---高木渉---
訳有って、美和子さんと同棲生活をしている。将来はこのまま、夫婦生活も夢ではないと思う。美和子さんの精神的ダメージは徐々に快方へと向かっていた。俺以外の男性の視線で、発作が再発しなければ、職場復帰しての婚約という流れをイメージしている。
「事件が終わりましたので、今日は定時に帰れます」
『そうなんだ。お疲れ様。じゃ、食事の支度とお風呂の準備をしておくね』
って、スマホでのヤリトリで、顔がにやけてしまう。
帰路を急ぐ俺。そんな俺の視線が、歩道で蹲る女性を捉えた。
「どうしましたか?」
近づき声を掛けた、次の瞬間、首筋に何かが刺さり、意識が遠くなっていった。
---宗方一弥---
ベルツリー美術館に、快斗、探、コナン、真純と来ている。次郎吉がビッグジュエルを手にいれたそうで、早々と怪盗キッドから予告状が届いたと言うのだ。事前に快斗に確認したのだが、出した覚えはないという。
「この予告状なんだが…」
「これ、ニセモノだな。マークがにじんでいるし」
快斗に手わたして、確認して貰った。
「そうだな。これはニセモノだ」
「ニセモノだとしても、狙われているのは事実じゃ。そこで、我がベルツリー探偵社の出番じゃよ」
まぁ、そうなんだけど…
「これ、魔石なんだけど…」
問題のビッグジュエルから、何らかの波動を感じた俺。
「展示会の後に、処理を頼む」
処理をすると砕けるしなぁ。
「で、どこで手に入れたんだ?」
「トランシルバニアじゃ。その名を『ブラッドハート』と呼ばれるルビーじゃよ」
トランシルバニアと言えば…
「まさか、中身はドラキュラの心臓だったりしてなぁ」
「おぉ、そのキャッチコピーは良いなぁ。採用じゃ。吸血鬼の心臓と呼ばれるルビーかぁ」
マジだったら、ヤバいんですけど…家に戻ったら、対策を練るか。
「ここの案件はここにいるメンバーに任せるよ。リーダーは探がしてくれ。真純はコナンのガードを頼む」
俺だけ先に家に戻った。
◇
インデックス、火織、土御門に、『ブラッドハート』の件を伝えた。
「魔石である以上、なんらかの良くない物が入っていると思うんだよ」
「吸血鬼相手だと厄介だよ」
って、インデックス。
「火織と五和で楽勝で無いのか?」
二人共、聖戦士だし。
「一弥の認識が間違っていると思うんだよ。吸血鬼は聖属性が弱点では無く、光属性なんだよ」
「聖属性でダメージが入らないのか?」
「致命傷には程遠いなぁ。アイツら、再生能力があるんだよ。致命傷を与えないと、意味が無いんだよ」
なるほど…
「ニンニクとか、十字架は?」
「ニンニクで無くても、臭い物なら避けるよ。でも、致命傷は入らない。そもそも、避けるからダメージも入らないし。ニンニクは論外だよね。十字架は、光輝く物ならダメージが入るよ。十字架に限らずに、銀の銃弾とか」
「太陽の光は?」
「一般的な吸血鬼ならば灰化する。でもねぇ、イレギュラーのディウォーカーだと、疲れやすくなるけど、ダメージが入らないよ」
なんか、一般人レベルの知識ではヤバいような相手だな。
「じゃ、どうするよ?」
「一弥の『幻想殺し』が最適かな」
触れないと効果無いんですけど…
「噛まれても、一弥なら『幻想殺し』が自動で発動するし」
俺が囮になればいいのか?
「俺以外に対抗出来る人材は?」
「ワーストとシスターズかな。ラストオーダーは体力不足だし、オリジナルは論外だし」
琴美に銀製の5寸釘を渡しておくかな。
◇
翌日、目暮警部に呼び出された。猟奇的な事件が発生したかもしれないと。俺と琴美、土御門の三人で向かった。
「これを見てくれ」
早速、何かの干し肉を見せた目暮警部。見るからに怪しい肉片。探査能力で正体を見極めてみてから、
「これは…人肉ですか?」
と、訊いてみた。
「科捜研の検査結果も、そう出たのだよ」
まるで、さきいかのような人肉。カラカラに干したようだ。
「人肉って、こんなに見事に干せる物じゃないぜ」
土御門が見解を述べた。これって、あれだよな?
『懸念していた敵が出たのか?』
インデックスから念話が届いた。まさに、それだろうう。確か、血だけで無く、水分なども吸い出すんだよな。
「原因を知っているのかね?」
目暮警部が訊いてきた。
「眉唾な原因ですが、吸血鬼の吸血により干からびた人体を、吸血鬼が食べた残りカスだと思います」
「はぁ?吸血鬼だと?」
頷く俺と土御門。実在が怪しい者だよなぁ。
「それしか考えられないです」
「う~ん…」
あのルビーが呼び出したんじゃないのか?
『あり得るねぇ~』
インデックスの応答により、がっくりと肩を落とす土御門。厄介そうな相手だよなぁ。
◇
肉片の見つかった辺りで、連続行方不明事件が起きていないかを、所轄に訊いて貰うことにした。1体で済むと思えないし。美術館の警護要員に、吸血鬼対策として、五和と火織を派遣することにした。巨大胃袋達は、クレープの木の恩恵を受け、腹が減ったら収穫へ向かうようになったようだ。
捜索の方は俺と琴美、深雪の3名1チームと、土御門、退院した一方通行、淡希の3名1チームの2チームで行うことにした。厄介な相手だし、2次被害は避けたいし。
「男性ばかりが行方不明か。これって、女性の吸血鬼ってことか?」
『そう思うよ。もしかすると眷属として男性がいるかも』
吸血鬼が吸血した場合、手下としての眷属になるか、エサになるかの2択らしい。眷属の数は無制限に増やせるらしいが、絆の強度が弱くなる為、頭の良い吸血鬼は眷属を1名作り、眷属に眷属を作らせて戦力を増やすらしい。
「眷属の眷属は女性ってことか?」
『だね』
「追い込むのに、何か手がかりはないのか?」
あっ!閃きが舞い降りた。そうか、鏡に映らないんだよな?じゃ、監視カメラには?
『映らないはずだよ』
ならば…
「琴美、シスターズを使って、太陽が出ていない時間帯、この近辺の監視カメラの記録で、相手がいないのに会話をしているやつを探してくれるか?」
「お兄ちゃん、了解だよ」
男を誘って、ねぐらに誘い込んで、行為に及んでいる可能性はあるだろう。
「怪しいマンションを見つけたよ」
俺達のチームはそのマンションへと向かった。そのマンションの前に立ち、嫌な予感を感じる俺。ここって、美和子のマンションなんだけど…まさかなぁ…
目暮警部に確認をした。高木刑事は、どうしているのかをだ。結果、ここ数日連絡が途絶えているそうだ。目暮警部的には、美和子と仕事を忘れて旅行をしていると、楽観視していたようだ。まだ、そこまで回復していないはずだ。三人で美和子の部屋を目指した。
◇
美和子の部屋のあるフロアに降り立つと、死臭が微かにしていた。琴美も気づき、警戒を強めていく。
『土御門、ビンゴだ。お前のチームは、逃亡防止を頼む』
『一弥…ブチ切れるなよ』
土御門が俺の心配をしてくれている。アイツの予想も、俺の予想と同じなんだろうな。
美和子の部屋の前。電気メーターは動いていない。
『深雪、部屋の中を瞬間凍結してくれ』
『了解しました』
敵に気づかれないように、目で見える距離でも念話で会話をする。深雪の『コキュートス』が発動して、みるみるドアに霜が付いていく。凍結が完了すると、琴美がドアを蹴破り、部屋の中へと突入した。
部屋の中には男性と思われるミイラ化した頭部が、いくつも転がっていた。頭部は食わないようだ。リビングへ行くと、金髪の女性と、その前に跪く男女の姿を確認した。
「ダメ!お兄ちゃん!」
俺は無意識に、何かをしようとしたようだ。琴美が必死になって俺を留めていた。
『おい!クソシスター!どうすれば良いんだ?早く指示しやがれ!ぶち殺すぞ!』
俺以外には、もの凄い口調の琴美。
『一弥…落ち着いて聴いてね。眷属になった者は、人間には戻れないの…』
はぁ?俺の能力を使ってもか?
『死者を生き返らせることは出来無い。それは幻想では無くて、確定事項だから…』
何を言っているんだ、この巨大胃袋は…ふざけるなよ!
『一弥!その能力は万能じゃないんだよ。それに、人間に戻れなくても生かす方法はある。少し時間をください』
「これはひでぇ~な」
土御門が入って来て、頭部のミイラを見て声を上げている。
「なぁ、主を消せば、眷属からは解放されるんだよな?」
「あぁ。だが、生き返らないぜ。その女の彼氏である、高木って刑事が主なんだろ?」
「そのようだ」
「凍結を解いた瞬間、眷属クラスは死ぬぞ。大本の吸血鬼はタフだから、死なないがな」
この金髪が元凶か…コイツから、吸血鬼属性を外すと、美和子がまずそうだな。どうするかな?そう、問題は美和子だよ。どうする。
待てよ…人間には戻れないけど、死なない方法があるじゃないか。アンデッドにすれば、美和子を美和子として残せるはずだ。
『おい!待て、一弥!』
インデックスの慌てた声。スルーだな。
「深雪!美和子だけ仮死状態にしてくれ」
「わかりました」
美和子の身体が解凍されていく。解凍されて、まず吸血された傷を治した。他にも怪我が無いかを確かめ、怪我も治していく。
『何をするんだよ、一弥…』
不老不死にするんだよ。
『はぁ?正気か?既に死んでいるんだよ』
吸血鬼として生きている。ならば、不老不死にしてから、吸血鬼属性を外せば、問題ないだろ?そうだな。ホムンクルムにすれば良いのか。なぁ、琴美…
「さすがです。お兄ちゃん。それは手ですね」
不老不死薬を手にして、美和子に飲ませた。少し血色が良くなってきたので、吸血鬼属性をホムンクルムになるように幻想を破壊した。
これでどうだ?
「深雪、蘇生を頼む」
「わかりました」
更に血色の良くなっていく美和子。
◇
金髪女をプレイルームに拘束し、美和子はベッドの上に寝かせ、無修正の高木刑事の遺体だけ、部屋に残した。その後で、目暮警部達に臨場してもらった。
「高木…なんて、姿に…あれ?佐藤君は?」
「俺の家に連れ帰った。美和子を晒し者にはしたくない」
心臓の鼓動も無く生きられる美和子。見世物確定である。美和子に、どう説明するかな。
「う~ん、確かに高木の犬歯はキバのようだな。首筋には穴が2つあるし…」
「検死をすれば、どうですか?」
「そうだな。鑑識さん、これを運んでくれ」
テキパキと指示を出す目暮警部。だけど、オペ台の上の照明を浴びると灰になっちゃうけどね。
頭部は10個以上あったそうだ。このマンションの男性住民の一部も被害にあったようだ。
◇
連れ込んだ吸血鬼の処女血をすする俺。再生力万歳だ。何度やっても処女って、なんか得した気分である。
「どうだ?血をすすられる気分だ?」
「このド変態やろ~が!儂を誰だと思っているのだ~!」
既に10回以上達している金髪女が偉そうな態度を崩さない。ヤラテイル時は、「やめてください」とか「だめぇぇぇ~!」とか、可愛い声で歌っているのにだ。威厳なんか、既に無いんだが。
「俺はお前の主だ。名を名乗れ!性の下僕よ!」
注射器に蓄光剤入りの聖水を注入して、女性のクリちゃんに針を刺し、少し入れてあげた。蓄光剤には光をたくさん食わせてある。
「ちょっと…ダメだって…それはダメな刺激だよ~」
みるみる涙目になっていく金髪女性。
「なら、名を名乗れ、下僕よ!」
下僕として名乗らせる事に意味がある。この行為により、俺には逆らえなくなるのだ。
「儂は…キスショット…アセロラオリオン…ハートアンダーブレードじゃ…」
長い名前だな。覚えられるかな?
「おぉ、結構大物じゃないか。ソイツの和名は忍だぜ」
土御門がやってきて、良いことを教えてくれた。
「そうか、忍。お前を俺の下僕として認定する」
認定をすると、何故か金髪の幼女に姿を変えた忍。なんだ?出来無いじゃん?
「お前、本当に幼女が集まるよな」
って、土御門に笑われた。
「たぶん、やらせろって、命令すれば、やれる年齢になるはずだぜ。ソイツはお前の性の下僕って、認定だしなぁ」
それなら良いか。幼女を全裸拘束する趣味はないので、拘束から解放してやり、俺は美和子の元へと向かった。
◇
「一弥…ゴメン。なんか、つらい選択をさせたみたいだね」
俺の葛藤を、美和子は見ていたそうだ。あの場に漂う魂の状態で。
「あの選択で良かったのか?」
「一弥が選んだ道だ。問題は無い」
それならいいか。
「なんで、私を高木君に預けたのよ。それが問題よねぇ」
問題は、そこか…預けた経緯を話した。
「戻れない可能性があったのかぁ。でも、この新しい身体は気に入っているよ。心の病も治ったみたいだし」
そもそも、ホムンクルムには、心の病は無いからって、言い出しにくい。
「もう、見捨て無いで、傍に置いてよ。ねぇ、一弥」
美和子に押し倒されて、そのまま…主導権がまったく握れないのは、不本意なんですが