないお前が突然上級悪魔になったことに関してよく思わない連中だっている! そいつらを黙らせる為にもお前には強力な後ろ盾が必要なはずだ!」
ライザーの言っている事は間違いはない。
その言葉の通り、火月をよく思わない連中がいることぐらい知っている。
「………………………そうだな。お前の言う通りだ。今回の婚約はこれからの悪魔の未来にとって必要なことぐらい理解している。だから、割って入るつもりはなかった」
「な、なら―――」
ライザーの顔に希望が差した、次の瞬間。
「だが、俺はこれからの悪魔の未来よりもリアス姫の幸せを取る」
選択した。
悪魔の未来か。
たった一人の少女の幸せか。
火月が取ったのは後者だ。
「リアス姫は俺と姉さまを救ってくれた。食べ物を、服を、居場所を与えてくれた。なにより、姉さまを笑顔にしてくれた。それが嬉しかった」
自分にはできなかった。
逃げ続ける生活のなか、たった一度も心から笑ってくれなかった姉に笑顔を取り戻してくれた。
一誠のこともある。だけど―――
「俺は恩人であるリアス姫を、リアス姫が大切する家族を、仲間を守る! その為に俺はお前を倒す!!」
雷光を纏った鋭い蹴りがライザーを貫く。
そしてライザーは意識を失って前のめりで倒れた。
誰が見ても明らかな勝利。火月はライザーに勝利した。
すると、ライザーの前にレイヴェルが現れて、無言で睨み何か訴えている。
それを見て火月は息を吐いて言う。
「ライザーに伝えておいてくれ。敗北を認めたくないのなら俺は逃げずに戦う、と」
伝言を任せて火月はリアスの元にやってくる。
「お待たせしました、リアス姫」
「………………火月」
鎧を解除して紳士のように振る舞いながらリアスの手を取って最後にこの会場にいる悪魔達に告げる。
「皆様方。この度は勝手な振る舞いをしてしまい、あまつさえ、パーティを滅茶苦茶にしてしまったことに関して心から謝罪をさせて頂きます。ですが、我が恩人であるリアス・グレモリーさまは返して頂きます」
頭を下げて謝罪の言葉を口にするも、自分の意思は曲げない強い言葉だ。
「もし、今回の一件でご納得いただけない方々がいらっしゃるのでしたら私はいつでもお相手します」
――――しかし。
「その時はお覚悟を。その魂にドラゴンの恐怖を刻み込んで差し上げましょう」
最後の最後まで自分の意思を曲げない火月はリアスを抱えて翼を羽ばたかせる。
紫色の空の下でリアスは火月の頬に手を当てる。
「バカね。たださえ貴方は立場が狭いのにあんなことをするなんて………………………」
「別にいいですよ。恩人に恩を返せると思えばその程度。それに、俺一人では貴女を救うことはできなかった。イッセーや皆、グレイフィアさんやサーゼクスさまがいてくれたからどうにかなったのですから」
「……………………今回は破談にできたかもしれない。でも、また婚約の話が来るかもしれないのよ?」
「その時はその時です。リアス姫自身が認めた人が現れるまで何度でも阻止してみせます。他でもない貴女の為に」
大切な家族である姉を笑顔にしてくれたヒトが現れるまで戦う覚悟はできている。
すると、不意に唇が塞がれた。
リアスの唇に。
「私のファーストキス。日本では、女の子が大切にするものよね?」
「………………………………これ以上にない褒美をありがとうございます」
顔を赤くしながら視線をリアスから逸らす火月にリアスは微笑む。
「ああそれと、明日から私も貴方と朱乃の家に住むことにしたから」
「はい?」
「一夫多妻制は避けられないけど、せめて正妻の座は手に入れないとね」
「あの、話がみえないんですが…………………?」
一人で勝手に話を勧めていくリアスに困惑する火月にリアスは満面の笑みで言う。
「上級悪魔であり、他の悪魔からも少なからず認められている実力者、グレモリーとしてではなくリアスとして愛してくれるヒト。それを見つけたわ」
ツン、と火月の鼻を突くリアスに火月は口に出して答えを言うまでもなかった。
「改めてよろしくね、私の
「………………………………」
色々と言いたいこともあるけど今は何も言わないでおいた。
取りあえずは一件落着。
めでたしめでたし。
………………………………………………ではなかった。
「改めてよろしくね、お義姉さま♪」
「あらあら、うちは厳しいですわよ? リアス」
「お前どういうことだ!? 説明しろ!! どうしてお前が部長の婚約者になってんだ!? おいしいところ全部持って行きやがって!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。イッセーくん」
「ぐすっ、部長さんが無事でよかったですぅ………………………」
「いつにも増して賑やかにゃ」
「………………………………ですね」
「まぁ、こういう日も悪くはないわね」
火花を散らし合う二大お姉様、火月の肩を掴んで激しく揺さぶる一誠にどうにか宥めようとする祐斗。リアスの無事に涙ながら喜ぶアーシアに、暢気に居間で寛いでいる黒歌、小猫、ジャンヌ。
いつにも増して騒がしくなる日常に火月は相棒であるアルドに助けを求めたが―――
『ま、諦めな』
あっさりと見放された。