※この作品はR-18です。

【R-18】男淫魔と元奴隷メイドの情愛   作:エヌット

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第十五話 ※エロ無し

 翌朝、蒼の薔薇の面々はガゼフやモモンガと共に王城ロ・レンテに朝一番に登城した。ラナーに面会して八本指への対処に新たな協力者ができた事と、彼らが六腕を全滅させるほどの卓越した実力者であることを伝えるためだ。

 この時、人間の姿をしていないペロロンチーノとハムスケ、そしてまだモモンガが魔法で作成した全身鎧(フルプレート)を脱いで本当の姿を見せるわけにはいかないラキスケはイビルアイの監視の下、門前にある建物で待機することとなった。

 

「モモンガさんに押し付ける形になっちゃったけど、大丈夫かなぁ」

「本当は発案者の俺が行くべきなんですけども、八本指を潰すまでは正体に気づかれる訳にはいきませんからねぇ」

「殿ならば大丈夫でござるよ!」

 

 三者の雑談をイビルアイは素顔を隠す仮面の下で注意深く観察する。

 ワーカーだがバハルス帝国の鮮血帝ジルクニフとも繋がりがあるとも噂されているラキスケには、もう一つ見過ごすことが出来ないある疑惑がある。

 それは100年ごとにこの世界に現れて多大な影響を与える存在、”ぷれいやー”だ。

 そんなラキスケとかつて同じ組織の仲間だったというモモンガとペロロンチーノの事も、イビルアイは強く警戒している。

 

「(もしもこいつらが”ぷれいやー”の場合、100年の一度の揺り戻しが今回も起きたことになる。たとえ”ぷれいやー”ではなくその血を引く神人だったとしても、その本質が危険ならばツアーの奴に伝える必要がある)」

「ん? 俺達のことをじっと見ているけど、イビルアイちゃん──」

「(拙い、気づかれたか!?)」

「──ひょっとして、一緒におしゃべりしたかったりする?」

「……は?」

 

 こちら側に残った真意を見抜かれたかとイビルアイは警戒したが、ペロロンチーノの見当違いの言葉に呆気にとられる。

 

「いや~。イビルアイちゃんみたいなかわいい子とおしゃべりするのは、俺は大歓迎だよ」

「いや待て、どうしてそうなる。そもそも私はお前に素顔を見せたりなんてしていないだろう」

「仮面に付与している効果か何かで声質を分かりにくくしているみたいだけれども、声優をやっている姉ちゃんの声を常日頃から聞いていた俺には、イビルアイちゃんの本当の声がどういうのか簡単に分かるよ。声質と体格から想像するに、肉体的には大凡10代前半くらいだよね? それから──」

「……ひぇっ」

 

 熱く語り始めたペロロンチーノに対し、イビルアイは背筋がぞわっとするような、恐怖とも異なる寒気を感じて小さく悲鳴を上げる。

 リグリットから泣き虫だとか散々言われていたが、悲鳴を上げるのは実に200年ぶりだ。それも魔神との戦いではなくて只の雑談で悲鳴を上げたことなど今まであっただろうか? 

 未知の感覚に震えるイビルアイの意識を現実に戻したのは、ペロロンチーノの頭に叩き込まれたラキスケのチョップだった。無論、全力ではないが、それでもガントレットを嵌めた腕での一撃はペロロンチーノの言葉を遮るには十分な衝撃を与えたようだ。

 

「あだっ!」

「ペロロンチーノさん……ストップです。傍から見たら、完全に事案ですよ」

「まって!? イエスロリータ、ノータッチは守っているから! イビルアイちゃんからは合法ロリのオーラを感じただけだから!?」

「ペロロンチーノ殿は時折、度し難い事を言うでござるな~」

「ハムスケぇ……」

 

 チョップされた辺りを両手で押さえてペロロンチーノは弁明する。

 そんな彼のある言葉からイビルアイは、かつて十三英雄のリーダーと同じ”ぷれいやー”だった一人に揶揄われた時の事をふと思い出す。

 

 ──それにしても、あの国堕としの正体が、合法ロリの吸血鬼(ヴァンパイア)だったとはねぇ。

 

 彼は亜人だったために十三英雄の伝承には残されることはなかったが、その強さと知識には大いに助けられたものだ。

 確か合法ロリというのは、見た目は幼子だが年齢は大人の女性に対して用いる言葉だったか? 

 遠回しに幼子だと言われている事に、イビルアイは仮面の下でムッとする。確かにこの身はあの出来事で200年以上前から12歳で止まっているが、国堕としとして伝説にすら謳われる女。舐められるのは気分が良いものではない。

 というか、どうして英雄譚(サーガ)や演劇で扱われる国堕としは、妖艶な身体の美女という設定で十三英雄のリーダーとの悲恋が描かれているんだ。

 以前ティアがどこかから持ち込んだ艶本でも、国堕としはその美貌に嫉妬した魔女によって吸血鬼(ヴァンパイア)に堕とされた亡国の姫君という設定で、種族の垣根を超えて十三英雄のリーダーと一夜の過ちを侵すという内容があった。

 伝承と本来の容姿が異なるのは正体を隠す上では有用だが、それにしても下心と恋愛脳に満ちた設定に改変するのは如何なものか。そもそも、彼は大切な仲間であったが恋愛感情など一切ない。

 思い出したらなんかムカムカしてきた。どうしてアンデッドの肉体だというのに、こんな事で苛つかなければならないんだ。

 

「……っはぁ。何を私は昔のことを思い出しているんだ。あれは既に過ぎ去った過去だ」

「ん? イビルアイちゃん、なんか言った?」

「なんでもない」

「そっか、じゃあ聞かないでおくよ。……そういえばさ、確か四大暗黒剣の内一本を蒼の薔薇のリーダー、ラキュースさんが所有しているって話があったよね?」

 

 イビルアイの呟きを、ペロロンチーノは詮索せずに流す。代わりに十三英雄の一人である暗黒騎士が所有していたという四大暗黒剣の話を持ち出す。

 

「ええ。エ・ランテルでそういう話をしましたね。それがどうしました?」

「我らのリーダーが魔剣キリネイラムの事だな。それがどうした?」

「ラキスケが持っている腐剣コロクダバールをモモンガさんが調べた時に、四大暗黒剣は種類を揃えるほど強力な効果が使えるようになるって分かったけど、呪いの種類と効力が強化されるコロクダバールに対して、キリネイラムはどんな風に強化されるのかなって気になってね」

「んー……エネルギー放出系の能力だから、出力と効果範囲が広がるとかじゃないかな?」

「……以前《道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)》で調べたが、四大暗黒剣にそんな効果が隠されていたなんて初めて知ったぞ」

「そこは《道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)》と《道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)》の効果範囲の違いかな? 《道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)》だと分からない情報って、割とあるし」

「そうそう。一見有用そうに見える装備品やマジックアイテムでも、《道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)》で調べると隠されていたデメリットが大きくて使い物にならないっていうパターン、結構ありますしね」

「そうなってくると、残り二本の暗黒剣がどんなふうに強化される武器なのかも気になってくるな~」

「死剣スフィーズは名前の響きや分かっている効果から即死確率の上昇だとして、効果が分かっていない邪剣ヒューミリスはちょっと予想がつかないですね」

「カースドナイトの職業が使えるスキルとかが基になっているだろうから、装備品の破壊効果とかかな?」

「カースドナイトと言えば、帝国の知り合いにその職業を持っている人がいるんですよ」

 

 四大暗黒剣の話題から始まった雑談は、ラキスケの発言で別の話題へと変わっていく。

 

「カースドナイトって前提職が60レベル分必要ですけど……あぁ、この間のヘカトンケイルみたいに、正規の方法じゃないのか」

「ええ。話だとモンスターに死の際の呪いをかけられた所為で取得したみたいです。本人が望んだわけじゃないから何とかしてあげたいんだけどねぇ」

「使う武具がすぐ壊れて困っているみたいな感じ?」

「いや……。そっちの方は問題ないけれども、顔に呪いが出ちゃってね」

「日常生活が不便なパターンかぁ……。職業に由来する呪いって、特殊なアイテムとかじゃないと緩和は出来ても封じ込められないからなぁ。……まてよ、アレならばひょっとしたら」

「何か当てがあるんですか?」

 

 考え込んだペロロンチーノが何か思いついたようで、ラキスケはそれが何かを尋ねる。

 

「うん。実際に通用するかは分からないけど、本来のカースドナイトの呪いに戻す分には何とかなるかなって」

「そうですか。まあ、機会があったら彼女に話を通しておきますよ」

「帝国に立ち寄ることがあったらよろしくね~……って彼女?」

「そういえば言っていませんでしたね。その人は帝国の女騎士なんですよ」

「……浮気?」

「断じて違います」

 

 彼らがプレイヤーなのかを見極めようとイビルアイは観察するが、幾つかの情報を得たもののそれ以上に話が逸れていくことの方が多く、途中で何度も打ち切ろうかという考えが頭によぎるほどであった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 ペロロンチーノたちが話に花を咲かせている頃、王城内の一室では、自らの装備一式をまとめた袋を床に置いた蒼の薔薇一行が、ラナー第三王女にモモンガを紹介し終えたところだ。

 モモンガは普段のままで仮面も外していない。そんな恰好が許されているのは、同行したガゼフが戦士長として責任を持つと言ったためだ。

 

「──あなたが戦士長様に助力して下さった、魔法詠唱者(マジック・キャスター)ですね」

「はい、戦士長殿には微力ながら協力させていただきました。今はその時に戦士長殿と共闘した森の賢王ハムスケと、私の友であるペロロンチーノと共に旅をしております」

「まあ! 森の賢王と言えば、以前クライムが話してくれた伝承にある、トブの大森林に住まうという伝説の魔獣の事ですね。そのお話では、白銀の毛皮と蛇の様な尻尾を持つ四足獣だと言い伝えられているそうですが、本当なのでしょうか?」

 

 ラナーの後ろに控える少年と青年の丁度境目の様な男──クライムの表情が、ラナーの口から自らの名前が挙がった時により一層固まる。

 モモンガから見たクライムは、とても真面目だが緊張している新入社員の様な雰囲気を感じた。彼が漂わせる重い空気は、まるで失敗が許されない初めてのプレゼンに挑むかのようだなと、モモンガは思う。

 それにしても、聡明で平民を慮った政策を立案する優しい姫だとは聞いていたが、どうやら好奇心も強そうだ。

 

「ええ。城内に入れてしまうと城の者たちがパニックになると考えて、ハムスケには門前の建物で待ってもらっています」

「ラナー。森の賢王のお話は私も聞きたいけれども、今は本題に早く入りましょう」

「明らかになっている八本指の拠点についてね。元々の計画では、八本指最強戦力の六腕が王都にいない内に襲撃する手筈になっているけれども……ひょっとして、彼らも協力してくれるの?」

「正確には、私の友であるラキスケさんに危害を加えようとした者たちを返り討ちにしたら、それがたまたま八本指の六腕だったという話ですけどね。どこに八本指の拠点があるかなどの情報はさっぱりでしたので、蒼の薔薇の皆さんが八本指と敵対している事を知ることが出来て、本当に良かったです」

 

 モモンガの言葉に、クライムは目を見開く。六腕は一人一人がアダマンタイト級冒険者に匹敵すると言われている戦闘集団だ。白金級冒険者のプレートを首から下げているモモンガでは、本来ならば勝算などないはずの相手なのだ。仮に相性が良い相手だったとしても、誰か一人に勝てるだけでも大金星と言ってもいい。

 

「そ……それは六腕の誰かを倒したという意味でしょうか?」

「あー……言葉が足りませんでしたね。実際に戦ったのはハムスケとラキスケさんの二人ですが、六腕は六人全員打倒しました」

「ぜっ……全員!!!」

 

 思わず口に出してしまったクライムに対するモモンガの返答に、クライムは思わず絶句した。

 

「ラキスケは帝国最強のワーカー」「今は正体を隠すために全身鎧(フルプレート)で姿を隠して偽名を使っている」

「帝国の……ですか。あの鮮血帝や帝国の貴族からの依頼を受けてという可能性はあるのではないしょうか?」

「そういう依頼を受けている可能性は否定できないが、少なくとも理由としては二番目三番目になっているぜ。あいつは惚れた女のために八本指を潰そうとしているんだよ。童貞、お前さんだって、王女さんに身の危険が降りかかってきたら、勝てるかどうか考えないで何としても守り抜こうとするだろう?」

 

 クライムがラキスケの素性を聞いて心配するのに対して、ガガーランはクライムのラナーに対する忠誠・思いを例に挙げて説明する。

 それは遠回しにクライムはラナーに惚れていると言っているようなものであった。

 

「クライムなら大丈夫。どんな時でも私を必ず守ってくれます」

「ラナー様……。……っは! 申し訳ございません。お話し中に突然割り込んでしまって!」

「大丈夫よ、クライム。貴方が聞いてくれたおかげで、作戦の後の懸念だった六腕との全面対決が無くなったことが分かったし、彼らの実力が信用できることも分かったもの」

「彼らの話を信じるならば、六腕はズーラーノーンと結託してエ・ランテルで邪悪な儀式を行おうとしていた可能性もあるらしいわ。アンデッドであるデイバーノックを六腕に引き入れる連中だから、信憑性はそれなりにあると思うの」

「でもそうなると、今夜にも早急に計画を実行する必要があるわ。ズーラーノーンとの繋がりが六腕あるいは警備部門の範囲で収まっているならばともかく、もしも八本指全体の総意だったとすれば、計画が頓挫したことにすぐ気がついてもおかしくないわ。六腕がもういないならば、拠点を一つずつ順番に襲撃するのではなくて、分散して同時に襲撃して、一気に落とすことも十分に可能だと思うの」

 

 ラナーが修正した計画の内容に、静まり返る。

 この作戦に従事するのは、元々は蒼の薔薇のみだった。そこにモモンガ達とガゼフも参加することになったが、それでも明らかになっている八つの拠点を全て同時に襲撃するには、手が足りるのか不安が残る。

 静寂を破ったのは、モモンガであった。

 

「あー、今回の作戦にあたって、対象に加えて欲しい所があるのですが、よろしいでしょうか」

「八本指が関わっている重要な場所であれば構いません。今回が大掃除のチャンス。この機会を逃せば王国が自力で立て直せる好機は失われてしまうかもしれませんから。それでその部門はどこなのですか?」

「おそらくは奴隷部門が運営していると思われる、悪辣な娼館です」

「ラナー。彼が言っている娼館って、ひょっとしてまだ正確な場所は分かっていない例の娼館じゃないかしら?」

「かもしれません。もし違っていたとしても、放置する理由がないわ」

「ありがとうございます。私の友も、最悪でもそこだけは完膚なきまでに潰さないと気が済まないと言っていましたので」

 

 ほっとしたモモンガは感謝を述べながら安堵する。

 それを聞いて蒼の薔薇の一行は、ラキスケの恋人がどういう境遇の女性だったのかを大まかに察した。

 

「でも、王女さんよぉ。モモンガ達やガゼフのおっさんが加わったとはいえ、襲撃箇所がさらに増えて手は足りるのかよ?」

「単純な数だけならば私の召喚魔法で増やすことはできますが、さすがに都市内でモンスターを召喚するのは拙いですよね?」

「ええ。そうなると森の賢王を単独で動かすわけにもいかないものね。そういう意味では亜人であるペロロンチーノさんも誰か付いた方が良いかしら?」

「私たちが入手した情報にある八本指の拠点は八か所。そこに娼館を追加すると、九か所になる」

「私たちが全員別々の拠点を襲撃して、森の賢王とペロロンチーノは誰か一人ずつ付けるとした場合、同時に襲撃できる箇所は八か所まで。一か所を見逃すことになる」

 

 ガガーランの懸念を切欠に、モモンガの提案を受け入れて増えた襲撃箇所を含めると、全てをカバーしきれないことが明らかになる。

 

「クライムも含めれば数は揃うけど、彼だけで向かうなんて自殺行為よねぇ。だからと言って、森の賢王やペロロンチーノとは初対面だから組ませるわけにもいかないし」

「力が足りず、申し訳ありません」

「ごめんなさい、クライム。そういうつもりで言ったのではないの」

「そうなると、娼館は後回しにして他の拠点への襲撃が終わってからにするか? でも、それで取り逃がしたらラキスケさんがブチギレかねないしなぁ……」

「それでしたら、信頼できる貴族の力を借りようと思います。たった一人だけ信頼できる貴族を存じておりますので」

「そんな貴族を知っているのですか、姫様」

「はい、戦士長様。貴方にとってはとても意外に思われる方ですが、レェブン候をこちら側に付けようかと思います」

「レェブン候ですか!?」

 

 ラナーの口から出た貴族の名に、ガゼフは思わず声を上げる。

 確かにレェブン候は現状を打開するのに求める人物像に当てはまる。しかしそれはもっとも重要な信頼性という一点を除いた話だ。

 

「確かに候直轄の親衛隊はかつて高位の冒険者だった者たちですから、戦力としては期待できるでしょう。ですが、候は自らへのメリットを求めて王派閥と貴族派閥を蝙蝠のように動く男です。八本指とのつながりを持っていてもおかしくはないのではないでしょうか?」

「ええ。確かにレェブン候は周囲にそう思われるように振る舞っております。ですが王派閥を陰で纏め、王国を二分するような内紛を幾度も阻止してきた功労者でもあるのですよ」

「なっ! それは本当なのですか!? 確かに、言われてみれば。いや、しかし……」

 

 ガゼフの否定的な意見に、ラナーは微笑みを絶やさないまま答える

 一方のガゼフは幾つか心当たりがあるようだが、それでも長年考えていたレェブン候のイメージとのギャップがあり、心の底から信じ切ることはできていないようだ。

 

「はい、今回の計画が無事に終わったら、お父様と私と一緒にレェブン候に尋ねてみてはいかがでしょうか?」

「……畏まりました」

「そういう訳で、クライム。レェブン候を呼んできて。つい最近の会議にいらしていましたので、まだ王都内にいらっしゃるはずです。八本指の六腕がすべて打倒されたという話をすれば、会ってくれるはずだから」

 

 

 ────────────────────

 

 

 蒼の薔薇の一行の、レェブン候が来るのは早くてもお昼ごろにはなるだろうという予想を裏切って想定よりも早くやってきたレェブン候と、同伴してきた小太りの男──第二王子のザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフに、一行は驚きを隠せなかった。

 ザナックの提案で三人だけで話すことがあるために一旦は隣部屋に移ることになった蒼の薔薇一行とクライム、モモンガとガゼフは頭を下げてから各々の荷物を抱えて隣部屋へと移動する。

 

「先ほどの話では、レェブン候はかなり力のある大貴族だと聞いていましたけど、フットワークも軽いですね」

「ああ、候程の大貴族となれば、朝から他の貴族との面会などの予定が多岐にわたってあるはずだ。陛下直属の命であればともかく、姫様は大きな権力をお持ちでない方だから、候にとっての優先順位は低い筈なのだが……」

「私も驚いたわ。レェブン候には良いイメージがなかったけれども、ラナーの言葉が本当ならば、王国を存続させている功労者という事になるもの」

 

 モモンガの呟きに、ガゼフとラキュースは自らが抱いていたレェブン候のイメージと、ラナーが話した内容のギャップに戸惑う。それだけレェブン候が周囲に持たれているイメージは良いものではなかったのだ。

 

「やはり……姫様の仰ることは本当なのだろうか。だとしたら、俺は候に対して不敬な念を抱いていた事になる」

「相手を見る上では第一印象ってかなり大きいですからね。それも、周囲にそう思われるようにワザと振る舞ってきたとなれば、気づかなかったのも仕方ないのではないでしょうか? 私だって仮面で素顔を隠した魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。道中でガガーランさんと出会っていなかったら、怪しまれてこうして参加できていなかったかもしれませんし」

「ウジウジしていても仕方ねえさ。今回の作戦を無事に終えたら、王女さんが面と向かって話す機会を作ってくれるんだろう? だったら、その時にはっきりさせればいいんだよ」

「さすがは兄貴。漢らしい」「性別間違えて生まれてきている」

「おいこらてめえら」

「ティア、ティナ。ガガーランを茶化さないの。ラナーの交渉が上手くいってくれると良いんだけれども、あの子って根回しとかがとても苦手なのよねぇ」

「もしもダメだったら、転移魔法を駆使しての過密スケジュールも考えられるのか。そういう時に限ってイレギュラーが起きやすいから、できれば余裕を持って行動できるようにして欲しいや」

「わかる。息抜きに小さい子と戯れたい。クライムは大きくなり過ぎだから論外」「この間鬼ボスが組んだスケジュールは殺人的だった。ご褒美に鬼ボスの身体払いを所望」

「二人とも……」

 

 堪えてはいるがこめかみに青筋を立てているラキュースの声は、弱い者であったらばそれだけで委縮させてしまいそうな凄味があった。

 ガゼフとクライムも、ティナとティアの性癖の発露に顔を引きつらせて困り顔となっている。

 その様子を見たモモンガはふと思った。蒼の薔薇の人たちって、個性豊かだなぁ……と。

 




当初は八本指の拠点を襲撃するところまでで一話分の予定でしたが、文字数が膨れ上がてしまうので二話分に分割しました。

今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか

  • 該当する章の最新話(今のまま)
  • 新たに最新話の章を設けて、そこに投稿
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