スクールアイドル活動を終え、3年生になった我等が千歌っちと2年生になった泣き虫小僧の涼介。
十千万の臨時休業により家で留守番をする事になった2人は、お互いの気持ちを知る為の大切な時間を過ごしていく。
これは暇を持て余したバカップルの、バカップルによる、バカップルだけのアバンチュールを綴ったお話です。
シリアス?ねぇよ、んなもん。
2日連続投稿とか言った大馬鹿者です。
大変申し訳ございません⋯。
少しだけ言い訳させてください。仕事→取材→会社の飲み会→仕事→取材→会社の飲み会の毎日で、完結させる時間が微塵も取れませんでした。
はい⋯みっともないですね⋯。
何はともあれ、無事に17645gの黒歴史が産まれました。
本編からいらっしゃった読者様。お待たせ致しました。
興味本位でいらっしゃった読者様。千歌沼の奥底でお待ちしております。
さぁさぁ挨拶はこの辺で!
頭の悪いノリでお送り致します『forあだると♡』の世界、どうぞごゆっくり!↓↓
肉体的な死。
精神的な死。
死ぬかもしれないと思った時、人はこの2種類のどちらかが当てはまることだろう。特に後者なんてのは挙げれば色々ある筈だ。
キツすぎて死にそう、とか⋯追い込まれた挙句に心が死んじまう、とか⋯。それは誰かに対して思う時だってあるよな。他人の行動が自分に影響を及ぼして死にそうだって感じる事は多々ある。勿論悪い意味ばかりじゃない。人から愛されて死ぬほど幸せだ、とか、もう死んでもいいくらい満足した、とかさ。でもそういう時って大体はどっちか片方なんだ。そりゃあ⋯たかが高校2年生の言うことだから『人生の何を知ってるんだ』って言われたら何も言えない⋯辛い事があって精神的に死を迎えてから、自ら肉体的な死を選ぶ事だってあるだろう。もう十分楽しんだから最期を飾ろうという時だってあるだろう。
じゃあ⋯今の俺はどういう状況なんだろうな。
「すー⋯すー⋯⋯Zzz⋯。」
「⋯⋯ひぬかもひれない。」
眼前にある布。圧迫されて呼吸のしづらい現状。夏の熱気。
今日はこの夏最高気温をたたき出すと、朝からニュースでしつこく報道されている⋯そんな休日だ。時刻はまだ午後2時。部屋の窓から差し込む太陽の光、夏の熱気⋯それらは俺の精神をジリジリと追い詰めてくるのには充分すぎる程の脅威だ。
息苦しさで目を覚ましてしまった俺はまず、自分が現在直面している事態を把握しなければならなかった。昨日一緒に寝ようと言ってくるなり布団に潜り込んできた大切な彼女。高校3年生になっても、彼女の性格は全く変わってはいない。子供の様に無邪気な笑顔と純粋な心で俺の理性さんを手玉に取り、掌の上で弄んでくる。今だってそうだ。昼まで寝た後に昼飯を食い、『2度寝の時間』とか言ってこうですよ。
全くもって恐ろしい⋯。
薄着1枚で俺の顔をHoldingしながら胸に押し当ててるんだもの。
それでいてぐっすりなんだもの。
剥がそうにもお腹出ちゃってるから変に触れないんですもの。
いや⋯最後のは⋯⋯うん。
何にしても抜け出さない事には始まらない。この人の匂いと感触と温みが確実に俺の理性さんを縛り上げていく。ある程度時間が経つとそりゃそういう事を考えちゃうわけですよ。そんでもってこの人がこの時期に下着を付けない事も知ってるんですよ。
世の男子中高生諸君⋯分かるだろ?特に女性経験の少ない
⋯⋯反応しちゃうんだよ。
「⋯どうひよう⋯⋯ごめん、千歌───。」
「ふぁっ⋯。」
上から聞こえた甘い声に思わず動きを止める。引き剥がそうと思ってお腹を触ったのが不味かったらしい。主に俺が。擽ったいならまだ分かるが⋯何故この人は益々HoldingするPowerがStrongになるのか?Why Japanese People??
視覚、嗅覚、聴覚。五感の半分はみかん色に侵食されてしまった。
「やべ⋯ホントに⋯⋯⋯。」
「んっ⋯りょー、すけぇ⋯⋯Zzz⋯。」
⋯⋯⋯死ぬ。
「だぁあああああああっ!!!!」
「わぁっ!?あだっ!!」
千歌の両手を掴み、力任せに布団の向こう側へと突き飛ばした。だって死にそうだったもの。あれで死ねるなら本望に等しいものは感じたけど、知らない爺ちゃん婆ちゃんに微笑まれて手招きされたところで、川は渡れないっ!!
「痛った〜⋯⋯何するのりょーくん、って⋯あれ?りょーくん?どこ??」
突き飛ばした反動をそのまま自分の寝返りに応用した結果、俺は彼女の目の前から姿を隠すことに成功した。
⋯出れねぇ。
「ん〜?先に起きちゃったのかな?」
「いや⋯ここに居るよ⋯。」
「何してるの?」
「超楽しい事。」
「そっかぁ⋯泣いてないで出てきなよ。」
「グスッ⋯出られません⋯!」
呆れた笑いをしながら、彼女は俺の手を引っ張りあげてくれた。何とか上半身を起こす事が出来たし息子様の反応も落ち着いてきたようで⋯取り敢えず一安心だ。
「はぁ⋯おはよ、千歌。」
「おはよう、りょーくん♪」
布団の上でうつ伏せになりながらそう声をかけてくれる彼女。付き合い初めた頃に比べると、ほんっとうに少しだけ大人びた雰囲気が出たと思う。
あれから一年の月日が流れたんだ。当然といえば当然なのかもしれない。千歌達のスクールアイドルグループは大会で優勝した。けど学校の統廃合は変えることが出来ず⋯俺や宗弥の居た高校と千歌の居た高校が統合してしまったのは半年前の出来事。短い時間だけれど、本当に色んな事があったと思う⋯。果南ねぇやマリーさん、ダイヤさんはそれぞれの道を歩んでいったし、善子と宗弥の2人も不思議な距離感のままよろしくやってるみたいだし。まぁあの2人がつるんで俺をからかう時はろくな事が起きないけど⋯今は今で楽しい日々を過ごしてると、思う。
「へへへ⋯。」
「ん?どうしたの?」
「んーん。りょーくん、大きくなったなぁって⋯♪」
大きくなったなぁって⋯。
大きくなった⋯。
大きく⋯。
ナニが??
「そっ!?そそそそそんなわけないじゃないかぁ〜あっはははははは!!!!」
「え?でもこの間自分で身長伸びたって⋯。」
「身⋯長⋯⋯?あ、はい⋯伸びました。」
あぁ〜〜〜〜〜〜⋯死にたーい♪
「ふふっ、変なりょーくん。私顔洗ってくるね。」
「あ、うん。分かっ───。」
千歌が立ち上がろうとした瞬間⋯それは起きた。何故こうなると気づかなかったのか。何故この隙間に挟まってしまったのか。
うつ伏せの姿勢から起き上がろうと腕を伸ばした彼女の無防備な姿⋯襟の所から見えてしまったのだ。付けるべき下着を纏っていない、そのままの彼女の胸が。
「2度寝しちゃダメだからね!ちゃんと起きてくるんだよ〜!」
右手を振りながら下へ降りていった彼女を、俺はただ黙って見送ることしか出来なかった。
自分の見てしまったものの衝撃が強すぎて。
彼女に対する罪悪感が激しくて。
自分の欲が再び出そうになる事に酷く呆れてしまって。
俺⋯あれに頭突っ込んでたんだよなぁ。
「⋯下着、付けて下さい⋯⋯。」
一人きりの部屋で呟いた小さな願いは、彼女に聞こえるはずが無かった。
◇
歯を磨き、顔も洗い終えた俺達は再び部屋へと帰ってきた。たわいも無い会話をしながら『何しよっかー』なんてミーティングをして⋯。
この休日は十千万が臨時休業の日である。シーズンオフで珍しくお客さんが居ないと言う事と、志満ねぇと美渡ねぇも2人で出掛けているから。帰ってくるのは明日だし、その間は俺と千歌、そしてしいたけが留守番をすることになったのだ。つまり⋯あれだ。ラブコメとかで良くある『恋人と家に2人っきり!きゃっ、どうしよう!♡』(+1匹)という展開である。
こんな感じの日は今まで何度かあった。けどそういう時って余り大それたことをした覚えは無い。せいぜいちょっとキスして満足するくらいだったんだ。それなのに⋯何故か今日に限っては俺の心がソワソワと落ち着かない。さっき見てしまったもののせいもあるんだろうけど、どこか大人びた彼女の姿は、昔程長く直視出来ないものになってしまった。誰だ、時のオカ〇ナ吹いたやつ。
「りょーくん、何したいー?」
「千歌と一緒なら何でもいいよ。」
「真面目に考えてよ〜⋯。」
「大真面目です。」
「あー⋯うん、そうだったね、君はそういう子だったもんね⋯。」
おやおや分かっているじゃあないですか千歌さん。そうですよ、俺は千歌っち好き好き大好きっ子ですよ。同じ空間でただゴロゴロ転がってるだけでも至福のひとときなんですよ。
まぁ⋯流石にこの間部屋でやった『おこりんぼ大会』はやり過ぎたよ。鼻血垂れ流しで気絶したのは記憶に新しいからな。
「⋯も⋯ない⋯日⋯⋯。」
「ん?」
「えへへ⋯何でもない。」
何でもないと言いながら俺の足の間にすっぽりハマる様に座って背中を預けてきた。何でもないって何でしたっけ?どうしてそんなに耳が真っ赤っかなんでしたっけ??
「好きだよね、ここに収まるの。」
「千歌の特等席なのだ♡」
「ははっ、いつでも空いてますからね。」
そんな会話をした後、彼女からの言葉は無くなった。1分か、2分か⋯体感は5分位に感じたこの静かな時間は、彼女が俺の両手を身体の前に持っていった事で終わりを迎える。
最早彼女の為のシートベルトになってしまった俺の腕よ。2つの柔らかなエアバッグの感触に呑み込まれるものか。
消されるな、この理性。忘れるな、我が理性。
幸せの絶叫は、今じゃない。
「りょーくん。」
「何?」
「⋯⋯ギュって、して⋯?」
あ、今だわ。
ファーーーーーーーーーーーーーッ!!↑↑↑↑
「あ、あぁ⋯分かった。」
持っていかれそうな理性さんを何とか留まらせながら、彼女の背中に身体を密着させる。丁度今ぐらいが最高気温だと思う。冷房なんて首を振り続けてる扇風機ぐらいしかないんだから、勿論汗もかく。
彼女の独特の柔らかさと鼻腔を犯す甘い柑橘系の匂いが、徐々に俺の大事なものを奪っていくんだ。
慣れたと思ったけどやっぱりまだ恥ずかしいのか⋯何にせよ、今日の千歌は少し様子がおかしい。
「りょーくん⋯1つ、聞いても良いかな⋯⋯。」
「ど、どうぞ??」
それはまさかの一言。
彼女の口から出るのが信じられなかった言葉。
「りょーくんは⋯わ、私と⋯⋯シたいって思った事⋯ある?」
「⋯⋯へ?」
「その⋯⋯えっ⋯エッチ⋯⋯。」
油性ペンで塗ったように赤くなりきった彼女の耳だけで、今どんな顔をしてるのかぐらい想像がつく。けど自分の耳を疑うのも無理は無いさ。
だって今までそんな事一度も聞いたことが無かったから。
恋愛ドラマで顔を真っ赤にしてしまうぐらい、彼女がピュアッピュアな事を知ってるから。
ふにゃふにゃになったアホ毛と真っ赤な耳。そして俺の手をしっかり握りしめてる震えた手。
それを目の当たりにして。勇気を持って聞いてくれた質問を聞かされて。俺の答え⋯それは───!!
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はい。」
嘘はっ!!づげまぜんッ!!!!
「っ⋯そう、なんだ⋯⋯。」
再び訪れた沈黙。
恥ずかしさのあまり、言葉を発する事が出来ない。幻滅された?何を言えばいいんだ?というか何で聞いてきたんだ?それを俺はどう受け取れば良いんですかっ!?
ヤバイ⋯心臓がどんどん速度を増していく。あぁ⋯母さんや。貴方の息子の息子⋯いや⋯孫は、どうしても『おはよー』をしたいみたいです。
こいつが触れた瞬間⋯全てが、終わる。
「あの⋯千歌⋯?ちょっとだけ⋯離れてもいい、かな?」
「ぇ?」
「ほ、ほら暑いし!?俺も汗かいてるからあんまり密着するのは迷惑かな〜ってさ!!」
「私は気にしないけど⋯急にどうしひゃうっ!!」
あ⋯⋯死にました。僕は、死にました。
「い、今⋯何か腰に当たって⋯。」
「⋯息子が粗相を⋯⋯。」
「む、息子って⋯りょーくん何言っ⋯て⋯⋯。」
特等席から抜け出し、俺の方を振り向いた千歌は真っ赤になりながら固まってしまった。そりゃそうなりますよ。
だってテント張ってるんですもん。
夏だからキャンプしよーねって事かな♪
やかましいっ!!
こうなるなって方が無理だっつーの!!
「⋯⋯⋯⋯。」
「んっんん!!言い訳をさせて下さい千歌さん。これは男性特有の生理現象であって実際問題不可抗力的な部分の方が大きく、彼はよく私の意思に反した行動を───。」
「りょーくん。」
「はい。」
「こっち⋯来て⋯。」
「はい。」
ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。これ本当に終わったんじゃない?やましい事考えてましたって言ってるようなものじゃないのかい?あんなに真っ赤だったのに、急に彼女さんはスンッてなってしまったよ?
何も言わずに千歌は布団の上に座った。その隣に腰掛けると、先程までのスイートタイムが嘘のような静けさが部屋の中に充満する。ただ、そっと彼女が手を繋いできた。
「⋯千歌?」
「⋯⋯⋯。」
彼女は何も言わない。指を絡ませ、恋人繋ぎのまま、自分が下になるように俺の体を引き寄せ───布団へと倒れ込んだ。
顔の横にある繋がれた手。真っ直ぐにこちらを見てくる赤色の瞳に吸い込まれるように、殆ど無意識に顔を近づけていた。
いつも通りならここで軽く口付けを交わして、『暑いね。』とか『どうしたの?』とか⋯笑い合ったりするんだろう。⋯しかぁし!!今の俺はそんな事を気にしていられるほど余裕は無い。何なら話しかけてあげられるだけの余裕も無い!!
だって⋯⋯俺の左脚がこの人の下半身にあるんだもん。両足の間にいるんだもん。ちょっと動いたら⋯多分、当たるんだもん。
しかも恋人繋ぎだよ?恥ずかしながら初めてしたんだよ?
やっべぇええっ⋯!何で顔近づけちゃったの俺ぇ⋯!!無表情気取ってるけど冷や汗かいてきたんですが!手汗とか大丈夫かな!?変な顔してないかな!?
「⋯りょーくん。」
ぉぉぉぉ落ち着け俺っ!!頑張れ、大丈夫だからっ!!童貞だけど童貞らしさを捨てろっ!深呼吸⋯深呼吸しろ⋯あぁあああ駄目だっ!今ポーカーフェイスしてんだっ!!
「りょーくん。」
おっ⋯突っ張ってる左腕君や。そろそろ限界かい?そうだな。俺も限界が近い。プルプルしてるけどもう少しだけ耐えてくれ?その間に俺も何か対策を───。
「⋯⋯⋯ばか。」
「あふん。」
虫でも払うかの様に、彼女は空いている右手で俺の左肘をアタックした。限界を迎えていた俺の肘が耐えられるはずも無く、あえなく千歌の上に崩れてしまった⋯勿論、息子さんは彼女の下腹部に密着する形で。手を繋ぎ、右手は俺の背中を這うように、そっと後ろに回り、抱き締められる。
「ねぇ⋯
彼女の声が。
俺の名前を呼ぶ声が。
耳のすぐ横で囁かれ、身体が一瞬だけ震えた。反射的にほんの少しだけ距離を取ろうとしたものの、後ろに回された右手がそれを許してはくれない。
「すき。」
「っ⋯⋯。」
「すきだよ。」
「待っ、て⋯。」
「涼介の事、だいすき。」
自分がこんなにも耳を責められると情けないとは知らなかった。聞き慣れた筈の無邪気な彼女の声は無く、自分を受け入れてくれるかのような大人びた彼女の声が、耳元で好きだと囁いてくれる。その度に自分の『性』は反応をしてしまう。
心臓が⋯破裂しそうだ。血液の循環ポンプとしての役割が、普段の2倍にも3倍にもなっている胸は、彼女に囁かれる度にズキズキと痛む。何故こうなるのか⋯その答えを、俺はまだ持ってはいない。恋人繋ぎをしていた手を解いた彼女は、そっと俺の頬に両手を添えて───言った。
「いいよ。」
パキリ、と音を立てる。
「いいって⋯何、が⋯。」
「分かってるくせに。」
彼女が口を開けば開くほど、俺の中の大切な物はパキパキと音を立てていく。凍ってしまった水溜まりを、無邪気な子供が楽しげに踏み割っていくようだ。
「涼介のしたい事。考えてる事。全部、良いんだよ。」
駄目だ。
「私、君と居て凄い楽しかった。毎日がドキドキでワクワクで⋯でも、自分が思ってる以上に⋯ワガママだって気づいたの。」
それ以上は、駄目なんだ。千歌。
「私は、君の優しさに⋯気持ちに⋯全部に包まれたい。弟みたいな君じゃなくて、1人の男の子としての君に。全部受け止めて、全部分かってあげくて⋯全部を、教えて欲しいの。だから───。」
きっと⋯我慢できそうにないから。
「おいで?涼介。」
割れた。
大切にしなくてはいけなかった何かは、音を立てて割れた。
彼女の首元に口付けをしたのは、ほぼ同時だった。
「んっ⋯⋯。」
軽い口付けをした後に、彼女の首筋に舌を這わせていく。ゆっくり。早めに。不規則に。鎖骨まで行った時、甘噛みをする。その度背中に回された彼女の腕が身体を締め付けてくるが、拍車をかける要素でしか無かった。汗と唾液で濡れた彼女の鎖骨付近を、強めに吸うようにしてキスをする。少しだけ痛んだのか、彼女は声を押し殺していた。
「⋯付いた。」
「何、が⋯?」
「キスマーク。千歌は⋯俺の、恋人だから。」
「⋯⋯うん。」
小さく、恥ずかしそうに頷いてくれた彼女に、キスをした。その時、俺の視界にはある物が映った。紅くなっている彼女の小さな耳。
どうだろう⋯散々愛を囁いて貰ったんだ。『お礼』はした方がいいに決まっている。
「んっ⋯りょー、くん⋯?」
「なに?」
「何で⋯ぁぅ⋯⋯耳、触って⋯。」
「⋯何でだと思う?」
擽ったそうにしていた千歌はその言葉に目を見開き、必死に抜け出そうと両手で俺の胸を押したり、モゾモゾと足を動かしている。その動きの1つ1つが愛くるしかったが、下になっているのも俺が密着しているのも全てはこの人から始まった事だ。
策士、策に溺れる⋯南無。
「千歌。」
「ひぅっ⋯!」
「俺も好きだよ、千歌。」
「やぁ⋯!ぅ、ぁっ⋯。」
「愛してる。」
離さないという意思表示も兼ねて、彼女の頭を自分の方へと近づけた。殆どこの人の耳に唇が当たりそうな距離で囁く。
俺の胸を押していた両手はその動きを止め、きゅっと俺の服を掴んできた。分かってやっているのか、ほぼ無意識なのか⋯彼女の足は俺の足を逃がしちゃくれない。逃がしてくれないのなら⋯多少当たっても、それは『事故』だ。
「んっ⋯!」
「⋯ごめん、千歌。
涙目になりながら、彼女はジトっとした目で俺を見た。自然と、笑いが込み上げてくる。
それを気付かれたくなくて。
見られたくなくて。
彼女の寝巻きの中へ、そっと指を這わせた。
「りょー、くん⋯⋯。」
「うん。」
彼女が解いた手をもう一度しっかりと掴み、ゆっくりと手を上へと動かしていく。
脇腹。
背中。
そして⋯久しぶりに出会ったあの日から度々包まれていた、この人の胸へと。
「んっ⋯⋯」
この猛暑で汗をかいているというのにも関わらず、絹のようなすべすべとした肌触り。適度にハリがあるのに、ふにふにとした女性特有の柔らかみ。熱くなった体温が、掌を通して伝わってくる。
自分は今、大切な彼女と『そういう事』をしているという現実が、必然的に自分の呼吸を荒くしていた。
乳房を触られ、時折切なそうな顔をしているのに⋯千歌は、俺の呼吸が荒くなった時、必ず手を頬に添えて微笑んでくれる。それが、嬉しかった。愛おしかった。
⋯もう少しだけ、甘えたくなった。
上下共に、青地に白のボーダーラインが入った彼女の寝間着を託しあげると、先程まで自分が触っていた彼女の乳房が姿を現した。淡い桃色の小さな果実のような先端は固く張り、自分が少しでも彼女に尽くせたのだと嬉しく思えた⋯勝手かもしれないけれど。
親指と人差し指で彼女の右乳房の先端を弄り、摘む。左乳房は舌を這わせ、しゃぶり、甘噛みをする。
「んんっ⋯!」
手の甲で口元を抑え、必死に声を抑えようとしている姿がいじらしい。手の平で全体を回すように揉んでは先端に触れる。どれ程そうしていたのか分からないが、彼女からの一言で目が覚めた。
「りょーくん⋯えへへ⋯⋯おっきな赤ちゃんみたいだね。」
「へっ⋯?あ、やっ、ごめ⋯!」
途端に自分の顔が熱くなるのを感じた。それ程までに、俺は彼女の胸に執着していたらしい。指摘されると徐々に恥ずかしくなってくるヤツです、これ⋯。
「りょーくん⋯キス、しよ?」
「⋯うん。」
熱の冷めないまま、ゆっくりと彼女に顔を近づけていく。だが───全ては、怪獣のハニートラップに過ぎなかった。
「がおーーーーーっ!!」
「おわっ!?」
急に抱きついてきた千歌は、そのままごろんと転がった。つまり───立場が逆転したのだ。
「ち、千歌⋯さん?」
「えへへ⋯今度は千歌の番なのだ♡」
軽くキスをしてくれた彼女は申し訳なさそうに笑い、一言囁いた。
「下手だったら⋯ごめんね?」
「え───っ!」
背筋が、ゾワリとした。小さく、程よい熱を持った5本の指が、下着の中へと入ってきたのだ。先程までの情事で膨れ上がっていた俺のモノを確認するかのように、彼女は1本1本指を絡ませていく。
「りょーくんの⋯熱い⋯。」
「っ⋯ぁ⋯。」
先端からとめどなく溢れるカウパーが彼女の指を濡らし、それが潤滑剤となって亀頭の周りを這いずっている。初めて触るのであろう男性器に戸惑いながらも、彼女は確実に弱い所を責めている。
俺には、何かを話すだけの余裕は無かった。果てそうになるのを必死で堪え、情けなく彼女にしがみつく事しか出来ない。
「りょーくん⋯苦しい?」
「⋯すっごい、しんどい⋯よ。」
「イ⋯イキそう⋯⋯?」
「⋯うん。えっ、何で千歌その言葉を知って───」
「え?あっ!な、なんでもないの!!あははっ⋯!」
明らかに何かを隠している。
だが考える暇を与えないようになのか、彼女は俺のズボンと下着をゆっくりと脱がしていった。
「わっ⋯こ、こんなに⋯おっきいの?」
眼前に現れた逸物を目にして、千歌はそう漏らした。上半身を起こせば、彼女を見下ろす感じになり背徳感に襲われる。同時に、僅かな興奮と共に。
どれだけ我慢していたのか、亀頭からは自分でも呆れるほどにカウパーが溢れ、彼女が手を動かす度に、垂れ、手を汚し、幹全体へヌルヌルと伸ばされていく。
果てるのは、時間の問題だった。
「ぁぐっ⋯ち、千歌⋯?」
「⋯⋯⋯。」
千歌は、徐々にその手の動きを緩めていき、最後には俺の太股へと両手を置いた。どうしたのかと声をかけようとした時───。
「千───っ!!」
裏筋を、温かいものが撫ぜた。
「りょーくん⋯我慢しなくて、良いからね。」
先端に軽くキスをした彼女は、そのままカリの部分から幹の中腹に差し掛かるまで口を広げたり窄めたりし、ゆっくり⋯ゆっくりと、口の中へと含んでいったのだ。時折当たる歯の感覚が小さな刺激となる。頬の内側のぷにぷにした感触や程よい熱⋯行き場を失くし、独立した別の生き物のように蠢く舌。自分のモノが、この人の口内で溶けていくみたいだった。
頭の中の回路が短絡し、バチバチと視界が弾け飛ぶ。襲い来る快楽から逃げようと無意識に腰が引けるが、その分彼女は奥まで咥え込む。元から限界が近づいていた⋯それなのに、ここまでの刺激を与えられては、到底我慢出来るはずがない。
「んぶっ、んっ⋯じゅる⋯。」
「はぁっ、はぁっ⋯!千歌、も⋯ヤバっ⋯!」
「ぷぁ⋯良いよ。千歌の口に⋯ちょうだい?」
そう言った彼女は、苦しげな表情をしながらも、喉の一番奥まで幹を咥えこんだ。
喉の圧と耳に入る性の水音。申し訳なさと支配欲が埋め尽くす矛盾した興奮。
我慢の限界を迎えた俺は、彼女の頭に手を置き、駄目だと分かっていても奥に押し込むようにして押さえつけてしまっていた。そして───。
「イっ───!!」
「んぶっ⋯!?ん、んぅ⋯⋯。」
千歌の口へと、精を吐き出した。
───魂が抜けたと思った。
アホみたいな事言ってるって思うけれど、それ程までに襲い来る快楽の波は強かったんだ。敏感になっている逸物を、彼女はゆっくり口から抜いていく。
「はぁっ⋯はぁっ⋯!」
「ん⋯ぐっ、けほっ、けほっ⋯。」
「あっ⋯ご、ごめんっ、千歌っ!ぺって!ぺってして!!」
「⋯⋯飲んじゃった。りょーくんの。」
「飲んじゃったって⋯。」
「ちょっぴり苦かったけど、すごい濃くて⋯えっと⋯あの⋯あはは、駄目だ⋯。何か、頭がふわふわして、考えられないや⋯。」
「千歌⋯?」
へにゃり、という言葉が似合うように力無く俺の胸へと彼女は身体を預けてきた。服を着ていても分かる、熱を帯びた女の子の身体に動揺を隠せない。
うん⋯童貞だ。
そんなことを考えている俺を他所に、千歌は口を開いた。
「りょーくん⋯変なの⋯。」
「変って⋯?」
「ずっと、ずっと、お腹がキュってして⋯りょーくんに触られてから、私が私じゃないみたいで⋯⋯もっと、触って欲しいって思っちゃって⋯。」
胸に顔をうずめて俺のTシャツをぎゅっと握る大好きな人。この人が顔を上げていなくてよかった。
きっと今の俺は、真っ赤になりながらニヤケ面を晒している事だろう。自覚があるもの。嬉しくないわけないもの。ドキドキしないはず無いもの。
うん⋯童貞だ。
「千歌⋯下、脱がしていい?」
「⋯⋯⋯うん。」
小さく頷いた彼女の寝巻きの下へと手をかける。スルスルと脱がしていけば、その童顔っぷりからは考えられない白く、ハリのある太股⋯そして下着が顕になる。顔を赤らめた千歌は、恥ずかしさに襲われているようで若干涙目になってしまっている。
布団に来る前と同じように千歌を後ろから抱きしめる形で特等席へと座らせた。まぁ⋯その⋯特等席と思うかどうかは彼女次第ではあるが。
後ろから左手を這わせ、彼女の柔らかな乳房に触れる。
「ひぅっ!!」
右手は、ゆっくりとお腹を這わせ、彼女の下着の中へと滑り込ませた。彼女の秘部に指をあてがうだけで、愛液が指を濡らしていく。
扇風機も意味をなさない夏の熱気が。
耳に入る水音と指を包む、ぬるぬるした感触が。
両手で口を抑えるその必死な姿が。
腕の中で彼女の全てを抱き締めているこの独占欲が。
理性なんか、ズタボロに引き裂いてしまっている。
既に熱でも出しているんじゃないかと思うほど熱くなった彼女の身体を抱き締め、左手で彼女の片手を掴んで口から離した。ほんの少しだけ、加虐心というものが湧いてしまったんだ。秘部の中に入り込み、彼女の愛液と温かな圧力に包まれた指を止め、彼女に耳打ちする。
「千歌。声、出さないの?」
「んっ⋯!恥ずかしい、もん⋯。」
「俺は嬉しいよ?そっちのが、千歌が感じてくれてるって分かるし。」
「でも⋯。」
「ほら。」
「んぁっ!!」
指を動かせばくちゅりとなる。甘い嬌声を出した後に、慌てて片手で口元を抑える恋人の姿に胸が締め付けられた。これを無自覚でやっているのなら、きっと俺はこの人に本当に萌え殺されるかもしれない。胸の痛みも、自分の逸物の反応も、この人が逃げられない腕の中でモゾモゾと動く度に強くなっていく。
「こんなに濡れてる。」
「ぅっ⋯。」
「教えて、千歌。こういう事に滅法弱いのに⋯何で今日は色んな事をしてくれるのか。」
「い、言え⋯ない⋯!」
「⋯じゃあどうしようかなー?気になるから続きは集中出来ないかもなー?」
「やっ、やだ⋯お腹、治ってない⋯!」
「じゃあ教えてくれないかな?♪」
「うぅっ⋯⋯⋯ま⋯。」
「ま?」
「鞠莉ちゃんが、そういうのを考えても良い頃だって言ってたのっ⋯!!」
「ほうほう⋯はい?」
鞠莉ちゃん⋯?マリーさんが?
「相手がどう思ってるのかちゃんと聞いておいた方が良いって⋯ところ構わずじゃないけれど、共学にもなって、色んな事があって⋯お互いの気持ちを知っておくことは大切なんじゃないかって言われたの⋯。」
「⋯そっか。」
この人だけじゃなく、Aqoursのメンバーは今やこの町の有名人だ。女子も男子も関係無く、ラブライブ優勝者としての名前は多くの人に知られている。新しい環境になり、人間関係が入り交じった今だからこそ、マリーさんは千歌にそれを伝え⋯千歌は、それを考えた上で俺に伝えてくれた。
俺は⋯幸せ者だ。
「だからその⋯え、エッチな動画も1人で見たもん!りょーくんの布団の下にある本とかだって───」
「はいストップ!ストォオオオオップ!!ごめんなさい、俺が悪かったです!!」
一体⋯いつから気づかれていたと言うんだ⋯!いや、それよりだっ!!
人様の布団の下に置いてったまま未だに取りにこねぇあのクソ野郎⋯絶対ぶっ飛ばす!!
「うぅ〜⋯言いたくなかったのに⋯。」
「ごめん、千歌。ちょっと意地悪しすぎた⋯だから───。」
「ぁっ!」
つぷりと秘裂に指を滑り込ませれば、口元を抑える事も忘れた嬌声をあげる。そのまま仰向けになるよう布団の上に寝かせて、指を色んな形で動かした。
した事もない性行為⋯出来れば、早めに千歌の弱い所を知りたかった。受け入れようとしてくれる彼女の気持ちに少しでも応えたかったから。
指を動かし彼女の反応を確認していくと、半分くらいの部分を上に押し上げた際、彼女の身体が大きく仰け反った。
「⋯ここ?」
「わ、かんな⋯あたまっ、バチって⋯。」
「そっかそっかー⋯えいっ。」
「んぁっ!やっ、待ってりょー、くんっ⋯!」
左手を掴んでいた手を離し、再び彼女の胸を揉みながら右手で弱い所を執拗に責め立てる。足をモゾモゾさせたり腕の中で身体を動かそうとしてるが、折角特等席に座ってるのだから簡単に抜け出されては困る。
「千歌。」
「やっ⋯みみっ、やぁ⋯!」
「どうして?こんなに千歌の下はキュってしてくれるのに。」
「何かきちゃう!きちゃう、からぁ⋯!」
「良いよ、千歌───イッちゃえ。」
「ッ─────!!」
彼女の1番弱い所を押し上げた時、絞り出すよう声を出しながら彼女は仰け反った。
締め付けてくる膣壁から指を抜けば、彼女の愛液で指はびしょ濡れになっていた。くたりと背中を預けるように倒れ込んで来た彼女の身体を支えると、頭が乗っかっている二の腕に冷たいものが当たる。熱を帯びた顔を覗き込めば、虚ろな目をした千歌の唾液が当たっていた。まるで大切な物を抱え込むかのように俺の右手を抱きしめた千歌は、静かに口を開く。
「涼介⋯大好き。」
ボソリと聴こえたその言葉が、火を付けた。
抱き締めたまま一緒に布団へと倒れ、彼女に覆い被さる形でキスをした。これ以上は⋯耐えられない。
「千歌⋯。」
「うん⋯良いよ。」
寝巻きの上と下着を脱がし、自分のTシャツも脱いだ。
シーツの擦れる音がなる。
固く隆起した自分の逸物に手を添え、彼女の秘部へとあてがえば、お互いの準備が出来ていることは明らかだ。
「んっ⋯!」
「ぅ、ぁ⋯!」
ゆっくり、ゆっくり彼女の秘裂に飲み込まれていく。口でされた時以上の圧と熱が快楽へと変わり、脊髄をゾワゾワとした波がかけていく。それと同時に伝わる、破瓜の感覚。
「はっ⋯!はっ⋯ぃ⋯。」
「千歌⋯大、丈夫⋯?」
「大丈、夫⋯だよっ⋯。」
とてもそうには見えない。
奥へ行けば行くほど処女膜を傷つける感覚は強くなっていき、彼女の目にも涙が浮かんでいる。自分は今、彼女から大切な物を貰おうとしている。
後には引けない程に大切な物を。
手が⋯震えていた。
「涼、介⋯。」
「⋯うん。」
「私はっ、本当に大丈夫⋯だから⋯⋯来て?」
「っ⋯⋯⋯うん。」
「んぅっ⋯!!」
破瓜の感覚は、グプッとした感覚へと変わり、俺達の秘部はようやくくっ付いた。膣壁が亀頭から幹までを何度もキュウキュウと締め上げ、入れただけでもイキそうになるのを堪えながら千歌の顔を見下ろした。
彼女の頬に雫が落ちた。
驚いた顔をしながらも、そっと両手を俺の頬に添えた千歌はクスリと笑っている。
「もう⋯何で君が泣いてるの?」
「えっ⋯あ、あれ⋯?」
そこで初めて気づいた。
自分の頬を涙が伝っていることに。
そこでようやく気づいた。
どうして胸が苦しかったのか。
「千歌⋯。」
「うん。」
「⋯ごめん⋯⋯。」
「うん。」
「あり、がとう⋯。」
「うん⋯うん⋯⋯。」
胸の中へと抱き締められた。優しく⋯強く。
怖かった。
自分に、この人の全てを貰うだけの資格があるのか。責任があるのか。好きという気持ちがあっても、行為と気持ちの強さは比例しない。どれだけ理性を保ったふりをしていても、欲に流されてこの人を傷つける可能性だってあった。
けれど⋯分かった。分かって安心したのかもしれない。
俺がこの人を必要としているように、この人がいつも手を引いて隣にいてくれること。笑って、怒って、泣いて⋯こんな俺でも必要としてくれていることを。
「もう、動いてもいいよ?」
「痛くない⋯?」
「あっはは⋯実はちょっぴり⋯。でも、それ以上に嬉しいんだ。涼介と一緒になれたことが⋯だから、ね?」
「⋯うん。分かった。」
手で涙を拭い、千歌の手に指を絡めながらゆっくりと動いた───その時だった。
一番奥まで突いた時、千歌の腰が浮き、膣内がより一層逸物を締め付けた。
「ぐっ⋯!ち、千歌⋯?」
「ぅ、あっ⋯な、なん、で⋯!?」
「もしかして⋯今、イッたの?」
「わ、か⋯な⋯!」
「⋯動くよ。」
「あんっ!!」
突く度に彼女は嬌声をあげ、シーツを掴みながら身体を震わせていた。感じやすい体質かとも思ったけれど、その度に愛液が結合部を濡らしていく。
部屋には性の水音だけが響いていた。何度も何度も、パンパンとした音がメトロノームの様に一定間隔で繰り返される。
「はぁっ、はぁっ、ぅっ、ぐっ!!」
「あっ、あんっ、やぁっ!!なんっでぇ⋯!りょーすけの、全部当たって⋯!」
「ぅあっ⋯!千、歌っ、締め付けが⋯!」
「あ、たまっ⋯真っ白でわかんなっ⋯!も、イキっぱなし、でぇっ⋯!!」
「俺もっ、イキそっ⋯!」
「うん、ちょうだいっ⋯!涼介の全部、千歌に出してっ!」
千歌の身体をぎゅっと抱き締め、腰の動きは必然的に早くなっていく。初めて見る彼女の快楽に満ちた表情が愛おしくて、深くキスをした。舌を絡ませた2人の唾液の音なのか何度も繰り返し奥まで突いている性行為の音なのか、どちらでも良かった。お互いがお互いを求めあっている今、このまま心置き無く溺れてしまいたかった。快楽に抗おうとはしなかった。
そうして───。
「千歌っ、出るっ⋯!!」
「んぅっ──────!!」
彼女の1番奥⋯膣内へと、俺は精を吐き出した。
「ふっ、ぅ⋯あぐっ⋯止まんなっ⋯!」
「ぅあ⋯で、てる⋯⋯りょーすけの、熱い⋯。」
奥に押し当てれば、彼女の子宮口が何度も吸い付いてくるのを感じる。
呆れるほど出し尽くした後、ほんの20秒ほど抱き締めたままの身体を離して逸物を抜けば、彼女の秘裂からはどろりとした白濁液が溢れてきた。
「はぁっ⋯はぁっ⋯し、死ぬかと思った⋯。」
「りょーすけ、手、貸して⋯?」
「うん、分かった。」
彼女の身体をゆっくりと起き上がらせると、そのまま千歌は不敵な笑みを浮かべた。
どうしたのかと聞く直前、ドンッとした衝撃を肩に受け、俺はそのまま布団に倒れ込んだ。
「ち、千歌?」
「えへへ⋯んむっ⋯。」
「ぅっ⋯ま、待った、待った千歌!」
呆気に取られている俺を他所に、敏感になった逸物を触りながら再びカリの部分に舌を這わせたりしゃぶり始めたりした。
イッたばかりでまともな考えは浮かばない。そうこうしている内に、すっかり逸物は元に戻ってしまった。
「な、何を⋯?」
「ねぇ涼介⋯もう1回しよ?」
「へっ!?」
「ね?もう1回、もう1回しよっ♡」
「あの、千歌さん⋯?今イッたばっかりで───。」
「んぅっ⋯!」
「ぐっ⋯や、ばっ⋯!」
こちらの声は聴こえてないようで、両手でしっかりと俺の胸を布団へ押し付けるように押し当てた千歌は、馬乗りになって自分から膣内へと挿入した。俺が出した精液と彼女の愛液が混ざりあった物が潤滑剤となり、ヌルヌルと抵抗なく逸物は彼女の中へと飲み込まれていく。
「ふっ⋯んぅっ⋯⋯!♡」
「千、歌っ⋯!?」
「ふぁっ⋯♡これ凄い⋯奥まで、りょーすけのおちんちん当たって⋯♡」
ドキリとした。
うん⋯童貞(初回済み)だ。
「千歌っ、急にどうしたのさ⋯!」
「あのね、りょーすけが動く度に当たってるの♡ちかの1番弱い所、おちんちんがずっと当たってるからっ、いっぱいいっぱい気持ちよくして欲しくてね?♡だから今度はちかが動くの♡」
「いや、あの───ぅあっ!」
会話をしてくれない愛しい人は、返答をまたずに何度も俺の上で上下に動き始めた。さっきとは違う、彼女からの一方的なエッチ。俺は、入れてはいけない何かを入れてしまったのかもしれない。
「ふっ⋯ぐっ⋯!」
「あはは、りょーすけの顔可愛い♡ね、千歌の中、きもちいい?♡」
「っ⋯気持ちいい、です⋯!」
「いっぱい、いっぱい出していいからね?♡」
出し入れされる度に糸を引く結合部。
ぱちゅぱちゅとした水音と嬌声。
鼻腔から伝わる男女の匂い。
キスをされ、絡め取られて嬲られる舌。
密着する度に当たる彼女の胸と固く張った先端。
五感の全てをこの人に奪われた一方的なセックスは、腰が引けそうになるぐらいに気持ち良かった。
ひょっとしたら俺はこっち側の人間なのかもしれない。
「りょーす、けぇ⋯好き、好き♡大好き♡」
「んむっ⋯ぷはぁ⋯!俺だって大好きだよ、千歌。俺も動いていい?」
「うん、動いてっ?♡またお腹いっぱいに出して?♡」
「はは⋯言われなくても⋯⋯。」
「ぇ⋯や、何で抜いてっ、抜いちゃやだ───」
「ふっ⋯!」
「んぁあっ!?」
半分以上抜きかけた逸物を、一気に彼女の最奥へ向かって突いた。ただでさえ当たっているという千歌の1番弱い所を抉るように。
可愛らしい声で。
いじらしい表情で。
もっと求めて欲しくて。
もっと、名前を呼んで欲しくて。
「千歌っ⋯そろそろ⋯!」
「んぁっ!んっ!良いよ!♡全部ちょうだい、りょう、すけぇっ!!♡」
何度も何度も連続で腰を突き上げ、彼女と指を絡ませた。
そうして、再び彼女の一番奥へとありったけの精を吐き出す。
目の前がチカチカと明滅し、腰から3度目の射精を促す快楽の波が脳へと上がる。彼女も背中を仰け反らせ、まるで身体の骨が無くなったかの様にふにゃりと倒れ込んだ。
「涼介⋯大好き、だよ⋯。」
「⋯俺も、大好きだよ。千歌。」
こうして俺たちの初体験は、全てを出し切り幸せに幕を下ろす───
「休んだらもう1回しよ?♡」
「んぇっ!?」
「いっぱいいっぱいしようね、涼介♡」
「あはは⋯⋯はい。」
そう思っていた時期が、僕にもありました。
そこから何回戦までやったかは覚えてないです。唯一覚えてるのは⋯疲れ果てて眠るまで徹底的に搾り取られた事ぐらいです、はい。
◇
「っていう事があったんですよマリーさん。」
「そう⋯。」
「マリーさん?」
「そう⋯。」
「聞いてます??」
「そう⋯。」
時は進みまして⋯淡島にある某高級ホテルの一室。久々にこちらへ帰ってくるなり『Let's party!!』の掛け声で俺と昴太さんを含めたAqoursメンバーをリムジンで拉致した目の前の素敵な美人さん。特徴的な髪型は相も変わらずだが、ほんの少しだけ伸びた気がする金色の髪の毛は真昼の日差しを受けてキラキラと輝いていた。
彼女の言葉を借りるならば、『シャイニー☆』だ。
まぁ顔色は大変クラウディでございますが。
「涼介。」
「はい。」
「ここで私と話した事は、千歌っちには内緒よ?」
「あははっ、やだな〜マリーさんってば。喋れませんよ〜⋯⋯ほんと、殺されるんで⋯。」
「ふふっ、相変わらず幸せそうね⋯私が胸焼けする程には。」
「コーヒー飲みます?」
「何杯私が飲んだと思ってるのかしら。」
「15杯ですね。」
「えっ、そんなに飲んでた?」
「そんなに飲んでました⋯って覚えてないんか〜い!」
それはもうすごい飲みっぷりだった。わんこそばでも食べてるんじゃないかってくらいの勢いだったもの。
何だかんだマリーさんとは、こうしてちょこちょこ連絡をしたり話をしたりしている。漫才みたいなやり取りも、この人の懐の広さ故に許される事⋯ありがたやありがたや⋯。
「⋯本当に良かった。」
ふぅっと溜息をついたマリーさんは、グラスの縁をそっと指でなぞる。疲れた表情の中にも何処か嬉しそうに微笑む姿に言葉を失った。
「結構不安だったのよ。千歌っちに話をしたけれど、あれは私の勝手なお節介⋯2人のことは2人が1番分かってるはずなのに、まるで焦らすかのように促して⋯迷惑よね。」
「マリーさん⋯。」
「だから⋯ごめんなさい。」
「そんな事ないですっ!!鞠莉さんが謝る必要なんて全然ありません!!」
そうだ⋯この人が謝る必要が何処にある。
この人が気に病む必要が何処にある。
「鞠莉さんが言ってくれなかったら、きっと俺達は共学化を言い訳にしてズルズルと気持ちを先延ばしにしてました⋯。形はどうであれ、きっかけをくれたのは鞠莉さんなんです!だから⋯ごめんだなんて言わないで下さい⋯。」
「涼介⋯⋯ありがとね。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
「でも二度と惚気は聞かないわ⋯。」
「コーヒー足りなくなりそうですもんね。」
『昴太のバカっ!///』
『やっ、事故だって果南っ!!』
『うるさいドスケベ大明神ッ!!///』
『あふんっ!!』
『『ぴっぎゃぁあああああああ!!!!』』
『黒澤姉妹討ち取ったりぃっ!!』
『よっちゃん駄目だってばっ!!』
『のっぽパン⋯⋯それは沼津の全てずら。あむ。』
『怒られるよ花丸ちゃん⋯ってぇ!!千歌ちゃんそれ私のみかんっ!!』
『ふっふっふ〜⋯油断大敵だよ、よーちゃん!』
『何を〜っ!!』
「賑やかね。」
「えぇ、本当に⋯。」
ドタバタとした物音や悲鳴が扉の向こうから聴こえてくる。隣の大部屋はこの日の為にどれだけ汚しても大丈夫な仕様になっているらしい。
バタン、と音がした。きっと倒れた昴太さんだろう。
うぐっ、という声が聞こえた。きっと踏まれた昴太さんだろう。
「マリーさん、俺そろそろ行きますね。」
「えぇ。私もすぐ行くわ。思う存分楽しんでね♪」
「勿論で───」
『りょーくーん、どこぉ?』
扉の向こうから確かに聴こえた声。
自然と頬が緩み、扉へと向かう足は自然と早まった。あの人が待ってる。あの人が探してる。あの人が呼んでくれる。
それだけで、何よりも幸せだった。
「千歌ぁっ!!」
扉のノブに両手をかけ、扉を勢いよく───
「てやっ!!」
「ぶはっ!!??」
開いた途端に勢いよく何かが顔面を直撃した。
「いぇーい命中っ!!♡」
「あっははは!!バカ丸出しっ!!」
「本当に呼べば来るんだねぇ涼介は⋯。」
前が見えない。オマケに甘い。千歌に曜ねぇちゃんに善子の声が聞こえるぐらいだ。
⋯何これ。
「大丈夫?涼介君。」
「⋯梨子さん。何です、これ?」
「えっと⋯パイ、投げ⋯?」
「ふふっ⋯ふふふっ⋯。そうですか。そういう事ですか⋯なら本気で行かせて貰いぶはぁっ!!!」
「はーい、涼介君ツーアウト〜♪」
「まだ喋ってるでしょうが!!果南ねぇのおバカッ!!」
「ねぇ、涼介。」
「はいっ!今度は何さ曜ねぇちゃぶっ!!」
「スリーアウトピッチャー交代⋯にひ♪」
この人らは、人の顔をなんだと思っているのか。ストラックアウトの的にでも見えてんのかな?でもピッチャー交代宣言が出たんだ⋯なら⋯⋯戦わなければ生き残れない。
「もう容赦しないからな!前見えねぇけどっ!!」
手を前に出し、フラフラとした足取りで一歩一歩前進していく。するとどうだろう⋯両手の平にふわっとした肌触りの物体が納まっているではないか。余りにも柔らかいそれは、どこか懐かしくも温かい⋯そう、人肌に近い⋯⋯ん?
おかしいな。周りの声が消えた。皆居なくなったのかな?俺は夢を見ていたのかな?
目元のパイを手で払い、ようやく視界が開けた。うん、開かない方が良かった。
「⋯⋯⋯。」
「⋯⋯Oops.」
皆は居なくなったんじゃない。手を合わせ、静かに祈りを捧げていたんだ。俺の前に立つのはただ1人⋯顔を真っ赤に紅潮させながら、プルプルと震えている彼女さんだけ。
つまり⋯俺が掴んでいたのは⋯⋯。
「⋯⋯ち⋯。」
「⋯⋯⋯。」
「ちかパイ⋯ぶはぁっ!!!!」
言葉は無い。慈悲も無い。パイ投げと言うには余りにもルール無用の『パイ押し』を顔面に貰った私は、無様にも地面へと散っていった⋯⋯。
「はいはーい、セクハラ少年はほっときましょーねー。」
「あれは弁明出来ないわ⋯。」
「涼介君もお年頃だね〜。」
あぁ⋯誤解を生んだまま皆が散っていく⋯。そうだ、このまま俺はパイになろう。パイと一体化して来世はアップルパイにでも───
「りょーくん。」
「はい⋯。」
「今日⋯部屋で待ってるね。」
「っ!!」
「えへっ⋯///」
嗚呼、神様仏様。
やはりアップルパイにするのはもう少しだけ待ってください。
今は⋯待っててくれる人がいますから。
To be continue...?
作者は死にそうです。恥ずか死です。ついでに魚の骨が喉に刺さってます。
官能表現だとか性行為を小説にしたのは今回が初めてですので、ベテランの方々には何ともお粗末な部分が多々あったと思いますが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
P.S.途中から私が吹っ切れたのが分かりやすい作品ですね(^q^)
短編ですが、続くかどうかは皆様のご要望と作者の気持ち次第。ご了承下さいませ⋯。