サンラクさん受けなのでご注意を。
えろはない。
もやもやとした気持ちを自覚したのはいつだったか。
気がつくと目で追っていて、なにをしていても考えてしまっていて。
思考が汚染されていくなかで最初に気づいたのは嫉妬だったのは当然だったのかもしれない。
誰かと居るともやもやする。
俺以外と話してるといらつく。
もっとずっと傍に居てほしい。
それが好意だと気づいて、さらに欲望が追いついてきて気持ちがクリアになった。
遅いながらもその相手が誰かのものになる前に自身の感情に気がつけたのは幸いだったとおもう。
だからといって、すべてが解決したわけでもないけれど、少なくとも感情を自覚してからは気持ちがだいぶ楽にはなった。
楽にはなったが、やはり思考は占拠されているし、今度はどうやって自分を見てもらうかをただただ考えるばかり。
いくら考えても答えがでるわけでもなく、現状も変わることもない。
それならどうするか、単純明快に行動に移すしかない。
解ってはいる。
わかってはいるのだけど、躊躇してしまうのは現在の関係が崩れて離れられてしまうこと。
視界に映るだけでいいとか。
声が聞ければよいとか。
それすらもできなくなるのは非常に避けたいけども。
触れることができたり。
匂いをかぐことができたり。
味わうことができたりしたら、それはもう、なにもしないでいるという選択肢は消える。
理由をあれこれとこねてみたりしたところで、結局のところは純粋にあいつが欲しいというだけなんだよなあ。
ぼんやりと自分の中で結論付けてソファにもたれて天井を仰ぐ。
手には携帯端末。
通話やテキストでも伝えられなくはないが、どうせなら会いたいとおもってしまうのも恋心とかいうやつの所為。
下心がないとは言い切れないが、会いたいものは仕方ないんだからしかたないだろう。
大分、支離滅裂になりかけてきているが、呼びだすことには成功した。
リアルで会えるというだけでかなり嬉しくて顔が自然とにやけてしまうけど、まだノープラン。なにも考えてなかったりする。
相手が相手だから婉曲に伝えることはしないで、正攻法でいこうとだけ決めておく。
▽
無事に当日を迎え何事もなく待ち合わせした場所で会って、そのまま遊んでごはん食べて買い物してとデートっぽいような時間を過ごしてから、日が暮れる頃になってようやく家についた。
「適当にくつろいでくれていいよ。なにか飲む?」
「うん。もらうー」
既にソファにもたれてる姿を眺めながら、ついでに風呂のパネルも数回叩いてからポットとグラスを手に戻る。
「先に風呂入る? いま準備してるけど」
「俺が先でいいの?」
「いいよ」
返事しておいて頭によぎるのは、一緒に入れたら合法的にサンラクの裸がみれるということ。
家の風呂にふたりで入るのは不自然そのものでしかなく、温泉ならチャンスはあるのかな、とか。
浴衣に着替えてもらうのも目の保養としてもよいなあ、とか。
「サンラク、今度一緒に温泉行かない?」
欲望に忠実な発言が無意識のうちに自分の口から飛び出していた。
「いいけど、どこの温泉行く気だよ。あまり遠くは無理だよ」
「どこでもいいんだけどね。希望あるならそこにするけど」
「どうせなら、モロに温泉って感じのとこがいいな。ちょっとこのタブレット借りるーっとパスコードか」
画面を向けられたのでロック解除して渡せば温泉地を調べはじめた。
本当に一緒に行ってくれる気か。あまり自分の理性に自信ないんだけどな。
楽しそうにしているサンラクを見ているのは楽しい。
ずっとこういう時間が続けばよいのだろうけど、そうもいかないのだろう。
少しだけ、本来の目的を思い出した。
「ここは?」
画面を向けて聞いてくる。
近づいて画面を覗けば雰囲気のよい古そうな建物の温泉街らしき画像。
「どうみても雪国なんだけど」
「寒いの弱い?」
「そこまで弱くはないはず」
タブレットの画面をふたりで共有して、たくさんの画像から候補地をあれこれ言いながら見ていく。
からだが触れている距離。
サンラクが近い。近くに居る。
「サンラクー」
「んー?」
「好きだといったらどうする?」
「ん?」
「好きだよ」
「……えっと、なにの話?」
タブレットから視線を外して傍にいるサンラクをみれば俺のことを凝視していた。
不審なものを見る、というか理解不能だから説明プリーズみたいな、きょとんとしてまるくなった目がかわいい。
「俺が、サンラクを、好きだという話」
逸らそうとしないのをいいことに目をきちんとあわせて言う。
「あー。ライクとかラブとか」
「ラブだね」
「友愛とか親愛とか」
「愛情だね」
あまり、質問を重ねると逃げ道も無くなるとはおもうけど、反応がかわいくて愛おしいから全力で逃げ道は塞いでしまいたくなる。
「サンラクにえっちなことをしたいという意味で好きだと言ってるんだよ」
「ふぇ」
「理解できないなら、理解するまで何度でも言うよ?」
「うぐ。……カッツォは、」
「うん?」
唐突に電子音が響く。
不意をついた音にびくりとサンラクが震えた。
「お風呂わいたようだね。先はいってくるといいよ」
「ん。……いってくる」
のそりとタブレットをテーブルに置いて立ち上がるサンラク。
なにか言いたげな、それでいて迷ってるような目が逸らされる。
「タオルとか適当に使っちゃっていいよ」
「了解ー」
廊下のむこうに姿を消すまで見送って、って戻ってきた。
「風呂どこ?」
「どこに向かおうとしてたんだよ」
どうしても笑ってしまうのをなんとか堪えながら風呂まで案内してリビングに戻る。
ソファに身を沈めて想うのはどうあがいても告白されたサンラクの戸惑った顔で。
なんで逃げようとしなかったのかとか、なんで話を逸らすこともしなかったのかとか不審におもってしまうけど自分にとっては有利ではあった。
自分でもわからないほどに無意識に口走ってたなあ、ともおもう。
なにか言いかけたサンラクの言葉は気になるけど、風呂の音に邪魔されてなかったら理解追いついてなさそうなサンラクに手をだしてたかもしれない。
サンラクの顔、少しあかくなってた気がするけど気のせいだよな。
▽
風呂からあがってきたサンラクと代わり風呂に入る。
ちらりとサンラクの浸かった湯船が気になったが、煩悩振り払ってふつうに入った。
パジャマを着て濡れた髪をタオルで拭いながらリビングに戻れば携帯端末を手になにかしてるサンラクの姿。
「髪乾かさなかったの?」
テーブルに置かれたままのドライヤーは手付かずのままで、グラスに注がれた飲み物だけが減っている。
「あぁ。……忘れてた」
「乾かそうか?」
「んぇ」
「ん?」
「……お願いする」
「ん。こっちに背向けて」
ドライヤーを手に取りサンラクの横に座る。
おとなしく従うサンラクの心中は謎のままだけど、こうして身を預けてくれる態度も謎すぎてわからなくなる。
元から謎生態してるサンラクだから構わないのだが。
ほぼ乾いたところで冷風に切り替えて手ぐしで梳いてやる。
「……カッツォは」
「ん」
ドライヤーの音で聞こえにくくて、風を止める。
「どうした?」
「あー……。俺になにか、するつもりなのか?」
「なにかって、ああ。えっちなことの意味かな」
「そう、だけど。……なんかふつーにしてるし、聞き間違えたのかなと」
「サンラクのことが好きだよ」
「って、また恥ずかしげもなく言うし」
「恥ずかしくないわけじゃないんだけどね。ちゃんと言わないとわかってくれなさそうだし?」
「わりと、だいぶ、ちゃんと理解したから、言わなくていい」
言ってる俺より動揺が激しいサンラクを抱きしめたくなる。
抱きしめて撫でて口を塞ぎたくなる。
「んで、えっちなことする気なのか?」
「しないよ」
「なん、で?」
「そりゃあ、したいけどね。今だって抱きしめたいけど我慢してるし。返事もらってサンラクがよいというまではしないよ」
「なにもしない?」
「うん。いまはなにもしないよ」
「……そっか」
「あまり聞いてくると、されたいのかと勘ぐるよ?」
「……」
「サンラク?」
急に黙られると不安になる。
動きも止めたサンラクはふるふると頭をふって、手をだしてくる。
「ん。いや。なんでもない。それ貸して、ドライヤー。んでうしろ向いて」
ドライヤーを手渡して向きをかえると、タオルでがしがしと髪を拭われた。
「サンラク?」
「乾かしてやるよ」
「ありがとう」
優しいとはいえないタオルドライされて、ドライヤーの風をあてられる。
乾かしてくれるのはうれしい。
逃げないでいるのも、避けられないでいるのも、予想外だけどうれしい。
告白なんてなかったかのように日常に戻れるならそれでもいい。
それでも、受け入れてくれたらと願ってしまうのは仕方ないのだろう。
ドライヤーが止められ、わしわしと髪の毛を梳いてくれる指が離れてしまう。
「終わったよ」
「ありがと」
「うん」
「ところで、どこで寝る?」
いま聞いておかないと、ずるずるとベッドまで連れて行きそうな自分が居る。
「ベッドとソファ、どっちがいいかって意味だけど」
「どっちでもいいけど、カッツォは?」
「サンラクが選ばなかったほうで寝るよ」
「……ベッド広い?」
「狭くはないかな。シングルじゃないし」
「んじゃ、ベッドで寝るよ。おまえも一緒で」
なにを言いだすんだろう、こいつは。
好きだと告白してきた相手と同衾するとか正気じゃないんだが。
「頭、大丈夫?」
「なんで疑われなきゃいけないんだ」
「一緒に寝るとか、襲われても文句言えないとおもうよ」
心配して言えば、そんなことかと言わんばかりに笑って。
「なにもしないんだろ。家主さしおいてベッド占拠はどうかとおもうし、一緒に寝れば俺もベッドで寝れる」
俺の理性はどこまで維持できるんだろう。
「まくらひとつしかないとか」
「ふつうだよ。……というか、サンラク」
「んー?」
「なにこの状態」
「まくらひとつしかないんだし、腕枕でもしてもらわないと」
そう。腕枕、しているわけで。
腕の中にサンラクが居る。
抱きしめるわけにもいかないけど、匂いぐらいは嗅いでもいいんじゃなかろうか。
「なにか理屈がおかしいよ」
この状態で一晩はかなりつらい。
ぐりぐりと頭を胸に押し付けてくるものだから、寝顔は見れなさそうだし。
既に明かり消してるから、どっちにしろ見えないのだけど。
「お。心音聞こえる」
「胸に頭くっつけてたら聞こえもするよ」
速くなっているだろう鼓動を聞かれて恥ずかしいような、もどかしいような。
「ひとの心音落ち着くっていうけど、わりときもちいいかも」
「この状態でそれいうか……」
「よく眠れそう」
拷問かなあ、これ。
▽
予想通りあまり眠れなかった。
眠れなかったのはまだいいのだけど、理性が音を立てて崩れそうなのがやばい。
わりとすぐ寝入ったサンラクだが、まったく動かないで寝るわけもなく身じろぎするたびに擦り寄られてきたり、手が伸びてきて捕まえられたり。
近距離どころじゃない距離のために聞こえる寝息や意識しなくても嗅いでしまうサンラクの匂い。
せめて、抱きしめるくらいできれば余計に意識しないですんだのかもしれない。
「んぅ」
腕の中でもぞりとサンラクが動く。
「うー。……おはよ」
「おはよう」
意識が浮上しただけなのか、まだ眠い目をこすってうつらうつらしている。
そんなとこもかわいいのだけど。
かわいいのだけど、この状態はあまりにも毒すぎる。
「よく眠れた?」
「うん」
くっついてくるサンラクを引き剥がしてベッドからおりる。
このまま居るのは本当によくない。
「朝ごはんにしようか。先行ってつくってるからのんびり起きてくるといいよ」
「うん」
ごろりと布団に包まるサンラクからなにか言われた気がする。
本当になにもしないんだな、そう聞こえたけど気のせいかな。
簡単な朝食を用意していればサンラクが起きてくる。
トースターにパンを並べて、他の皿を運ぶ。
ダイニングテーブルに顔をのせてだらりとしたサンラクはどこか不機嫌そう。
不機嫌というか、ふて腐れてる?
「カッツォー今日も泊まっていい?」
「いいけど、どこか行きたいの?」
「んーん。ここでごろごろする」
おかしな言動ばかりしてるようにみえるサンラクだが、実際そこまでおかしなことはしないのだがこれはおかしい。
「まあ、いいけど」
おかしいことはおかしいが、サンラクが今日も一緒に居てくれるというなら自分にとってはうれしいだけ。
もぐもぐとだされたごはんを食べるサンラクは、やはしどこか妙な感じがする。
どこがというわけじゃないが、こっちを窺っているとでもいうのか、それでいてやはり機嫌はよろしくないようだ。
寝てるときになにかあったかと思い返しても、記憶の限りではサンラクはずっと寝ていたし、思いあたることはないはずなんだが。
午前中はなにか調べてるっぽいサンラクをずっと眺めていた。
眺めてたら胡乱な目で楽しいか聞かれたけど、それなりに楽しいのだからそう答えておいた。
昼はサンラクがつくってくれたオムライス。
手際よく料理してる姿は眺めているだけでもよいもので、うしろから襲いたくなったというのは黙っておこう。
午後になってサンラクの機嫌は通常に戻った。
通常よりは少し浮ついてるような、ふわふわした感じがかわいい。
「カッツォ、ここ座って」
ぽんぽんと床を叩くので移動すれば、胡坐の上にぽふんと座られた。
後から抱っこ状態で背をもたれかけてくるサンラクの表情は読めない。
「サンラク?」
「んー……」
ぱたぱたとサンラクの両手がなにかを探してるのか彷徨って、俺の両手を掴んで正面にもっていった。
しないようにとしているのに、どうしてこうぶち壊してくるのかな。
完全に後から抱っこで両腕はサンラクをゆるく抱きしめている。
「カッツォがバカッツォだから、仕方ない」
「ん?」
ここにきて罵倒されるとか、機嫌なおったようにみえたのだけどな。
「返事、催促しないのか?」
むっすりとした声。
「催促したら俺にとって都合のよい返事がもらえる?」
「……カッツォは、好きだとか言うくせに、なにもしてこないし」
「同意なしでするわけにもいかないしね」
「へたれ」
「大事にしてるといってほしいな」
「むぅ」
拗ねてるサンラクもかわいい。
なにもしてこなかったから拗ねてるらしいサンラク。
自惚れてもいいのだろうか。
だとしたら、ものすごくうれしいんだけど。
「サンラク」
「んぅ?」
「好きだよ」
抱きしめる腕に力をこめて耳元で直に囁く。
「……うー」
「返事、聞かせてくれるんだよね? それともからだで教えてくれるの?」
「うぅ……」
「サンラク。愛してるよ」
「ひゃぅおぃ……なにこいつはずかしい」
変な声。
腕の中でじたばたともがくけど、離れる気はないらしい。
離す気もないのだが。
「いや?」
「いやじゃないかもしれなくもない」
「素直じゃないけど、そういうとこもかわいいよ」
「耳元で、喋んな」
「この体勢だし、諦めて」
「んんー……カッツォ」
ゆるめた腕の中でからだごと反転してサンラクがこっちを向いた。
顔は伏せているために見えない。
両手で頬を捕らえられ、顔が近づく。
潤んだ目が閉じられ、唇を重ねて、離れる。
顔をそんなに見せたくないのかすぐに首に腕がまわされしがみつかれた。
「ありがとう」
抱きしめて、頭を撫でて頬にキスして。
どうしようもなくうれしくてしあわせで、耐えきれなくなったサンラクに殴られるまであとちょっと。
サンラクルート
なんかわからないけど告白された→どうやら本気っぽい→風呂移動→返事するべきなんだろうな→ってか俺とあいつでえろいことすんの? なにそれわらう→あれ、それ俺がする側だよな? あいつ総受けだし→もしかして逆の可能性もあったりするんかなごぼごぼ(湯船に沈みかける)→というかなんで俺えろのこと考えてんの?→あいつとえろいことするのに抵抗ないっぽい?→あれ? 嫌いじゃないし好きだけど、そういう好きもなの?→おや?これまじで返事迷うやつじゃん→好きっていうの?あいつに?まじむり→あーでもよろこぶんだろうなーそれはなんかよいかもなーごぼごぼ(湯船に沈みかける)→とりあえずあがるか→交代でカッツォ風呂に→返事どうしよぐるぐる→カッツォ風呂あがりで髪乾かしてくれた→特になにもしてこねぇなこいつ→髪乾かしてやる→どうみても俺より細いよなあ→本当になにもしないんだろうか?→一緒に寝てみる→なにもされないのがなんかむかつく→なんかむかつくからもう一日→カッツォの野郎まじでなにもしてこねぇ→腹くくるしかないのか→キス
後半はそのうち書くかもしれない