※この作品はR-18です。

その男、粗暴につき   作:もっち~!

5 / 87
ストーカー

 

---川神百代---

 

床下手…そうかもしれない。いや、抱きつかれただけで、何も出来無かった。頭の中は真っ白になっていた。彼の言いなりになっていた。今まで、私の懐に入り込む輩は居なかった。彼に拳も蹴りも通じない。立ち技世界一の座に、胡座をかいていた訳で無いのだが…当たらなければ意味を為さない。

 

彼との戦いは、異次元な戦いであった。拳を放っても掴まれ、蹴りまでも掴まれ、投げ捨てられ、寝技に持ち込まれてしまった。空手には投げに対す受け身は無い。まして極めに対する逃げも無かった。

 

師範曰く「総合格闘術相手では、勝ち目は無い」と言われた。彼は総合格闘術を身に着けているようだった。

 

「相手の名前はなんと言うのだ?」

 

「坂本一弥です」

 

「坂本…まさか、坂本流の…」

 

祖父の、いや、道場においては師範の顔色が変わった。

 

「百代、もう、そいつとは戦うな」

 

「何故ですか?」

 

「お前では勝て無いからだ」

 

「坂本流とは?」

 

「総合格闘術の流派で、空手、柔道、剣道を極めた者がいるそうだ。そいつは、免許皆伝をし、人智を越えた技を会得したそうだ。名前を坂本一弥と言う」

 

人智を越えた技?

 

「どんな技ですか?」

 

「驚異の動体視力を以て、銃弾を拳で弾き、驚異の身体能力を以て、真空刃を放てると言われている」

 

銃弾を拳で…どんな練習をしているんだ?まさか、空手の腕も私以上なのか…益々、彼に惹かれていく私…

 

 

 

---坂本一弥---

 

体重や年齢、段位などの制限の無い、フルオープンな柔道の決勝トーナメント大会に呼ばれた。白帯の俺に果敢に攻めてくる黒帯。まぁ、帯だけ見たら格下だのもな、俺は…道着を掴みに来たので手首を掴み、一本背負いで投げ落とした。

 

「一本!」

 

あぁ、もう終わりか…もっと、充実した戦いがしたい。控え室に戻ると、高校生チャンプの三郷三太郎がいた。

 

「てめぇ~!まだ、白帯なのか?このサギ師野郎がぁ!」

 

失礼なヤツだ。白帯のどこがサギなのだ?怒りに任せて、指一本で制圧した。意識を狩り取られ、失禁している三郷。

 

「次は誰が難癖付けるんだ?」

 

誰も難癖を付けてくれない…つまらないなぁ。会場に戻ると、美和子がいた。なんで居るんだ?

 

「あれ?一弥君…試合に出ているの?」

 

「まぁ…」

 

あぁ、刑事だから、柔道をしている同僚がいるのか?いや、彼氏かもしれない。

 

「彼氏の応援?」

 

カマを掛けてみた。

 

「一弥君の?まぁ、してもいいけど…今日は、職場の同僚が出ているから、そっちの応援だよって、次の相手は一弥君みたいだけど…」

 

なるほど…あぁ、俺の番だ。相手は美和子の同僚だそうだ。楽しめるかなって、速攻の内股で一本勝ち。次は誰かな?

 

「速効勝ち…って、一弥君…なんで白帯?」

 

美和子が良い処に気が付いた。

 

「昇級試験を受けていないんだよ。白帯だと、舐めて掛かるから、楽しいでしょ?」

 

「あぁ、一弥君らしいけど…」

 

美和子が呆れるように見ている。ケンカ好きに思われたかな。それは心外である。あくまで場数を経験しているだけである。

 

「お前…美和子さんに何の用だ?」

 

あっ、さっき倒したヤツだ。まだ元気そうだな。もっと激しく戦っても良かったかな。

 

「美和子さんの彼氏?」

 

「そうだ」

 

「何を言っているの、高木君!」

 

そうか、彼氏がいるのか。この哀しさを戦いにぶちまけよう!

 

◇

 

「お兄ちゃぁぁぁぁ~ん、どうだった?」

 

家に帰るとウザミンが出迎えてくれた。優勝トロフィーを手渡した。

 

「美和子、入っていいよ」

 

彼氏と名乗った男性を、「嘘吐きは泥棒の始まりだよ」って、ボコった美和子。そして、俺に甘え始めたので、初めてお持ち帰りしてみた。

 

「お邪魔します」

 

「うん?この人は?」

 

「佐藤美和子さんだ。いつも留置場から助けてくれる女神な女刑事さんだよ」

 

「お兄ちゃんの妹の宇佐美です」

 

「弟の数馬です。よろしく、お願いします」

 

「うん?お兄ちゃん、彼女?」

 

ウザミンが頭を傾げて訊いて来た。

 

「うん」

 

素直に頷く俺。

 

「蘭は?」

 

「成長中だよ」

 

「あぁ、なるほど、美和子さんは完成形ってことかぁ」

 

ウザミンは納得したような表情だ。コイツの扱いは楽だ。ただ、ウザいだけであるし。

 

「食べず嫌いは、大きくなれないだろ?」

 

「さすがはお兄ちゃんだね!」

 

さすおにのように言わないで欲しい。俺はあの主人公のように器はデカくないし。

 

「へぇ~、広いのね」

 

部屋を見回している美和子。

 

「ここに泊まれば、3階のジムは使い放題だよ」

 

「そうか。今度非番の日に泊まろうかな」

 

「あぁ、兄さん、ゲスト用の宿泊ルームもあるから」

 

って、数馬。

 

「ホテルの代わりにもなるのか?」

 

「おいたはダメだよ」

 

「あぁ、それは自分の部屋でだろ?」

 

その位は知っている。

 

「兄妹で住んでいるの?」

 

「僕と妹は隣の部屋です」

 

と、数馬が返事をしている。そう、コイツらは隣に引っ越して来た。両親は、ウザミンのしたいようにさせる方針らしい。これ以上、悪化しないようにだと。俺のいない間に何が遭ったのだろうか。皆、答えてくれないことから、口では言えないような事をしたのだろう。

 

「じゃ、ちょっと、美和子さんとジムに行って来るよ」

 

「わかりました」

 

運動が苦手の二人は付いてこない。

 

◇

 

月曜日…眠い…学校へ行きたく無い。ウザミンと数馬に連行され、俺のクラスで蘭に引き渡され、自分の席へ…

 

「随分、疲れているのね。昨日は誰と寝たの?」

 

「昨日は美和子…」

 

「美和子さん?どこで会ったの?」

 

「柔道大会で、彼女は同僚の応援に来ていたんだよ」

 

「あぁ、警察だからか。って、一弥君、柔道大会に出ているの?」

 

「白帯だよ。予選落ち程度だ」

 

「ダウト!」

 

世良にビンゴされた。コイツ…来ていたのか?

 

「お前、優勝していただろ?それに、昨日の大会は、決勝トーナメントだった」

 

「優勝?白帯なのに?」

 

「偶然だよ」

 

「ダウト!」

 

世良にビンゴされた。コイツは俺のストーカーか?

 

「お前、わざと昇級試験を受けないそうだな」

 

俺の事を調べているのか?

 

「試験は嫌いだよ」

 

「本当にそれだけか?」

 

「ストーカーには教えない」

 

「誰がストーカーだ!」

 

世良の事を指差す俺。

 

◇

 

放課後、正門へと向かうと道着姿の川神百代がいた。コイツ、学校へ行っているのか?って、怪我はもういいのか?そもそも、コイツって、俺のストーカーか?行く先々にいる気がする。

 

「勝負しろ!」

 

ヤル気だけは十分のようだ。

 

「マグロ!来いよ!」

 

蹴りか?パンチか?まずはローキックで、反応を見ているようだ。では瞬動術で、懐に入り、股間へ膝蹴りと見せかけて、膝を股間に這わせていく。

 

「うっ!やめて…ここでは…」

 

真っ赤な顔で前のめりになったので、そのまま、滞空時間の長いブレーンバスターで芝生に叩き落とし、サソリ固めで腰へダメージを与えて行く。藻掻く百代。更に絞め上げる俺。そして藻掻かなくなった百代から離れた。

 

「じゃなぁ、マグロ!」

 

家に帰るまで、何人とバトル出来るかな?ルンルン気分で校門を出た。

 

 

 

---服部平次---

 

一弥に一太刀入れたい…おとんに怒られ、おかんに怒られ、総て、アイツのせいや。どうするかな?剣道大会に、どないすれば出てくるんや。

 

『また負けた…』

 

闘神の川神百代からメッセージが届いた。立ち技最強でも勝てへんのか。そうや、あの世良って女子はどうやろうか?工藤へ連絡をした。

 

『服部か?どうした?』

 

「一弥を倒したいんやけど、なんか策はあるか?」

 

『倒す?真剣で斬り捨てるのか?』

 

「真剣勝負は分が悪い。せいぜい木刀やな」

 

真剣は扱いづらい上、持っていないし。

 

『闇討ちか?』

 

「なるほど、それも手やな。お主も悪よのぅ、工藤」

 

『巻き込むなよ』

 

「あぁ、がんばるで」

 

闇夜で勝負かぁ。アイツ、夜目が効かんのか。

 

◇

 

が、闇討ちを仕掛ける前に、アイツが剣道大会に出て来た。どんな心境の変化や?

 

「あれ?ウザ男君じゃん。和葉は?」

 

「和葉は関係あらへん!」

 

「あぁ、百代がいるもんなぁ。よぉ!この二股男!」

 

コイツ…許せへん…って…俺のライバルの沖田が、一弥に負けたらしい。マジか…

 

「服部…アイツは危険だ…」

 

って、沖田。えっ!沖田の胴は割れていた。防具を割る威力って、何?

 

「気を付けろよ。真空切りを放ってくるぞ」

 

真空切り?赤胴鈴の介か?

 

「アイツ、何流や?」

 

「知らないのか?アイツ、坂本流の免許皆伝だ」

 

免許皆伝…坂本流やって…

 

「まさか、あの坂本家の関係者か?」

 

あの坂本家とは、坂本龍馬の子孫で、先祖のように暗殺されないよう、あらゆる攻撃から身を守る術を会得するという坂本流の総本山や。

 

「そうだよ。あそこの次期当主だ。舐めて掛かると死ぬぞ」

 

マジか…勝てへん訳や…震えが止まらない。紙1枚で殺人が出来るらしい流派である。

 

そして、俺の番…行けるところまで、追い詰めてやる。

 

「1本!」

 

え…何も出来へんかった。速効で胴へ撃ち込まれたのか、沖田同様、胴が割れていた。マジか…

 

「和葉、勝ったよ」

 

「一弥、おめでとさん」

 

和葉が一弥に抱きついて居る。一弥の頬に口付けやと…何時の間に、そんな関係に?

 

「おい!和葉から離れろよ、ボケがぁ~!」

 

「平次…私は、お前の物や、あらへんよ!」

 

って、和葉。え?なんで?どないして、そうなる?

 

「あぁ、和葉と百代は、服部の物なのか。責任を取れよ!二股のウザ男君。せめて、和葉は本妻にしてやれや~」

 

って、アイツは去って行く。和葉を置いて…

 

「どないして、あんなことを言うの?私は、平次のお飾りやないで!」

 

涙を流しながら、俺の前から去る和葉。なんでや?

 

 

 

---坂本一弥---

 

久しぶりの京都。お団子食べて、豆腐食って…こういう時に限って、逢いたくないヤツに出逢う。

 

「一弥…」

 

「なんや、紅葉。お前は服部大好き人間やろ。負けた服部を慰めてやれよ」

 

「一弥…どないして…帰って来たの…逃げて!」

 

紅葉の警告を受けて、逃げようとしたら、大岡家の黒服に囲まれた。力尽くで捕まえる気か?応戦する。当然のように警察が現れ…俺は留置場へ入れられた。

 

「また、お前か…懲りんヤツやなぁ」

 

って、留置場のエラい人。

 

「大岡の黒服に言えよ!アイツらに襲われたら、応戦するだろ?」

 

「この辺りじゃ、大岡家にわっぱは打てないんだ。知っているやろ?」

 

警察関係者が頭を下げる大岡家。この辺りの権力者だ。官民の癒着ってどうなん?

 

「どうする。大岡家の弁護士が引き取りに来たで」

 

「行かないよ。俺は権力を傘にするヤツは嫌いだ」

 

俺を連れ出し、一筆書かせて、紅葉の眷属にするつもりのようだ。そんなシナリオに載る物か。

 

「相変わらずやな。まぁ、2,3日泊まっていけ」

 

はぁ~。遠征先でも留置場が定宿って、なんや?

 

◇

 

3泊すると、東京から妃弁護士が迎えに来てくれた。分家の叔父さんが手を回してくれたそうや。出る杭は打たれるってことで、坂本家は表立って動けないらしい。

 

「大岡家に嵌められたそうね」

 

「あそこの令嬢の婚約者を、ボコったから…」

 

「婚約者って?」

 

「服部平次だよ。まぁ大岡家が、一方的に宣言しているだけだけどね」

 

紅葉の片思い。で、平次を抑え込める俺を、紅葉の専属のガードにしたい大岡家。

 

「園子もそうだけど、金さえ有れば、なんでも出来ると勘違いしている連中だよ」

 

「なるほどね。君は、そういうのが嫌いな様だものね」

 

「また、蘭に心配を掛けちゃったなぁ…」

 

「そう思うなら、大切してあげてね」

 

「はい、義母さん」

 

妃弁護士の表情が少し緩んだ。

 

◇

 

スマホが鳴動している。出ると紅葉だった。

 

『ごめん…』

 

「3泊だぞ。あそこは冷えるんだぞ。今度入ったら、毛布を差し入れしろよな」

 

『うん…』

 

「平次とはどうなっているんだ?」

 

『どうって?進展なしや』

 

「アカンやろ?グイグイ行けよ。俺にはグイグイ追い込むくせに」

 

『だから、ごめん…一弥は相談相手だって、ゆうているんだけど、父が理解してくれないの』

 

「納得させておけよ。大好きな京都に、行けないじゃないか」

 

『本当にごめんね』

 

通話は切れた。紅葉は嫌いでは無いが、大岡家は大嫌いだ。俺のガード対象は弟と妹である。紅葉はその対象にはならない。口で言っても、あそこのクソ親父は分かってくれないようだ。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。