「へー、エンデヴァーさん、焦凍くんを職場体験に呼んだんですね」
「そうだ」
「よく焦凍くん来てくれましたね」
「何言ってんだ!くるに決まってるだろう!」
「その自信がどこからくるか切に気になる」
「は?」
ヒーロー殺しが出た地区に移動中の車内
「ヒーロー殺しが出てる地区かぁ、私は会っても相手が人間である限り一発アウトだけど、エンデヴァーさん、なんか煽られたら変な対応しそう」
「変な対応?」
「丸焼き」
「ふはっ」
「ていうか、焦凍くん、エンデヴァーさんのこと嫌いすぎでしょ、別の車にわざわざ乗るなんて」
「大嫌いです」
「まぁ、私も便乗して別の車に乗れてラッキーだけど」
「しれっとしてますね」
「できる女なんてそんなものよ」
到着後
「私、のんびりと街に危険がないか練り歩く予定だったんですけど」
至る所で煙が上がってるのを見ながらエンデヴァーにいう
「そんな余裕はない!焦凍!事件だついてこいヒーローというものを見せてやる!」
そう言いながら、走っていくエンデヴァーさんの後ろについて行く
すると、唐突に焦凍くんが、スマホを見た
「ケータイじゃない俺を見ろ焦凍‼︎」
「そこは周りを見ろでしょ」
私がツッコミを入れてる間にいつのまにかどこに行くのか、踵を返した焦凍くん
「どこにいくんだ焦凍ォ‼︎!」
「江向通り4-2-10の細道そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援頼む、おまえならすぐ解決出来んだろ友達がピンチかもしれねぇ」
そう言いながら、かけて行った焦凍くん、それを見ると同時に視界の端に、逃げ惑ってる人たちを見つける
「あー!パニック起こしてる!行かないと!」
群衆を指差しながらそっちに行く
「お前ら自由か!?」
エンデヴァーさんが怒鳴っているのを背に左斜め前に走っていく
「そこー!人を押さない!」
怒鳴りながら駆け寄ると、パニック状態が緩和される
「自由だな!」
エンデヴァーさんがまた叫ぶ
「おい!鬼灯!避難誘導しながら騒ぎの中心まで行くぞ!」
「了解です!」
個性を撒き散らし、パニックを収めていく
「なんだこの怪物!?」
「脳無ってやつですよ!1年襲撃した」
消太さんを癒す時に聞いていたので、即答する
「じゃあ、主犯はヴィラン連合だな!」
「そうですね!」
そう言いながらも、流石のエンデヴァーさん、あっという間に脳無を焼いて、戦闘不能にしていく
「ナイスです!」
「にしても、数が多いな!その上個性複数持ちで厄介だ!」
「そうですね!けど私の魅力は脳無にわからないみたいで、お役には立てなさそうです」
「残念だ!」
「避難誘導、力の限りやらせていただきます!」
「行ってこい!」
脳無をある程度エンデヴァーさんは片付け終わったが、私は相変わらず、避難誘導を続けている
「焦凍のところに先に向かう!お前も後で来い!」
「はい!」
返事をしながら、催眠を振りまき、素早く安全に誘導する
「避難させる人数が多いー!」
そう叫びながら、避難しなければいけない区間から人をどんどん遠ざけていく
「よし!避難完了!焦凍くんの所へ行こう!」
そう決意して向かってる最中、まだ倒されてない脳無を見つけてしまった
「ゲッ、なんでまだ……」
「俺らの個性じゃ太刀打ちできないんだ!」
近くに居たヒーローが3人ほど居て、その内の一人が叫んできた
「こいつの個性はー!?」
「飛行する、足が鳥、口がガスマスクみたいになっている!」
「飛ぶことしかしない相手にどんなけ手こずって」
そう文句を言おうとしたところで、脳無の手が伸びてくる
「うわっ、もしかして、こいつ連れ去り専門!?」
殴ろうとしたより、掴もうとしてきたのを見て、3人にそう聞く
「さっき、上に持ってかれて、私、結構危なかったわ!」
「うわー、取り敢えずみなさん、離れて」
そう言いながら、背負い持っていた傘から刀を出す
「ほかにももしかしたら脳無が残ってるかも!そっちに行って」
「いやいやいや、君一人置いて行けないわ!」
「じゃあ、離れて居てください」
あっさりと、そこに居ろ宣言に変える
「え、あ、うん」
なんか、微妙な返事が返ってきた
そんなやりとりをしながらも、刀を構えながら、ジリジリと睨み合う
だが、睨み合ってばかりでは勝敗はつかないので、一度深く息を吐き出した後、一気に吸い込むと同時に、地面を蹴って刀を振りかぶる
たとえ、人間かどうか怪しくても、ヒーローに相手を殺す権利はないので、飛ばれないように、羽を狙う
だが、もちろん、向かってきた私に対して攻撃を繰り出してくるので、それはスレスレで避ける
「あっぶなー」
「気をつけて!」
「はい!」
またまた話しながらも、刀を振るう
ジリジリと削りながらやっていると、左腕を叩き折られてしまった
「何してくれんの!?」
文句を言いながらも、今までで一番深く傷をつけれた
そんな感じで、確実に羽に傷をつけていった途中
またまた、避けミスって腹の辺りに羽をぶつけられ、痛める
「痛いんだろうけど、もう良く分からない」
元々の体質か、そーゆーのには強い、けれど、やっぱり、狙いはずれ、その上
脳無が変なふうに体をよじったせいで、脳無の目を深く切ってしまう
「あっ、やっちゃった」
そう思いながらも、体の表面をなぞるように、また、傷を付けてしまう
「まぁ、仕様がない、うん」
そう自分を納得させていたら、唐突に、脳無が変な方向に視線を向けたかと思うと、羽ばたいて飛んで行った
「はぁ〜!?私の努力は!?そしてどこに行く!?」
羽を傷つけた割に飛んで行ったことに対して文句を言いながら、地面を走り、意地で付いて行く
体が痛むとかはないが、左腕が動かず最高速度までスピードを出せない
「脳無が残ってます!気をつけて下さい!」
まだそこに居たヒーロー達に怒鳴りながら、空を飛んでる脳無を指差して、走って行く
そして、視界の遠くにエンデヴァーさんや、ほかにも数人居るのを見つけた瞬間、空を飛んでいた脳無が滑空を始めた
「「みんな伏せろ!/伏せて!」」
誰かと声がかぶったが、みんな一様に地面に伏せた中、私は滑空しながら降りてくる脳無を迎え撃つため、さらに速度を上げ、刀を構える
焦凍君を追い抜かして、ガードレールの上に立ち、刀を構える
だが、脳無は、出久くんを捕まえ、空に舞い上がった
「私の魅力の通じない相手は嫌いー!」
「どーにかしろー!」
自棄になって叫べば、エンデヴァーさんの怒声が響く
かと思えば、焦凍くんが縛って連れていた男が、唐突に縄を抜け出し、脳無が垂らした血を舐めた
すると、脳無は体が固まり、落下してくる
しかも、連れられていた男は落下してきた脳無に飛び乗ったかと思うと、頸にぐさっと刀を一差しして、殺した
男が脳無を殺したおかげで、私は目を切ったことを無かったことにできると思いいたる
そんな算盤を脳内で叩いてるうちに、男によって緑谷が助けられる
そして、驚愕した、男がヒーロー殺しのステインだと気づいたからだ
今更ながら、全力で個性を使い、ステインを催眠、催淫状態にする
それと同時に、本名など含めた、いろいろな情報を取り込む
ステインが、緑谷を地面に放置したまま、私がいる方とは別方向にゆっくりと歩み寄りながら何か言ってるが、それは全て聞かなかった、というより、聞く余裕がなかった
むしろ、注意が前方にだけ向いててラッキーと思いながら、後ろから、近づき、直接肌に触れ、気絶させた
力が抜け、倒れたステインを抱えながら、何かを言われていたみんなを見ると、殆どの人が腰を抜かしていた
「へ?どーかしたんですか?」
そう尋ねながらもボロボロのステインの状態を確かめ、びっくりした
見た目以上に満身創痍だったからだ
「エンデヴァーさん!この人今すぐ集中治療室突っ込まないと死ぬ!てゆーか、肋骨肺に刺さってる!殺人鬼でも殺しちゃダメなのに!てゆーか、焦凍くんが縛って持ってたけど、この人こんな状態にした訳じゃないよね!?」
そう言いながら、一年三人を見ると全員居心地悪そうに視線を下にした
「愚か者が!?」
うっかり腹の底から怒号を上げる
「鬼灯!直ぐに救急車を呼ぶ!」
「了解、エンデヴァーさん!私は延命処置します!」
「任せた!」
左脇に肩を入れて抱えていたステインを横に倒し、頭の方に自分も座って上半身を抱き寄せる
「あんまりヴィランにはしたく無いんだけど、そうは言ってられないよねー」
そう言った後に、個性の回復を最大限まで高める
そして、ステインの体を更に抱き寄せ、耳元に囁く
「血染、お願いだから、死なないで」
そう言いながら、優しく抱きしめ続けていると、苦悶の表情が和らぐ
そんなことをしているうちに、周りに焦凍くん達や、その場にいたヒーロー達に囲まれる
ジッと周りに見られているが、気にせずに、全く愛しくないステインの頬を愛おしそうに撫でる
左腕使えないからやりにくいな、そんなこと思いながらでも、仕草は完璧な自信がある
「ねえ、死んじゃダメよ、私をおいて逝かないで……」
めちゃめちゃ興味深そうに周りに見られてるので、調子乗って、涙まで流しながら、ステインを再度抱きしめる
私の涙が、仮面を伝い、頬を伝いステインに落ちると、急速にステインの状態が良くなる
「へ?異常に回復してる、これだったら即刻集中治療室に叩き込まなくても、のんびり手術すれば大丈夫そうね」
「そんな奥義があるとは聞いとらんぞ」
近くに来ていたエンデヴァーさんに文句を言われる
「私も初めて知ったんだよ、エンデヴァーさん」
「どこまで自分の個性でできるか知っていた?」
「親しみを込めて名前を呼んだり、抱きしめたりしたら回復」
「それも俺は知らなかった」
睨まれるが、さらっと受け流す
「まぁ、言ってなかった気がしますね」
「後、血染ってなんだ?そいつの名前か?」
「はい、ステインの本名は赤黒 血染です」
「どーして黙ってた」
「何を?」
「知り合いなんだろ?」
確認のように聞かれ、衝動的に言ってしまった
「バカじゃねーのんなわけねーに決まってんだろバカだろ」
一息に言ってしまってからハッとする
「おっと失言すみません、その人の事知りたいって思いながら見ると異常に個人情報が脳内に流れ込んでくるんですよ、それはもう要らないってくらい」
あまり悪いと思ってないが、謝りながら、概要を伝える
「じゃあ、後で警察署で報告な」
「はい、でも先に病院行きたい、左腕これ多分折れてる」
そう言いながら、右腕で左腕を持ち上げてみせる
「うおっ、お前その状態で色々してたのか?」
状態の割に派手なことをしたので、結構引いた顔される
「はい、昔から痛みとかに強いんですよねでも、使えないのは不自由、後一発肋骨辺りに攻撃食らった、これどうなってるかわかっゴホッゴホッ、あれ血吐いた……意外と私もやばい?」
「鬼灯……お前はステインと仲良く揃って救急搬送だ」
「分かりゃした」
「親父、緑谷も結構大変な状態だ」
「そうか、じゃあ搬送しろ」
救急車の中、緑谷と赤華の会話
「この人の怪我って、出久くんと、焦凍くんと、天哉くんがしたんだよね?」
確認のために耳元で聞けば、顔を真っ赤にしながら頷かれる
私が耳元に寄ったのが恥ずかしかったのだろうが、救急隊員に話を聞かれるわけにいかないので、こうするしかない
「ルール違反なことだけど、私は間違いだとは思わないよ、私が同じ立場でも、絶対にするから」
エンデヴァーさんに秘密ね、と言いながら、唇に人差し指を当てると、さらに真っ赤になっていた
一通りの処置が漸く終わり、眼が覚めるなり、エンデヴァーさんが来てくれた
「まず、今は事件があった日の深夜だ、怪我は肋骨、胸骨骨折、内臓損傷、左腕骨折、病院に運び込まれた後の出来事はCT検査をして、この辺りはまだ起きとったな、次に麻酔をかけて集中治療室、けど、麻酔の効きが薄すぎて、普通の三倍投与、でも、今普通の人が目覚めるより早く回復することは最早驚異的、怪我自体は入院しないといけないのは、普通なら三ヶ月、けど、リカバリーガールが来てくれるからもっと早く退院できる」
入ってくるなり、ペラペラ詳しく状況を教えられる
「やったー!」
リカバリーガールが来てくれるなら、あんまり学校休まないで済むと思い喜ぶ
「後、医者曰くあんなに体が傷ついたのに、喋ったり歩いたり走ったりしたりできるのは異常だと言ってたぞ、あと治療後にこんなに呑気に話したりできるのも異常だそうだ」
「へぇ〜」
なんか、意外と人間って集中治療室ものの傷でも動けるんだなと思ってたら、それは異常らしい
「あと、この入院室の隣が焦凍と他の一年の入院室になっている」
この部屋個室なのに、隣は三人入る部屋なんだ〜とのんびり考える
「わかりました」
「それと、部屋の外に物凄く青白い顔しながらお前の名前を呼んでる男がいたぞ」
「もしかして、黒髪の耳とんがった男?」
思い当たりすぎて、聞いてみる
「ああ、そうだな」
「じゃあ、エンデヴァーさんが退室するときに、部屋に入れて下さい」
「わかった」
「雅っ!無事で良かった……」
部屋には入ってくるなり、縋り付くように私の手を取りながら、泣いてしまった環
「心配かけてごめんね」
そう言いながら手をしっかりと握り返すと、さらに泣いてしまった
「父さんと母さんもさっきまで居たんだけど入院する期間が決まったから、一度家に帰って日用品を取りに行ってる」
「そうだったんだ、みんなに心配かけちゃったなー」
「本当だよ、俺がどんなけ心配したかっ」
「本当にごめんね」
赤く腫れた目元をなぞり、涙を拭う
「そういえば、ミリオが電話してって言ってた、波動さんも、甲弓さんも、ミッドナイト先生も心配してた、後、リカバリーガールがイレイザーの二の舞だ、って言ってた…それと……」
「あー!待って、取り敢えず、凄い人数に心配されたのはわかったから、うん、そんなに一気に言われても困る」
怒涛のように名前を挙げられ、ストップをかける
「そうだね、ごめん……」
「環が謝ることじゃないよ、みんなに心配かけたのは私だしね」
「本当だよ……雅は周りの人を癒せるけど、その個性は雅自身にはあんまり効かないし……」
「え、その気になったら使えるよ?」
知ってるものだと思っていたので、首を傾げながら聞く
「え?」
「たしかに、人に使うより自分に使う方が消耗するけど」
「そうだったんだ」
意外そうな顔で頷いてる
「ハグとか親しみを込めた行為で少し回復するだけじゃないの?」
前、円になって確かめたときのことを思い出しながら聞く
「ないの、けど、催淫は怖くて薄っすらとしか使ったことないし、回復もやりすぎたらどうなるかわからないから少ししか使ったことないだけ」
「そうだったんだ」
「私、今まで個性に催淫が出てから一回もキャパオーバーしたことないしね、だからイマイチキャパ超えたらどうなるかわからないから、必要以上に使えない」
「へぇー」
「だから、ハグとか親しみを込めてもらうって方法で回復することが多いかな、後は空間に催淫かけて、ちょっと顔赤くして目を潤ませるくらいかな」
「成る程」
「というわけで、環、抱きしめて〜」
そう言いながら、右手を広げると、おずおずと優しく抱きしめられる
「はぁ〜、落ち着く……」
そう言いながら、首筋に顔を埋めると、落ち着く上、安心する
「それなら良かった……」
少し照れたような声色で言われる
そのまま、二人とも黙り、お互いの呼吸や心拍音しか聞こえなくなった
環に体を完全に任せ、ゆったりと目を閉じていると
寝てしまっていたのだろう……
気がつくと次の日の朝だった
枕元の棚に置かれていた自分のスマホを開けると、凄い数の連絡が来てる
メール、電話、LINE、全部合計したら幾つになるか考えたくもないくらいだった
みんなは普通に学校に向かっている最中位の時間だったので、ちゃっちゃといろんな人に連絡する
といっても、クラスLINEで謝って、お礼を言って、先生達の個人連絡先に一斉メールを送信しただけだ
簡易的とか誰もいわないでね
お父さんとお母さんには、ちゃんとみんなとは別の文章を送って、ママとパパにも送った
一通り送り終わると、思いのほか、時間がかかった
やっぱり左手を使えないと、文字を打つのが遅くなる
打ち終わった後に、ふと、隣の部屋の様子が気になってベッドから降りる
廊下に出ると、隣の部屋からぞろぞろなんか偉そうな人が出てきた
「っ!?」
「あ、君は仮免取得者だったね、だからおとがめは無しだ」
「はい、わかりました、ありがとうございます」
成る程、ステインを資格未取得者がボコった件についてきたのだろう
「君がいいヒーローになれるよう、応援してるよ」
「ありがとうございます」
「お邪魔しまーす」
ノックとともに三人の病室に入ると、右の奥のベッドに焦凍くん、左の奥に天哉くん、手前に出久くんが座っていた
「「「雅さん/赤華先輩/赤華さん」」」
三人三様の呼び方で呼ばれる
「どーも、三人共気が滅入ったりしてない?」
「してないです」
「俺もです」
「僕も」
「そう、なら良かった」
「あの、赤華さん」
みんなの返事を聞いて、満足して出て行こうとしたら、出久くんに呼び止められた
「雅さんって呼んで」
少しでも回復したくて、そう頼む
「み、雅さん」
「なあに?」
「あの、ありがとうございました」
頭をグッと下げて言われる
「ん?どーして?みんな揃って頭下げてるけど」
そう聞くと、三人がそれぞれ目配せをした後、天哉くんが代表で口を開いた
「ライセンス未取得者のぼ、俺たちがステインに付けた傷を治してくれたことについてです、警察の人たちが、もしステインが命を落としていた場合は俺たちを庇いきれなかったそうなので」
「へぇ、そうなんだ」
「ステインを傷付けた理由に俺は私怨が入っていたので……本当にすみませんでした」
「私怨って何?」
まさか、私怨でやったとは知らず、つい、顔をしかめてしまう
「俺には兄がいてその兄がステインにやられて、それで……」
さっきまで、こっちをみながら、しっかりと話してくれていたのに、途端に俯いて話してる
「へぇ、お兄さんのヒーロー名は?」
「ターボヒーローインゲニウムです」
「インゲニウムかぁ、あの、若いながらに独立して、サイドキックも多い」
「自慢の兄です」
「そう……そんなことがあったなら仕方ないわね、本当はルールに則って、罰せられるべきだけど、尊敬する兄がやられたら敵討ちたいよね」
問いかける文面だが、言い方は相手に答えを求めていない
「っ!?」
「どうして驚いた顔してるの?天哉くん、だって、君がしたのはそういうことでしょう?討ちたかったから討ったんでしょう?」
ジリジリと天哉くんの方に歩み寄りながら答えを求めていない問いをすると、それに合わせて、天哉くんの身体が硬直していってるのが、見て取れる
「で、討ってどうだった?スッキリした?気が晴れた?」
そこでやっと、ベッドのすぐ側まで歩み寄った
その上で、ベッドに腰掛け、さらに距離を詰める
「それとも、お兄さんが礼を言ってくれた?仇を討ってくれてありがとうって」
金縛りにあったかの様に、私から全く目を離せずに、ひたすら身を硬くしていた天哉くんの顔が、激しく強張った
そして、ゆっくりと俯いき、怪我していない方の手で掛け布団をきつく握りしめ、カタカタと震えている
「言うわけないだろう……兄はそんなヒーローじゃない…………仇討ちなんて……」
「分かってるじゃない、これに懲りたら、もう二度と同じ様な事しない様にね」
そう言いながら、頭を撫でると、顔がクシャッと歪み、涙が溢れてた
「はい……」
「あーもう、泣かないでよー、私が泣かしたみたいじゃない」
「雅さんが泣かしたんでしょう」
「焦凍くん、うるさいよ」
「俺は、轟くんや緑谷くん、それに赤…「私苗字では呼ばれたくない主義なの」……雅先輩に迷惑をかけてしまった……、ヒーローとして失格だ……」
言葉を遮って名前呼びを促す
「まだヒーローの仮免すら取ってないあんたが失格って烏滸がましい」
鼻で笑うと焦凍くんと緑谷くんに窘められる
「取り敢えず、みんな、この失敗を生かして、これから頑張ってねー」
そう軽く言いながら、ニッと笑うと、みんなもつられて笑ってくれる
「そーいえば、雅さんも入院してますけど怪我はどんな感じなんですか?」
焦凍くんが思い出した様に聞いてくる
「私はね、肋骨胸骨合わせて9本骨折、内数本が内臓を傷つけてて、後左腕の骨も折れてる」
「「「っ!?」」」
「そ、それって僕たちの中で一番安静にしとないといけない傷ですよ!どうして立ち歩いてるんですか!?」
緑谷くんが目を剥きながら聞いてくる
「だって、一人部屋って暇なのよね、勉強道具も、今日みんなの授業が終わるまで届けてもらえないし」
「というか、その傷って立ち歩ける程度の傷なのか?」
焦凍くんが天哉くんに首を傾げながら聞いてる
「胸骨や肋骨を骨折していると、呼吸するだけで激痛のはずだ」
「別に痛くないよ」
そう言いながら天哉くんのベッドから立ち上がり深く深呼吸する
「あ、やっぱり痛い」
痛みで、ふらつき、次は緑谷くんのベッドに腰掛ける
「けど、普通に呼吸する分には大丈夫よ」
心配そうにワタワタしてる緑谷くんに落ち着いて欲しくてそう言う
「でも、立ち続けるのはしんどいからお邪魔するね」
そう言いながら、ベッドに入るとズサっと離れられる
「え、なんでそんなに離れるの」
「えっ、あの、えっと……」
真っ赤になりながら、ボソボソと返答されるが、全く内容が聞こえない
「救急車の中でも思ったけど、出久くんってウブね」
面白くて、からかう様に言うとプシューと湯気が上がった
「そーだ、みんなクラスの話をしてよ、消太さんのクラスの話聞きたい」
「消太さん?」
「相澤先生のことよ、私先生全員下の名前で呼んでるの」
「そ、そうなんですか」
「ふふ、信じずに邪推してる?」
明らかに納得してない声なので、そう聞いてみる
「っ!?」
「あはははっ、わっかりやs…あ、ダメだ笑っても痛い……」
呻きながら、背を曲げると、出久くんに労られる
「落ち着いてください」
遠くから焦凍くんの声も聞こえた
「うん、じゃあ、仲良い子だけでいいから話してよ」
「仲良い子…………麗日さんかな?けど、僕なんかが仲良いって言ってもいいのかな……」
「麗日くんと緑谷くんは十分に仲がいいだろう」
「ああ、2人は十分に仲が良いと思うぞ」
出久くんの自信のなさに、2人が大丈夫だと言ってる
「で、お茶子ちゃんってどんな子?」
一度だけ食堂で会った茶髪おかっぱの子を思い出しながら聞く
「とっても優しい子です」
「13号が好きだって言ってたよな」
「後餅が好きだったはずだ」
出久くん以外は好きなものを教えてくれた
「へぇ、じゃあほかに仲のいい子は?」
「飯田くんと轟くん?」
「だと思ったよ、何?貴方達三人って片時も離れず仲良くしてるの?」
良くそのトリオで居るのを食堂で見かけたりしていたので、聞いてみる
「流石にそこまでではないです」
まあ、当たり前だが、焦凍くんに否定された
「そう、ニコイチならぬ3個イチみたいな感じかと思ったわ」
「違います」
出久くんも首を横に振って否定している
「違うか、てゆーか、もうクラスの説明終わっちゃったじゃん、何か他の話題ないの?」
「じゃあ、雅さんの仲良い人の話を聞かせてもらってもいいですか?」
「いいよ、私が仲良いのはね二人居て環とミリオって言うの、環はプレッシャーに激弱で、ミリオは元気が良いよ」
「プレッシャーに激弱……」
どんなに弱いんだろ……みたいな感じでそう言ってるので、付け足すために、口を開く
「そうだよ、だってね、直ぐに胃が痛くなって壁とお友達になるから」
「大変そうですね」
「うん、大変だと思う」
そんな感じで、一時間くらい話をした後に私は自分の部屋に戻った