---坂本一弥---
久しぶりの留置場…柵越しに笑顔の美和子がいる。
「今回は、誤認逮捕だってねぇ」
「若い女性を監禁だって…俺は強制していないんだけど…」
濡れ衣である。親元を離れて暮らして居る少女が多数いるだけで、監禁って…この国の刑事はバカか?
「蘭も、和葉も、紅葉も、明日奈も、自分の意思で、移り住んでいるんだけどな」
「だよね~」
「その上、身分証明書が偽造だって言うんだよ。あの証明書はババァが作った物なのにだよ」
身分証明書の提示を求められて、キャーリサが出した証明書。大英帝国のロイヤルファミリーの物だった為、偽造だと決め打ちされた。まぁ、こんな札付きが持つような物では無いものなぁ。
「キャーリサも、女性専門の留置場へ入れられているわよ」
苦笑いしている美和子。まぁ、疑われるよな。王女が住む環境では無いし。
「シル達は入管の留置場にいるわよ」
奴隷市で買った為、彼女達のパスポートなんか無い。
「それぞれの国へ強制返還だって。帰れば再度、陵辱の上、奴隷として売られるでしょうね」
真顔になる美和子。たぶん、生かしておかないかもしれない。奴隷として売れば、再度救出される危険があるからだ。
「俺のやっていることは間違っているのかな」
「一弥は悪くない。悪いのは、この国のシステムだと思う」
ダメシスター達教会関係者達は、土御門の機転で、難を逃れたそうだ。麻衣と美琴は、さーやの家に逃げ込み、難を逃れたそうだ。
「どうなるんだ?シル達の強制返還だけは、阻止したいんだけど」
ここにいたら、何も出来ない。
---目暮十三---
事態は緊迫していた。警察庁と、外務省、防衛省が対立している。ICPOの手配書に、何故か国際テロリストとして載っていた一弥君。警察庁はICPOへ借りが出来ると喜んでいた。だが、大英帝国、ルシファード帝国などの後盾国の猛抗議が、外務省と防衛省へ集まっているそうで…
「警部!一弥は悪いことはしていない。なんで、身柄拘束の上、引き渡しなんですか?」
佐藤君の猛抗議。
「全米民主国がICPOを通じて、一弥君を国際テロリストとして、手配していたそうだよ」
「どんなテロをしたのですか?」
「してからでは遅いので、する前に死刑が妥当だと言っているそうだ」
あの国の不利益になる為に、死刑にするらしい。
「おかしいでしょ?」
おかしい。だが、
「一介の公務員に過ぎない私達では、どうにもならないんだ。既に問題は国際問題に格上げされているからな」
国連決議は難航しているそうだ。ロシアと大英帝国が、全米民主国の主張に反対している為らしい。どうすれば良いんだ?
---土御門元春---
俺達は大英帝国へ脱出した。一弥とキャーリサを残して…インデックス、ラストオーダー、ワーストの身の危険が生じた為で、トカゲの尻尾切りって感じである。
「どうするんだ?おい、インデックス!」
「どうもこうも無いよ。一弥を救いたい」
「誰が裏切ったんだ?いや、誰が全米と手を組んだんだ?」
「わからない。ネットワークに引っかからない」
ワーストの目には涙が浮かんでいる。世界の命運を握る3名が揃っているのに、一弥を救えない事に、悔しさを感じているようだ。
「一弥が消えて得するヤツって、誰だ?」
「工藤新一を筆頭に、全米だろうな」
ねーちんのオーラは殺気立っていた。
「だが、工藤新一には、そんな力は無い」
そうなると、全米民主国が残るが、アイツらの諜報力では、俺達のことを調べ切れないと思う。そもそも推理力が無いからなぁ。
「一弥は暗殺される運命なんだって、ミサカはミサカは確信したり。先祖と同じだよ。死をもって時代を切り開く運命なんだよ、インデックス」
笑顔成分がまるで無いラストオーダーが結論づけた。
「龍馬と同じ道かぁ…アイツの死後、歴史は確かに動いた」
無表情のインデックスが、唸るように言葉を返した。一弥は死ぬのか?たぶん、アイツは喜んで死ぬだろう。役割を果たせると思って。だけど…だけどなぁ…
「土御門にしては、感情が荒れているなぁ」
って、毒気が完全に抜けきった表情のワースト。
「一弥の死を無駄にしない。あっちについたら儀式を開始する。大丈夫だよ。一弥には『幻想殺し』がついている」
一弥の死をもって、アレを発動する気のインデックス。一弥の再生っていう幻想が消えると思うんだが…
---坂本一弥---
全米大使館へ移送された。犯罪者引き渡し条約により、俺は引き渡された。目の前には電気椅子があり、そこに座らせられる。
「兄さん…兄さんの死は無駄にしないから」
全米大使の横に、数馬とウザミンがいた。
「これで兄さんは、僕達だけの物だよ。誰にも渡さないからね」
「数馬、ウザミン…愚か過ぎるだろ?」
「何が?ねぇ、お兄ちゃん!」
コイツら、本質がわかっていないようだ。
「死んだら、俺は誰の物にもならない。俺は自由になれるんだ。これで、坂本家の呪縛から解き放たれ、俺は俺のやりたいように出来る。この世界を洗濯してやるよ」
濡れたスポンジが頭の上に載せられて、電極を取り付けられていく。そして…
「兄さん、良き死後を…」
数馬の声…目の前が真っ暗になって…
---インデックス---
一弥が逝ったようだ。予定より早すぎる。本国へ連れ帰らずに、大使館内で死刑にしたのか。飛行機の中であるが、かまわずに儀式を執り行う。陰陽師として土御門元春こと安倍晴明が術を行使していく。目の前に浮かぶ一弥の魂と龍馬の魂。二つの魂は勾玉のような形になり、2つは合わさり、1つの形に戻っていく。私も術を行使をして、本来の身体をこの世界に発現させた。復元された玉は、器である身体へと戻り…
『龍馬、約束を果たすよ。これから、我らは永遠に一緒にいる』
私の想いを、彼の器へ流し込んでいく。
「普段から私のビリビリに慣れている彼に、電気は通用しないのに、愚かな者達だね」
御坂美琴ことお龍が、ほくそ笑んだ。
「で、どうするんだ、この先は?」
現代の聖人である火織に訊かれた。
「一弥の意識が戻り次第、反撃をするよ。その前に一弥の手料理三昧かな」
---佐藤美和子---
目の前に、一弥が横たわっている。既に死後硬直も解け、棺に横たわっていた。
「どういうことだ?なぁ、数馬」
「見ての通りです。兄さんは引き渡された直後に、電気椅子送りになりました」
祭壇に掲げられている一弥の遺影を見つめている数馬。宇佐美は、棺に抱きついて居る。
「坂本家の力なんて、こんな物ですよ。兄さんすら助けられない程度の力です」
キャーリサも引き渡されたが、行方不明だと言う。蘭ちゃん達は、ショックが強すぎた為か、涙も声を出ないようで、ただ一弥の亡骸を見つめるだけだ。
「この国は、国民を守れないのか?」
「この国は、全米民主国の属国扱いです。独立をしない限り、この国の国民の生命は、全米国の物ですよ」
淡々と無表情で語る次期坂本家の当主になった数馬。
◇
部屋に戻り、身を清めて、遺書を書き残し、拳銃を手にした。一弥を一人になんかさせられない。今、逝くからな。待っていてくれ。
拳銃を口に銜え、目を瞑り、いざ…
「美和子は愚か者になるなよ」
えっ!咄嗟に拳銃のセーフティーロックを掛けた。この声は…
「お前は誰だよ。何の悪い冗談だよ」
あれ?カギを閉め忘れたのか?って、誰だ、コイツは…
「弥勒と申します。美和子を迎えに来た」
声は違う。だけど、言葉のイントネーションが同じである。どういうこと?
「この国は腐っている。俺達の国で話そう」
目の前に光の渦が見え、そこに飲み込まれていく。不思議と怖さは感じない。
---工藤新一---
帰国出来る様になった。そして、蘭とも逢える様になった。だけど…蘭は抜け殻のようになっていた。一弥の死は蘭の精神を壊すのに最適だったのかもしれない。蘭だけでなく、和葉も紅葉も青子も皆抜け殻のようになってしまったそうだ。
紅葉だけ帰る場所が無いので、坂本家の養女になったらしい。数馬は一弥の手に掛けていた事業を、総て手中に入れ、ポピパなどの継続支援をしているそうだ。
大量にいたメイド達は、それぞれの祖国へ引き渡されて、その後に不明になった者が多いと、風の噂で聞いた。
一弥に関係した者達だけ、悲惨な目に遭ったけど、この国の体制には異常は見られない。
「どう思う?」
キッドに訊かれた。
「なんか、しっくり来ない結末だよな?」
「そうだろう?俺もそう思うんだよ。だって、一弥を消さなくても、一弥本人は当主になりたくなかったんだろ?殺す必要性は無いよな」
そう思う。アイツはなりたくなくて、粗野で粗暴を演じていただけだ。数馬がやりたいと名乗れば、成れたはずだ。
「裏に何があるかだな」
「そういうことだ。共闘するだろ?」
俺はキッドと手を組んだ。いや、服部、ルパン、リョウもだな。皆口々に
「この結末は、裏に何かある」
と言う。
---弥勒(坂本一弥)----
目が覚めると、右に美和子、左に加奈がいた。この二人がいればいいかな。そんな毎日である。シャワーを浴び、厨房という戦場へ向かうと、シルと五和が下準備をしてくれていた。あのダメシスターとミサカの食いっぷりは健在であるのだ。
「おはよう」
「「おはようございます」」
ここは、大英帝国にあるマイトレーヤ聖堂と呼ばれる、俺達の住処である。下準備の終わった食材で、朝飯を作っていく。
「おっ!土御門、キャーリサの行方はわかったか?」
未だに行方不明であるキャーリサ。大英帝国への引き渡しはされず、人質にされたそうだ。
「全米民主国のどこにいると思う。見つかり次第、救出に行くよ」
地下に引き込まれたらしい。その為、足取りが追えないそうだ。あの国の地下は、ギャング、マフィアがはびこっているそうで、たぶん、人質と言うより、肉便器落ちしているらしい。
キャーリサ以外にも、不二子、ダクネス、リュー、リヴェリア、アイズが行方不明になっていた。ヴィオレットは、シルと共に、救出できたらしいけど。
「状況はどうなんだよ?」
「思わしく無いのが、分からないのか?」
分かりたく無い。
「相手が悪いんだ。好転するのは難しい」
あの国を守る為に、俺を売ったらしい数馬と宇佐美。
「どうすれば独立出来るんだ?」
「あの国が無くならないとダメだろ。政権や大統領が代わっても、手放す気は無いようだし」
「どうすれば無くなると思う?」
「大災害かな…」
関係無い無垢なる民に被害が膨大に出そうである。
「後は、膨大に所有している武器を無くすかだな」
それでいくかな。
「ネットワークで出来るか?」
「出来無い。防御対策が施されている」
八方塞がりじゃ無いか。
「近代兵器相手には、俺達は分が悪いんだよ」
「じゃ、資源を奪うのは?」
「奪う?どうやってだ?」
「地下にパイプラインを通して、石油や水を奪い、海底ケーブルを切断して、ネットを使えなくするとか」
「市民生活に影響が出るぞ」
ダメか…
「じゃ、市民生活には影響の出ない部分をカットだな」
「裏社会とか暗部を消して、大金を奪うか…それなら可能かな?」
方向性は見えた気がする。
---キャーリサ---
ブタのような男に肉便器にされる日々…自殺出来無いように、既に舌は無い。言葉がしゃべれない。味覚も無い。食事は栄養点滴である。既に人間として扱われていない。アイズ達は壊れて、廃棄処分にされたようだ。ここには、私、ダクネス、不二子しかいない。
「これが大統領専属の肉便器か。絶世の美女3名が相手とは…ふふふ」
ここは、多分、大統領府の地下だと思う。一弥…助けて…
「で、商談はどうなのだ、弥勒殿」
「この3つの肉便器も付けてくれるか?」
「う~む、それはかまわないが…」
「じゃ、成立だな」
弥勒と呼ばれた男が取り出したのは、ロンドンの地下通路の絵図面であった。大英帝国を潰すつもりか…
「じゃ、梱包してくれ。持ち帰る」
麻袋に入れられて、木箱のような物に収められた。もう、ダメか…
◇
悶々とした感覚で目が覚めた。周囲には、失神したダクネスと不二子が床に転がっている。どんだけ、プレイしたんだ?このド変態は…あぁぁぁぁ~、お尻に走る刺激の波。そこはダメ…栄養点滴だけの食事、腸の中は入って来た異物を食べ物と誤解して、蠢いていく。口元から垂れるよだれ。そんな醜い私を撮影する者達。死にたい…
「まだ死ぬには早いよ、キャーリサ。もっと愉しませろよ」
胸を揉み、乳首をこねるド変態に声を掛けられた。なんで、心の中を見られたんだ?
「お前は誰だ?」
はっとした。言葉が口から出るってことは、舌が再生しているのだ。もう何も感じ無くなっていたのに、乳首が気持ち良い。これは…
「『幻想殺し』の効果にゃ。肉便器であるという幻想から解放したんだよ」
土御門…じゃ、コイツは一弥か?
「坂本一弥は死刑を執行された。俺は弥勒だよ」
弥勒…あの男の取引相手ではないか?
「あれか?あれはロンドンの地下じゃない。ニューヨークの地下だよ」
「そういうことにゃ。相手を潰す切り札って幻想をぶち壊したんだ。だから、影響の無い範囲で事実が塗り変わったんだ」
そういうことか。あの力を一弥は受け入れたのか。
「一弥…会いたかった」
素直に喜ぶ私。もっと、突いて欲しい。もっと…
「徐々に反撃するぞ。これで人質は回収できたからな」
そうか、床に転がっている彼女達も、感覚が戻って、昇天したのか。って、ことは、意識が飛ぶまでプレイする気か?このド変態は…
「正解だよ、キャーリサ。俺、たまっているんだよ」
嬉しそうな彼の声…嬉しいやら怖いやらだよ、まったく…