六腕との戦いから一夜明け、エ・ランテルの冒険者ギルドの会議室のような部屋に、ラキスケや服を着替えたセリーシアだけでなく銀級の冒険者プレートを首から下げた三人の若い男達も詰め掛けていた。
彼らはニニャ──ツアレの妹であるセリーシアが用いていた偽名──と組んでいる冒険者チーム“漆黒の剣”のメンバーだ。
彼らは前日から行方不明になっていたニニャを探して都市中を駆け回り、
その後、冒険者組合からはラキスケがワーカーであることから犯罪行為を疑われたが、オリハルコン級冒険者チーム“森妖”のアラビータと、ミスリル級冒険者チーム“クラルグラ”のイグヴァルジが事情を説明して執り成しながら聴取は進んでいった。
証言をもとに現場に派遣された冒険者たちの報告から、墓地の最奥にある霊廟近辺の死体は王国に根付く犯罪組織である八本指の構成員の中でも、装備の品質から最上位に位置する戦闘員であること。そして霊廟の隠し部屋からは秘密結社ズーラーノーンの存在と、都市を死都に変貌させる邪悪な儀式である死の螺旋の実行計画を仄めかす証拠品が見つかったことが確認された。
これらの情報と
冒険者組合の聴取を終えて、心身共に疲労しているツアレは森妖の面々にお願いしてマリナラの所で休んでいる。可能性は高くないだろうが、一人で宿屋に戻らせると八本指の手の者に攫われる危険があると考えたからだ。
戦士風の金髪碧眼の男性──漆黒の剣のリーダーであるペテル・モーク──が深く頭を下げるのに合わせて残る三人も深く頭を下げる。
「それでは改めて、ニニャを……俺たちの仲間を助けていただいて、本当にありがとうございます!」
「いや~、ニニャの恩人なのに疑っちゃってごめんね」
「ルクルット、へらへらしないでちゃんと謝るのである! 本当に申し訳ない!」
「それだけ仲間の事を深く思っていたという事ですし、無事に済みましたからそのお気持ちだけで大丈夫ですよ。むしろ、今までツアレの妹と一緒にいてくれたのが貴方達で本当に良かったです」
全体的に痩せ気味で、手足の長いルクルットの非礼を詫びているのは、かなりがっしりした体格の
「実は漆黒の剣の皆様に依頼したいことがあるのですが、まずは話を聞いて頂けないでしょうか?」
「俺たちに依頼……ですか?」
「はい。実は今回の一件で俺はこの王国でやらなければならないことができてしまって、ツアレと一緒にホームであるバハルス帝国の帝都に戻ることができそうにないんです。そこで、漆黒の剣の皆様には帝国の商人であるマリナラ氏の護衛という名目で、ツアレを帝都まで送ってほしいのです。依頼料は一人当たりこの辺りで……」
漆黒の剣の面々に相談を持ち掛けてラキスケが見せた金額は、銀級冒険者が受けるレベルの護衛依頼と比べても大分高い金額であった。
ペテルはしばし考え込んでから口を開いた。
「……いくつか窺って宜しいですか? まずその依頼、私たちの安全のために王国から離れさせる意味合いもありますよね?」
「ええ。王国にいる限りは、八本指の手の者がいつやってきてもおかしくありませんからね。ほとぼりが冷めるまでは、八本指でも手が出しにくい帝国に避難していただきたいのです。長引きそうな場合にはある程度生活費をこちらで負担させていただきます」
「生活費も出してくれるなんて、太っ腹だね~」
「ルクルット、まだ依頼を受けると決まったわけではないのだから、誤解を招く言い方は控えるのである」
「でもさあ、折角ニニャの姉貴が見つかったのに、この依頼を受けなかったらまた離れ離れになっちまうんだぞ」
「姉さんと……また。でも……」
ルクルットの言葉に、セリーシアは身体を震わせて呟く。ツアレを助けるために村を出た彼女にとって、再開した姉と再び離れ離れになる事は耐えがたい事だろう。しかし、だからと言って自分の都合のためにチームのメンバーを巻き込む事も、相当抵抗があるようだ。
「もう一つ確認させてください。ラキスケさんは王国に残って一体何をなさろうとしているのですか?」
「それに答えさせていただく前に……失礼、これで防音は大丈夫ですね」
ペテルの質問に対して、答える前にラキスケは懐から取り出した道具を発動させる。
すると、部屋の外の音の聞こえ方が遠くなったような気がしたようにペテル達は感じた。
それからラキスケは質問に対して答え始める。
「簡潔に言えば、八本指に対する報復です」
「報復……」
「そもそも俺が八本指に狙われるようになった切欠は、二年前にツアレを助けたことです。言っておきますが、俺はそのことに対して後悔なんて一欠けらもありません。ですが、これ以上関わり合いにならなければいいと考えた当時の俺の甘い判断の所為で、セリーシアは危うく死ぬよりひどい目に遭う所でした。八本指の行動次第では、皆さんも口封じをされていたかもしれません。だからこそ、二度とこういう真似ができないように八本指を徹底的に叩くつもりです」
ラキスケは当時のツアレの詳細をぼかしながら、過去にあった八本指との因縁とこれからどうするのかを伝える。
すると、漆黒の剣の面々はラキスケを心配して必死に止めようとし始めた。
「まさか一人で行くつもりですか!? 無謀です!」
「王国の暗部を牛耳っている裏組織を相手にするのは拙いって!」
「ニニャからは聞いたが、八本指と懇意になっている貴族も多くいるという話である!」
「そんな、姉さんを助けてくれた方が危険に晒されるなんて嫌です!」
漆黒の剣の面々の説得に、ラキスケは微笑みながら答える。
「ふふっ。皆さんが俺を心配してくれるのはとても嬉しいです」
「でしたら!」
「ですが、俺達に対して差し向けた刺客が返り討ちになったことを八本指が知ったからと言って、大人しく手を引くとは考えにくいんです。より強い戦力を投入してくるのか、それとも権力を利用してくるのか……。場合によっては俺が人間ではないことを理由に軍や冒険者に討伐させようとするかもしれません。負けるつもりは毛頭ありませんが、そのために無関係な周囲が傷つくのは、心にきますからね」
「決心は……変わらないんですね」
「ええ……俺たちの未来のためにも、八本指がのさばっているのは非常に困ると痛感しましたので。……それで、この依頼を引き受けてくれますか?」
「……結論はこの場で出しますので、チームのみんなと相談させてください」
ペテルはそう言って、ラキスケから少し離れて漆黒の剣の面々と相談し始める。
そして大凡10分ほど経過した頃だろうか。結論が出たのか、それほどペテルはラキスケの前の席に座り直すと口を開いた。
「決まりました。その依頼、漆黒の剣が引き受けさせていただきます」
「ありがとうございます。それでは組合の方には指名依頼を出しておきますね」
漆黒の剣の判断に、ラキスケは安堵した表情で謝意を伝えるのだった。
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漆黒の剣との話し合いの後、彼らには組合の建物の前にいるハムスケの所で先に待ってもらうように頼み、ラキスケが組合受付で指名依頼の手続きを終えた所で、モモンガとペロロンチーノが別の部屋から出てきた。
周囲の冒険者たちの視線がモモンガとペロロンチーノに集まる中、二人はラキスケを見つけると近づいてくる。
「お待たせしました、ラキスケさん」
「いや~、待たせちゃってごめんね~」
「いえ、こちらも彼らへの指名依頼の手続きを丁度終えた所でしたから。それでは二人とも、行きましょうか」
「はい」「うん」
そのままラキスケ達が外に出ていったのを確認すると、その場にいた冒険者たちは騒めき出した。
「亜人がこの都市で冒険者になるなんて、この都市じゃ今までなかったことだよな?」
「ああ。それに見た感じ、魔法詠唱者と
「なんでもあの奇妙な仮面をつけた魔法詠唱者の方は、巨大な魔獣を従えているって話だぞ」
「俺は昨晩偶々見かけたけどよ、あの深い英知を感じさせる瞳は相当な魔獣だって一目でわかるぜ」
「マジかよ。一体そんな立派な魔獣をどこで見つけたんだ?」
感嘆・瞠目・驚愕を秘めた会話が飛び交う中、ぽつりと呟いた男がいた。
「その魔獣は森の賢王だ」
森の賢王、それはトブの大森林を住みかとする伝説の大魔獣である。
冒険者たちがその言葉を発した人物の方を見やると、そこにはミスリル級冒険者チーム“クラルグラ”のイグヴァルジが椅子に座っていた。
イグヴァルジのチームはこの都市一番の薬師の孫であるンフィーレア・バレアレの依頼で昨夜戻って来るまでカルネ村へ向かう護衛を請け負っていた。
本来ならばこの都市で最高位であるミスリル級冒険者が引き受ける難度の依頼ではない。しかし、大凡10日ほど前にトブの大森林近郊で発生した大きな爆音を伴った謎の大規模な発光現象の影響で、トブの大森林の近くへは低位の冒険者は近寄らないようにという組合側からの要請があったことから、今までチームメンバーを喪ったことが無い実績を持つクラルグラに白羽の矢が立ったのだ。
「森の賢王だって! イグヴァルジ、お前何か知っているのか!?」
「さん付けしろよ、さん付け。少なくとも俺達がカルネ村に到着した時点で、森の賢王はモモンガっていう魔法詠唱者に懐いていたぞ。今はハムスケとかいう名前で呼ばれている」
「森の賢王が同行するくらいに懐くとは、一体何をやったんだ? ……それにしても、よくこの都市の検問で止められなかったなあいつら」
「俺はこの都市に帰る際に依頼人だけじゃなくてあいつらとも一緒になったんだけどよ、あいつらはガゼフ・ストロノーフの紹介状を持っている」
「ガゼフ・ストロノーフって言えば、近隣諸国最強と言われるこの国の戦士長じゃないか! 何がどうしてそんな有名人の紹介状が出てくるんだよ」
「そこまでは知らねえよ。他に分かっているのは、あいつらが言っていることだが遠い所から旅をしてきたってことぐらいだ。……昨日から俺もほとんど寝ていないから、今日はこれであがらせてもらうぜ」
イグヴァルジはそこまで言い切ると、もう話せることはないと立ち上がって欠伸をかみ殺しながら組合の建物を後にした。
イグヴァルジへの質問を終えても謎が尽きない未知の二人組への興味が飛び交う騒めきは、結局結論が出ないまま昼過ぎにはお流れとなった。
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ラキスケはモモンガとペロロンチーノ、漆黒の剣の面々を連れて街道を歩く。あまり広くない通りだが、モモンガの後ろについていくハムスケの威容に気圧された通行人たちが彼らを避けていくため、歩く邪魔になることはない。
始めは人間ではないペロロンチーノや知性のある大魔獣であるハムスケに怯んでいた漆黒の剣のメンバーも、話している内に打ち解けていっていた。
ラキスケがモモンガ達に等級についての話を聞いてみると、トブの大森林の主の一体であった森の賢王を従えている事実と、ズーラーノーン及び八本指の企みを阻止した功績から、冒険者に成りたてでありながら二人とも、近々何段階か飛ばして昇級することが決まったようだ。
「そういえば俺達はまだ冒険者としての正式なチーム名をつけていないけれどさ、漆黒の剣ってどういう由来で付けたチーム名なの? チーム名をつけるときに参考にしたくてね」
ペロロンチーノの言葉にルクルットが苦笑いを浮かべる。他の面々も似たような反応で、特にニニャは恥ずかしい記憶を突き付けられたのか顔を仄かに紅く染めている。
「ああ、それね。実は俺達がチームを結成した時にニニャが欲しいって言った伝説の武器から取ったんだ」
「ルクルット。若気の至りというものなのであまり言いふらさないでくれませんか」
「恥じることはないのである! 夢を大きく持つことは重要な事である!」
「ダインまで。勘弁してくれませんか、本当に」
漆黒の剣の面々がニニャに朗らかに笑いかけて、ニニャは転げまわりそうな雰囲気で恥ずかしがっている様子を見たモモンガは、ふと自分がギルド拠点のNPCとして作成した
(あるよなぁ。当時はカッコいいと思っていた内容が、後々見返すと恥ずかしくてたまらない事って。軍服は今でもカッコいいと思うけどさ)
「へえ。俺達ってこの辺りから遠く離れた所から旅してきたからさ、その伝説の武器ってどういう代物なのか教えてもらっても良いかな?」
「分かりました。漆黒の剣というのは十三英雄の一人で“黒騎士”と呼ばれる方が持つ四本の剣の事なんです。それぞれ異なる特殊能力を有した強力な魔法の武器といわれていて、闇のエネルギーを放つ魔剣キリネイラム、癒えない傷を与える腐剣コロクダバール、かすり傷でも死に至らしめる死剣スフィーズ、そしてどんな特殊能力を持つかも不明な邪剣ヒューミリスです」
ペテルが四本の剣の名前を挙げたところでラキスケがぴくッと反応する。
「なるほどなぁ。まるでカースドナイトの
「カースドナイト? 初めて聞きますが、どういうものなのでしょうか?」
「カースドナイトは呪いによって汚れた神官騎士とされる職業で、様々な呪いに苛まれる代わりに強力な力を得るって言われているんだ。その中にさっき話に出てきた剣の特殊能力と似たような
「なるほど。そんな職業があったなんて知りませんでした」
「ペロロンチーノ殿は物知りであるな!」
ペロロンチーノの説明に感心する漆黒の剣の面々。ペロロンチーノもドヤ顔で胸を張っている。
「とまあ、この四本の剣を発見するのを俺たちの第一の目標ってわけさ。伝説の武器本当に色々あるけれども、その中でも存在がしっかりと確認されている武器だしな。まあ、今も本当に残っているのかは不明だがね―」
「……あー、その武器のうち二本は誰が持っているか知っています」
バツが悪そうにラキスケが話した爆弾に、漆黒の剣の全員が弾かれたように勢いよく向き直る。
「だ、誰ですか!」
「うぉー! マジかよ! 半分はもう見つかってんのかよ!」
「むぅ。全員分行き渡らなくなったであるな……」
ラキスケは頬を掻きながら答える。
「えっと、一本目は魔剣キリネイラム。持ち主は王国のアダマンタイト級冒険者“蒼の薔薇”のリーダーを務めているラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ」
「うげぇ。最高峰であるアダマンタイト級かぁ。じゃあ仕方ねえか」
「それじゃあ、もう一本は……?」
「もう一本は腐剣コロクダバール。持ち主は……俺」
「「「「……はい?」」」」
目の前に目標としていた武器の持ち主がいると言われ、思考が停止する漆黒の剣の一同。
「伝説の武器を手にいれているなんて凄いじゃないですか、ラキスケさん。……ちょっと見せてもらっても構いませんか?」
「「「「お、俺達にも是非!」」」」
アイテムコレクターでもあるモモンガがまず食いついて、続いて漆黒の剣の面々もそれに追従する。
「良いですけど、目的地に着いてからでお願いしますね」
ラキスケは後で見せることを約束すると、再び歩き出す。
やがて空気に薬品や潰した植物の匂いが含まれる区画に到着すると、ラキスケは左右を見渡し始めた。
「えっと、確かこの辺りのはず……あった。あそこで待ち合わせすることになっているんだ」
ラキスケが指さしたのは店舗と工房が前後に並ぶ中でも最も大きく、そして工房に工房を継ぎ足し、さらにそこに工房を継ぎ足して建てられたような家屋であった。
ラキスケが入り口の扉を押し開けると、上に取り付けられていた鐘が来客を告げる音を大きく鳴らす。
「失礼します。マリナラさんと待ち合わせをしている者ですが」
入った部屋の中央には向かい合った長椅子が置かれ、そこには待ち合わせをしていたマリナラが老婆と少年──リィジー・バレアレとンフィーレア・バレアレの二人と熱心に話をしており、その脇で森妖の面々が立つ。そしてツアレがもう一人の少女──エンリ・エモットと一緒に話をしながら座っていた。
「お帰りなさい、ラキスケ様」
「ただいま、ツアレ」
立ち上がってラキスケに寄り添うツアレをラキスケは優しく抱きしめて、そのまま唇を重ねようとしたところで邪魔が入った。
「ラキスケさん? その行動は彼女のいない俺達を煽っているんですか?」
「PvPの申し出ならば受けて立つよ。俺とモモンガさんの二対一で」
モテない同盟のモモンガとペロロンチーノである。いつの間にかペロロンチーノも嫉妬マスクをつけているあたり、本気で怒っているわけではないが妙に芸が細かい。
「あ……ごめん。仕事明けの感覚でつい……」
「す、すみません。他の方がいるのにはしたない事をしてしまって」
二人は謝罪するが、互いを抱きしめている腕は放していない。
(いや、雰囲気が桃色になってるからまずは離れろよ……。っていうか仕事明けはああやってるって……)
モモンガとペロロンチーノは、かつてはモテない同盟を結んでいたラキスケの変わり様に驚きながら、同時にそう思った。
「姉さん……」
ニニャも行方を捜していた
「おやおや~。リイジーさんと有意義なお話をしていましたら、随分と熱々ですね~」
「ンフィーレアがここまでとはいかなくても、もう少し積極的になってくれると曾孫が生きている内に見られるかもしれんのにの」
「お、おばあちゃん!」
「ンフィーとはまだそう言う関係じゃ!」
「ほう、
リイジーの言葉にンフィーレアと呼ばれた少年と、エンリと呼ばれた少女が赤面する。
「この流れ、俺にもきっとチャンスが来る」
「そう思い続けて幾星霜。冬の時代は未だ終わらず。アラビータに先を越されたのはショック」
「おいこら」
「アラビータ、落ち着いて下さい。ジェノーベとヴァージリッコも仲間をそういう風におちょくらないで」
森妖の面々にも飛び火した辺りで、モモンガが咳払いして周囲の目を自分に向けさせる。
「……あー、恋愛事情は人それぞれですが、今はまずやるべきことを先に済ませませんか?」
「そうですね~。ラキスケさんから《
「あ、あはは……。重ねてごめん」
ラキスケは謝罪すると、名残惜しそうにしながらようやくツアレの身体を放す。
それから一通り自己紹介を行うと、それぞれの用事を片付けていく。
その際に、ンフィーレアから話を聞いていたリイジーがモモンガに赤いポーション──
するとリイジーは神の血と呼んで狂ったように笑いだし、どこで手にいれたのかを鬼気迫る勢いで聞き出そうとしたり、それが薬師にとってどれほどの価値があるのかを熱弁し始める。
さらには既に滅びた国という設定で誤魔化したユグドラシル跡地へ案内する様に要求し始めたので、最終的にモモンガが
その時のモモンガ曰く、
「負ける要素は一切ない筈なのに、あの剣幕に凄いビビッて精神安定化が何度も発動した」
とのことである。
マリナラは残る交渉事が終わる数日後にエ・ランテルを出発して帝国に戻る予定で、その時にツアレと漆黒の剣の面々も同乗することになった。
他にも大凡の用事を片付けたところで、モモンガや漆黒の剣の面々と交わした約束も果たすために、他の人たちに取り出す様子が見えないように背を向けてからアイテムボックスにある腐剣コロクダバールを取り出して一同に見せる。
「これが、腐剣コロクダバール……!」
「なんとも禍々しい剣であるな!」
「僕たちが探し求めていたうちの一振りが目の前にあるだなんて」
「うひゃー、確かにこんなので斬られたらただじゃ済まなさそうだ」
汚泥を煮詰めて固めたような細身の漆黒の剣を見た漆黒の剣の面々からは、畏怖を伴った感想が漏れ出る。
「薬師としては、傷を癒せなくする武器というのはありがたくないですね……」
「一応、呪いの類だから解呪できれば治療はできるんですけどね」
「……一応確認しますけど、解呪にはどの程度の力量が必要ですか?」
「大凡だけども、治療と解呪に特化した神官で第五位階相当の実力は必要かな?」
「それって英雄の領域じゃないですか!? 蒼の薔薇のリーダーでもできるか怪しいですよ!」
ンフィーレアは王国のアダマンタイト級冒険者でも解呪できるか分からない、腐剣コロクダバールが齎す呪いの恐ろしさに驚愕する。
同じようなことを言いそうなリイジーは、モモンガから買い取ったポーションを詳しく調べるために既に実験室へと籠っているため、この場にはもういない。
「えーと、どれどれ。《
「えっと……モモンガさん? 何か分かったのですか?」
モモンガは腐剣コロクダバールを調べるために魔法を使うと、頭の中に浮かび上がってきた情報に感心している様子だ。
「どうやらこの剣は他の暗黒剣を全て揃える事で、より強力になるようです」
「この武器、さらに強くなるんですか!?」
「ええ、この剣の場合は呪いの種類と効力が強化されるようですね。おそらくですが、一つ一つの武器に組み込める容量の限界を補うためにシリーズアイテムを別々の武器に組み込んで、それらを関連付けることで一つの武器にまとめた際の効力を条件付きで発揮できるようにしたのでしょう」
「なんか良く分からないけど、全部揃うともっと凄くなるっていう事だけは分かった」
「そろそろしまいたいけど、もういいかい?」
ラキスケは腐剣コロクダバールを一通り見せ終わると、懐から
見た目よりも多くのものを収納することができる魔法の背負い袋の存在はペテル達も知っているが、中々に高価な品なために実物を見るのは初めてのようで、その様子をまじまじと見つめていた。
「それでは~、皆様も昨夜から忙しかったでしょうし、そろそろお開きといたしましょうか~」
「そうだね。僕もおばあちゃんと一緒に神の血のポーションを調べなくちゃ」
「もう、ンフィーってば。本当にポーションの事になると周りが見えなくなるんだから。しょうがないわね」
昨夜からあまり寝ていないにもかかわらず、ポーションの研究に勤しもうとするンフィーレアに、エンリは口では呆れながらも優しい表情で見つめていた。
「ピュアな恋愛空間は心に沁みるんじゃー」
「激しく同意」「こんな恋愛してみたい」
「「「……同士よ!」」」
その様子を見たペロロンチーノは身体をくねらせ悶えている。ジェノーベとヴァージリッコも同意して、三人の間に奇妙な連帯意識が芽生えていた。
その様子を見たラキスケは、ユグドラシル時代のペロロンチーノの性癖とのずれを感じ、モモンガに尋ねた。
「ペロロンチーノさん、以前より初心くなってない?」
「なんでも、大作になると読んで購入したエロゲが寝取られEndのオンパレードだった上に、寝取られるヒロインの容姿がシャルティアに似ていて声を当てていたのが茶釜さんだったようで……。それ以来、純愛物を欲しているそうです」
「あぁ……、それはきつい」
ペロロンチーノの性癖が変遷した事情にラキスケは同情する。
実の姉が好みの容姿をしているヒロインの声を当てているだけでもきついのに、それが何度も寝取られるとなるとそのショックは計り知れないだろう。
「まあもう少しすれば戻って来るでしょう。……ラキスケさん、例の件の話でこの後よろしいですか?」
モモンガの例の件とは、墓地では一旦後回しにしていた、自分たちがこの世界にやってきたことについてだ。
ラキスケとしても折を見て二人とは話し合おうと思っていたので了承する。
「ええ、良いですよ。それで俺達だけになれそうな場所に心当たりはありますか? 俺達が宿泊している宿屋──黄金の輝き亭は個室もありますけどかなり値段が張りますし、そもそも王侯貴族とか大商人御用達の宿屋だから、これ以上人間以外の他種族を入れさせてもらえるか……」
「……すみません。他の場所を探そうにも、昨夜この都市に来たばかりでどこに何かあるのかほとんどわかりません」
「それでしたら~、私が使っている馬車を利用してはいかがでしょうか~?」
話し合いの場所に困っていたモモンガ達とラキスケだが、そこでマリナラが助け舟を出した。
「えっ、良いんですか?」
「ラキスケ様のご友人という事ですし、業務提携したリィジーさんに有意義な物を売ってくださったので、今回は特別に無償でお貸ししますよ~」
「ありがとうございます。それではそろそろ……」
「そうですね、そろそろ行きましょうか」
「ええ、分かりました」
「それじゃあツアレ、そろそろ──」
「──エンリさん、ンフィーレアさんと頑張ってね。はーい」
ラキスケはツアレを呼ぶと、エンリと何かを話していたツアレは最後に一言添えてからラキスケに近づいて、彼の腕に抱き着く様に体を絡めた。
マリナラも森妖の面々を連れて宿に戻る準備を始めている。
モモンガとペロロンチーノの他に、ジェノーベとヴァージリッコからの“リア充もげろ”という思念を込めた視線を、ラキスケは努めて無視するのであった。
今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか
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該当する章の最新話(今のまま)
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新たに最新話の章を設けて、そこに投稿