ストーリーラストのネタバレ注意
休暇を取るべくクリサンセマムのミナトにやってきたハウンド一行、
各々休暇を楽しみ英気を養っていたがシズクだけは顔を曇らせラウンジでベンチに座り、
グラスから酒をチビチビと飲んでいた。
「はぁ……久々に会えると思っていたのにのう」
「がっこうにいきたい!」とフィムにねだられミナトに預けたのが一ヶ月前、
任務の都合で中々ミナトへ戻る事ができずその間、フィムに会う事が出来なかったのだ。
そして今日、サプライズでもしてやろうと数日前から連絡せずにミナトに帰ると社会科見学という事で他のミナトに行ってしまったという。
そんな訳で誰に当てられる物でもない不満から、一同で集まり食事をした後は一人で拗ねている。
「まったく、久々の休日だっていうのに一人で腐ってるなよ」
「……なんじゃ、ユウゴか。何のようじゃ?」
「ちょっとな、一緒に飲める相手を探してたんだ」
手に持っていた二本の缶ビールの一本をシズクに渡し、隣に座る。
「リカルドでも誘えばよかろう?妾は今一人でいたいのじゃ」
「ああ、それがどうも目を通さないといけない書類が山ほどあるから飲んでる場合じゃないんだとさ。
それで浮かない顔してどうしたんだ?」
手に持っていたグラスの中身を一気に飲み干して答える。
「わざわざ聞くまでもなかろう?久々にフィムと会えると思っていたらこれじゃ……
遠くに出るなら保護者に連絡一つ位入れろという話じゃ……」
「まあな、寂しい気持ちはわかる。だけど全く会ってない訳じゃないだろ?しょっちゅう通信してたじゃないか」
「直接会うのは別なのじゃ!画面越しでは手も握れぬだろ!」
「ははは、まあ落ち着けよ、明日の夕方には帰ってくるんだ。そうしたらまたしばらくは一緒に居られるんだからな」
「それだと二人きりでいられる時間が少ないのじゃ……」ユウゴに聞こえないようにボソリと呟く。
「ん?何か言ったか?」
「何でもない、気にするな」
ユウゴは缶を開けグッとビールを一口飲んだ、シズクもそれに習うようにしてビールを飲む。
「しかしまあ、こんな酒を飲みながら明日の話ができるって少し前までは考えられなかったな」
「ああ、これもあの子のおかげじゃ……」
二人だけしかいないロビーは穏やかな空気に包まれていた、特別な事もなく日々のことを話しながらおだやかな時間がすぎていった。
シズクは缶が空になると立ち上がり、寝室に戻ろうとする。
「それじゃあ、ユウゴよ。また明日な」
「ああ……いやちょっと待ってくれ。話が有るんだ」
「なんじゃ、飲んどる間に話せばよかったろうに」
「聞きにくい話だからな……なあ、お前とフィムの関係……変わった事はないか?」
酔いから緩んだ顔をしていたシズクが表情をスッと真顔に変えるとベンチに座りなおす。
シズクは両手で顔を覆い俯いた、そしてしばらくの間沈黙が訪れる。
先程までのおだやかな時間とは違い、二人ともかなり緊張しているようだった。
「話せないならいいんだ、別に問題が有る訳でも----」
「いつからじゃ?いつから気づいていた?」
顔を隠したまま口を開き問う。
「いつからっていうとだな、二人をクリサンセマムに残して任務に出ていただろ?
あの任務から帰ってきてからフィムとシズクの距離感が変わったように見えてな」
「最初から気づかれてた……」
「いや、すぐにって訳じゃない。その頃から違和感を感じたってだけだ。
そうだな…怪しいって思ったのはフィムからのおねだりもないのにやたらと抱っこしてるなと---」
「ええい!説明せんで良いわ!それでなんじゃ!何か問題があるとでも言うのか!!」
「落ち着けよ、ただ問題はないのかって聞きたかっただけだ」
シズクは深呼吸をして少しだけ気持ちを落ち着けてから答える。
「ああ、問題はないぞ。相思相愛、互いに愛し合っておるよ」
「そうか、なら俺から言うことは何もないさ。ただどうして二人はそんな関係になったんだ?
それだけは気になるな」
「それはじゃな、お主も知っているだろう?フィムの以外な狡猾さを。油断していると驚かされる事ばかりじゃ」
ユウゴはフィムがオーディンの贄となるべく一人でクリサンセマムから逃げ出した時の事を思い出し「ああ」と納得する。
「それでフィムは妾と二人きりの時を狙ってアプローチをかけて来たのじゃ、無邪気な子供を装ってのう」
「へぇ、どんな風にだ?」
「はっはっは!流石に二人の情事を事細かに話すつもりはないわ。そうして互いに愛を伝え合った。それだけよ」
それからシズクはユウゴからフィムとの関係について咎められる気配がないと察すると惚気話を話して聞かせ始めた。
フィムの可愛さについて延々と聞かされている最中、ユウゴの口からフッと笑いが漏れる。
「なんじゃ?別に笑えるような話はしておらぬぞ」
「いやな、お前に恋人ができて本当に良かったなって」
シズクはその一言を聞くと騒がしかった口を閉じ、すっと立ち上がった。
「たわけが、そもそもお主に話す事ではなかったわ」
強めのデコピンをユウゴの額にお見舞いすると踵を返して寝室に向かっていった。
「おーい、隠しておくつもりならもっと注意しろよ」
扉の前で歩みをとめ、少しの沈黙の後に返事を返す。
「うむ、心得ておく…………おやすみなさい、お兄ちゃん」そう別れを告げると、意地の悪い笑顔をしながら扉の奥へ消えていった。
ユウゴはわずかに赤くなった額をさすりながら昔の事を思い返す、シズクから愛の告白をされ、受け入れてしまった日の事を。
兄妹のような存在であるシズクからの告白には驚いたが、悪い気もしない上に断ればシズクを傷つけると思い受け入れたのだ。
最初はユウゴもその関係を良しとしていたが、段々と自分の中にある感情とシズクから求められる感情に齟齬を感じていった。
高い灰域濃度の中で討伐任務に出た時のことだった、通信が阻害されている状況下でシズクは私を抱いてほしいと懇願した、
当時は誰にも干渉されずに二人きりになれるのは、そんな異常事態の時だけだったからだ。
そしてその事が決定的だったのだろう、シズクを抱いた翌日にユウゴはシズクにハッキリと自分の気持ちを伝えたのだ。
「本当に悪いと思っているんだ、だけどお前はやっぱり俺にとっては妹にしか見えないんだ……」
「ユウゴよ。妾の遊びを本気にしておったのか?はっはっは!生娘の戯言を本気にするな」
いかにも気にするなという言葉で返され、二人の恋愛関係は終わったのだった、
そしてお互いの距離感も亀裂が入った様にどこか歪んだ形で収まったまま何年もの月日が流れた。
それから今まで、ユウゴは心に引っかかる物を感じながら生きて来た。一方的に突き放した想いが心の中でずっと引っかかっていた。
(『お兄ちゃん』か……恋人になる前はそう呼ばれてたな)
『お兄ちゃん』シズクの去り際の一言でユウゴは心に突っかかっていた物がとれた気がした。
翌日、シズクはミナトに充てがわれた自室(フィムと二人部屋)で目を覚ますと昨晩のユウゴとの会話を思い出し、恥ずかしさでのたうち回った。
「この年でお兄ちゃんはありえんのじゃ!」
そして気を紛らわせるためにルルを誘って軽めの運動をした。
最中「今度フィムに着たい服を悩んでいるんだが、母親の視点から何か意見はないか?」と聞かれ、
「レースのふりふりしたドレスを着た姿がみたいのう、ゴシック系やつじゃ」と答えた。
恋人が他の人と二人きりで楽しんでいる事に少しばかり不満を覚えたが、
フィムも色々な服を着ることを楽しんでいるから不満も言えず、とりあえず次やる時は誘ってもらうように頼んだ。
昼食をすませた後は部屋に戻り、一人で本を読み始めた。
ベッドの上に寝転がりながら本を読み進めていたせいで、布団の心地よさに誘われてうっかり眠りに入ってしまった。
数時間後、暖かいというよりは暑さを感じて目を覚ます。
「うむ……なんじゃ?誰か部屋にでも来たのかのう?」
シズクは身に覚えのない毛布を除けるとそこには愛して止まない相手が寝息を立てスヤスヤと眠っていた、
その姿を確認すると、一瞬呆気にとられてからすぐさま抱き上げる。
「おお!フィムよ!帰っておったのか!」
「ふぇ……あっおかあさんおきたんだ、おはようございます」
フィムは自分を抱き上げるシズクの姿を確認すると眠気の混じっただらしない笑顔で挨拶をした。
「ふふふ、おはようではなくまずはおかえりなさい、が正しいかのう。おかえり、フィム」
「うん、ただいまおかあさ…じゃなかった、ただいまシズク」
シズクは挨拶の返事の代わりに頰に軽くキスをしてからフィムをベッドの上に座らせた。
「それで他のミナトを見にいったらしいがどうだったかのう?楽しかったか?」
「うん!すごく楽しかった!クリサンセナムとちがってね、ええっとーーー」
フィムはあれやこれやと楽しそうに見てきた物をシズクに語り始めた。
どんな施設があったか、何を食べたか、向こうで出来た友達の事などを目を輝かせながら喋り続けた。
そしてフィムが一通り話し終えると今度はシズク達の様子を聞いてきた。
「あっ、そうだ。シズクはなにかなかったの?」
「うん?妾達か?特別なことは事は特に……いやひとつあったか」
「なになに?」
「ユウゴに妾とフィムの関係がバレておったわ、あやつも意外に人を見ておるわ」
わずかに気を重くして話すシズクを、「へー」と特に驚いた様子もなくフィムは聞いていた。
「なんじゃ?気にならんのか?」
「ちょっとだけビックリしたけど気にはならないよ。ユウゴだもん。フィムとシズクがかなしくなることはいわないでしょ?」
「まあな、ただちょっとな。妾はそんなにフィムに引っ付いていたかのう?あやつにたしなめられたわ」
フィムえっと驚いてから一息置いて、クスクスと笑いながら答える。
「うん、シズクすっごくベタベタくっついて来てるよ。気づいてなかったの?」
「おおお……それは真か?フィムのほうから抱っこをせがんでいなかったか?」
「ううん、シズクと恋人になってからフィム一回もおねだりしてないよ。しなくてもシズクにぎゅーーってしてくるから」
「ふむ……意識していなかったが本当に気をつけねばな……余りベタベタしてる所を見せびらかす訳にはいかんしのう」
「えぇーー、それならフィムがおねだりする!」
隣に座るシズクに抱きつくと猫のように顔をスリスリと擦り付ける。
「猫のようにそう擦り寄るでない」フィムは嬉しそうに笑うシズクに軽く頭を叩かれると悪戯な笑い顔を見せてから、
シズクの太ももを枕がわりにして横になった。
「そういえばシズク、まえから気になってたこと聞いてもいい?」
「内容を聞いてみないと答えられるかはわからんのう」
「えっとね……シズクのそのしゃべりかたふしぎだなっておもってたの。どうしてそんなふうにしゃべるのかなって」
わずかな沈黙の後、シズクはフィムの髪に指を通し、指先いじりながら口を開く。
「まあ、気になっても仕方のない事だしのう。良い機会じゃ、教えてやろう。
ただ話を聞いても吹聴はしてくれるなよ。ユウゴとジークとキース、ペニウォートから一緒にいる奴らしか知らぬ話じゃ」
「おかあさんのひみつなの?うん、ぜったいに言わないよ」
「まあフィムの前だと時々出ていたがのう……あっ、あーー……うん!いざ意識すると恥ずかしいな……
わらわ…じゃなくて!私、私がシズクだよ。なんか変な感じだね」
シズクが突然、普段の特殊な話し方ではなく普通の話し方で話し始めると、フィムは口をポカンと開けて呆気にとられていた。
「え?おかあさん?」
「そんな大げさに驚かないでよ。これが私、大仰で傲慢で口うるさいシズクではない本当の私なの」
フィムは起き上がってシズクに向かい合うと、シズクの頬をペシペシと叩いてそこにいるのを確認した。
「おかあさんが……おかあさんが変になった!」
シズクの頰をつねってしっかりとそこにいるのを確認すると、フィムは驚きの声をあげた。
「変とは失礼な、普段の方がよっぽど変でしょ?それとおかあさんじゃなくてシズクって呼びなさい」
混乱するフィムをなだめてシズクは話を再開する。
「まったく、驚きすぎじゃ。ちょっと口調が変わっただけであろう」
「うん…でもすっごくびっくりした!」
「まあ、それで話と喋り方をもどすよ?もうそんなに驚くことでもないでしょ?」
「うん、もうだいじょうぶだよ」
「といってもそんなに大した話じゃないんだ。単純にね、弱いんだよね私って。
神機を持つようになってしばらくはろくに戦えなかった、仲間の足を引っ張って危険を招いたことだったある位なの」
「シズクがよわい?」
「うん、今でも本質的な所じゃ変わってないと思う。きっと私が戦場に立ったら足腰震わして動けなくなっちゃうかもね」
自虐気味に笑ってからそのまま話を続ける。
「それでこのままじゃダメだって思って、思いついたのが自分ではない自分を作ることだったの。
芝居掛かった喋り方に普段の自分がしないような話し方、それを初めてみたら全く恐怖を感じなくなった。
そうして生まれたのがあの騒がしい妾って事なの」
フィムはあまり話を飲み込めずにポカンとしていたがシズクはそのまま話を続けた。
「最初のうちは皆も驚いてたよ、ジークなんて今よりかなり生意気な年だったしバカにされたりもしたっけ……
それが段々染み付いていって、生きるのに必死になってたら鬼神って言われるまでになったの。
つまりこうしてる私は誰にも必要とされなくなった私、まあ皆に必要とされる自分を作ったっていうのがあの喋り方の秘密って訳よ」
シズクが口を閉じるとフィムは黙ってシズクの手を握った。
「フィムはシズクのこと愛してるよ」
フィムはシズクの右手を両手で包み、胸元に持っていく。
「フィムにはちょっとむずかしい話でよくわからないけど……シズクがじぶんをわるく言ってるのはなんとなくわかるよ。
だけどどんなシズクでも、シズクはシズクだから愛してるから、えっと……そんなに自分を追いつめないで」
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シズクにとって素の自分という物は恥部でしかなかった。
剛毅な自分しか求められていないと心の中で決めつけていた、それ故に元々の弱い自分はどんどん表に出てくる事がなくなっていった。
しかし、愛する者にすらそれを隠しているのは心苦しくも感じていた。
(せっかくの機会だ、言ってしまおう)そう思ってフィムに自分の隠していた事を明かしたが、
話進めていくうちに元来の気の弱さに押しつぶされて今にも泣き出してしまいそうだった。
弱い自分を見せる事でフィムに嫌われるかもしれないという不安で一杯になっていた、
しかしそんな不安は杞憂だったのだ。
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「シズクがね、フィムのことたすけてくれたとかおかさんだからとか、たぶんそういうのだけじゃないと思う
フィムね、弱いシズクのことも好きだよ」
胸元にもっていったシズクの手を大事な物のように抱きかかえる。
シズクはその手に込められた力から、フィムは何があっても自分の傍から離れることはないだろうという決意を感じた。
「本当に?私……今でも不安でどうにかなりそうなの。だからフィム、もう一回あなたの気持ちを聞かせて」
「シズク……フィムはシズクがどんなでも愛してるよ」
フィムは硬く握り締めていた手を開き、シズクの顔を優しく包み込んでキスをした。
軽く唇が触れ合うだけのものだったが、それでもお互いの気持ちを確かめ合うには十分なものだった。
「ことばだけじゃ伝わらないかなって……伝わったよね?フィムの気持ち」
「うん……十分すぎる位伝わった、ありがとう。フィム」
それから少しの間、シズクは溢れてくる涙を抑えきれずにフィムの胸の中で泣いてしまった。
受け入れられた嬉しさから来る歓喜の涙だった、弱い自分を受け入れてくれフィムに甘える様に涙を流した。
そして涙が止まった後には普段のシズクに戻っていた。
「はぁ……わざわざ自分の弱いところは見せる物ではないのう、ずいぶんと面倒な女になってしまったわ」
フィムの胸に顔を抱かれたまま呟く。
「あっいつものおかあさんだ」
泣き止み、普段の調子で喋り始めるシズクの頭をあやすように撫でる。
「いつものと思うならその頭を撫でるのをやめんか」
「そうは言われてもおかあさんがフィムをギュッってしてるからフィムも離れられないよ」
その言葉を聞くとシズクは顔を赤くして、腕をほどきフィムから少し離れると、
フィムは離れていくシズクに名残惜しそうに腕を伸ばすが空を切り、そのままベッドの上に倒れこんだ。
「なにやってるんじゃ、お主は」
「もっとおかあさんのことなでなでしたいなーって。
フィムのこと大事にしてくれるけどフィムからおかえしはできてないもん」
起き上がりシズクの横に座り直す。
「だからたまには見せてほしいな、弱いシズクでもフィムはずっとそばにいるよ」
「それは…少し魅力的な提案だがあいにく母親としての立場をやめた訳ではないからのう、気持ちだけ受け取っておこう」
「ふーん?つまんないの」
シズクは拗ねるフィムをなだめる様に頭を優しく撫でてあげた、最初は不満そうな顔をしていたフィムだったが段々と顔を綻ばせ笑顔になる。
「それにな、お主が思っている以上に妾はお主から沢山のおかえしを貰っておるよ」
フィムは何のことかわからないという風な顔でシズクの方を向く。
「わからぬならそれでも良い。その内わかることじゃ」
「なんか今日のおかあさんのおはなし、よくわからない」
「少しだけ事が有ってな、何でも良いから気持ちをぶつけたい気分だったのじゃ、すまんな。
さて!そろそろ晩御飯でも食べにいくかのう。のんびりしてるど食堂がしまってしまうわ」
「うん!フィムおなかすいたーー!」
シズクとフィムが手を繋いで歩いていると、ユウゴとばったり出くわした。
「おう、ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ。食事の時間はとっくにすぎてるけど何してたんだ?」
「おお!兄者よ、迷惑をかけたな。話がつい長くなってしまったのじゃ」
「兄者って……なんだよ、その呼び方は」
「互いに兄妹分として過ごしていたのにいつの間にか距離感を開けてしまった、と思ってな。
まあとっくに済んだ事じゃ、ちょっと間柄を戻してみようと思うてな」
高笑いをしながらユウゴの肩をバンと叩く。
「馬鹿いってるんじゃねーよ、今更デカイ妹が出来た所で全く嬉しくない、というより迷惑でしかないぞ」
「冗談に決まっておろう、それじゃあ妾達は急いでいるのでな。またな、ユウゴ」
「おう、またな」
シズクはフィムの手を引き廊下を進む、
フィムが少し後ろを振り返るとユウゴが照れ臭そうに頭を掻きながら姿を消していった。
「ユウゴと何かあったの?」
「ん………古い問題のことなら気にするなと言ってやったのよ、妾以上に引きづっていたからのう」
「ふーん、それでもうだいじょうぶなの?」
「ああ、瑣末な問題よ」
「そうなの?でもおかあさんすごくうれしそう」
二人は笑顔を作り、足取りも軽く歩みを進めた。