---工藤新一---
一弥から工藤新一に戻れる魔具を貰った。戻れるというか、変身できると言った方が正しいようだ。連続24時間、工藤新一でいられるが、使用後は江戸川コナン姿で8時間の爆睡が義務づけられている。この爆睡は強制のようだ。細胞を休ませる意味があるので、危険な回避の為、強制的に爆睡状態になるようだ。万が一、寝られる環境で無い場合、もれなくベルツリー探偵社内の俺の部屋へ転移する呪いのようなものらしい。
この変身により、蘭は俺への想いが蘇るそうだ。俺の蘭へのケアが不十分な場合、再度蘭の心は一弥へ寄り添う様になるそうだ。蘭の心を守る為に…って、アイツに何のメリットがあるんだ、これって?
「メリットって言うのは、求めて得るようじゃダメだよ。結果的に得られる物でないとね」
一弥の返答は達観した者のセリフに聞こえる。
「これが、工藤新一への報酬だよ。頑張って、働けよ」
お釣りが出そうな報酬である。万が一、工藤新一を狙う、あの組織のヤツラが現れたら、一弥達が排除してくれるようだし。
「工藤新一は囮ってことだよ」
苦笑いしている一弥。ふん!そういうことにしてやるよ。優しすぎるダークヒーローさんよ。
◇
「新一…」
蘭が抱きつき、激しいスキンシップをしてくる。一弥仕込みなのか?激しいんだけど。俺、引き気味なんだけど…こんなケダモノのような蘭はパスしたいような。
『それだけ、溜まっているんだよ。こまめにケアすれば、望む展開になると思うよ』
脳裏に一弥の声が響く。コイツ、俺の心をモニタリングしすぎるだろうに。アフターケアのつもりか?
『そうそう、真純と灰原哀をどうするか、考えておけよ』
世良か?アイツは一弥一筋だろうに。灰原は…そうだな。どうしような。
「新一、私と居るときに、他の女のことを考え無いでよ!」
騎乗位の蘭が正拳突きの構えをしている。危険だろ?そこから撃ち込んだら…
「落ち着け!なぁ、蘭」
「私はいつも落ち着いているわよ」
深呼吸をして構え直している。小指から指を折り拳を固めているし。マジですか?
「蘭…」
「ふふふ、どうしてあげようか?」
こえぇぇ~。その視線は止めてくれ~!恐怖により萎えたアレは、蘭の中から排出された。
「ふ~ん、私じゃお気に召しませんか?」
「そんなことは無い。話合おうぜ、蘭」
こんなスキンシップは嫌だよ~!
---宗方一弥---
シンの編み出した魔法『ゲート』を、俺でも使えるように術式化していく。行ったことのある場所なら行き来できるのは便利である。転移術ほど、魔力も食わないし。
「で、異世界へのゲートは見つかりそう?」
インデックスに訊かれた。
「ラフタリアの記憶を読んだのだけど、ラフタリアの世界に転移した4人の勇者が、全員日本人らしいんだよ。もしかすると、ゲートは日本にあるんじゃ無いかな?」
規格外の天才魔法使いのシンも、日本人だった。もしかすると、日本にゲートがあって…そんな考えが浮かんでいた。
「そうなると、この国の古地図とか古書を集めないとダメだよね?」
「火織、土御門には頼んである。インデックスは、パワースポットを探してくれ」
「わかったよ」
怪しそうなのは、富士の樹海かな。地磁気の異常地帯だしなぁ。いや、もう1つ怪しい場所を思い出した。ここである。石組みの斜面が残っている箇所がある。そこから推測する、予想ピラミッドの全景。算出された面積が結構デカい。一辺の距離が約500メートル。クフのよりデカくないか?
手元にある古地図によると、大昔は目の前が海だったようだ。太陽の船ではなく、船を収納していたり。地下を開発しているが、木片類は出ていない。現在の底は岩盤らしい。そうなると、鈴木財閥が掘った可能性があるよな。
「一弥、ピラミッドじゃないみたいだよ」
インデックスにより、俺のロマンが否定された。
「あの石組みは、ピラミッドって言うより、お城っぽい」
あぁ、海上城か?
「いいや、お城のあった年代だと、海は東に100メートル辺りだよ」
目の前は砂浜なのか?だから、岩盤まで掘ってから、土で埋めたのか?
「ここらは天守閣があったようだ」
インデックスが古地図を指さした。確かに、天守閣のあった辺りに、母屋が有るようだ。
「シスターズからの報告では、ゲートらしき物は見つかっていないようだよ」
「森の下は?」
「う~ん…不自然な横穴があったらしい。でも補強しないと探索は難しいって。土だから、崩落の可能性が大きいらしい」
森の下は岩盤まで掘られていないのか?そうなると、なんで、ここの下は掘られたんだ?それよりも、森の地面の地盤沈下対策をしないとダメなような。
「補強工事をしたみたい。巨大倉庫のような部屋があったらしいけど、大戦中に使った感じだって」
鈴木家から、古地図を貰った方が良くないか?
「だね」
次郎吉に確認すると、ここは最近買い取った物だったそうで、鈴木家には資料が無いそうだ。元々の所有者を見つけて、訊かないとダメだな。
---シン---
帰路はゲートの魔法が使えないとは、盲点だった。オーグの話では魔素が存在しないらしい。なら、持ち込めば良いんだよな?魔素を魔力に変換して、何かにプールさせておけば良いはずである。どう、プールさせるかだな。酸素なんかなら、水から生成出来るが、魔素はどうやって、生成するんだ?魔力制御で魔力を集めて、圧縮してみた。これでは持ち運べない。次に、魔素だけを集める魔法を作り、魔素を集めて、固めてみた。なんか、炭のようになった。炭かぁ…高圧、高温で人工ダイヤモンドになるよな?魔素の塊に高圧、高温を書けてみると、ダイヤモンドのような塊になった。これを利用すれば良いのか?
次に、このダイヤモンド状の…魔素の石だし、魔石とでも呼ぶか。この魔石から、どう魔素を取り出すかを考える。指でつまんでみる。なんか魔力を感じるんだけど、もしかして…簡単な回路を作り、はめ込んでみた。動き出す回路。そうか、乾電池のイメージなのか。魔素に高圧、高熱処理を加えたことで、魔素は魔力に変換され、結晶化したのだろうか。そうなると、ゲトを回路にすれば、移動専用の魔具がつくれそうである。
◇
試行錯誤の結果、現在、シシリーと東都タワーに来ている。
「シン君、スゴイ。街があんなに小さく見えるんだね」
お金は拾った100円玉を元に、複製して、わらしべ長者的に、1000円札を手に入れ、5000円札を手に入れ、10000円札を手に入れて、複製して、シリアルナンバーを変更してある。偽造と言えば言え無くも無いが、魔法での複製の為、アシは着かないだろう。
---宗方一弥---
ベルツリー探偵社に、青子のオヤジがやってきた。
「一弥君、これを見てくれないか?」
2枚の1万円札…シリアルナンバーが同じであった。
「偽札ですか?」
「実に巧妙でね。どっちが本物か分からない程なんだ」
探査能力で調べて見るが、素材も、透かしも、インクも、まるっきり同じである。ただ、シリアルナンバーがおかしい程度か。
「シリアルナンバーの書体が、少し違いますよね?」
「そうなんだよ。見分け方はそこだけで、あとは完璧に本物なんだ」
「手触りも同じなのか」
探が感心している。
「何枚くらい見つかったんですか?」
「今のところ、その1枚だけだが、流通はしているだろうな。もっと大量にな」
銀行で、たまたま同じ番号の札が見つかり、エラー紙幣かと盛り上がったらしいのだが、書体の不備を見つけ、警察へ通報したことで、発覚したそうだ。これは、厄介である。素材やインク、透かしまで一緒だと、俺の『強奪』で、偽札だけを手元に強制転移出来無い。
「銀行でチェックしてもらうしか、手は無いですね」
数字の書体だけ検査する偽札発見器を開発しないと、大量の紙幣から探し出すのは困難である。この犯人は頭がキレるなぁ。って、どうやって、作ったんだ?
「中森警部、これって、どう作ったと思いますか?」
「本物の紙幣を作っている現場と全く同じ装置、原版、インク、専用紙を持っていないと、無理なんだよ。それらは、横流しされないように厳重に管理しているはずなんだが…」
頭を抱えている。
「一弥だったら、どう作る?」
紅子に訊かれた。
「俺だったら?そうだな。複製して…あっ!犯人がわかった気がする」
「本当かね、一弥君!」
中森警部に抱きつかれた。娘さんの方が良いとは言え無いよなぁ。
「だけど、罪に問えるかは別ですよ。この国の法律では裁けないやつですから」
「なに?」
「そうならないように、あの国の王に念書を取ったのに…中森警部、指紋は採れますか?」
「店員の物しか、取れなかったよ」
「この件は、俺に任せてくれますか?相手が悪い。確信犯の上、頭がキレるし、日本の警察では逮捕出来無いクラスですよ」
「そんな大物なのか?」
「えぇ、とある王国の英雄クラスで、その王国の王が引き渡しに応じるかどうかですね」
中森警部のことは、探にまかせて、俺はオーグの元へ転移した。
◇
俺の前で、オーグとオーグのオヤジが、俺の書かせた念書の前で、唸っていた。
「シン君がやったって証拠は無いんだよね?」
王はシンを庇う気満々のようだ。念書の効果は無いようだ。
「証拠が無いから、アイツがやったんですよ」
「アイツ、完璧主義者だからなぁ」
オーグは、俺の言い分に頷いている。
「じゃ、今度、やったら、現行犯逮捕で、こちらで処分して良いですか?」
「ソレは困るよ。シン君は我が国の英雄だよ。処分は困る」
「こうなる予想があったから、念書を取らせていただいたんですよ」
「念書なんて、メモのような物だろ?」
この国の王は、ダメだな。オーグに期待かな?
「そうなのか、オーグ」
「いや…父上、メモではありません。相手のある取り決めですよ。いいですか、一弥がその気になれば、この国は消えますよ」
「オーグ…だがなぁ、シン君だよ。処分は困るだろ?」
「じゃ、この国は、犯罪者を英雄にするってことでいいんですね?」
「一弥、待て!俺が父上を説得をする。だから、待ってくれ!」
オーグは、事の重大さを分かっているようだ。
『捕まえたよ』
インデックスから連絡が入った。
「仲間が現行犯逮捕したようです。こちらで、処分させてもらいますよ」
「待て!一弥、俺も連れて行ってくれ」
オーグと二人で、転移した。
◇
転移した先では、精神を凍らせたシンと、そのシンに声を掛け、身体中を弄っているシシリーがいた。
「ねぇ、シン君!起きてよ~!お願いだから」
シシリーの声は涙声である。
「指に指紋は無いわね。偽造札の入った財布は押収したわ」
美和子が臨場していた。まだ刑事として現場復帰出来無いので、ベルツリー探偵社で、調査員をして貰っていた。
「これが問題の魔法具のようよ」
紅子が差し押さえてくれた。深雪はシシリーの動きを注視している。何かをするのではと、警戒してくれていた。
「オーグ、証拠は出た。どうする?」
俺の声にシシリーが反応した。
「殿下、シン君を助けてください」
オーグに泣きすがるシシリー。
「悪いが、無理だ。シンは王令を無視して、魔素の無い国で、魔法を行使したんだぞ」
「魔法は一切行使していません。使ったのは魔法具だけですよ」
そうなると…
「オーグの国で、偽札を作ったってことか。まぁ、使った時点で、この国ではアウトだぞ。後、魔法具も魔法のうちだ」
「一弥君に何の権限がある?!」
シシリーが、俺に食って掛かって来た。オーグの国には警察は無いからなぁ。どう説明するかな。
「一弥は、この国の憲兵みたいな者だ。クロードは、この国の法は無視しても、問題無いと思っているのか?」
「何も悪いことはしていません。なんで、シン君がこんな目に遭うんですか?」
シシリーは偽札を使ったって、認識が無いようだ。そういえば、オーグの国はコインで、紙幣は無かったなぁ。紙幣の意味が分かっていないのか。さて、どうするかな?
「一弥…俺を国に戻してくれ」
シンの持っていた魔法具をオーグに渡した。
「今日はもう転移出来無いから、それで、帰ってもらえるか?」
「わかった。父上と協議してくる。それまで、二人を頼めるか?」
「頼まれた」
俺に笑顔を見せて、ゲートで帰って行くオーグ。
---シシリー---
シン君は大罪人扱いで、精神を凍らせた状態で牢に入れられている。共犯者とされた私は、隣の牢に入れられていた。一弥君以外に、理解できる言葉を話せる者はおらず、身の潔白を証明できずにいた。
「シンの罪状を知りたいか?」
一弥君が現れた。
「シン君を嵌めたんでしょ?私が目的なの?」
「はぁ?なんで?俺はお前なんかを目的とした場合、シンを嵌める必要が無い」
一弥君が指を鳴らすと、身体が勝手に動く。着ている物を脱いでいく。なんで、そんなことをしているの?
「牢から出してやる。俺の前に跪け!」
全裸になり、牢からでて、一弥君の前で跪いた。
「お前の口で、奉仕をしてくれ、シシリーよ!」
口で奉仕って?意味が分からないのに、私の身体は勝手に動き…なんでこんなことをしているの。
「ほぉ~、舌遣いが上手いなぁ。シンにしてあげているのか?」
舌で舐め上げている。勝手に舐めている、私の舌…
「わかったか?シンなんぞ嵌めなくても、お前なんか、どうにだって出来るんだよ。四つん這いになり、尻を俺に向けろ!」
え…まさか…
お尻に手の平の感触、目の前が真っ白になっていく。
---宗方一弥---
オーグとオーグのオヤジに会いに行った。
「結論は出たか?」
俺を取り囲む憲兵達。
「これが結論か?愚かな選択をしたようだな」
「お前と、シン君達を交換する」
オーグのオヤジは、愚かなのか?
「俺は、あの国の代表じゃない。俺なんかとは交換なんかしない。むしろ、お前は俺達にケンカを売った。その代償の方がデカイぞ!」
「一弥、待ってくれ!」
オーグが俺に頭を下げている。
「お前の安全は俺が保証する。父上、愚かな行為をしないでください。シンは、他国で罪を重ねたんですよ」
「それはそれ、これはこれだ。外交とはそういうものなんだぞ、オーグ」
「わかりました。30分の猶予を上げます。30分後、この国を凍結します」
「何?」
王の顔が歪んだ。俺が強硬手段に出ないとでも、思ったのか?
「それとも、消滅の方が良いですか?どちらでもいいですよ。手間は一緒ですしね」
「貴様!この私を強請るのか?!」
声を荒上げる王様。
「選択させているのです。あなたの国でしょ?あなたが選択しなさい」
「一弥!考え直してくれ」
オーグが懇願してきた。
「俺は平和の世界を作りたいんだよ。罪を罪として認め無い国は、排除したいんだ」
オーグの顔が歪んでいく。
「それに、こういう国を野放しにしておくと、同盟国に示しが付かないんだよ」
「父上、一弥に謝罪をして、念書の通り、国を治めてくれませんか?」
オーグが国王に頼んでいる。俺はシンとシシリーと入れ替わるようにして、この国から去った。
---オーグ---
一弥はシンとシシリーを返してくれた。しかし、二人は抱き合うようなポーズをした氷像にされて返品…。
「マーリン殿を呼べ!シン君達を救い出すんだ」
憲兵に命令をする父上。一弥は、出来る限り譲歩してくれたんだと思う。この国は、一弥の望む世界にとって、異物に過ぎないのだろう。もっと、一弥と話しがしたかった。もっと、色々学びたかった。なのに…
残り5分という処で、マーリン様とメリダ様が訪れた。
「これは…氷漬けでは無い。魔石でコーティングされておる。魔法なんか、打ち込んだら、シンとシシリーの魔力が暴走するぞい」
一弥…お前…こうなることを読んで、魔法で解除を出来無くしたのか?そして、時は満ち、俺の記憶はそこまでだった。