ジャミルとの逢瀬に燃やし尽くし、
満足して逝きます…。
ルチル「さあ…ジャミル、来て…」
ここはジャミルの寝室。ルチルは、
生まれたままの姿でベッドに横たわっている。
ジャミルも、サングラスさえも外した全裸で
その傍らに立っていた。
ジャミル「しかし…」ルチルの生命力は
もう残り少ない。彼女を抱くことで、
さらに寿命を縮めてもいいものか?
それよりも安らかに最期を看取ってやる方が
慈悲なのではないのか…?
彼女はしかし、彼の眼を見据えて言った。
「勇気を出して…!私の体は、残された命は
あなたのもの…!」
…ルチルは汗の中に、あがき、うめき、
悶えて泣いた。そして…夜明けの光が窓から
射す頃に、彼女の体内に燃えていた
情欲の火が消えると、ジャミルの胸に
ぐったりと伏した。
その眼もとには隈が浮かび、
柔肌の色は鉛色に変色しつつある…
腰まで届く長い金髪はすっかり
赤茶けた色に変わり、
幾筋か白いものすら混じっている…。
生気が失われ、代わりに死が女体を支配し
始めているのだ…。
死相すら感じさせる彼女の姿…
しかし、その顔には満ち足りた表情が
浮かんでいた。
「私自身にもわかっていたの。今のこの体で
セックスなんかしたらこうなるってことが…
枯れかけた私って、みっともなくないかな、
ジャミル…」
「きれいだよ、ルチル、君は本当に綺麗だ…!」
「うれしい…まるで夢を見てるみたい。
もう思い残すことは何もない…
ありがとうジャミル。私が逝ったら、
この海に沈めてね。海の底では、
とても安らいだ気持ちでいられたの。
もう、あなたは過去の罪にとらわれた亡霊
なんかじゃない…。あなたの成そうと
していることを、海の底から
見守っているわ…さようなら…ジャミル…」
ルチルはジャミルの胸の中で眼を閉じ…
二度と開けることは無かった…。
「ルチル!!ルチル…!~~~~っ!!」ジャミルは泣いた…
全身の肌にドーランを塗られ
髪を白髪染めで染められたルチルが、
生前の美しい裸身のままで棺に納められ、
水葬されて逝く…。
ジャミル「今は一人にしておいてくれ…」
その日いちにち、彼は一人で甲板に立ち、
物思いにふけった…。
その後もローレライの海では、
時折魔女の美しい歌声を聴く人がいるという…。
しかし…
オルバ(テレパシーで)「オリジナルの生命反応が
ロストしたよ、兄さん」
シャギア「そうか、彼女がついに逝ったか…。
朽ちかけた身でよく15年も
持ちこたえたものだな。だがもう遅い。
ルチルは、彼女らは既にここにいる…!」
シャギア・フロストの目の前には、
無数の培養槽があり、現在も稼働している。
その中にはそれぞれ一体ずつ、
金髪ロングヘアーで年齢15歳ほどの
あどけなく美しい、全裸の少女たちが
こんこんと眠っている。その姿はルチルを
少し幼くしたような感じだ。
ここは連邦政府再建委員会の
ニュータイプ研究所の奥深く。
極秘のニュータイプ量産化計画の
実験場であり、シャギアの傍らには
薄い冷笑を浮かべたカロン・ラット所長と
フィクス・ブラッドマン卿がいる。
カロン「あんな枯渇しかけたオリジナルなど、
ジャミル・ニートに獲られてももはや
計画に支障はないわ。彼女から採取した
卵子とDNAマップから作ったクローンは
既に数千体に達している…」
シャギア「一体一体のNT能力は
オリジナルのせいぜい40~60%程度ですがね」
カロン「だが彼女らの能力による
精神波ネットワークが完成すれば、その力は
オリジナルのルチル・リリアント一人を
遥かに凌駕するわ。
そして、
LSN(ルチル・シスターズ・ネットワーク)は
既に完成まで秒読み段階にある…!」
シャギア「新連邦の未来は、前途洋々というわけですな」
ブラッドマン「素晴らしい!彼女らこそ
新連邦の力の象徴だよ!…しかし、
もちろん制御可能なように、
手綱はつけてあるんだろうね」
カロン「ええ、もちろんテスタメントによる
忠誠心の刷り込みと、パイロット技能
などの教育も予定通り行っておりますわ。
理想のNT兵士として申し分ないかと」
野望は終わらない。悪夢も終わらない。
そうルチルは、ルチルたちはここにいる…!
「ところで、スタンドアローン型の
№.666はどうしているかね?」
「ああ、“ティファ・アディール“と命名した
個体のことですか?順調に成長し
能力を伸ばしていますわ。
本人は何も知らされていませんけどね…」