---坂本一弥---
「何?要らないじゃと…」
目の前で、老婆が俺に睨みを入れている。
「あぁ、お前の娘達に触手が動かない。だから、要らないよ」
「おい!こっちは王女を差し出すと言っているんだぞ!」
だから、何だ?
「価値を見いだせない。だから、要らない」
「おい…一弥。相手のメンツを潰すにゃ!」
「メンツで出す人質に価値は無いだろ?ウザいだけだ」
ウザい女は嫌いである。
「ただし、ルシファードの人質は受け入れたいが、グレイフィアって、子持ちなんだってなぁ。なので断念する。だから、ルシファードの人質も要らない。おい、土御門、帰ろうぜよ」
「あぁ、お前は頑固だからな」
謁見の間を立ち去ろうとすると、俺達の前に立ち塞がった者がいた。
「待ちなさいよ!私に価値が無いと言うの!」
紅髪の女だ。
「あぁ、彼氏持ちはいらない。まぁ、そこの黒髪の女体なら欲しいが…」
「朱乃を?出せる訳ないでしょ?」
「だから、いらない」
なんだか、イライラしてきた。俺のいらつきなどの負の感情は、ミサカを通じて、ミサカネットワークに分散されるらしい。なので、臨戦態勢になるミーちゃん。
「一弥、あの青髪の剣士と、魔法騎士を貰えばどうだ?」
火織がアドバイスをしてくれた。どの子だっけ?紅髪の女体の後に立つメンバー達から、探し出した。う~ん、確かに虐めがいはありそうだが、出さないだろうな。
「おい!出してくれのか?」
「眷属を人質には出さない!」
紅髪の女体が首を振らない。
「もう、いいや。帰ろうよ。女体よりも、今は和食を食いたい…」
「今から作りますよ」
って、五和。そうなのか。
「じゃ、頼む、五和」
「はい」
五和とミーちゃん、何故か美琴が厨房へ消えた。
「じゃ、俺は部屋で少し寝る。喰ったら、帰るぞ、土御門!」
ミサカを抱いて、部屋へ戻る。ミサカを抱き枕にして寝ると、安眠出来るのは、俺のストレスをミサカネットワークで分散して、発散してくれているそうだ。美琴の仮想妹達が…
---土御門元春---
一弥は完全にホームシックである。海外4日目で、これかぁ…長期遠征は無理やにゃ。
「おい!私のメンツはどうしてくれるんだ?!」
英国の女王が俺に叫んだ。こいつ、レディの欠片も無い口調だな。
「一弥が価値を感じ無い以上、メンツは関係無いにゃ」
「こちらとしては、善処したいが…」
ルシファードの帝王サーゼクスは、何やら考えている。が、子持ち、彼氏持ちはNGの上、王女達はウザいと斬り捨てたし。一弥の基準は明確だと思う。アイツの機嫌を損なわないようにすれば、操縦は楽なんだが…こうもアイツの興味の無い話では、アイツの機嫌を損ねるだけだし。
「人質に俺が行く。いいだろう?サーゼクス」
次期帝王であるヴァーリがトンでも無いことを言う。次期当主が人質って、前代未聞では無いか?いやいや、男はダメだろう…いや、組手の相手になれば、性別は関係無いか…
「お前がか?」
「あぁ、俺は一弥を気に入った。政治問題は関係無しに、アイツを見守りたい。女体進呈は、ルフェイを差し出す」
「ふへぇ?」
中学生くらいの少女が声を上げた。あれが、あの時のリアル体か。
「ルフェイなら、英国の人質にもなる。ペンドラゴン家の娘だからな」
ペンドラゴン家かぁ…確かに、英国貴族の家系ではある。まぁ、落としどころとして、悪くは無い。
「じゃ、一弥にそう伝える」
俺は一弥の元へ向かった。
---毛利蘭---
コナン君が新一って…今までの記憶が脳裏に浮かびあがる。全裸で抱きついたことがある。二人だけでお風呂にも入った。う~ん、新一は役得感が満載では無いか。私は見られ損、触られ損である。
一弥だったら、どう対応するんだろう?って、一弥は全裸を見ても、全裸で寝ていても、普通に接してくれた。私の気持ちを一番に考えてくれる。紅葉ちゃん、和葉ちゃんにしてもだ。
新一からは服部君臭がするしなぁ。彼は和葉ちゃんのことを、一番に考えてくれていないようだ。
「蘭さん、悩みかな?」
紅葉ちゃんが話し掛けてきた。
「うん…新一がふらりと来て、プロポーズの返事を訊かせろって…」
「受けるか、悩んでいるの?」
「う~ん…。一弥に出逢う前は、私の一番だったけど…今はねぇ」
一弥、帰って来てくれないかな?
「そうやな、一弥に触れ合うと、アカンなぁ」
って、和葉ちゃん。
「私も平次はんが一番でしたけど、今は…でも、一弥にとって、私は妹枠なんだけどね」
はにかむ紅葉ちゃん。
「ねぇ、なんで妹枠なの?」
「ちっさい時、お兄ちゃんって、慕っていたから…一弥は分家によく預けられていたの。それで、ちっさい時から、一弥といる時間が多かったのよ」
「ふ~ん。なんで、一弥だけ分家なの?」
「数馬はん、宇佐美はんが、ブラコンだから…数馬はんは、男の子なのに、宇佐美はんと、一弥の取り合いをしてとか」
今の生徒会長代行から、想像が付かないけど…ある意味、強烈なブラコンだったのか。
「一弥が言うには、数馬はんは、性同一性障害らしいって…」
あぁ、そう言う事か。兄と弟の間で、不適切な行為があるとマズいってことか。
「で、数馬はんに負けずに、一弥への好きな気持ちを暴走させて、宇佐美はんは病的なブラコンになったそうや」
その兄妹って、負けず嫌いだよね…
「一弥は普通の妹が欲しかったみたいで、私を妹としてかわいがって、色々相談に乗ってくれていたんよ」
頬をうっすら紅色に染めた紅葉ちゃん。本当は紅葉ちゃんも一弥のことを…
「ウチも平次が諦めてくれんと、プロポーズしてくるんか…」
凹んだ和葉ちゃん。
「そんなに一弥っていいのか?」
世良ちゃんが訊いて来た。
「あぁ、一弥は世良はんのことは、相手にせぇへんよ」
「なんで、言い切れるんだ?」
「縛っても引っ掛からない女体は、幼児と一緒やろと、思うてんのよ」
「うっ!」
基準はそこか…一弥…年齢では無いのか。なんか、ほっこりする。なんでだろう。一弥のことを話していると、癒やされる感じがするんだよなぁ。
---江戸川コナン---
う~ん、どうするかな。事実は話したが…蘭の気持ちがイマイチわからねぇ~。心は許しても、身体は許さないって…結婚はして、アイツとの関係は続けるって…偽装結婚かぁ。そうなると、和葉ちゃんも服部と…
灰原に相談しても、ダメかな?
「うん?何を見てんのよ!で、昨晩はどうなったの?」
機嫌の悪い灰原。
「どうもこうもねぇよ」
ダメ元で、灰原に相談してみた。
「そう…プロポーズの返事はオーケーなんだ」
「だけど、身体は許さないって…」
「偽装結婚でいいんじゃないの?工藤君、欲張ると良く無いわよ」
蘭とのスキンシップって、欲の張りすぎなのか?
「健全な男子だぞ。結婚して、お預けってどうなのさぁ」
「なら、結婚しないか、彼を倒せば?」
倒す?誰に情報を渡せば、アイツを消してくれるんだ?
「あぁ、そうそう、彼にヒットマンを送ると、彼の周囲が依頼主を排除してくれるそうよ。工藤君、気を付けてね」
え…俺の心が見えるのか…灰原には…
「裏情報よ。彼は裏の世界のキングになったみたい」
裏の世界のキングだと…
「英国とルシファード帝国から、王族の娘を嫁にって話が出ているそうよ」
おぃおぃ…アイツ、何者なんだ。単なる高校生じゃ無いのか?
「アイツ…組織を持っているのか?」
「う~ん、難しい質問ねぇ。彼自身は持っていないけど、色々な組織の長が、彼の仲間になっているようよ」
アイツのコネ?いや、アイツに対しての忖度か?
「坂本家って、裏でも有名なのか?」
「無名に近いわよ。そもそも、裏の世界で活動していないし。ただ、坂本一弥は違う。裏の世界の住民の可能性は大かな」
裏の世界の住民?単なる高校生でなかったのか。
「蘭が危ない…」
「あぁ、探偵の娘は、安全じゃないかな。むしろ、一弥を裏切った時が危険かな」
裏切る…俺と関係を持つってことか…
「哀君、脅すのはソレくらいにしてやらんか?新一が深刻な顔をしておるぞ」
「あぁ、本当ね。そんな顔しても、どうにもならないわよ。あの組織から逃げている時点でね」
それは…そうなんだが…一弥があの組織と抗争すれば…必要悪…アイツは必要な悪なのか?
---坂本一弥---
五和、ミーちゃん、美琴の作ってくれた和食。う~ん、材料がダメなのか?調味料がダメなのか?見た目は度外視にして、美琴の作った卵焼きが一番美味しかった。
「美琴、おいしかったよ」
「そうでしょ。母直伝の卵焼きだからね」
「日本と食材が違うのは、問題だな」
ミーちゃんが唸っている。五和と俺に料理を習っていたのに、美琴の家庭に味に負けたことが、悔しいらしい。
「次回、海外遠征時には。調味料と乾物は持ち込みますよ」
五和はリベンジに燃えている。それよりも、海外遠征は今後パスしたい。
「政治的なことは土御門に丸投げでいいから、俺を遠征メンバーから外してくれよ」
「ダメですよ。一応キングなんですから、決済権は一弥にあります」
って、火織。そうなのか?
「じゃ、俺は下っ端でいいぞ」
ミサカが、むにゅっと俺に力を込めて抱きついた。拒否ってことなのか?
「ダメだよ。一弥で無いと。他の者がトップだと、まとまらないんだよ」
インデックスが説明している。コイツ、海外だと働いているなぁ。その反動で、家で喰う寝る喰うな生活三昧なのか?
「なんだよ?いいね。一弥はキング。これは変えられないからね」
誰も異論を唱えない。どうして、俺なんだよ。
「俺は粗暴だぞ」
「だから?そんなの、みんな理解しているんだよ」
問題視されていない、俺の素行…
「俺は女体が好きだぞ」
「知っているよ。今更なんだよ?!」
インデックスが仕切っている。誰も文句を言わないし。コイツ、エラいのか?
「お前、エラいのか?」
「う~ん、どうだろうか?私は知らない」
俺と理解度は同じ程度のようだ。少し安心だな。
「インデックス様は、エラいって言うか…シスターとして最上位ですよ」
アーシアが説明してくれた。最上位のシスターか…
「まぁ、現存する魔術書を総て記憶しているんだ。価値はあると思う」
火織の説明…そうなると、インデックスを図書館のように扱えばいいのか?いや、待てよ…
「なんで、お前、魔女でなくて、シスターなんだ?」
「魔女は教会に反する者だよ。これでも私は教会サイドの者なんだよ。だから、魔女では無いと言いたい」
それは、教会を辞めると、魔女扱いってことか?アーシアは聖女、火織は聖人、五和は聖槍遣いだ。これらは教会サイドで間違い無いけど…
「土御門の立ち位置は?」
「俺か?俺は魔術と科学の交差点だ。魔術サイドと科学サイドの間を取り持っているんだ」
美琴は天然の能力者で、アクセラレーターとミサカ達は科学の産物だろ。
「う~ん…」
「一弥、知恵熱出るぞ」
「そう思う…で、いつ帰れるんだ?」
「今、ヴァーリが手続きをしてくれている。帰りはルシファードのプライベートジェットで帰ることになる」
「あぁ、明日か明後日にはテイクオフ出来る。で、日本での住処だが、物件を紹介してくれないか?」
「あぁ、俺の弟に言ってくれ。不動産系は、弟に丸投げしているから」
「わかった。後で連絡をする。で、ルフェイは、一弥の家に住まわせればいいのか?」
「う~ん、そうだな。そうしてくれ。たっぷりとガン見したいから」
やっと、帰国できそうだ。お汁粉、くず餅、焼きもろこしもいいなぁ。脳裏では食い物が渦巻いている。
---安室透---
ベルモットに呼び出された。
「仕事があるんだけど、どうする?」
俺に選択の余地があるのか?
「勿論、しますよ」
「そう…死ぬ覚悟はある?」
死ぬ覚悟?そんな危険な仕事なのか…
「う~ん…」
「まぁ、いいわ。失敗すれば、殺されると思っていた方が良いわよ」
なんかヤバい相手のようだ。
「明後日、ある人物が帰国する。その人物を消すのよ。いいわね」
帰国?まさか…
「あら、心辺りがあるようね」
坂本一弥か…
「全員参加だって。一介の高校生一人を消すのに…ボスは何を考えているのかしらね」
全員参加だって…羽田か成田が火の海になるのか?
「どこで消すんですか?」
「着陸する直前に、狙撃するのよ。いい?失敗すれば、こっちが全員消されるから…」
ベルモットの顔は、珍しく余裕が無いみたいだ。それだけ、ヤバい相手が、一弥の後にいるのか。
「どこの組織が、彼の後にいるんですか?」
「分かっているのは、ルシファード帝国、必要悪の教会、天草式…」
十字教団…おい!英国、バチカン、ロシアを敵にするのか…そこに、ルシファード帝国って…成功しても、生きていられないかもしれない。死んでも、魂は地獄にも天国にも行けずに、彷徨いそうだ。
「相手が悪過ぎませんか?世界で一番の宗教団体の関係者を…」
「ボスからの指示…いいわね!」
念を入れるように言うベルモット。彼女も必死なようだ。
「なんで、彼は狙われているんですか?」
「APTX4869…これに関する資料を集めているらしい。その過程で、私達の属する組織に接触があったらしい。製造法、解毒方法を開示しろって…」
誰から漏れたんだ?そもそも、一弥が、ボスに接触したのか?これって、罠では無いのか?
「開示はしない。なので、開示を要求した彼には、消えて貰うことにしたらしい…」
一弥の周囲に、あの薬を知っている者がいるのか?マズい…これは回避出来るのか?空港が戦場になるのかぁ…