---黒羽快斗---
朝から憂鬱である。
『鈴木次郎吉氏 怪盗キッドに挑戦状』
って、文字がワイドショウーで踊っていた。坂本一弥がいなくって、また成金趣味に走っているようだ。そういう意味では、坂本一弥がいなくなって得した人物とも言える。
もうビッグジュエルを盗む必要性は無いのだが…父さんを殺した組織は、一弥達の手で潰したらしいし。どうするかな?
ピンポーン!
玄関の呼びリンが鳴った。朝早くから誰だよ。玄関へ向かうと、そこには笑顔でアイツに寄り添う青子がいた。はぁ~?なんで、ここにいるんだ?
◇
台所で、朝飯を作っている青子。1つの工程を終えるごとに、アイツに確認している。コイツ、整備工なんじゃ無いのか?
「タマネギの微塵切りが出来ました」
笑顔の青子。久しぶりに見る青子は、ものすごくかわいい。何がコイツを変えたんだ?
「じゃ、次に、ソレを炒めるんだよ。焦がさないように、飴色になるようにね」
「はぁ~い」
笑顔で返事をする青子。俺に見せたことの無い笑顔である。
「で、なんで、ここに来たんだ?」
コイツの目的を訊く。
「壊れる前の状態に戻った青子を、君と彼女の父親に見せに来たんだよ」
はっきり言って、壊れる前の青子よりかわいいのはなんでだ?!
「それだけか?」
「青子の希望なんだが、久しぶりに二人に手料理を振る舞いたいそうだ」
う~ん、それは嬉しいが…
「本当にそれだけか?」
「挑戦状はどうするんだ?」
「何の話だ?」
青子には秘密である。俺が怪盗キッドってことは…
「快斗が怪盗キッドなんでしょ?」
青子の声…コイツ、バラしたのか…
「お前…バラしたのか?!」
不敵な笑みを浮かべる、この野郎。
「あれ?そうなんだ?!」
えっ!嵌められたのか…
「一弥さんの推理通りですね。前々から、そうじゃ無いかなぁって、思っていたけど」
一弥?あぁ、佐藤一弥だったな、コイツの名前は…
「で、挑戦状はどうするんだ?」
「どうするって?」
「もう盗む必要の無い君が、乗ることは無いんだよ」
コイツ…
「そこで提案だ。今回の件、俺に譲ってもらえないか?」
譲る…挑戦状をかぁ?
「どういう意味だ?」
目の前の一弥に訊いた。その答えの如く、俺の前に今回のお宝を置いた一弥。
「悪い。もう盗んできたよ」
何?もうだと…
「このカードを添えてね」
『確かにいただきました 怪盗キッド。』
俺のマークの模造品が付いたカードである。なりすましたのか?おいおい…
「これはどうするんだ?」
「工藤新一君にプレゼントするよ。歴史的な価値はわかるが、資産価値には興味が無いからね」
「これでいいですか?」
フライパンを持って青子が割り込んで来た。
「もう少し、飴色にして、冷ますんだよ。うちわで煽いでね」
「はぁ~い」
青子はフライパンを片手に、キッチンに戻っていく。この一弥は何者なんだ?
「お前は誰なんだ?」
「佐藤一弥だけど…お前、健忘症か?」
「そうじゃない。お前は何者なんだ?」
「お前、記憶を盗まれたのか?俺は整備工だよ」
コイツ…俺の心を逆なでする返答をしていやがる。ならば、質問を変えてやるよ。
「お前は坂本一弥か?」
「えっ!」
青子の驚いたような声…
「坂本一弥って、誰だい?」
キッチンからすすり泣く声…しまった。青子の記憶がフィードバックしたのか?
「人間はいつだって愚か者だな」
コイツ…人間で無いのか?
「お前の抱いた幻想を殺してやるよ。もう、青子に関わるな!この、愚か者めっ」
◇
う~ん…唸る俺。俺の目の前にはラブドールの入った箱が置かれている。こんな物を注文して覚えは無いのだが…、今朝、届いたのだ。配送伝票を見ると、某通販サイトの倉庫から送られて来たようだ。ショップ名は無いようだ。一応、中身を確認するか。ラブドールに興味あるし。
ラブドールとは、主に男性が、アレコレと擬似的に楽しむための実物の女性に近い形状の人形である。箱から出して、顔を見ると、固まった俺産。青子にそっくりである。青子より、胸が大きいけど…これはどういうことだ?何かの褒美か?それともワナか?
恐る恐る緩衝材を外し、青子人形に触れてみた。
『あっ…』
なんか、なまめかしい声が聞こえた気がする。これは、俺の妄想なのか?ここは夢の世界なのか?胸を手のヒラで揉んでみた。
『ダメっ…』
なまめかしい声の幻聴がする。なんだ、この感触は…女性の身体なんか、母さんの身体くらいしか知らないので、これがリアルな感触なのかは分からない。
唇を重ねて見た。何?舌が人形の口の中へと吸い込まれて行く。どんなギミックなんだ?人形の口の中で、俺の舌が舌らしき物に襲われ、絡み合っている。どういうことだ?
◇
ついにやることをやってしまった。全裸で人形とスキンシップしている俺。なまめかしい皮膚感。人形の腕に抱きつかれているような感覚。これはやみつきになりそうだ。
「えっ!」
うん?女性の驚く声。声の主を見ると、アイツの隣に青子がいた。マズイ…青子のラブドールだし。
「快斗って、紅子ちゃんとそういう関係だったんだ…」
へ?なんで、紅子?
「快斗…良かったわよ。責任はとってね」
って…何?ラブドールのはずが紅子だった。なんの魔法だ?
「もう、食事作りに来ないよ。あぁ、合鍵は返すね。一弥さん、帰ろうよ~」
「そうだな。青子と約束しておいて、別の女性とソレかね。君には失望したよ」
って、アイツと青子が、家から出て行く。
「中出しの責任は取ってね、快斗君!」
目の前に、笑顔の紅子がいた。なんで?
---佐藤一弥---
これで、黒羽快斗は妙なことをしないだろう。次は、あの女達だな。プレイルームに棺のような木箱が多数搬入されている。その中から、工藤有希子、黒羽千影、服部静華、鈴木朋子の箱を取り出した。どれもラブドールである。そのラブドール達の幻想…『人形である幻想』を殺してみた。その後で、4体の人形達の股間に液体を垂らしていく。割れ目に吸い込まれて行く液体。しばらくすると、なまめかしい声の4重唱が部屋に響いている。さて、どこへ配送するかな?
---工藤新一---
う~ん…これは、どういう状況なんだ?
「おい、工藤…どうにかならんか?」
服部の声。苦しそうである。やらかしたヤツはアイツに違いない。ジャマ者をまとめて処分なのだろう。目の前に、蘭、青子、和葉、園子が全裸で、眠らされている。なまめかしい声の寝言付きである。それに対し、俺と服部は、強精剤を撃ち込まれての全裸であった。
「見ているだけで、暴発しているんやで…どないすればいいんや?」
服部だけでない。俺もそうだし。理性がある今は、こんな状況だけど、理性が崩壊すれば、スワッピングパーティー状態になりそうだ。
完全にクローズドな室内。扉も窓も無い。あるのは、換気扇程度である。そこから催淫剤らしきガスが送り込まれていた。
「脱出方法は無いんか?」
「俺達だけなら…」
「和葉を置いて行けって言うんか?」
「う~ん…」
俺も服部も自宅で寝ている間に拉致されたようだ。アイツは、人間を盗むことに掛けては天才クラスだよな。あぁ~、蘭が呼んでいる…
「おい!工藤しっかり気をもたんかぁ~!」
って、言われても…目の前の女性陣が自慰を始めたぞ。
「新一…来てぇぇぇぇぇ~!」
「平次…つらいよ~!」
俺と服部の理性を壊す作戦のようだ。
「おい!しっかりせぇ、和葉」
服部が辛抱しきれずに和葉に駆け寄ると、和葉と園子が服部に襲い掛かった。
「あかんって、和葉…」
和葉のフェラ攻撃で顔面への放出をしてしまった服部。そんな服部を見入ってしまった俺は、蘭と青子に襲われていた。しまった!髪型と胸の大きさ以外は似ている二人。両腕に抱きつかれ、二人がスキンシップをし始めると、俺の理性は…
◇
一体、拉致されてから、どれくらい経ったんだ?服部の母親と、園子の母親とプレイしている俺。服部は、キッドの母親と俺の母さんとプレイしているし。やられた。蘭と青子だと思っていたのは、母さんとキッドの母親であった。俺も服部も、自分たちの母親の中で出しまくっている。究極の禁じられた遊び…近親相姦プレイである。
母さんの中って、気持ちがいいんだな。何度出しても止まらない。腹上死するのだろうか、俺は…
---黒羽快斗---
高校を卒業したら、マジシャンとして生きることになった。紅子とは卒業式の後に籍を入れることになった。あの野郎…ワナとは言え、やることをやりすぎた俺。責任逃れは出来無いようだ。工藤と服部は、どんな目に遭っているんだ?って、思って居たら、ニュースで取り上げられていた。漂流中のプレジャーボートの中から発見されたそうだ。ボートの中ではスワッピングパーティーが行われていたようで、女性陣には、服部と工藤の母親、俺の母さんに他1名がいたそうだ。最近、連絡が無いと思っていたら、監禁されていたようだ。発見時、全員飲まず食わずでプレイしていたようで、全員衰弱死一歩手前だったとか。
アイツの目的は何だ?まったく、分からない。俺の場合は、青子への思いを断ち切る為だろう。そうなると、服部と工藤も同じだろうな。女性陣に関しては、紅子は以前から俺狙いだったから、要望通りなんだろうけど、ボートの女性陣はどうなんだ?悪意しか感じないんだけど。
そんなことを考えて居ると、スマホに知らない番号から着信があった。アイツか?出てみるか。
「怪盗キッドこと黒羽快斗君かい?私は工藤優作、工藤新一の父親に当たる者だ」
って…どうやって、俺の番号を?工藤に訊いていたのか?
「突然で悪いが、話をしたい。なるべく早くだ」
なので、会う約束をした。
◇
指定された場所は、新宿のマンションの一室だった。
「ここなら、少しだけ安全だよ」
って。少しだけなのか?
「用件はなんですか?」
「坂本一弥君に関してだよ」
やはり、アイツがキーパーソンなのか。
「アイツは死んだんですよね?」
「坂本一弥は死んだよ。それは保証する。だけど、それは同時に、厄災の封印を解いてしまったってことだ」
厄災の封印?
「どういうことですか?」
「君は掴んだんだろ?」
『YXMO 1412』
と書かれたメモをテーブルの上にだした工藤優作。この数字…
「これは俺じゃないです」
「なんだって…」
工藤優作が驚いて居る。このメモが原因なのか?誰が俺の名を騙ったんだ?
「掴んでいなかったのか。う~ん…」
「このメモの意味は?」
工藤優作は何かを知っているようだ。
「まさか、盗一が生きているのか?」
「父さんが?どうして、父さんのことを知っているんですか?」
もしかして、知らず知らずの内に、俺達は親子2代に渡って、戦っていたのか?
「私も新一と同じ立場で、盗一とやりあっていた。その上、妻の由希子の変装術の師匠でもあったんだ」
工藤家とはそんな因縁があったのか。
「いや、生きているなら、君の傍にいるはずだな」
そう思いたい。
「あのメモの意味なんだが…」
そこまで言いかけて、工藤優作が、目の前から消えた。部屋には静寂だけが残った。
◇
工藤優作は、あのメモの記憶を消されて、解放された。見つかったのは、彼の自宅にある書斎らしい。あのメモの意味が、重要なキーなのか?あれは何だ?
普通に考えて、Yは間違いで、Mが正解になる。それは一弥で無くて、数馬ってことか?もしかて、工藤も服部も、謎を解いた為、消されたのか?アイツらは、未だに意識が戻らないらしい。
誰に訊けば良いんだ?そういや、工藤の周囲にJK探偵がいたな。名前は…そうだ!世良って言ったかな。会いに行くかな。
連絡を取り、指定された場所に着いた。そこはFBIのの日本支局だという事務所だった。
「悪いが真純は来られない」
世良の兄を名乗る人物が応対してくれた。既に世良もやられたらしい。
「こいつの意味することはなんですか?」
あのメモを見せた。
「歴史の崩壊だよ」
なんか、スケールがでかくなってきたような。
「ヤハウェでなくて、マリアだってことだ」
十字教絡みか…
「この件を興味本位で扱う輩は排除されるんだ。君は真剣に、坂本一弥に向き合っているようだから、手を出してこないんだよ」
それは大事なことだ。青子の為であるし。なんで、アイツは殺されなくてはいけなかったのか、青子に伝えたい想いだし。
「でも、俺、嵌められてますが…」
紅子の件は、アイツのやらかしたことに違い無い。
「アレは、彼女の要望を叶えただけだろう。彼は要望を、なるべく叶えてあげたいんだよ」
確かに紅子は、あぁ、なることを望んでいたかもしれない。
「あれは信仰すべき者を指し示した暗号だと言われていた。だけど、違っていたんだ。1412はKIDでは無い。魔女と言われた聖人の生まれた年号だ」
魔女と言われた聖人?誰だ?
「予言書の1節なんだよ。アレの正体はねぇ。ヤハウェは神聖なる者、十字教を国教としている大英帝国を指し、マリアは一般人、民衆を指しているって、解釈がなされている。1412年に生まれる者、イングランド帝国では異端とされ、民衆からは歓迎されるって意味だらしい」
何?
「そんな預言、今は関係無いでしょ?」
そんな昔のことを言われても…ねぇ。
「歴史は繰り返す。一弥はダメで、数馬なら良く、KIDは子山羊で、スケープゴートって意味もあるんだよ」
それは使えない一弥をスケープゴートにしろってことか?そんな為に、アイツは…
「何にとって、ダメなんですか?」
「俺達の雇い主である全米民主国だよ。一弥はこの国の独立を目指していた。先の大戦の敗戦により、この国を属国としたと米国は思っていて、無理難題を突きつけて来たんだ。そして、今回、この国に伝わる三種の神器を寄越せって、迫ったらしい。さすがに、それは飲めない話だろ?そこで出た代案は、ニューオーダーのボス格である坂本一弥を、犯罪人として引き渡せってね。この国は坂本家を説得して、坂本一弥を引き渡したのが真相だよ」
スケープゴートにされたのか。無理難題の矛先を変える為に…そうだ、アレを訊かないと。
「佐藤一弥は何者ですか?」
「彼は、封印を解かれた坂本一弥だよ。今まで坂本家に遠慮をして、割とおとなしく高校生をしていただろ?だけど、今は坂本家から追放された身だよ。自由奔放に生きているんじゃないのかな?」
目の前の男性の顔から笑みがこぼれた。この人も、あの一弥に何かを期待しているのか?って、一弥は死んでいないのか?
「そうなると、一弥は死んでいないのですか?」
「何も持って死んだとするかだ。肉体が滅んだ時とするならば、彼は死んだよ。だけど、魂が天に昇った時とするならば、彼はまだ生きている」
アイツ、幽霊か?成仏出来ていないのか。まぁ、志半ばで殺されたとなれば…坂本龍馬もかな?
「彼のサイドには、魔法使い、魔女が付いているからね」
魔女…紅子に訊けば、何か分かるか。アイツ、魔女だし。