「火月、少しいいかしら?」
「どうぞ」
報告会が終えた夜にリアスが火月の部屋に尋ねてきた。
「お邪魔するわね」
部屋に訪れたリアスは見慣れた制服姿の恰好でベッドに座る。
「どうしました?」
「貴方と少し話がしたくてね」
そう言って自分の隣に来い、と目で訴えるリアスに火月はリアスの隣に腰を落ち着かせる。
するとリアスは火月の肩に頭を乗せる。
「小猫を抱いたそうね」
「あー、はい…………」
明後日の方向に視線を向けながら肯定する。
「気付いていたんですか?」
「ええ、小猫が貴方に好意を抱いていたのは知っていたわ。気付いていなかったのは貴方だけよ。それにしても私は抱かない癖に小猫は抱くのね?」
不服そうに頬を膨らませるリアスに火月の頬に一筋の冷汗が垂れる。
困っている反応をする火月にリアスは微笑を浮かべる。
「冗談よ。貴方が私のことを大切にしてくれているのはわかっているわ。でも、小猫たちのことも大切にしないとダメよ?」
「それは勿論」
即答する。
小猫だけでなく黒歌やゼノヴィアたちのことだって生涯大切にするつもりでいる。
「………………………もうすぐ、ゲームね」
「そうですね。相手はソーナ姉さま。戦力的にはリアス姫たちが有利でしょうけど、それを込みでソーナ姉さまは戦略を練ってくるでしょう」
「ええ、ソーナは手強いわ。それでも私は負けないわ」
負けるつもりなど微塵もない。勝つつもりで挑むリアスの意気込みに微笑する火月の手をリアスは手に取る。
「………………………ねぇ、少しだけ私の我儘を聞いてくれないかしら?」
「なんですか?」
「今だけ、今だけでいいから私のことをリアスって呼んでほしいの。貴方にそう言って貰えるだけで私は誰にも負けたりはしないわ」
リアスの手は僅かに震えていた。
いくら強がっても内心は不安はある。だから勇気づけられたいのだろう。
「応援している。だから頑張れ、リアス」
「………………………………うん」
リアスの震える手は止まっていた。
それからリアスから離れるまで火月はその場から動かなかった。
魔王主催のパーティにグレモリー眷属とシトリー眷属そして火月とその眷属も出席している。各御家の方々が行う交流会のようなパーティ会場ではリアスたちが到着する前に既に多くの悪魔達が和気藹々と会話を弾ませている。
「はぁ、息が詰まる………………………」
「ふふ、お似合いですわよ」
女性陣達(+ギャスパー)はドレス姿。一誠や匙は学校の制服を着ている中で火月だけは燕尾服を着ている。当然グレイフィアが用意したものだ。
『リアスの婚約者として恥ずかしくない恰好をしなさい』
有無を言わせない覇気を纏った言葉に頷くしかなかった火月はグレイフィアに着替えるのを手伝って貰い、更にはヴェネラナまでやってきて髪もセットされた。
「火月。あいさつ回りするわよ」
「はい」
リアスの婚約者として他の上級悪魔の方々にあいさつをするためにフロアを回る。
「これはこれはリアス殿それに火月殿。お二人の噂は聞きましたよ? ご婚約されたようでなりより……………ところで火月殿、まだ眷属は揃われていないようなら私が紹介しましょうか?」
「おおっ、リアス殿。相も変わらずお美しい! それに火月殿、聞きましたぞ! テロリストに加担した旧魔王の一人を御一人で倒したと! 流石ですな! 戦力に不安があるようでしたら私に相談してくだされ!」
「リアスさまそれに火月さま。ご婚約おめでとうございます。お二人がいればグレモリー家も安泰でしょう。しかし、もし眷属でお悩みの様でしたら私に一言ご相談を。良い方を紹介しましょう」
「ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきます」
あいさつ回りの殆どがグレモリー家と関係を結ぼうとする輩と火月の実力を見込んで保身に走る輩ばかり。そんな相手にも対応しないといけない為に精神的に余計に疲れる。
「面倒くさいって顔に出ているわよ?」
「失礼」
リアスの注意にすぐに表情を取り繕う。
すると二人の前に見知ったヒトが現れる。
「御機嫌よう、リアスさま、火月さま」
リアスの元婚約者であるライザー・フェニックスの妹であるレイヴェル・フェニックスが二人の前にやってきて挨拶する。
「御機嫌よう。ライザーは元気にしているかしら?」
「………………………兄は火月さまに敗北されてから塞ぎ込んでしまいましたわ。よほどリアスさまが取られたことがショックだったのでしょう。ま、才能に頼って、調子に乗っていたところもありますから、良い勉強になったはずですわ」
「………………………そう」
複雑な表情を浮かべるリアスの手を取る。
「レイヴェル殿。貴殿たちには申し訳ないことをしたとは思っている。しかし―――」
「ご、誤解なさらないでくださいまし! べ、別に嫌味で言ったつもりはありませんわよ!? それに今の私は誰の眷属でもございませんので!」
「どなたかとトレードをなされたので?」
トレードとはレーティングゲームのルールのひとつで、『
しかしレイヴェルは首を横に振った。
「いえ、元々私は形だけお兄さまの眷属でしたので今は誰の眷属というわけではありませんの。今はフェニックスの息女としてのレイヴェル・フェニックスですわ」
「そうでしたか。それは失礼を」
紳士的に謝罪を口にする火月にレイヴェルはコホン、と頬を薄っすらと赤く染めながら咳払いして尋ねてきた。
「………………………………ところで火月さまはどのような眷属をお求めなのか窺っても?」
「そうですね。
「………………………………つまり、悪魔社会に詳しく指揮が取れる方をお求めで?」
「ええ。まぁ、あくまでこれは私の理想ですけど」
「…………………そうですの」
火月の意見を聞いて深く頷くレイヴェルは「失礼しますわ」と告げて二人から離れて行った。
「………………………………決まったわね」
「何がでしょうか?」
「貴方の
意味深の笑みを浮かべるリアスに首を傾げる。
それからすぐに魔王のあいさつが始まり、パーティは順調に終わりを迎えた。
その後日。
グレモリー家に一人の少女がやってきた。
「レイヴェル・フェニックス。姫島火月さまの眷属となる為にやって参りましたわ」
火月の眷属になる為にレイヴェルが来た。
レイヴェルの登場にこうなることがわかっていたかのように息を吐くリアス。微笑む朱乃。苦笑いを浮かべる火月の眷属たちと祐斗。嫌そうな顔を浮かべる小猫。また美少女が、と悔やむ一誠に眷属が増えることに素直に喜ぶアーシア。それぞれの反応をするなかで火月は―――
「え?」
呆気を取られていた。
それからとんとん拍子でレイヴェルは火月の眷属、