えろはナシ。
平和な日常回みたいなかんじ。
ティンキー☆と裏声で朝からモルドしててつらい。
朝ごはんをほぼ作り終え、あとはごはんと味噌汁をよそうだけという状態で寝室へと足を向ける。
俺が起きたときのままぐーすか寝ている物体の尻あたりに足を乗せてぐにぐにと押してやるものの身じろぎすらなく。
「起きろー。起きないと踏むぞー」
ぶにぶにと足に力を入れてやればそれにあわせて尻が揺れる。
「らくろーにでぃーぶいされてるー」
もぞりと布団から頭をだした物体がなにかほざいた。
げしげしと尻に乗せた足に力を込めてやる。
「ちんこ千切るぞ」
「セキニンとってもらわなきゃ」
え。
なんで嬉しそうなのこいつ。
その言い方は生涯面倒みやがれこのやろーと同意だとおもうのだが、DVの被害者が加害者に嬉々としていう言葉ではないはずなんだがなあ。
「朝ごはん食べるよな?」
「うん。食べる。今日は黒か」
まだ寝転がったままというのはよしとしよう。
なんで頭の位置ずらしてハーパンの隙間から俺のパンツ覗いてるんだろうな。
というか、パンツぐらい洗濯物とか風呂上りとかで毎日見れるだろうが。
わざわざローアングルから見上げて眺めるものでもないとおもうんだが、とりあえず踏んづけておこう。
「起きるよな?」
「目覚めのキスはないの?」
「目覚めてるよな?」
「キスしてくれたら起きる」
朝からこいつ面倒くさい。
見捨ててもいいのだが、冷めてしまう朝ごはんに申し訳ない。
「しゃーないな」
瞬間嬉しいとばかりに抱きついてくる慧。
唇を重ね、面倒くさいから執拗にねぶってやる。
日々感度がよくなっていくからだを撫でて股間に手を伸ばして、
「勃ってる」
びくびくと反応の良いのは知ってるが、さすがにはやいような?
「蹴られて感じてたのか」
おそろしい事実が露見してしまった。
「違っ」
さすがに被虐趣味を育てる気はないなあ。
明日から蹴るのはやめよう。
「でもびんびんだし?」
「朝だからっ。寝起き勃つでしょ?!」
懸命にセルフフォローしようとしてくるが、かわしてベッドからおりる。
「しらないなあ」
ベッドからでてきたしこのままごはんにしよう。
味噌汁温めなおすかな。
「それ、抜かないでいられたらご褒美やるよ」
▽
大学の敷地内で妙な場所で人だかりができていた。
遠巻きになにかを見ているっぽい輪が形成されているそれは進行方向にあるわけで、なにしてるかぐらい確認しようと人垣をぬって近づいてみたわけだが早々に後悔した。
撮影機材や人が幾人かいる中で無駄に目立つ仕事中のペンシルゴン。
打ち合わせ中なのかあやしいくらいの笑顔でもって人と接してる。
……さて、授業あるし行こうかな。って、携帯端末がぶるぶる震えてら。
件名:動くな
差出人:鉛筆戦士
宛先:サンラク
本文:逃げたらあやしい媚薬をカッツォ君に送る
媚薬なんてものは存在しない。
あれはプラシーボ効果の産物かファンタジーに夢見る代物だろう。
脳内麻薬や認識に働きかける合法な物体なんてないだろうし、まさか違法物…あー、でもVRマシン使えば擬似的にそういうの誘発できたりするんかな。
まあ、犯罪の温床だろうけど、医療にはありそうだな。
携帯端末をポケットに突っ込んだところで正面に人が、というかまっすぐにこっちに向かってきてる。
「ヒヅトメさんでしょうか?」
「人違いです」
「こちらに来ていただけますか」
スルーされた上に腕捕まえられて拉致られてるよ俺。
少なくない人だかりがざわついた気がする。
「やはり犯人はおまえか」
「おはよーサンラク君。今日も暑いねぇ」
休憩所のような屋根だけのテントで待っていたのは当然脅迫文を送ってきた犯人。
「一般人連れ込んで大丈夫なのかよ」
勝手に簡易椅子に座れば先ほど俺を拉致った人が飲み物くれた。
「私以外にも来てる子居るからね。問題ないでしょ」
周囲に一般人も居るからか言葉といい顔といい営業用のようだ。
「こっちの生活にも慣れた?」
「まあまあかな」
「カッツォ君との新婚生活はうまくいってる?」
「こっちの大学に決めたからって住まわせてもらってるだけなんだが」
「それは知ってるけどねぇ」
同棲というのも変な感じがするがルームシェアじゃないしな。
もとから慧の家だし、食客とか居候が妥当のような気が。
「家事全般してるんでしょ?」
「一応。おいてもらってるんだからそのくらいはしてるよ。今日も朝ごはんつくって一緒に食べてきた」
「ほう」
「なかなか起きないからめんどくさい」
「ってか、まじめに主夫してたりするの?」
「んー、まじめにってほどしてないとおもう」
ごはんつくって、洗濯とあとたまに掃除するくらいだしな。
そもそもまじめの基準はどこにあるんだか。
「カッツォ君収入いいよね」
無駄にまじめなトーンで笑顔を向けられる。
「まあ、そうだろうな」
「サンラク君そのまま永久就職でいいんじゃない?」
「なるほど。まあ…しないだろうけど」
盲点だったが、それはそれでなにか微妙な。
「やっぱ趣味の費用ぐらいは稼ぎたいかなあ」
「微妙にまじめだよねぇ」
ふわりと笑うのは無意識に染みこんでいる習性の賜物か、普段ならにやにやしてそうだ。
「そっちはどうなんだよ」
「それなりに変わりないね。そういや連れてきておいてなんだけど時間大丈夫?」
「あー。行かないと」
あからさまにはぐらかされたのだろうが時間が迫っているのは事実なわけで。
「んじゃそのうちごはん奢ってほしいと伝えといて」
「おうよ」
学生の俺と違ってそれなりに稼いでいるだろうに奢ってもらう気満々だよ。
「あ。仕事がんばれよー」
ひらひらと手を振り見送られて来た道を戻る。
▽
…なんでソファで腹だして寝てるんだろう。
帰宅してみればそんな状態で、仕方なくタルケットをかけてやって課題を片付けることにした。
集中が切れてきた。
うしろにあるソファに背を預けてみれば、寝ていたはずの顔と目が合う。
「起きてたのか。声かけてくれればいいのに」
「見ていたかったから」
俺を見ていたところでどうにもならないとおもうが、暇させてたわけじゃないならいいか。
「昼寝ならベッドでしろよな。風邪ひくよ」
「心配してくれるんだ?」
「看病するの俺だしなあ」
広げていた本やノート類を片付けてしまう。
「勉強おわり?」
「うん。もうちょいしたら夜ごはんつくるし」
ぽんぽんと頭に手をのせられる。
「んー?」
「ごはん毎日つくってもらってるからいいこいいこしてるだけだよ」
頭撫でられて嬉しいとかいうよりはこそばゆいのだが、してるほうの慧が嬉しそうなのでされるがままにしておく。
「慧はさ、媚薬あったらどうする?」
「そうだなあ…」
突拍子もないことを聞いているのに疑問におもうでもなく、考え込む姿をみて意外だと感じる。
「使うって即答されるかとおもってた」
「ん。んー。…まあ、以前ならそうしたかもしれないけど」
苦笑してようやくからだを起こした慧はぽんぽんとソファを叩く。
床からぽんぽんされていた場所に移動すれば肩にもたれてきて。
「いまはそれじゃ満足できないかなあ、って」
「んー?」
「いまはこうして楽郎が傍に居てくれるから、媚薬使って既成事実で脅したりしなくてもいいでしょ」
「さらっと犯罪に使うなよ」
「バレなきゃノーカン」
大概こいつも黒いよな。
最近ぼけた言動しかみてなかったから忘れかけてた。
「今手に入れても使わないわけか」
「そうだね。媚薬使って楽郎が愛してくれたとしても、楽郎が楽郎としての気持ちと言葉じゃないだろうし、それじゃあ意味がないし満足できないよ」
「ふーむ」
手を握って、指を絡めてつないできて、にぎにぎと遊ばれてる俺の手。
「言えば聞いてくれる距離だから、甘えたいだけ甘えるし、くっついているけど。それだってちゃんと言わなければ楽朗はしてくれないだろうしね」
そうだろうか。単になにをするにしても大抵慧のほうからくるから機会を失ってるだけのような。
付き合っているし、好きな相手にならなにかしたくなるのは当然なはずなのだが。
「そういや、最初の頃より言うことが馬鹿になってるよな」
「馬鹿って言い方もどうなんだろ。楽朗は媚薬あったらどうするんだ?」
「慧に半分飲ませて、残りは自分で飲むよ」
「なんではんぶんこ?」
「効果が気になるから自分でも試したいじゃないか。慧にだけ飲ませても普段と変わりないかもだしなあ」
「変わりは、あるともうけどな」
「そうかなあ」
繋いだ手の甲にキスをして頭を撫でてやって立ち上がる。
「そろそろごはんつくるよ」
「手伝う?」
「風呂のほうお願いするー」
「ボタンひとつなんだけど」
わかってて言ってるが、拗ねた感じなのもかわいいから仕方ない。
▽
寝る間際、ベッドにもぐりこんで腕の中に慧がいる状態。
明かりを消して目を瞑って。
「あした休みだっけ?」
「もう今日だけど、そうだね」
「起きたら一緒にどこかでかけようか」
もぞりと慧が頭を浮かす。
「あしたなにかあったっけ?」
「ないね」
「一緒にでかけるの嬉しいけど、なんだろ」
「朝の、抜いてなければご褒美ってやつ。行きたいとこあったら起きたら聞くよ」
「え。なんでいま寝るって時にそれ言うの。いつも通り既に深夜なんだけど」
「起きられなくなるから寝るよ。寝ないのはナシな」
起きようとする慧を抱き寄せて諦めさせて眠りにつく。