---佐藤一弥---
ガレージで、車を弄り込む。美和子の車について行けるようにしたいからだ。美和子の愛車はRX-7FD3Sだ。ロータリーエンジンで、軽量、高出力のレースに向いている車である。一応、大英帝国籍である俺は、英国車にした。似たような構造の車をキャーリサに手に入れてきて貰った。それはロータスヨーロッパツインカムスペシャルである。FD3S同様にミッドシップであるし。
「パワーが足り無いんじゃ無いの?」
最高出力は126馬力である。FD3Sの280psにひけを取り過ぎている。
「そこは考えがあるんだよ。ツインカムスペシャルは1600ccなんだよ」
「まさか、エンジンを載せ替え?って、同じエンジンでも載せるの?」
「ロータリーは構造的に乗らない気がする。だから、1500ccの水冷V型6気筒のターボエンジンにしたんだ」
換装を終えたエンジンを見せた。
「どこのエンジン?」
「RA168Eってやつだよ。ロータス社の倉庫に眠っていたのを載せて貰ったんだ」
「う~ん…なんか、やらかした?」
キャーリサが疑いの目を持って、俺を見つめていた。
「美和子に勝て無くてもいいんだよ。ついて行ければ…まぁ、エンジンが重いので、他のパーツを軽量化しているけどね」
あの乗り心地最悪のシートとか、ボディーのカーボン化とか。お金は数馬が作っておいてくれた隠し口座でまかなったけど。
「運転は出来るんだよね?」
「出来るはずだよ。グランツーってゲームで練習したもん」
「ゲームと現実は違うのよ?わかっている?」
「そこは能力で…ズルをするよ」
運転が下手っていう幻想を殺して、クリアするずっこい俺。
◇
ドライブの日…峠に向けて走っている美和子とキャーリサ。俺はキャーリサ車の助手席にいる。
「確かに、運転はしやすいわ。このシートを除けば…」
シートは最悪だよな。キャーリサのケツの下にはムアツクッションを敷いている。敷かないと、痛いのだ。
「帰ったら、シートは改良するよ」
後方に五和運転のトレーラーが着いてきている。俺は勘違いをしていたのだ。いや、キャーリサの予想通り、やらかしていた。車のエンジンはガソリンで動く物と思っていたのだが、このエンジンって、ガソリンで動かないらしい。トルエン84%にノルマルヘプタン16%が燃料だったのだ。
「レース用の車のエンジンなんか載せるからよ」
凹む俺。知らないって怖いよね。五和のトレーラーに、その燃料を乗せていた。ガソリンスタンドでの給油が不可なのだ。美和子にゲラゲラ笑われたのもショックである。
「一弥らしいよな。全力でやるほどに空回りとは…」
って。帰ったら、エンジンも載せ替えないとダメだな。
◇
土御門が教えてくれた裏話…美和子本人は知らなかったのだが、走り屋の聖地・群馬県の冬名峠では『銀白の魔女』として、有名だったらしい。なので、その峠にいる俺達。走行会は夜開かれるらしい。そのあたりは土御門が仕切ってくれていた。
「チーム名は、ナイトバロンにしてきたぞ」
って、土御門。チーム名って物が登録時に必要らしい。
「一弥はヒルクライムとダウンヒルのどっちがいいんだ?」
「それはナニ?」
「登り坂と下り坂のどちらが良いんだ?」
「美和子はどっち?って、俺、美和子と走りたいんだけど…」
「早朝じゃ無いと無理だ。夜間は走行会で危険だしな」
現実は思い通りにならないことが多い。
「一弥、明日、サーキットへ行こう。そこなら一緒に走れるわよ」
じゃ、撤収だな。撤収準備をする。燃料を満タンにして、キャーリサが五和の隣に乗り込んだ。土御門は、バイクである。俺がエンジンを始動させた瞬間、一斉に俺の方へ振り向く観客達。
「次のダウンヒルが始まったら、ヒルクライムして、宿へ向かうにゃ」
「あぁ、わかった」
エンジンが暖まるまで、アイドリングさせておく。いきなり回転を上げると、エンジンに良くないから。
「まず、美和子が出るから、続いて出ろ。俺達は後ろに続く」
「了解」
少しずつ、エンジンの回転数を上げていく。なんか、熱い視線を感じる。なんでだ?あっ!美和子の車が動き出した。それに続く俺。
---佐藤 真子---
それは突然聞こえて来た。この音って…音源の方へ振り返る。私だけで無い。あの音を知る者総てが振り向いたのでは無いのか?そこにいたのは、脳裏に浮かんだ車では無かった。真っ黒なロータスヨーロッパがいた。
「まさか、ボディをオールカーボンにしてあるのか!」
誰かが叫んだ。その可能性は高い。不気味な車である。街灯の光を吸収しているかのように、光が反射しない。マットブラックのようだ。ゆっくりとアイドリングの回転域を上げている。連れの車はFD3Sのようだ。
「まさか、銀白の魔女か…」
銀白の魔女…この峠における伝説の走り屋の名前である。FD3Sが走り出すと、ロータスも走り出し、バイク数台とトレーラーが一台動き出した。どこかのチームだったのか?今回は走らずに、帰るようだ。私は、迷わず、愛車で後を付けていた。
トレーラーを追い抜き、彼らの走りを見たいのだが、前をいくトレーラーが抜けない。トレーラーとしてあり得ない速度で、峠を走っている。コイツら、何者?
---五和---
なんかウザいシルエイティに後ろを付かれた。トレーラーをパスしたいようだけど、一応ガードの役目もしているので、抜かせる訳にいかない。まぁ、抜かれてもプリエステス様や土御門達のバイクがいるので安全であるけど。
乳母車から戦車まで操縦できる私を抜く?させないです。長い車体を生かし、道を塞ぐ。対向車がいれば、連絡が来るので、思いっきり車体を振れるし。
『五和、何かあったのか?』
一弥様からの無線だぁ~。
「いえ、大丈夫です。小バエがたかっていて…」
『キャーリサ、ナンバーから身元を洗ってくれ』
「了解です」
後部バンパーに取り付けてあるカメラを使い、相手の車のナンバーを読み取るキャーリサ。この王女は、なんでも出来るようだ。一弥様の秘書をこなせる辺り、クセ者だと思うし。
「佐藤真子 20歳 レーサー兼ライター 処女のようです」
『真子?従姉妹かな?』
美和子さんの声。
「どうします?」
一弥様に指示を仰ぐキャーリサ。
『明日、サーキットへ行くなら、レーサーがいた方がいいな。土御門、確認をしてくれ』
『了解』
土御門だけが、後方へ下がっていき、小バエと接触をした。
---佐藤真子---
まさか、従姉妹の美和子さんが銀白の魔女だったとは…当の美和子さんは知らなかったらしい。そして、あの黒いヨーロッパの運転者が美和子さんの彼氏だという。
「彼氏ってことでは無い。一応、弟ってことになっているから…ははは」
彼の話になると真っ赤になり、顔がほころぶ美和子さん。お酒を飲む以外に、笑うことがあるんだ。普段の美和子さんのイメージは怖い女刑事さんだったのだけど。
「で、あの車のエンジンなんですけど…」
気になったことを訊いてみた。
「あぁ、あれはたぶん、車検通らないだろうな…」
頭を抱えている美和子さん。違法改造車って部類なのか?
「一弥!車検は通ったのか?」
「あぁ、1年限定で、更新は認め無いって…」
えっ!通ったのガソリン車で無いのに?完全にレース仕様のエンジンだと思うんだけど…
「エンジン載せ替えってリスクがあるんだな…」
「で、あのエンジンは、どの車のエンジンなの?」
たぶん、アレのはずだ。
「RA168Eだよ」
「Hondaの?」
思わず声を出してしまった。
「さすが、レーサーだね。そうだよ」
それは、最強のターボエンジンである。
「おい!一弥、車名を言え無いってことは、やらかしたんじゃ無いのか?」
サングラスの男性が、美和子さんの彼氏に詰め寄った。
「搭載している車は、マクラーレンMP4/4とロータス100Tだよ」
「おっ!お前…それってF1じゃ無いか。おいおい、MP4/4って、16戦中15勝した車じゃ無いか?」
「土御門君、正解だよ。ロータス社に訊いたら、1基残っているっていうから、メーカーで載せて貰ったんだよ。キャーリサを通してさぁ~」
「お前…王女を通して、ナニやらかしてんだよ~!」
王女?キャーリサ王女?大英帝国の第2王女だっけ?どうして、そんな人に頼めるんだ?
「だって、英国のメーカーならいいかなって…」
「ボンドカーに採用されたエスプリは眼中になかったのか?」
「無いなぁ…完成しきった車と女体には興味無いなぁ。スーパーセブンも良かったんだけど、急な雨だと大変だし」
なんか不毛な会話をしている男性二人。問題点はそこで無いと思う。
「美和子さん、どういうこと?キャーリサ王女に依頼したって?」
「うん?キャーリサなら、そこにいるよ。一弥の秘書だからな」
えっ…大国の王女を秘書にしているって…
「ど、ど、どんな関係?」
「一弥が女王に気に入られて、婿養子に入ったのよ。あぁ、英国内だけ婚姻関係になるって契約をしてね」
それって、次期王の可能性があるのでは…
「キャーリサは一弥の尻に敷かれているから、ノーと言え無いの。一弥の身が危なくなる無茶なことは、拒否するけど。」
「じゃ、美和子さんは愛人?」
「この国では一弥は独身なのよ。戸籍上は、私の弟だから、結婚はしないけど、一緒にいつまでも居られる。それで、十分なのさ」
なんか、スゴイ人を彼にしているようだ。
「明日はよろしくね、真子」
◇
翌日、サーキットへ来た。そして、あのロータスに試乗してみた。思っていた以上に、載りやすい。低重心で路面に張り付くようなコーナリング。ドリフトせずに曲がれる足回りの良さ。
『四輪操舵システムをこっそり搭載しているんだよ』
無線で、彼が教えてくれた。だから、ドリフトしなくても曲がれるのか。ターボラグは気にならない程度だ。カーブでスピードを落としすぎなくても良いので。これ、レースカーとして使えそうだよ。問題は、価格だよな。ボディがオールカーボンの上、シャーシはオール削り出しのアルミらしい。一体いくらしたんだ?このリメイク車は…
「どうだった?」
美和子さんに訊かれた。
「現役のレースカーとして使えるレベルです」
「はぁ~、なんで、そんな物を峠に持ち込むんだよ~!」
彼に怒鳴る美和子さん。サーキットはほぼ平面である。サーキットで通用する車は、セッテイングの関係で、ヒルクライム、ダウンヒルには向かない。
「何かあったらじゃ、遅いんだよ、一弥」
「あ…ごめんなさい…」
美和子さんを前にして凹んでいる彼。
「じゃ、これはお蔵入りにだよ。いいね、一弥」
サーキットにはロータス社のカートレーラーがいて、あの黒いロータスを運び出していた。
「次は、ちゃんと車検に通る車を作ってやる!」
「こりていないんだ…」
頭を抱えている美和子さん。なんか、楽しそうである。
---佐藤一弥---
レースの無い日、真子にドライビングテクニックを習っている。美和子の要望である。車はスーパーセブンをキャーリサが調達してきてくれた。トランクが無いのが難点である。泊まりがけの旅行には不向きである。
富士のサーキットでドラテクを習い、途中で休憩をして、帰宅する。
「ねぇ、いいの?美和子さんの彼氏だよね?」
真子を攻略中の俺に声を掛けてきた。
「真子のここのS字カーブが好きかな。後、このなだらかな丘も」
指を股間に這わす。
「えっ…ダメ…そこは…あぁぁぁぁ~」
抵抗力が弱いようだ。意識を飛ばした真子の胸を愉しむ。大きすぎず、固すぎず、薄ピンク色の乳首のてっぺんを、舌先でタッピングして遊ぶ。
「うぅ~、ナニをしているの?」
プチ昇天した真子が少し大胆になっていく。自ら、俺の上に載り、恐る恐る俺のアレを体内に取り込み始めた。ゆっくりと、震えながら。
「怖いなら止めた方がいい。トラウマになると大変だぞ」
「ふっ、優しいんだね、一弥君は…でも、一度は通らないとダメな道だし。一弥君で経験しておきたい」
って…経験をすると、更に大胆になっていく。バック責めをリクエストされたり、弁当売りをリクエストされたり…知識だけはあるようだ。
「また、次回も休憩…したい…いいかな?」
「いいんじゃ無いのかな?」
この程度で、美和子は怒らないし。
◇
合流していない仲間達も暮らせるように、家を引っ越した。土地を買い、新築の家を建てたのだ。資金は、某所から奪ったお金である。なので、問題は無い。マネーロンダリングしてあるので、あれこれ言われないはずだ。
母屋は地下1階、地上3階建てである。地下には俺の部屋とプレイルーム、1階は共用スペースと、秘書であるキャーリサと専属メイドである五和の部屋があり、2階、3階がみんなの部屋になる。
離れは、客間と執務室や書庫がある。主にキャーリサや火織の仕事用途である。後は車3台を整備出来るガレージと、トレーラーも止められる駐車場完備である。
「少し通勤距離が増えたなぁ」
って、美和子。予算の関係で、都市部から少しはずれた場所である。国道は目の前なので、通勤時間は減るのでは?
「それよりも、なんで、隣に大使館が越してきたんだ?」
「何かあったら、直ぐに対応出来るでしょ?」
って、キャーリサ。大英帝国とルシファード帝国の大使館に挟まれているのだった。よくよく調べて見ると、俺の家の土地って、大使館の所有になっている。それは治外法権ってことか?でも…あれ?土地を買ったはずなんだけど…
「お金は必要でしょ?両国に買い上げて貰ったの」
って、涼しい顔のキャーリサ。う~ん、やり手だな…
新たに、ダメシスター、火織、美琴親子、ミサカ、ミーちゃんが越してきた。今回の戦場は、初めから激戦に備えて、広めの上、様々な調理器具、調理設備を用意してある。その上、巨大な冷蔵室、巨大な冷凍室も完備しているし。
「お店が出来そうな厨房ですよね」
五和が、設備の最終点検をしている。
「明日奈ちゃん、蘭ちゃんはどうするの?」
美和子に訊かれた。
「明日奈は食生活が心配だな。蘭は新一君がいるだろう?」
「蘭ちゃん、どこか壊れたようよ。責任をとってあげてね」
責任なぁ…まず、蘭から行くかな。
---毛利蘭---
脳裏で響く声…どこか懐かしい。その声に誘われて、散歩に出た。日差しが眩しい。最近はずっと引きこもっていたからなぁ。公園の木立の中を歩く。少し薄暗い。眩しくなくて、心が安らぐ。少し油断をした瞬間、誰かに背中から抱きつかれていた。胸をまさぐられ、股間に伸びる手…好きにすればいい。もう生きて行くことに疲れたから。
「なんだよ。抵抗しないのか?俺は弱っている女体に萌えないって、知っているだろ?」
耳元で聞こえる声…知り合いのようなことをいう。彼はもう、この世にはいないのに…
「そうか…じゃ、好きな様にさせてもらうぞ、蘭!」
えっ…私を知っているの?ブラウスを脱がされ、スカートを脱がされていた。ブラジャーを外され、靴下を脱がされ、最後の1枚も脱がされてしまった。押し倒された…体内に何かを入れられた。体内で振動する何か。忘れていた刺激が蘇る。苦しい。胸が…頭をつかまれ、口元に肉棒を押しつけられている。腰が刺激に対応して、蠢き始めた。
上目遣いで見る、暴行犯の姿…知らない男性のようだ。
◇
気づくと、知らない部屋で、大の字拘束されていた。目の前には美和子さんと知らない男性がいた。全裸で交わっている二人。美和子さんの表情は嬉しそうだ。一弥から乗り換えたの?なんで…もう、一弥のことを忘れたの?
「いいのか?蘭ちゃんの目の前で、見せびらかすって、気が引けるよ、一弥」
えっ!一弥?知らない男性だった男の姿が、一弥になっていく。どうして?なんで?私にも優しくしてよ~!ねぇ、かずやぁぁぁぁ~!
◇
意識が断片的になっている。私の上に誰かが載っていた。交わっておらずに、彼の物が下腹部に押し当てられているだけだ。なんで入れて居ないの?私の価値って、そんな程度なの?
「目が覚めたか?新しい刺激を与えてやるよ」
うっ!ちょっと…そこは違うって…正常位のまま、アナルに挿入する男性。ダメ、そこは…
「幻想の理を読み解く。いない者は忘却し、心に描く者の元へ行け!」
男性が何かの呪文を唱えた。一弥の顔が新一になっていく…ダメ、忘れたくないの。待って、一弥。置いて行かないでぇぇぇ~!目の前の新一の姿が知らない男性の顔になっていく。これって…一弥なの?ねぇ、
「一弥…もう、置いて行かないでよね。ド変態な性癖は直して欲しいけど」
目の前の男性の唇に、自分の唇を重ねた。新しいプレイ…正常位によるバック責め…一弥が相手だと思うと、とても懐かしく、気持ちが良い。彼の舌に自分の舌を絡める。狼狽える彼が逃げないように、彼の背中に腕を回し、密接感を強める。
『あれ?なんで?』
一弥の狼狽えた声が脳裏に響いた。
『蘭が一弥を想う心は、幻想で無いから、消し去ることは出来無いんだよ』
インデックスさんの声も脳裏に直接届いた。
『一弥の負けだよ。責任を取ってあげな。って、お腹減ったよぉぉぉぉ~!』
「おいおい、こんな時に、それかよ。このダメシスターは…」
目の前の男性の発した言葉。声も姿も違うけど、一弥に間違い無い。
「整形でもしたの?」
「そんな感じだよ。これだと、工藤君の方がいいだろ?」
個人的には、今の方が好きかな…
「見た目じゃ無いのよ。私が一弥を選んだのは…」
「まさか、ド変態ぶりか?」
違うけど、笑顔を返した。いつ以来だろう、表情筋が緩んだのは。一弥相手だと自然に笑える気がする。
「マジかよ~。蘭って、マゾ?」
「そうねぇ~、一弥限定だけど…」
なんか、やっと家に帰れた気分である。