---オーグ---
「たぶん、アイツは、この国で生まれ育って、賢者の孫に転生したんだと思う」
即答してきた一弥。
「だから、この国の国旗を知っているんだよ。知っているってことは、記憶を持ったままの転生だな」
記憶を持ったままの転生か。それだと納得は出来る。アイツの考え方は、俺達とまるで違っていた。それは、転生前の記憶によるものだとしたら。
「まぁ、そうなんだろうな。この国の国民の殆どは、なんで火が燃えるかを知っている。どうすれば燃焼火力を上げるかを知っているんだよ。小学校、中学校で習うからね」
現象に対する理論を学ぶ機会があるのか。だから、シンは…
「女性陣が女性ならではの体験をしている隙に、近所を見て回るか?」
「あぁ、頼む」
家の外に出ると、自動車と言う物に乗った。機械仕掛けの馬車だと一弥は言うが…早いし、乗り心地も悪く無い。森を抜けると、見た事の無い建物と、大量の自動車が目に入ってきた。
雲を突き抜ける高さの建造物が多数。俺の国ではあり得ない光景である。
「なぁ、雲の上から景色でもみるか?」
「浮遊術か?」
「違うよ。この国ではお金を払えば、誰でも見られるんだよ。五和、ベルツリータワーに向かってくれ」
「わかりました」
◇
展望台から外の景色を眺める。眼下には流れる雲が見える。
「どうだ?」
「スゴイ…人間が作ったんだよな?」
「あぁ。この国の人間の殆どは魔法が使えない。だから、機械を使ったり、手作業で、これを作ったんだよ」
手作業…こんな技術を知っていれば…シンのような発想も夢ではない気がした。
「そうだ。建造物の本とかも贈呈するよ。国に戻ったら、勉強してみなよ」
「ありがとう、一弥…」
なんだろうか、グイグイ一弥に心を許せるようになっていく。シンに習うより、気楽にアレコレ訊けそうだし。だから、メッシーナは一弥にアレコレ、強請ったり、相談したりしているのかもな。
---ユーリ・カールトン---
全裸で温泉…まったりとする時間。なのに、悶々としている。皮膚の古い皮膚を食べてくれるドクターフィッシュ。そんなとこの皮膚も食べるとは…なんか、男性達が群がり、アレコレされている妄想をしてしまう。あぁ、いけない女だわ…
ドクターオクトパスもスゴイ。体内に入っていく時の感触は、言葉に表せない物だ。男性のアレが入る時って、こんな感覚なのかな?手足を拘束されているのも、いいし得ぬ恐怖をそそり立たせている。説明では、刺激を受けて暴れるとドクターフィッシュが傷つく為、拘束して施術をするのだとか。
乳首が啄まれる。その度に、声が漏れてします。
「ユーリの声、艶めかしいよな」
マリアの声が聞こえる。マリアとアリスは、ドクターオクトパスのコースでは無いそうだ。どちらのコースにするかは、一弥の妹の深雪さんの検査で決まった。身体の内部を見るカメラで、汚れ具合を見て、決まるそうだ。なので、ドクターオクトパスコースにいる私は、膣内部が汚かったらしい。
「でも、ユーリちゃんみたいに汚れないと、子供産めないんだよね?」
アリスの声だ。深雪さんの説明では、そういうことのようだ。受精をして受精卵を寝かせる床などが、受精をしないと身体の外へ出てくるそうなのだ。それが、女性特有な日の正体だという。
だけど、体内にあり得ない刺激を感じる。喘ぎ声が口から漏れる。
「なんか、誰かとやっていそうだよね」
って、マリア。そうかもしれない。男性とするって、こういう刺激かもしれない。
「あっ!」
何かを全身に走り、全身の筋肉が緩んでいき、だるさと余韻が追いかけてきた。
---オーグ---
外出から戻ると、メッシーナ達の肌がつやつやになっていた。
「どう?肌を磨いて貰ったんだよ~」
って、コーナー。肌って磨けるのか。
「殿下はどうされていたんですか?」
カールトンに訊かれた。
「一弥と散策だ。スゴイ物をたくさん見て来たよ」
ベルツリータワーでの体験を、写真という物を見せながら、話した。
「足下を雲が流れるんですか…行きたかったなぁ…」
残念がる三人。
「で、一弥は?」
「食事の支度だそうだ」
どんな料理なんだ?興味があるなぁ。
◇
バイキング料理って形式らしい。大皿に載った食べ物を、取り皿に食べたいだけ載せて、テーブルで食べるそうだ。料理は何種類も並んでいた。
「あぁ、これいいなぁ。うちのホテルでも採用してみようかな?」
と、家業がホテル業のカールトンが声を上げた。個々の皿への盛り付けの時間が要らないし、食べる側にしてみれば、食べたい料理だけ食べられるし。王宮でも採用したい方式だな。
大きい食堂には、色々な人々が、楽しそうに食事をしていた。
「一弥、ここにはどんな者がいるんだ?」
新たに料理を運んで来た一弥に訊いた。
「魔物が出ないから、冒険者とか戦士はいない。魔法使いはほんのわずかだよ。後は、探偵とか調査員とか諸々だよ」
探偵とは、謎を解明する仕事らしい。わが国には無いなぁ。謎が少ないのか?
「後はメイドとか、整備士かな」
って、一弥が厨房へ消えていく。アイツは料理人なのか?カールトンは料理の様子を見ている。オープンキッチンという形式で、厨房の様子が見えるようになっているそうだ。
「これも取り入れたいなぁ。あとで、一弥に相談してみようかな」
カールトンは、アレコレと取り入れられる物を探していた。
◇
翌日、一弥は色々な土産の品を用意してくれていた。
「マリアの家に装備した温水洗浄便座だよ。太陽光発電で、エネルギーを充電するんだけど、それは今度、工事をしにいくから、当面は魔力をエネルギーとして流してね」
これが、シンのとは違う、新機能付きのやつか…使い心地が好評であれば、大量注文したいが…う~ん。
「後、オーグには建築学の初歩だよ。文字はシンに訊いてくれ。まぁ、図解式なんで、見ているだけでも、大凡な見当は付くと思うけど。女性陣には、お肌の手入れセットだよ。もっといい女になれよ」
そして、俺達は、俺達の国のそれぞれの家へ送り届けてくれた。帰宅すると、直ぐにシンがやってきた。
「シン、お前の正体がわかったよ」
「どういうことだ?」
「転生前は日本人だったそうだな」
「えっ!どうしてそれを…」
正解のようだ。狼狽えているシン。シンの目の前に、写真の束を置いた。
「一弥の住んで居る近所のスナップ写真だよ」
「えっ…こんな物があるのか…」
シンの生きていた時にはベルツリータワーは無かったようだ。
「そうか…アイツも日本人なのか…」
「そういうことらしい」
「ここも近代化させていくのか?」
「いや、ここは魔法がある。だから、同じ道は歩まないで良いと、一弥がアドバイスをくれたよ。もし、他国が近代兵器で侵攻してきたら、一弥が来てくれるそうだ。最強の戦力と共になぁ」
一弥と念書を交わした。不可侵条約、友好条約、そして、同盟関係にもなった。まぁ、アイツ個人との念書ではあるが、どの国との念書よりも、俺にとっては大切な物である。
---宗方一弥---
オーグ達が去った翌週から、高校へ通うようにした。近所の私立高校へ、次郎吉が便宜を図ってくれたようだ。俺、探、真純、琴美、深雪とで通う。自宅組である蘭、青子、快斗、紅子、園子も、手続きが終わり次第、通うそうだ。
私立ベルツリー高等学校。便宜を図ったのでは無く、買収したようだ…金持ちのすることは、豪快だなぁ。中等部もあり、公立に通っていた美琴が転校するらしい。この高校の特色は、次郎吉臭がすることか?課外授業に探偵、手品師、料理人などの俺の身近なスキルが多いのだ。
「なぁに、第二の一弥を作る為の投資じゃよ、はははは」
って、理事長に次郎吉がいるんですが。さすがの園子も固まっていたぞ。
小学校、中学校を海外で過ごした俺の足り無い教科は、国語である。次郎吉は熱血タイプで、俺好みの女性教師をスカウトしてきたのだが、コイツ、キレると怖い。素の状態はかわいいのだが、それ以外は怖い。二つ名は『鬼の児嶋』だと言う。それを俺達のクラスの担任に据えた。
「はぁ!一弥、お前、また宿題をして来なかったのか?!」
ドン!
両手で教卓を叩くと、教卓が宙に浮く。休み時間に俺が試すが何も起きず、琴美がやると粉砕してしまったし。これは、きっと絶妙な力加減を必要とするスキルなのだろう。
「おい、一弥!そろそろ小学三年生くらいの漢字は覚えろよなっ!」
アップの鬼顔は怖い。
「はい、努力します」
う~ん、英語とかヨーロッパ圏の言語はマスターしているのだが、漢字に苦戦している。読む事は出来るので、不便さを感じなかったのだが、書けないと、こんなに怖い思いをするのか…
「お兄ちゃん、がんば!」
って、一緒に補習を受けている琴美。こいつも国語を侮っていたようだ。その上、戦闘において怖い物無しだった琴美であるが、児嶋の魂を揺さぶる恐怖の前では借りて来たネコ状態であった。
「先生、なんで、これバツなんですか?」
帰って来た答案で、採点ミスを指摘する琴美。だが…
「王子と書けって書いてあるだろ?お前のは玉子だぁ!!」
「あぁぁ…ごめんなさい。ごめんなさい」
そして、いつしか、児嶋最強伝説が生まれるのだろう。俺と琴美が頭が上がんないくらい怖いし…
◇
ある夜、次郎吉に呼ばれた。
「すまんな、夜遅くに。実はなぁ、先生達の懇親会で児嶋先生が酒を飲んだら、大変なことになってなぁ」
まさかの酒乱なのか?俺の家で酒飲みは居ないから、対処は難しいんだけど…児嶋を隔離している部屋へ向かうと、
「おお、一弥では無いか。ちょっと、抱かせろ!」
上機嫌の児嶋。俺に抱きつき、抱き枕にし始めた。あの~、酒臭いんですが…
「次郎吉、何升くらい飲ませたんだ?」
「いや、一口舐めただけじゃよ」
はぁい?なんて、安上がりな酔っ払いなんだ?一舐めでも、吐く息が酒臭いのは、体内で増殖でもしているのか?
「児嶋の家はどこ?」
「教師専用の住宅なんじゃが、一弥の部屋へ持っていけ」
はぁ?
「なんで?」
「一弥の名前を連呼しておるんじゃ。よほど、気に入られたようじゃな。スカウト冥利につきる、良いスカウトじゃったなぁ」
俺の弱点を知り尽くしているのか?この爺さんはあなどれない。気に入られたというより、普段から俺を叱っているから…ストレスのはけ口か?次郎吉に言われるまま、児嶋と俺の部屋へと転移した。
---児嶋加奈---
目が覚めると、そこはホテルの部屋のようだった。昨晩は、懇親会で、ついアルコールを口にして…まず下着をチェック。だけど、どうしよう…全裸にバスローブだし。誰かにホテルに連れ込まれて、やられたのか?初めてだったのに…凹んでいると、誰かが部屋に入ってきた。
「起きたのか?二日酔いは大丈夫か?」
一弥だ。まさか、日頃の恨みで、私をホテルに連れ込んで…
「一弥!貴様という男は卑劣だったんだな~!!」
狼狽える一弥。
「おい!覚えていないのか?懇親会で俺の名前を連呼して、俺を呼び出して、その上お前は、俺を抱き枕にして寝ていたんだぞ。更に言うならば、風呂へ入れろとか、下僕になれとか、無理難題を俺に…この酒乱女め!」
そういえば、そんな記憶がわずかにあるような…まさか、何かを口走ったか?
「おい、お前の記憶から、昨夜の記憶を消せ!」
「え?!児嶋の全裸は脳内保存したぞ。全身くまなく洗わされたからな」
全身くまなく…なんてことだ…教え子とスキンシップだなんて…教師はイメージ商売なのに。
「おい!ここでのことは内緒だぞ!」
一応確認をしたのだが、突然、バスローブを脱がせられ、スキンシップをしてきた一弥。そのまま押し倒された。ダメだ、二日酔いで抵抗が出来無い。
「内緒にするよ。加奈がこんなにも気持ちが良いなんて、俺だけの秘密だよ」
嬉しそうに、頬ずりしてきた一弥。指で乳首をソフトタッチしてきた。それだけで…マズイ…疼いている。生徒で感じるなんて、どうしよう…
「あれあれ、もう濡れているのか。感じ易いんだね。一緒にシャワーを浴びて、メシだな」
どうして良いのか分からない私と、シャワーへ連れ込む一弥。しらふで関係を…言い訳が出来無いじゃないか。
---宗方一弥---
児嶋にメシを提供して、児嶋の部屋まで送り届けてきた。週末はやることが多いので、児嶋の身体で遊ぶ時間は無い。探偵社へ行き、業務内容に目を通していく。内容に応じて、請求書を作り、依頼主へ送付していく作業は深雪に丸投げである。俺は漢字が書けないし…
工藤新一の稼働率がゼロである。こいつをどうにか、しないとなぁ。どうするかだなぁ。変身グッズで変身させるか?最大24時間変身可能で、8時間の睡眠を挟んで、再使用可能にするか?設定をメモに書いていき、魔道具として錬成をしていく。錬成に熱中していると、マリアからヘルプの信号が届いた。アイツには俺を呼び出せるヘルプの魔方陣を描いた羊皮紙を渡してある。それに魔力を込めると、俺に呼び出しの信号が届く仕組みである。急いで、マリアの元へと転移した。
マリアの元へ行くと、シンを除いたみんなが、あたふたしていた。
「おぉ、一弥。頼む、シンを探してくれ」
って、オーグが俺を見つけるなり、縋り付いて来た。
「どうしたんだ?」
「どこにも見当たらないんだ。アイツが、何かをやらかす前に、見つけてくれ」
あぁ、常識が無い天才魔法使いかぁ。タチの悪さ一番クラスだな。
「いつから、見当たらないんだ?」
「週の頭からだよ」
「なんか、やらかす前兆は有ったか?」
「お前の持ち込んだ生理用品を見つめていたくらいだ」
生理用品?いなくなる理由はそれなのか?まさか…う~ん。
「オーグ、もしかして、写真の束を見せたか?」
「あぁ、みんなに見せたけど、それが原因か?」
「アイツ、ゲートで、日本へ向かったんじゃないのか?」
「「はぁい?」」
みんな、驚いた顔をしている。行ったことの無い場所には行けないゲートではあるが、アイツの生前の記憶に残るランドマークへ行ったとしたら…
「それなら、なんで戻って来ないんだ?」
「日本では、アイツの魔法は使えないんだよ。魔素が存在しないからな」
「えっ?!なんで?」
シシリーが声を上げた。
「この国の魔法は、大地や空気に散らばっている魔素を魔力に変換して、魔力制御で必要な魔力量を用意して発動するんだけど、日本には魔素が無い。だから魔力制御をしても魔力は集まらないんだよ」
そこが、俺達とこの大陸の魔法使いとの違いである。俺達は体内に魔力をプールして、魔法を使う。なので、どこでも使えるのだが、デメリットで体内にプール出来る量を超えての大食らい魔法は使えない。そのデメリットを無くしたのが、この大陸の魔法である。魔力制御を鍛錬すれば、扱える魔力量は増え、大食らいの魔法を、制御出来るだけ放てるのだが、俺達のメリットである、どこでも使える訳では無い。一長一短な魔力大系の違いなのだ。
「だから、戻るに戻れないんだろう」
「一弥、アイツを戻してくれないか?」
「それはいいけど、魔法大系を壊す魔道具の開発は、厳罰にしてくれないか?例えば、魔素をプールして持ち運べる装置とか…あの空気読めない天才が、今回の反省として作りそうなんだが」
それを作られると、どこでも使えると言う、危険性が増す。
「わかった。徹底させる」
「オーグ、悪いけど、お前のオヤジの念書を貰ってこい」
「今すぐ、貰ってくる。待っていてくれ」
マリア達の相談に乗って時間を潰していると、オーグとそのオヤジがやってきた。
「念書はこれでいいかね?」
オーグのオヤジであるアールスハイド国王が、念書を手渡して来た。それに目を通す俺。
「破った場合の厳罰の内容を入れてください。二度としない程度の厳罰が必要です」
「たとえば?」
「魔法を二度と使えなくするとか」
「そこまでのことをするのかね?」
「えぇ、魔法大系を破壊する行為ですからね。それくらいの大罪ですよ」
「そもそも、そんな事が出来るのかね?」
「出来ますよ」
「出来るのか?!」
オーグのオヤジを含む全員が恐怖を抱いたのか、俺から離れていく。
「大罪を犯した魔法使いへの厳罰ですよ。それくらい執行出来無いと、舐められますからね」
オーグのオヤジが書き直した念書を手に入れ、『強奪』でシンを呼び出し、牢屋へぶち込んだ。
「罪状はオーグが伝えろよ」
オーグに丸投げをして、俺は家へ転移した。