---坂本一弥---
帰ろうと校門を出たところで、FBIの日本支局員に拘束された。なんか、やらかしたかな?車に載せられて、現在移動している。
「何の容疑ですか?」
「殺人の容疑だ。共犯者の佐藤美和子の身柄も押さえてある」
美和子も拘束されたのか?なんでだ?
「どうして?」
「君達は昨晩一緒にいただろう?」
まぁ、朝まで一緒にいたな。珍しく、美和子が定時帰宅したから…
「で、殺人ってなんだ?」
「惚けるのか?まぁ、いい。この後、じっくり、自白させてやる」
自白も何も、やっていないんだけど…
---土御門元春---
さすが、自国民を一番に考える国である。捜査をロクにしないで、ターゲットの一弥と佐藤刑事を拘束だと…呆れて、介入が出来なかった。いや、拘束するとは思わなかった。異国の地で…横暴である。
「どうするつもりだ?」
ねーちんの視線が恐い。俺の判断ミスか?美琴、番外、打ち止めの冷ややかな視線…五和は、いつでも俺をやれる間合いにいるし。困ったにゃ。
「たぶん、アイツらは、公海に出てから尋問をするんだろう。国内では、人権問題が生じるからな」
って、ヴァーリ。一弥達を載せて、車は横須賀に向かっている。軍艦に載せて、本国へ連れて行き、裁判で終身刑か死刑にされるんだろう。一弥達は無実なんだけどなぁ。
「飛行機を持って来たわよ」
英国第二王女であるキャーリサが、移動手段を持って来てくれた。ヴァーリの飛行機は破壊されたから。キャーリサは一弥の元へ押し掛けてきた。来る者を拒まない一弥の性格を理解してだ。きっと、あの狸ババァの入れ知恵だろうな。
「じゃ、一弥の乗せられた船が公海に出たら、救出に行くぞ」
公海上なら、この国とは戦わないで良いだろう。
「美和子お姉ちゃんも、同じ船だといいなって、ミサカはミサカは思います」
そうだな。別々だと厄介だ。
「で、誰が大統領に接触するんだ?」
「第一王女のリメエアが、既に向かっているわ」
なら、多少の無茶も平気か?
---リメエア---
彼に言われた言葉…王女である前に一人の女体だろ?
失礼なヤツである。女体呼ばわりとは…だけど、王女として扱われるよりも、信用は出来る気がする。30過ぎても王女って立場は、肩身が狭い気にさせられる。世継ぎを作るのに時間が無いとか、いつ、誰と、愛し合おうと私の勝手だと思う。
彼は私を一人の女体だと見ている。それはそういう視線で、見てくれているってことなんだろう。なんたって、彼は英国の王女3名にまったく興味を示さなかった。王女としては…
彼はキングとしての自覚はまるで無い。その気になれば、英国のキングにもなれるのに、意に返さない。
『政治関係は土御門に丸投げ、十字教は火織に任せる。適材適所だよ。俺は好きな女を護れるだけでいい』
って…キングの権力に見向きもしない。意味分かっているのか?たぶん、分かっているんだろうけど…上に立ちたくないのだろうな。
彼と会話をしてから、私はこれからの方向性を見つけた。私に出来ることをしていく。私に出来ることは、外交交渉だろう。戦略を練るのは楽しいからね。
◇
「英国の王女が表敬訪問ですか」
暢気そうに大統領が出迎えてくれた。
「いえ…真意を確かめに来ました。宣戦布告をされたのですが、本気でしょうか?」
戸惑う大統領。
「何かの間違いでは?」
「我々のキングが、FBIの捜査員によって、異国の地で逮捕されました。これって、どういう理由ですか?」
大統領が側近の者から話を聞いている。
「そのような報告は上がって来ていません」
「では、海軍とFBIの暴走ってことでいいですね?」
「海軍?どうして海軍なのですか?」
驚いている大統領。本当に知らないようだ。
「拘束された我々のキングが、横須賀から軍艦に載せられて、この国を目指しています」
「キングとは?英国に国王陛下はおりませんよね?」
「アンダーグラウンドのキングですよ。各国との調整をしてくれている人物です」
「暗部のボスですか…何かしたんでしょ?」
「彼はしてません。調査も捜査も無しに逮捕って、理由不在の拘束って、処分するつもりですよね、この国は…」
「汚い者は消えるべきです」
「彼は、十字教団の教皇のパートナーですよ。この国の十字教は、信仰の対象が代わったってことですか?」
調査をしていないので、彼が十字教の裏ボスって知らないようだ。大統領の顔から血の気が失せていく。
「あぁ、そうそう…あなたとの会話は、リアルタイムで配信しています。十字教の神父や牧師に向けてね」
「なんですって…」
言葉を失う大統領。国教である宗教のトップを拘束って…信者を敵に回す行為である。それは、選挙の票田を失うことに繋がる。政治家を倒すに銃器はいらない。票田を奪うだけで、平和的にクーデターは出来ると思う。
---坂本一弥---
船倉で自白を強要されている。目の前には美和子が吊されていた。
「おい、自白しないと、彼女がどうなってもいいのか?」
ありがちの脅しである。だけど、自白しようにも、ヤッタ覚えが無いし…困った。
「どうやって、拉致をして殺したんだ?」
パチーン!
「痛っ!」
目の前で、美和子が鞭で打たれている。ふざけたことを…
「美和子に手を出すな!」
「じゃ、洗いざらい吐け!」
吐き出す物も無い…どうするよ、これ…こうしてえん罪は、作られるのだろうな。
「わかった。では、君の彼女を、君の目の前でかわいがってやる。おい!溜まっているヤツを呼べ!」
はぁ?美和子を公開レイプか?ふざけるな。
カチャ!
拘束していた機具が外れた。瞬動術で美和子の傍に行き、美和子の周囲の敵を倒す。
「何!どうやって、はずしたんだ?おい!撃て!殺しても構わない」
げっ!銃弾が飛んできた。咄嗟にチタンナックルを装着して、弾を弾き飛ばしていく。
「なんだ、コイツ…銃弾が効かないだとぉぉぉぉぉ~!」
美和子の拘束も外し、奪った銃を美和子に渡した。
「援護してくれ」
「まかせてよ、一弥!」
美和子と、足掻けるだけ足掻こうっと…
---土御門元春---
一弥達の乗船した船を特定した。船団の旗艦である戦艦で、周囲にはイージス艦や駆逐艦、空母などがいる。潜水艦もいるんだろうな。どうするよ、コレ…
って、ねーちん、五和、ヴァーリ、番外、アクセラレーターがハングライダーで、飛び出していた。おいおい…ハングライダーは見付かり、イージス艦が対空ミサイルを撃つようだ。たぶん、目標はこのプライベートジェットだろうにゃ。
「キャーリサ、チャフはあるのか?」
「勿論、積んでいるわ。どこかのアフォな次期帝王機とは違うわよ」
凄まじい空気振動を受けた。まだ、ミサイルは飛び出す前だけど、なんで?下を見ると、イージス艦から火柱が上がっていた。あぁぁ~、打ち止めかぁ。ハックした衛星から、発射寸前のミサイルを狙撃したようだ。
今度は、空母から戦闘機が飛び出しそうなんだけど…
「戦闘機はマズいわねぇ」
機銃で撃たれたら、チャフなんか効果無いし。離陸しようとする戦闘機。だけど、離陸する前に火だるまになっていく。おぉぉぉ~、番外が燃料タンクを狙撃していた。美琴は、船のレーダーを狙撃しているようだし。電磁砲持ちは敵にしたくないなぁ、って思ったり。
---坂本一弥---
倒した敵から、手榴弾を手に入れて、それを追っ手に投げていく。アンダースローで…敵の足元スレスレを飛び、敵が気づかずに、爆発に巻き込まれていく。う~ん、効率がいいのかな?
「一弥、ソレ、隙がありすぎるよ」
って、美和子。そうなのか。じゃ、普通にスナップスローで投げ込む。追っ手から逃げ切れたのだが、迷子になったようだ。ここはどこ?大きな扉があったので、開いて中へ入っていくと…エンジンルームのようだ。全自動な為か、誰もいないようだ。
「これって、原子力エンジンかな?」
美和子の声。一旦止めると、再起動するのに、膨大な電気がいるんだっけ?よし、止めてしまおう。こういう装置はエマージェンシーボタンってあるよな。それを探す。おっ!あった。これをポッチと押し込んで…装置からの音が途絶えた。その途端、電灯がナトリウム灯に切り替わった。これって、電源を消失ってやつかな?
「一弥、暗いから、余計に迷子になりそう」
って、美和子。あぁ、そこまで考えていなかった。懐中電灯を探さないと…
---番外固体---
一弥の右腕からの信号を追う。打ち止めに、艦内マップを送信してもらった。
「一弥はエンジンルームにいるみたいよ」
皆に知らせた。
「うん?エンジンが止まったのか?あのバカ、止めたのか?」
アクセレーターの楽しそうな声。電源喪失して、艦内はパニック状態かもしれない。チャンスだ。艦内に潜入した。
「ミサカは、艦橋を制圧してくれる?ヴァーリとアクセラレーターは暴れて、敵を引きつけて」
「わかった」
「まかせてくれ」
「あははは、愉しめそうだ」
火織の指示に従う。艦橋に向かう途中で、敵を無力化させていく。
---リメエア---
「なんだと…連絡が取れないだと…」
彼を乗せた船団と連絡が取れないらしい。意図的に連絡を取っていない可能性もある。
「ちゃんと、連絡を取ってくれてますか?」
「あ、当たり前だろ…」
大統領府の門の前に。十字教の信者が集まって来ている。スマホが鳴動した。メールが着信したようだ。メールを確認した。
『救出部隊が強襲して乗船。現在、捜索中』
とある。連絡が出来無いのは、船団に攻撃を仕掛けたのかもしれない。って、キャーリサの持ち込んだのって、プライベートジェットだよな。彼の暗部が良い働きをしているのだろうか。
「すまない。現状がわからない」
困惑している大統領。
「彼が生きて生還出来ることを祈っています。万が一…その時は、覚悟してください」
「その彼はそんなにエラいのか?」
「彼自身はエラいと思っていません。だけど、彼を買っている者達が、彼の生きたいようにサポートするだけです。権力利用して私腹を肥やす輩と違い、彼は、権力を使う気は無いと思いますよ。そんなリーダーがいても良いのでは無いのですか?この閉塞した世界を変えるには、今までにいないタイプの彼は、打って付けだと思います」
「わかった。もし生きていたら、友好条約を結ぶことにしよう」
もし生きていたら?死ぬ事が前提なのか?この狸ヤロー!許さない…
---坂本一弥---
ここはどこ…なんで、迷路のような作りなんだ?表に出られる階段はどれだ?
「プリエステス、いましたよ~」
五和の声だ。幻聴かな…
「一弥、大丈夫か?」
火織だ。幻が見えているようだ。
「美和子、大丈夫か?」
「えぇ、どうにか。一弥が、疲れているみたいで…」
疲れていないって。ちょっと、目眩がするだけだし。あぁ、火織の谷間…これも幻かな…もうすぐ死ぬのかな。
「おい!一弥、しっかりしろ…」
「プリエステス、これは、マインドロストかもしれません。能力の使い過ぎだと思います」
能力?俺に能力って、あったっけ?魔法は使えないし…なんか、みんなの声が遠くなっていく。
◇
いつの間に眠ったのだろうか?いや、ここは死後の世界か?
「良かった…一弥、大丈夫?」
なんで、蘭がいるんだ?これが走馬燈ってやつかな?両隣にインデックスとミサカが添い寝をしている。ここって、俺の部屋か?
「一弥、わかる?私よ、蘭だよ」
「あぁ…」
「意識障害かもしれません。疲労とマインドロストが重ねっていましたから」
アーシアの声だ。あれ?今までの船のことって、夢だったのか?
「美和子の治療は終わっている。心配はしないで、大丈夫だ」
火織の声だ。あれ?どういうこと?どこからが夢なんだ?
「なんか、混乱しているみたいだよ」
「落ち着いたら、事情を話せばいいだろう」
俺、どこか悪いのか?はぁ、眠い…
◇
連行されてから1週間後に、ベッドから抜け出せた。土御門曰く「将来出るであろう杭を先に抜こうとしたバカがいた」ってことのようだ。俺は将来出る杭になるのか…先祖のように暗殺される運命なのか?
「無い頭で考えてもしょうがにゃい。今を生きろよ」
って、土御門。そうだな、今を生きよう。人間、いつか死ぬんだし。久しぶりに、お散歩に出掛けた。行き先はSPACEである。入口業務をおたえとクリスがしていた。
「よぉ!どうだ、回転率は?」
「えぇ、こんな感じです」
クリスが帳簿を見せてくれた。二人で、俺の執務室へ向かった。執務室って行っても、4畳ほどの部屋で、売上リスト、仕入れリスト、帳簿の類いが置いてある。部屋に入り、鍵を閉めた。帳簿関係の仕事をする時、施錠をするルールになっていたから。クリスは帳簿が付けられるスキル持ちだった。なので、丸投げしていたのだ。
帳簿に目を通していく。レンタル楽器の需要があるようだ。試用目的のレンタル楽器を増やすのも手かな。ノートにアイデアを書き込んでいく。
「店長、お久しぶりですよね?」
やけに顔が近いクリス。う~ん…
「試用してみますか?」
いいのか?クリスを抱き締めてみた。うん?ノーブラな予感。指を這わして、感度をチェック。
「あっ!」
なかなか良さそうだ。
コンコン!
「たえです。店長、お話があります」
おたえの声だ。クリスから離れて、ドアを開けて応対する。
「久しぶりですし、調弦してくれませんか?」
「あぁ、そうだね。じゃ、おたえの帰るまでいるよ。クリス、帳簿を頼むよ」
「はい」
少し残念そうなクリス。また、今度だな…