冷蔵庫を開ける。
予想通りというか、予想以上な光景につい笑ってしまう。
「なに笑ってんだよ」
「いや、だって、なにもはいってない」
無駄に大きな冷蔵庫なのだが残念なことにミネラルウォーターやエナジードリンクといった飲物類以外はめぼしいものがはいってない。
がらんとした空間がただあるだけ。
「この冷蔵庫でよく人の食生活心配するよな。普段なに食ってんの?」
特にみるものもない冷蔵庫をしめて広くてきれいなキッチンを眺める。
このきれいなキッチンというのはあれだ、まめに片付けてきれいにしてるんじゃない、使ってないから汚れないだけというきれいさだ。
「んー。カロリーメイトブロックとか?」
思案するようなふりで言うもののそれをごはんとしてるというのはいささか問題があるような気がしないでもない。
「軍用レーションでも食えよ」
「やだよ。あれカロリーばか高いでしょ。そういうサンラクはどうなんだよ」
「ん。俺、実家暮らしだし」
「なんかむかつく」
ぽすんと棒状のなにかで頭を叩かれる。
「パンで人を殴るなよ」
半分くらいになったバゲット入手。
改めて冷蔵庫の中身をみてみる。
「卵と牛乳も一応あるんだな。賞味期限だいじょうぶそうだし」
「シリアル食べることもあるしね」
「乾物以外も食えよ」
バターと卵と牛乳。
それとバゲット。
「さて、なにが作れるでしょう?」
ざくざくとバゲットを切り分けて。
「ラピュタパン?」
「牛乳どこ消えた」
「飲めばいいんじゃないかな」
首を傾げてかわいく言ってみても無駄だ。
「朝食としてはありだが」
卵を溶いて砂糖と牛乳とで混ぜる。
「フレンチトースト作るよ。甘くていいよな?」
「うん」
ここの家主なのにもはや見学しているだけのカッツォ。
甘めの卵液にバゲットを浸して、フライパンでバターを溶かす。
きっちり染み込ませたほうがいいのだが面倒くさい。
ぎゅうっと押しつけておけば吸うだろ。
弱火でじっくり焼いて皿に移す。
「というわけで、できあがったわけだが」
既にフォークを用意済みでスタンバイしてるカッツォにフレンチトーストの皿を渡す。
「んー?」
「蜂蜜とかメープルシロップあったりする?」
「メープルが冷蔵庫にあったはず」
「ほう」
冷蔵庫からメープルシロップをとって戻る。
カッツォはといえば、取り皿にフレンチトーストをとりわけてフォークをぶっさして食み始めてる。
「おまえ、食いはじめるのはえーよ」
「おいしいよ」
「はいはい」
もぐもぐとおいしそうに食べるカッツォを前にしてみれば、それ以上なにか言う気もなくなって。
仕方なしに自分の分を皿にとりメープルシロップをかける。
「サンラクはいいお嫁さんになりそうだね」
「ごはん作れるくらいで嫁はないだろ」
「そうかなー」
「逆にいえばおまえは嫁になれないんだな」
料理できるイコール嫁なら、料理がほぼできないであろうカッツォは嫁ではない。
「まあ、おいしいごはん作ってくれる嫁もらえばいいんだし?」
「ふむ」
「俺の嫁になってくれてもいいんだよ?」
くちにしていた牛乳でおもいっきりむせた。
まともな食生活で堕ちそうなカッツォ。
まわりにまともな食生活の人いないんだろうか。