母親が殺されて、父親と別れを告げた火月は姉である朱乃と共に家を出て、各地を転々とする日々を送っていた。
家から持ち出してきた二人の小遣い。それは母の誕生日に何かプレゼントしようと貯めていたお金を使って食べ物を買った。
だが、お金は有限だ。いずれ限界が来るもまだ十歳と九歳の子供を雇うところなどない。
取り柄といえば母から教わった除霊術と父譲りの雷光を操る能力。
そして火月は地殻龍アルドエイクを宿す
一秒、また一秒と時間経過と共に脚力を増加させていく
火月はこの
それでも幼い二人にとっては過酷な日々だ。自分達が普通の人間ではない異形の存在だと隠しながら動かないといけない。
それでも二人は生きている。互いを支え合いながら生き延びようとしている。
そんなある日、火月は姉である朱乃にある提案をする。
「悪魔の眷属になろうと思う」
その提案に朱乃は顔をしかめる。
悪魔はプライドが高い者が多いうえに悪魔と堕天使は敵対していることはアルドから教わったが、火月は悪魔が持つ『
悪魔、天使、堕天使の三つ巴の戦争で爵位を持った悪魔の大半が戦争で命を落とし、少数精鋭の制度を取ることにした。
悪魔は下僕を作ることで少数だけど強大な力を持つ精鋭を持つ。
そこからチェスのようなゲーム『レーティングゲーム』という自分の下僕を戦わせる競技が生まれて今では優秀な人間を自分の手駒にしようとしている悪魔もいる。
そして、火月は悪魔の眷属になる条件と引き換えに自分達の安全と生活を保障させようと考えている。
自分は堕天使の力も使えてドラゴンの力も宿している。悪魔側から見ても眷属に引き入れたい人材であることには間違いないと自負しているのだが。
「ダメ!」
朱乃はその提案を否定し、火月に抱き着く。
「…………………火月まで失いたくない」
涙声で呟く朱乃の言葉に火月も朱乃を抱きしめる。
万が一にも殺されるかもしれないという不安が朱乃を動かす。母親を失い、今度は弟まで失いたくないが為に朱乃も必死なのだ。
「姉さま。でも、俺達が生活していくにはこれしか方法はないよ」
今でも姫島家が自分達の存在を抹消しようと動いているはずだ。だから一刻も早く誰かの保護下に入らないと殺されてしまう。
だけど、自分達を保護してくれる方法といえばこれしかない。
教会関係者は論外として、堕天使側に行けば保護はしてくれるだろうけど、それでは朱乃の心が壊れてしまう。なら、悪魔と一か八かの交渉に出るしかない。
「大丈夫、姉さまは俺が守るから」
「………………………………うん」
なんとか姉を説得することができた火月は悪魔が縄張りとしているテリトリーに侵入し、その際悪霊に襲われていた人間を助けた。
そして二人はその町の捨てられた寺で悪魔が来るのを待っていた。
火月は万が一に備えて朱乃を隠し、
最悪でも姉だけでも逃がしてみせる。その覚悟を胸に潜めて待っていると現れた。
綺麗な紅色の髪をした、自分達とそう変わらない歳の女の子がやってくると、正面にいる火月に声をかける。
「貴方が身内のテリトリーに入ってきた侵入者?」
「……………………はい」
「どうして入ってきたのかその理由を聞かせて貰えないかしら? きちんと話してくれるのなら咎めたりはしないわ」
「その前に二つほど確認させてください」
「ええ」
「爵位持ちの悪魔が眷属を集めているのは本当ですか? それと悪魔は契約を絶対遵守しますか?」
「どちらの答えもYESよ。私はまだ『
「なら、取引をしませんか?」
火月は確認を終わらせて早速取引を行う。
「俺が悪魔のテリトリーに入ったのは自分を売り込む為。眷属になる為にこの町に侵入しました」
「それで?」
「俺は堕天使の力とドラゴンの
その証拠として黒い翼を展開させてブーツを見せる。
「貴女でも他のどの悪魔でも構いません。どなたかの眷属となって手足のように働きます。その代わり、俺達に身の安全と生活の保障を下さい」
「俺、たち?」
寺の中から朱乃が姿を見せる。それを見て彼女はどこか納得したかのように述べる。
「なるほどね。あのヒトたちが探している『堕天使の姉弟』というのは貴方達のことだったのね」
「「!?」」
彼女の言葉に二人は察した。
既に姫島家の者が悪魔と接触している。一年ぐらい前から自分達の前に執拗に現れる修験者の集団。
まさかもうこの町に訪れて悪魔と接触していたとは。
「いいわ、貴方の取引に応じるわ。だけど、縄張りの件に関しては私だけでは決められないから一緒についてきてちょうだい」
踵を返す彼女の後ろについて行く二人は緊張と警戒を解くことなく、彼女に縋るようについていく。
だが、その緊張と警戒は無意味だったということを数十分後に知る。
この一帯を一任しているアグリッパという悪魔は縄張りの件をあっさりと許し、更には自分達を追いかけていた修験者の集団、大叔父と交渉して条件付きではあるも命を狙われることがなくなった。
とんとん拍子でこれまで自分達に降り注がれてきた理不尽を次々と解消してくれるグレモリー家、それと火月の交渉に応じてくれたリアスには心から感謝した。
そしてリアスに連れられて冥界に足を踏み入れた二人が目にしたのは煌びやかで豪華絢爛な城だった。
その城でリアスの母、ヴェネラナに迎え入れられて二人は今までの生活が嘘のように思えるほどの世界に飛び込んでしまった。
レディ、紳士としての振る舞い、専門的な知識、勉強なども教えて貰った。
その中で火月は自分達を救ってくれたリアスの隣で楽しそうに笑っている姉の笑顔を見て心から安堵した。
だけど、全ての問題が解決したわけではない。
また、自分達を襲ってくる輩がいるかもしれない。
大切な家族をもう二度と失わない為にも火月は強くなる必要がある。
火月はリアスの両親に頭を下げて頼み込む。
自分を鍛えて欲しい、と。
リアスの両親は真摯な火月の言葉に了承。息子であるサーゼクスの眷属の方々から修行してもらえることになった。
戦い方を、魔法を、剣術を、戦術を、強くなる為に火月は己を鍛え続けた。
それから数年後、リアスが『
「私と戦ってみてはくれないかな?」
その提案に火月は驚いた。だって魔王ルシファーからそんな言葉が出るとは思いも寄らなかった。
更には―――――
「もし、君が私に一撃でも攻撃を当てることが出来れば君を特例として上級悪魔として迎え入れよう。もちろん条件付きではあるけど」
ありえない話を吹っかけてきた。
爵位持ちの悪魔の下僕になった悪魔が成りあがって上級悪魔まで昇格することは知っている。しかし、それは悪魔という長い生を受けて多くの功績を上げた者のみだ。
それをたった数年で功績もあげていない火月を上級悪魔にでもすれば間違いなく問題が発生することぐらい容易に想像できる。
そう思っている、と。火月の考えていることがわかっているようにサーゼクスがその疑問に答える。
「以前から君にいくつかの仕事を頼んでいたのは知っているね? 実はアレはね、他の上級悪魔が解決を断念した仕事なんだよ」
「はい?」
魔王相手に思わず言葉が漏れた。
確かに以前から難度が高いと思う仕事をやらされていた。恩がある上に報酬も物凄く良かった為に頑張って解決してきた。
まさか、それが他の、それも上級悪魔が断念していた仕事とは思わなかった。
「はっきりと言う、と上層部は君を悪魔側に引き入れようと考えている。それを確実な物とする為に君を悪魔に転生させようとしているんだよ。だが、今の君の実力はリアスを大きく超えている為に妹の眷属にはできない。なら、いっそのこと上級悪魔として迎え入れてみようという案があってね。アジュカも私と同様にその案に賛成した」
「しかし、それならリアス姫の眷属は―――」
「君のお姉さんがなる。彼女自身が私にそう告げてくれた」
元々は火月がリアスの眷属になるつもりだった。だが、修行してリアスの実力を超えた火月の代わりに朱乃がリアスの眷属となることになった。
「しかし、いきなり上級悪魔にするというのも異例中の異例だ。納得しない者も多くいるだろう。それを解消する為に―――」
「サーゼクス様、魔王様と戦え、と?」
「その通りだ」
他の悪魔達に自分の実力を示せ。暗にそう告げている。
「………………………………わかりました。その提案に受けさせて頂きます」
火月はその案を呑んだ。
いきなり上級悪魔になることに不安もあるが、そのぶん得るものも多い。
今こうして自分達が生活できているのもグレモリー家の保護下にいるからが大きい。もし、万が一に見放されるようなことになれば自分はともかく姉である朱乃の心が持たない。
ようやく手に入れた平穏な日々。それを崩したくはなかった。
そうして、多くの悪魔達に見守られながら魔王と対峙する火月は相棒に声をかける。
「行くぞ、アルド」
『応よ! 魔王と戦えるなんておもしれねぇ!』
両脚にブーツを装着し、サーゼクスも滅びの魔力を纏う。
「初めから全開だ!
目を覆いたくなるほどの光量が火月から発生する。そして、光が収まるとそこにはドラゴンの力を具現化させた
鎧の脚甲に装備、仕組みが集中していて腕に比べると脚甲の方が装飾が多めだ。そして、その背中には堕天使の翼を四枚広げて両手には雷光の力が込められた剣を作り出す。
――――『
姉を守る為に、家族を失わない為に、辿り着いて手に入れた力。
その力を持って他の悪魔達に証明する。
そして戦いが始まり、激戦を繰り広げる火月と魔王の戦いに誰もが息をするのを忘れるほど夢中となった。
だが、最後まで立っていたのは魔王。
しかし、その腕には確かな傷が存在していた。
この場にいる誰もが火月の実力を否応がなく認めて彼は特例中の特例として上級悪魔へとなった。
それから更なる年月が経ち、現在彼等は駒王学園の学生をしている。
自作から原作開始。そしてR-18予定