---工藤新一---
蘭が俺を白い目で見ている。
「まったく、新一は淡泊すぎるのよね!」
って、言われても…どこで勉強すれば良いんだ?
「自分だけ愉しんで、私は愉しませてくれないのよね。一弥とは大違いだわ」
それは、一弥とも…いやいや、あの手癖の悪いやつと比較されても困る。
「で、愉しめましたか?旦那様!」
「うっ!勿論です」
蘭の手は拳に成っている。意に返さない返事をしたら、鉄拳制裁ってことか?
「ねぇ、将来はどうしたいの?」
「勿論、蘭と…」
そこまで言うと、蘭の視線が険しくなっていった。
「だったら、もう少しどうにかならないの?このままだったら、心は新一、身体は一弥を愛するからね」
う~ん、それもアリかな?蘭と通じ合いたいのであって、交わりたい訳では無いし。
服を着て蘭の部屋を出ると、廊下で服部と出会った。
「よぉ!服部」
「おお、工藤やないけ。その顔は、己も言われたのか?」
コイツもかぁ。
「どこで勉強すれば良いんだ?」
「普通は風俗だろうけどな」
風俗なぁ…一弥はどうやって勉強したんだ?アイツ、風俗なんか行く時間が無いだろうに…
---宗方一弥---
新作のイリュージョンを考えている。人体消失はハードルが高いよなぁ。消失させるのは簡単だけど、戻すのが面倒だ。切り口の処理も考え無いとイケナイし。没かな。後は…
「空中浮遊だけでも目玉になると思うぞ」
一緒に快斗も考えている。今度、二人でショウでもと考えているのだ。
「クローズアップをメインにすれば、小屋は小さくても可能だよな」
「イリュージョンを諦めれば、それも良いと思うぞ」
諦めか。いやいや、俺の夢である。
「そうか、消失は問題あるけど、発現なら問題が少ないか?」
「建物か?出す土地の確保が必要になるぞ」
だよなぁ~。
「ねぇ、一弥。お客さんが来たわよ」
平日の夕方、探偵社の受付を任せている蘭がやってきた。客?
「何の?」
「探偵社のよ」
そうだよな。客のいる部屋へ向かった。
◇
知らないオジサンが一人。大きなツヅラを持って来ていた。
「探偵社代表の宗方一弥です」
「私は弁護士をしています若林と申します」
弁護士?面倒な案件の予感…
「実は、大神財閥の顧問弁護士をしておるのですが、あなた様は宗方大社の末裔の方ですか?」
「そうですが…」
宗教絡みは嫌いである。であるが、宗方大社は、宗像大社の分派らしいのだが、俺の先祖が開祖らしい。嫌いとか言っている場合ではなさそうだ。
「これを確認して欲しいのでが、これは本物ですか?」
大きなツヅラから金色の斧、琴、菊を象った置物を取り出した。
「これは?」
「宗方大社の三種の神器と箱に書かれています」
金で作られた置物のようだ。成金趣味だな。まったく…
「本物の訳が無いでしょ?これって、話を聞いただけの者が後生に作った物ですよ」
「えっ!そうなんですか?では、レプリカですか?」
妙な事を言う弁護士。
「これのどこがレプリカなのかな?」
「いや…斧、琴、菊が三種の神器ですよね?」
う~ん…
「本物は手元に置いていませんが、写真なら有りますよ」
空間から写真を数枚取り出した。
「見て分かる通り、置物ではないんです。札の一種です」
羊皮紙に魔方陣が描かれており、その中心にはサンスクリット語で、『斧』『琴』『菊』の意味する文字が描かれている。
「この札は3枚で1つの神器になります」
目の前の弁護士先生の顔色は悪い。まさか、お札とは思わなかっただろう。
「ですので、それは、レプリカの所有者から話を聞いた誰かが、ねつ造したバッタ物ですよ」
「なんてことだ…」
箱の蓋を見つめている弁護士。そこには『宗方大社 三種の神器』と、日本語で書かれていた。
「これが本物だったら、どうなんだ?」
弁護士の後ろには、土御門が立っていた。
「君は誰だ?!」
土御門に驚いた弁護士。
「一応、専門家だよ。代々陰陽師をしている土御門家の者だ」
俺を見た弁護士。俺は頷いた。
「あの土御門家の方ですか。では、助けてください」
◇
大神財閥の当主で、たった一代で大神製薬を大企業にした大神佐助なる人物が死去したそうなんだが、その遺産絡みだと言う。三種の神器を受け継いだ者へ、宗方大社の秘宝を授けると言い残したそうだ。
勝手に俺の家の秘宝を授けるって、どういうことだ?!って、秘宝って、何?その爺が隠し持っているのか?
「勝手に、俺の家の秘宝を持ち逃げしたのか?その佐助は!!」
怒りを纏う俺。
「そうなるな。ひでぇ話だな」
「で、受け継ぐ条件はなんだ?」
「宗方家の血筋の者と家族になることです」
はぁ?俺と?誰が?
「相続人は、斧子様、琴子様、菊子様に多岐様になります。その内の一人が宗方家と家族になれば、相続権が発生するのです」
迷惑な話だ。勝手に俺の嫁候補を決めやがって!
「誰も家族になれない場合は?」
「宗方大社へ総てを寄付するとあります」
「じゃ、寄付をしてよ。俺は結婚する気は無いからさぁ」
結婚なんかしたら、ヒモになれないじゃないか。俺の心を読んだ、土御門が吹き出した。
「そうはいきません。誰かと家族になっていただきます」
「断る!俺の家の家宝をねつ造した挙げ句に、秘宝を持ち逃げしたヤツの家系となんか、家族にはならない」
「そうはいきません。どうか、お願いします」
「あら?一弥、困っているみたいねぇ」
って、キャーリサが入って来た。助けに来てくれたのか、ニヤニヤ顔である。
「困って無いよ」
「一弥は私の婚約者なの。戦争する?」
俺の言葉をスルーして、キャーリサが弁護士に言葉を吐いた。
「戦争?君は何様だ?!」
「私?大英帝国第二王女のキャーリサだし~」
勝ち誇った表情のキャーリサ。
「なんだって?大英帝国の王女様…」
「信じられないなら、ここの隣家に、うちの大使館があるわ。そこで確認しなさいね」
なんか、事態が悪い方向に行きそうな…
---金田一一---
祖父ちゃんと知り合いだったという弁護士先生から、俺に依頼が来た。人捜しだと言う。
「探していただきたいのは、宗方良一様と、宗方菊次郎様です。お願いします」
弁護士の若林って人が、俺に頭を下げ、名刺と手付金を置いて帰った。う~ん、人捜しかぁ。どうするかな。
「ハジメちゃんが頼まれたんでしょ?」
幼なじみの美雪を頼った俺。
「事件の謎解きは得意だけど、人捜しは地味だから、苦手なんだよ」
「じゃ、なんで手付金を貰って、受けたのよ~!」
「強引に頼んでいったんだよ」
って、強引すぎる弁護士。なんか、必死だったなぁ。殺人事件の幕開けか?
「う~ん、人捜しねぇ。宗方家って家を探せば良いんじゃない?」
美雪がネット検索をしてくれた。俺はITは苦手である。
「うん?ベルツリー探偵社の社長さんが宗方さんみたいだよ」
ベルツリー探偵社?鈴木財閥が後ろ盾にいる学生探偵の集団か?そこの代表者なのか?
「住所は?よし!美雪、行くぞ」
俺はワトソンを連れて、敵地へ向かった。
---宗方一弥---
キャーリサのおかげで、引き下がった弁護士。裏に何かあるのか?宗方家の秘宝って気になるなぁ。
「何か、分かったか?」
探と土御門に、若林弁護士と、大神佐助の調査を頼んだ。
「先々代の若林弁護士は、金田一耕助先生と交流があったようだよ」
って、探。
「秘宝の正体はわからねぇ。そもそも当主のお前が知らないんじゃ、眉唾でないのか?」
「かもしれない。家宝もねつ造されていたしなぁ。それよりも、製薬部門って興味無いか?」
もし、手に入れば、工藤君の解毒剤開発も夢でもないだろう。
「お前以外に、宗方家の血筋はいるのか?」
土御門に訊かれた。
「いないはずだよ。菊次郎は死んだし、良一はいないし。琴美は違うし」
そもそも俺も違うのか?今となっては、真実を知っている者はいない。
「そうそう、多岐っていう娘以外は既婚者だったよ」
はぁ?
「三人とも息子が一人ずついるだけだった」
「選択の余地が無いじゃん」
「一弥を養子にするつもりなのかもな」
「養子?それだと宗方家と家族になれないぞ。俺、両親がいないし。戸籍上の家族は琴美だけだし」
まさか、琴美狙い?
「あり得るな。琴美ちゃんと息子が結婚すれば、一弥は義理の息子になる訳だし」
「私は拒否する。お兄ちゃんの傍にずっといるよ。結婚なんかしない」
琴美が俺の腕に縋って来た。こいつ、たまに力加減を間違えるんだよな…痛いんですけど…
「被害が来る前に、大神製薬を潰すか、乗っ取るか…琴美、株主はどうなっている?」
「う~ん…大神佐助が100%持っているよ」
ネットワークに繋いで調べてくれた琴美。100%…う~ん、買えないか…いや、誰とも結婚しなければ、俺の物になるのか?いや、待てよ…
「創業資金はどうしたんだ?」
「大神佐助の伝記によると、元は放浪の孤児であり、信州の宗方神社の神主である野々村大作に、17歳の頃拾われ、養育されたって」
「創業資金は?」
琴美の調べてくれた情報には、俺の疑問の答えは出ていない。
「まさか、神社に奉納されていた神器のレプリカを売ったのか?」
昔、祖父に聞いた覚えがある。分社化した時、ご神体代わりに、神器のレプリカを渡したとか…
「あり得るなぁ。金儲けしたら、返すつもりで、拝借したとか」
レプリカとは言え、神聖な物だぞ…金儲けの原資にしたのか?
「大神製薬は何で、大儲けしたんだ?」
お札を売ったとしても、大儲けは出来無いだろう。それなりの筋の者にしか、価値はわからないし、そういう者はレプリカって気づくと思う。レプリカのは、サンスクリット語では無く、日本語の行書体だったそうだから。
「麻で生糸を作り、まずは生糸業を始めたみたいだよ」
大麻かぁ。
「なるほどな。麻薬王ってことか。で、大儲けをして、紙切れでなく純金の置物にして返却か?あれ?それなら、なんで、それが大神財閥の手にあるんだ?」
土御門の思考が疑問に引っかかった。
「返そうと思った時に、野々村神主がいなかったとか?野々村神主の親族って、いないのか?」
「えぇっと…多岐って娘が孫みたい」
孫?俺と結婚すれば、元の持ち主の元へ還るのか?それって、おかしくないか?
俺も疑問で思考が停止した。そんなタイミングで、また客が来たそうだ。応接間に向かう俺。
◇
応接間にいたのは、高校生の男女1組。
「探偵の金田一一です。コイツはワトソンの美雪っす」
探偵が探偵社に何の用だ?
「ぶっちゃけ訊きますが、宗方菊次郎と宗方良一の所在を知りませんか?」
なんだ、コイツ?連れの女性は、少し太めだが、縛りがいが有りそうである。
「なんで、所在を知りたいんだ?」
一人は故人、もう一人は…あぁ、忘れていたことを思いだした。そうだ、良一って、俺の幼名だったんだ。そうなると、弥太郎イコール龍馬説は外れになるのか。
『おいおい…』
インデックスの呆れるような声が、俺の脳裏に響き渡った。
「依頼を受けてね。その二名の所在を調べている処なんだよ」
「まさか、若林弁護士か?」
「な、な、なんでソレを…」
狼狽える金田一。俺がダメだから、他の2名を探すってことか。戸籍に名前があるもんなぁ。うん?菊次郎は死亡届けが出ているはずだが…死んだとは思っていないってことかな?
「そうなると、お前達を、タダで返す訳にはいかないなぁ」
「どういうことだ!」
まず、お連れの女性に、特製下着をギフトしてあげた。
「うっ!」
直ぐに感じたようで、顔を真っ赤にして俯いている。どこまで、頑張れるかな?
「おい!俺達をどうするつもりだ?」
金田一がびびっているようだ。
---七瀬美雪---
突然、なんとも言えない刺激が襲い掛かって来た。喘ぎ声が出そうなのを、ぐっと我慢する。なんで、急に?身体が疼いている。腰が震えている。両方の膝頭をくっつけているのに徐々に離れて行く。異変をハジメちゃんに知られたくない。だけど、大股開きになっていく。どうして…
「あっ!」
急に尿意が…漏れちゃう…マズイ。ハジメちゃんに声を掛けて、トイレに行こう。って、周囲にハジメちゃんがいなかった。
「どうしたの?こんなに震えて…」
宗方一弥が、私を抱いていた。そうか、これは尿意では無く…秘部が濡れていく。彼が入って来た。胸を揉まれ、唇を重ね…なんで、こんなことに…ハジメちゃん、助けて…
彼の上に座り、彼の胸に背中を預けている。彼の手が胸を優しく愛撫してくれている。ハジメちゃん…どこよ…
顔を横に向けると、彼の舌が耳を…蕩けていく。ハジメちゃん…ごめん。
彼の上で踊っている。彼は私の下にいて、私を見上げている。踊りに合わせて、乳房が一緒に踊っている。気持ちがいい…溜まっていた物が流れ出していくようだ。
横溝正史先生の『犬神家の一族』を参考にしています。