火月の予感は見事に的中してしまった。
ディオドラ・アスタロトは『
だが、事前に火月が魔王に打診していたおかげもあって迎撃の準備はできていた。
そして火月達もリアス達を助ける為に北欧の主神であるオーディンと共にゲームフィールドに張られた結界内に侵入した。
「リアス姫! 姉さま! ここは俺達が引き受ける! 早くアーシアのところへ!」
「火月!? ええ、お願いするわ!」
リアスは火月達の登場に一瞬驚くもすぐにアーシアを助けようと行動に移る。
「イッセー。アーシアを必ず助けてやれよ」
「当り前だ!」
そう答える一誠に火月は微笑してその身に鎧を纏い、翼を展開させて雷光の剣を手にする。
「久々の大暴れ。お姉さんも本気を見せちゃう♪
かわいく笑むジャンヌの足元から大量の剣―――聖剣が生み出され、ジャンヌの身に纏う。
するとそこには龍をモチーフに聖剣によって作り出された鎧を纏うジャンヌの姿が。
ジャンヌが持つ
―――『
その力は複数の甲冑騎士を作り出す能力でもなければ複数の聖剣を操ることでもない。
聖なる力を一本の剣へ凝縮させて絶大なまでの力へと変換される。
「ハッ!」
一振り。たった一振りで旧魔王派の悪魔を一気に数十人を消し去った。
「まだまだ行くわよ♪」
振るわれる一振り一振りが悪魔にとって脅威そのもの。ただでさえ悪魔にとって聖剣は危険視するものなのにその馬鹿桁威力に悪魔達は戦慄を抱く。
「私も負けていられないな」
聖剣デュランダルをその手にジャンヌに対抗心を抱くゼノヴィアも悪魔達をデュランダルの餌食にしていく。
「火月。これが終わったらご褒美ちょうだいにゃ♪」
「はいはい。終わったらな」
黒歌も妖術、仙術、魔法。ウィザードタイプとしての本領を発揮しつつご褒美を強請る。
「レイヴェル! リリティファ! オーディンさまの護衛を頼む!」
「はい!」
「承知しましたわ!」
必要ないかもしれないが、万が一に北欧の主神に何かあるといけない。念には念を入れて二人に護衛を任せる。
「混血風情が!」
一人の悪魔が火月に魔力の弾を放つも火月は片腕でそれを払う。
「グレイフィアさんと比べるまでもない」
最強のメイドとの訓練で何度も死ぬ思いをしてきた火月にとって今の攻撃は痛くも痒くもない。
そしてその悪魔に鋭い蹴撃を叩き込む。
そして火月達は順調に旧魔王派を倒していくと不意にアルドが叫びをあげる。
『相棒! やばいぞ! 急いで赤龍帝のところへ行け!』
「アルド………………? いったいどうした?」
『このオーラ……………………間違いねぇ。
鬼気迫る声音で告げるその言葉が嘘であってほしいと願う前に火月も感じ取ってしまった。荒々しくも禍々しい、圧倒的なドラゴンのオーラに。
「あの、馬鹿!」
思わず苛立つ火月はこの場をレイヴェル達に預けてリアス達がいるところに向かって翼を羽ばたかせる。
近づけば近づくほどに感じ取れる危険なオーラ。そして火月は見てしまった。
赤い閃光が何かを消し飛ばした瞬間を。
その一撃で神殿は崩れ去り、その姿を目視する。
「あれが、
小型ドラゴンと化している赤き龍は天に向かって悲哀に包まれた咆哮をあげている。
そしてそのドラゴンより少し離れた位置にリアス達がいた。
「リアス姫!」
「火月!?」
リアスの傍で降りる火月。周囲を見渡してこの場に一人いないことに気づく。
「アーシアは……………………?」
その疑問に誰も答える人はいなかった。いや、答えたくなかったのだろう。だが何が起きたのかは、どうして一誠がああなってしまったのかは容易に想像できてしまった。
火月は己の手を強く握りしめて一誠に向かって歩み出す。
「火月、なにをするつもりなの!?」
「このままではイッセーは死にます。そうなる前に止める」
「そんなことをしたら貴方が――」
制止の言葉を投げようとするリアスの言葉よりも速く火月は一誠のところに向かう。
「火月!!」
悲痛交じりのリアスの叫び。それでもこれ以上誰かを失いたくはない。その想いが火月を動かす。
天へ嘆く一誠の傍までやってきて火月は言葉をかける。
「イッセー。俺の声が聞こえているか? このままだとお前はその力に命を削られて死んでしまう。だからその前に『
冷静にゆっくりと言葉を語りかける火月の言葉に一誠は嘆くのを止め、火月を見る。
「イッセー」
『相棒! 逃げろ!』
突然のアルドの警告と共に一誠は火月に攻撃した。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
殺意に満ちた咆哮をあげる一誠は火月を敵とみなした。
「イッセー!」
避けながらも友達の名前を呼ぶも反応はない。
「アルド! どうにかできないか!?」
『あったらとっくに教えてる! とにかく今は無理にでも大人しくさせるしかねぇ!』
「ちくしょう!!」
鎧を解除して極脚を纏う火月は防御を捨てて攻撃と速度を上げる。しかし、
宝玉から刃が出て来て火月を襲う。辛うじて回避するもその身に赤い線が走る。
「フォース・ドラゴニックキャノン!」
カテレアを倒したドラゴンのオーラの塊。直撃するも一誠は怯みすらしない。
「どうしろってんだよ……………………!?」
『逃げろ相棒! 今のお前さんじゃ
「友達を、イッセーを見捨てられるか!?」
『あ、おい!』
果敢にも
雷光も魔法もドラゴンの力も何もかも通用しない。
そして赤龍帝の兜に口が大きく開き、口内から放たれるレーザーが火月に放たれる。
『相棒!?』
叫ぶアルド。火月は咄嗟に防御魔法陣を複数展開させて防御するもその防御魔法陣は儚い音と共に砕け散り、レーザーは火月を襲った。
「がっ…………………ッ!」
吹き飛ばされるもレーザーの軌道を僅かに逸らせたおかげで辛うじてではあるも致命傷は避けることが出来た。だが、
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」
メキバキと嫌な音を響かせながら骨を砕かれる火月は痛みに耐えられず叫びをあげる。
そして地面に叩きつけらるも火月は這いつくばりながらも動く。
「………………………………くそ、俺はどうして………………………」
―――こんなにも弱い。
所詮は天から堕ちた天使の混血と地に這う龍でしかないのか。
天にいる龍には何があっても届かないと言うのか。
「それでも………………………俺は………………………」
諦めたくない。
助けたい。
どうにかしてあげたい。いやしたい。
大切な人を失う痛みを知っているから、守れなかったその辛さがわかるから、どうにかしたい。一誠を助けてやりたい。
―――けどできない。弱いから。
こうして地面に這いつくばうことしかできない自分があまりにも情けなくて憎たらしい。
母親の時もそうだった。
母親が死ぬ光景を見ることしか、仇を取ることしかできなかった。
「どうして…………………俺は、いつもこうなんだ…………………?」
肝心なところで何の役にも立たない。
強くなったはずなのに、あんな想いをしない為に強くなろうと努力してきたのに、どうしてこうなる?
『火月』
己の弱さに嘆くその時だった。
優しい声で自分を呼ぶ声が聞こえた。
「…………………………母さま?」
そこには自分と姉の母親が優しい笑みと共にそこにいた。
痛みのあまり幻覚でも見ているのか、それともあの世への迎えなのかはわからない。
ただ、ただもし会えたら言いたかった言葉がある。
「ごめん、なさい………………………俺が、もっと強かったら………………………」
母親に謝りたかった。それが幻であってもただ謝りたかった。
そんな火月の頭を朱璃は優しく撫でる。
『ありがとう、父さまを信じてくれて、朱乃を守ってくれて。そしてごめんなさい。ずっと貴方に辛い想いをさせてしまって……………………』
「母さま、俺は………………………」
『でももういいのよ。もう私に囚われてしまったらダメ。今の貴方には大切なヒトたちが沢山いるはずよ?』
「………………………………うん、いるよ。いっぱいいる。姉さまに父さま。リアスやサーゼクスさま、グレイフィアさん。両手で数え切れないほどいっぱいいる。こんな俺を愛してくれるヒトがいっぱい………………………」
『ならその力をそのヒト達の為に使いなさい』
「うん………………………」
涙ながら頷く火月に朱璃は満足そうに微笑む。
『愛しているわ、火月』
その言葉を最後に母親は消えた。今のが本当に幻なのかわからない。
誰も失いたくない。強くなりたい。だから弱い自分に仮面をつけて強くなろうと努力してきた。けどそれは違った。
自分を偽ってまで手に入れた強さでいったい誰を守ることができる?
本音も、想いにも蓋をして本当の自分を隠してどうする?
そんなこと母親は望んではいなかった。
「…………………………もっと、もっと家族四人で暮らしたかった……………………ッ! 母さまと、父さまと、姉さまともっと一緒にいたかった……………………!」
望みはただそれだけだった。
だけど母親を失った事で自分がどうにかしないといけないと思い込んでいたあまり、本当の望みすらも隠してしまった。
パキリ。
すると、自分で自分を縛り付けていた枷が剥がれていく。
あの日から火月は自責の鎖に縛られていた。だけどたった今それが解かれる。
すると火月の身体から火が噴き出る。
「何が起きたの!?」
遠くから火月の身体から炎が噴き出たことに困惑するリアス達だが朱乃だけはその炎の正体に気付いた。
「
それは姫島が信仰する神の名。その異能の火が弟の身体から発している。
これまでそんな才覚の片鱗すら見せなかったはずなのにこの場で目覚めたことに驚きを隠せれない。
すると朱乃の頬が誰かに撫でられた気がした。
懐かしくも優しい手つきに朱乃は撫でられた頬に触れ、涙を流す。
「母さま………………………」
いつも見守っている。そう言ってくれた気がする。
そして身体から火を発し、満身創痍の身体で立ち上がる火月。
『おいおい! 相棒! 今、お前さんの中に―――』
「アルド。謳おう」
『はぁ!? 何言ってんだよ!? まさか
「違う。これは俺達だけの謳だ。
その言葉を聞いてアルドは一瞬間を開けて笑った。
『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! そうか! そういうことか! ようやく吹っ切れたのかよ、相棒! いいぜ、そうことなら謳おうぜ! 赤龍帝も白龍皇も関係ねぇ! 俺達の力で全てを蹴り飛ばす!』
「ああ」
火月とアルドエイク。これは二人の
「我等、根源を覆すは―――」
『堕ちた天使の混血と地を這う龍』
鎧が鋭角的になり、有機的な形状へとなっていく。
「自責の呪縛を解き放ち、自由な空を仰ぐ」
『我等、天に焦れ空へ叫ぶ』
籠手が、脚甲が、兜が、両翼が、さらなる変化をもたらして形を変えていく。
「穢れし存在、否、我が身に流れるのは尊き愛の血」
『雷光を轟かせ、赤き朱色の火を宿す』
砂色の鎧が赤く、朱色に染まっていく。
「火之迦具土神の火を纏う堕天の翼を広げて」
『天へと羽ばたく翼と共に舞い上がる』
六枚の黒き翼に火が纏い、まるで朱色の翼に見える。
「『我等、二天龍を超える天龍へと成り上がろう』」
謳は終わった。
前よりも有機的なフォルムと化し、朱色の鎧に変化した。
火月は己の新たな鎧の変化と力に驚きながらも確信する。
「これならいける…………………ッ!」
『ああ! そして驚け!
頭の中に流れ込んでくるアルドの新しい力。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
攻撃してくる一誠の攻撃。先ほどまでは躱すことも精一杯だったが一瞬で
「ハァァァアアアアアアア!!」
雷光と火之迦具土神の火。そしてドラゴンのオーラ。三つの力が合わさったその蹴りは一撃で一誠を蹴り飛ばしただけではないその鎧を砕いた。
すると一誠は再び口内からレーザーを放ち直撃するも鎧には傷一つ負っていない。
「これがアルドが持っていた能力『金剛』。なんて防御力だ」
地殻龍アルドエイクが
『驚いてくれているのは嬉しいがそろそろやばいぜ!』
アルドの言葉に火月はこれ以上戦えば一誠の生命力が無くなり、死んでしまう。
だからこの一撃に全ての力を込める。
共に戦うドラゴンであり頼もしい相棒でもあるアルドの力。
父親から授かった雷光の力。
母親のおかげで覚醒した火之迦具土神の力。
その全てをここに。
右足に込められる三つの力が絶大なまでに引き上げられてその力を解き放つ。
「ヴァルンデット・シュート!!」
ドラゴンのオーラ、雷光、火之迦具土神。三つの力が合わさったその力が龍の姿をした波動となって
そして
「アルド! イッセーは!?」
『安心しな。気は失ってはいるが生きてるぜ。それに
何かぶつくさと考えているが今はそんなことはどうでもいい。
友達を助けることができた。それだけで十分。
火月はリアス達のところに戻るとそこにはヴァーリ達と死んだと思っていたアーシアがいた。
「ヴァーリ達が助けてくれたんだ」
祐斗がそう教えてくれる。
「そうか。ヴァーリ、ありがとう」
「別にいいさ。それに俺も面白いものを見せさせて貰ったしな」
ヴァーリはじっと朱色の鎧と化した火月の鎧を見て言う。
「『
「少なくとも今は勘弁してくれ…………………」
鎧を解除するとリアスが抱き着いてきた。
「ばか、心配したじゃない………………………」
「ごめん、リアス」
リアスを抱きしめて謝罪する火月。すると朱乃が笑みを見せながら近寄る。
「火月」
「うん、心配かけてごめん」
今もその前からずっと姉に心配をかけ続けてきた火月はそのことに謝罪すると朱乃もまた火月を抱きしめる。
愛する人達の温もりを感じながら全員が無事だったことに安堵する次の瞬間。
「う……………………」
「火月……………………?」
ドクン、と火月の身体に異常が起こった。
「うぅ、あああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
「火月!?」
突然体中から煙が放出して苦しみ出す火月の姿に戸惑い、困惑するリアス達。
「おいおい、どうしちまったんだ?」
「俺にもわからん。ただ言えるのは過ぎた力の代償かもしれない」
一誠を助ける為に不完全とはいえ
「部長! 火月くんの身体が!」
「………………………………どんどん小さく」
煙を上げながら火月の身体が小さくなっていく。もしかしたらこのまま消えていなくなってしまうのではないかと最悪な展開を想像するリアス達。だが、不意に煙は収まり、火月も叫びも止まった。
「………………………………か、火月?」
恐る恐る呼びかけるリアス。すると小さくなった火月はむくりと起き上がる。
その背丈は年齢で言えば3~4歳ぐらいの年頃だろう。ともかく身体に何かおかしなところがないか尋ねようとした時、火月の口から思いも寄らない言葉が出てくる。
「………………………………おねえさんたちは、だれ?」
「「「「「「「え?」」」」」」」
「ここどこ? 父さま、母さま、姉さまはどこ?」
予想外の出来事にリアス達はただ啞然とする。