※この作品はR-18です。

【R-18】男淫魔と元奴隷メイドの情愛   作:エヌット

27 / 39
第三話「トブの大森林 前編」

 モモンガ達がカルネ村に到着した翌朝のこと、大人の村人たちが畑仕事に出た村の中央にある広場として使われているその場所に、村の子供たちが楽しげな声を出して集まっていた。

 子供たちの視線の先にある、村の行事等で使用されるちょっとだけ高くなった木製の質素な台座に、ペロロンチーノが子供の一人を肩車して立っていた。

 

「よーし、しっかり掴まってるんだぞ」

「わかったー」

「そーれ!」

 

 ペロロンチーノが翼を羽ばたかせて少しだけ宙に浮くと、立っていた台座から周囲の子供たちに見えるように小さく円を描きながら地表スレスレをゆっくりと飛び始める。

 

「すげー!」「ほんとに飛んでる!」

 

 子供たちの歓声にペロロンチーノは再び台座に戻ると、肩車をしていた子供を台座に降ろす。

 

「ありがとー、ペロロンチーノおにいちゃん」

「よしよし、今度はどの子が飛んでみたいかな?」

 

 降りた子供に代わって次にペロロンチーノに乗ろうと子供たちが手を上げる。

 

「こんどはおれがのりたい!」「つぎはあたしー」

「それじゃあ次は……「ここに居ましたか、ペロロンチーノさん」……っあ、モモンガさん」

「森に異常がないか見に行こうって言ったのはペロロンチーノさんじゃないですか。もう時間ですよ」

「おっと、もうそんな時間だったか。みんな、ごめんな。おにいちゃん、これから魔法使いのお兄ちゃんと一緒に森の様子を見に行ってくる約束をしていたんだ」

 

 子供たちと遊ぶのに夢中になっていたペロロンチーノは、子供たちに謝りながら台座から降りる。

 

「えー、もうおわりー?」「まだ肩車してもらってないのに―」

「大丈夫。いい子にしていたら、またやってあげるから」

「やくそくだよー」「気をつけてねー」

「ああ、約束だ。危なくなる前に戻って来るから大丈夫だよ。それじゃ、行ってくるね」

 

 手を振る子供たちを背中にペロロンチーノはモモンガと合流する。

 二人は森へ向かって歩きながら小声で話し出す。

 

「それにしてもペロロンチーノさん、もう子供たちに懐かれていますね」

「これでも俺、現実世界(リアル)では保育士をしていたんですよ」

「えっ、ペロロンチーノさんって保育士だったんですか?」

「ええ、現実世界(リアル)の子供と違ってこの世界の子供たちは凄く素直ですからやりがいがあって楽しいです」

「なるほど……その割には自作NPCには割とエグイ設定をこれでもかと詰め込んでいましたよね」

「言っておくけど、エロゲー・イズ・マイライフは二次元だからこそ公言しているものだからね。性癖の対象は愛でるものであって辱めるものじゃありませんから。特に現実世界(リアル)に性癖を持ち込んで一方的にぶつけるのはNGです」

 

 もしもどこかに居たら今頃くしゃみをしていそうな某吸血鬼に突き刺さる話だ。

 そんな雑談をしながら森の手前に到着する。

 

「さて、ここからは真面目にやらないとな」

「森の異変が俺達で対処できる範疇で済んでくれていると良いんですけどねぇ」

 

 そう言って、二人は鬱蒼と茂る森の中へと入っていった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 人類が認識しているわけではないが、トブの大森林は東・南・西の三つに勢力が分かれている

 カルネ村が近い南側を森の賢王が、そこから西側を西の魔蛇が、そしてバハルス帝国側に張り出した東側を東の巨人と呼ばれるモンスターが縄張りとしているのだ。

 本来ならば互いの存在が抑止力となって均衡が保たれるのだが、あることが原因でその均衡は崩れさった。

 そしてその日カルネ村に比較的近い、しかし人が立ち入ることが滅多にない所で人知を超えた戦いが繰り広げられていた。

 

「ぐおおおおおおおお!!!」

 

 トロールの亜種であるウォー・トロールにして、東の巨人と呼ばれるグによって、人間が扱うそれよりも巨大な三メートル近い大きさのグレートソードが振り下ろされる。その一撃は直撃すれば優秀な戦士でも一撃で屠りかねないほどの重さを備えたものだ。

 振り下ろされた先にいるのは、森の賢王と呼ばれる白銀の毛皮と蛇の尻尾を持つ四足獣だ。

 

「なんのおおお!」

 

 森の賢王はその巨体に見合わぬ俊敏な動きでグの振り下ろしを躱すと、硬質な蛇様な鱗の生えた尻尾をグの頭部に叩きつけてグの頭部を一撃で陥没させる。

 普通の生物ならば既に絶命している致命傷のはずだが、異常な再生力を誇るトロール種の中でも突出した筋力と再生力を誇るグにとっては一時的に視界がつぶれる程度にしかならない。実際、潰れた頭部は見る見るうちに元に戻っていく。

 

「頭を潰してもダメでござるか。ならば全身をバラバラにして……っとおぅ!」

 

 再生中のグに追撃を仕掛けようとする森の賢王だが、周囲にいる他の三体のトロールたちが手に持った棍棒で殴りかかってきてそれを許さない。

 

「ふぁふぁふぁふぁ! 哀れだな、森の賢王よ! お前には手下もいない、名前もない。そんなお前よりも、どっちもあるこの俺様、グ、の方が強いという事だ!」

「ならばこれでどうでござる! 《盲目化(ブラインドネス)》」

 

 嘲笑するグに対し、森の賢王は身体にある紋様の一つを発光させて魔法を発動させる。

 

「ぐわああ! 目が見えん! どこだ! どこにいる!」

 

 視界を闇に閉ざされたグは、でたらめに剣を振り回す。彼が冷静であればトロール種の鋭い嗅覚である程度は獲物の位置を割り出すこともできるが、自尊心の高さから怒りが先立ってしまっている。

 そうしている内に森の賢王はグの様子が暴れ始めて慌ててばらばらに離れる他のトロールを先に仕留めにかかる。

 他の二体から離れた一体に狙いを定め、まずは尻尾による一撃を加える。パァンと弾ける音と共にトロールの頭部が吹き飛ぶ。吹き飛んだ頭部が再生する前に接近し、前足で頭部があったところを抑えつけながらトロールの腹部に噛みつき、引きずりながらその場を離れた。

 暴れるグが邪魔になって他のトロールがすぐには此方に来られないのを確認すると、森の賢王は鋭い爪がある前足で胸部から腹部を引き裂いて生物の生命維持に必要になる内臓器官を次々と抉り出し、バラバラにぶちまけていく。

 再生しようとする箇所をその都度潰し、再生力の限界を超えて動かなくなったトロールの肉片を簡単な毛繕いで落としながら森の賢王は考える。

 

「(まずは一体。そろそろ《盲目化(ブラインドネス)》の効果も切れる頃でござるな。このまま一旦逃げるにしても、このままではあのグという亜人がのさばって落ち着いて眠ることもできないでござる。せめて追い出さねば……。もし同じ手が通じるならば残る二体の手下も同様に屠って一対一に持ち込むことができるが、さすがにそんなに簡単にはいかないで──)ゲボゥ!」

 

 グをどうにかする算段を考えていると、森の賢王の横っ腹に巨大な何かが勢いよくぶつかってきた。怒り狂ったグが木を薙ぎ倒してそれを投げつけてきたのだ。

 金属のように固くしなやかな毛皮のおかげで見た目は大きな怪我はないが、呼吸が若干苦しくなっている。

 

「見つけたぞ! 臆病者の分際で俺を煩わせるな! 黙って喰われろ、森の賢王!」

「ゲホッゲホッ! 命の奪い合いをしている時に考え事とは、某もこやつを甘く考えていたでござるか! ゲホッ!」

 

 咳込みながら森の賢王はグの方に向き直ると、グの取り巻きである他の亜人の姿が見えないことに気づく。

 配下がやってこないことを不審に思ったのかグが振り向くと、グの背後から配下のトロールたちの悲鳴と、それとは違う殺気を撒き散らすような空気をびりびりと振動させる咆哮が聞こえた。

 程なくしてトロールの叫び声が聞こえなくなり、茂みをかき分けて現れたのは、血に染まった剣を握るアンデッドの騎士であった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 森の主たちの激闘から時間を少々遡り……。

 モモンガとペロロンチーノは歩きながら、今日トブの大森林で遭遇したモンスターについて会話する。

 

「なんだか昨日と比べて、森の動物たちが騒がしいですね」

「ええ。今の所は俺たちに危害を加えられるモンスターとは出会っていませんけど、昨日よりも明らかにモンスターと出会う頻度が増えています」

「今日だけで狼(ウルフ)に悪霊犬(バーゲスト)、ボガードにバグベア。そしてついさっき遭遇した人食い大鬼(オーガ)とトロール。俺たちにとってはなんてことないけど、カルネ村に来ていたら大惨事でしたよ」

 

 カルネ村に到着するまでと比べても、今日になって森の中でモンスターと出会う頻度も質も変わっている。

 ラッチモンと出会ってカルネ村に到着するまでに森を彷徨っていた時は、ラッチモンを襲っていた悪霊犬(バーゲスト)の他には小鬼(ゴブリン)やそれが使役している狼(ウルフ)に時たま現れる中型の昆虫系モンスター等が精々だった。

 しかし、今日になって遭遇したモンスターはペロロンチーノが言ったような亜人種のモンスターが多い。

 カルネ村の無防備具合を考えると、これが普通とは思えない。殺したトロールの口ぶりではどうやら、森の東側を支配する王と共にやってきたようだが、この辺りを縄張りにしているという森の賢王に何かあったのだろうか? 

 

「もし東の王と戦いになった時のために、囮兼盾役として死の騎士(デス・ナイト)は一体作っておきましたけど……まさか殺したトロールを取り込んで召喚されるとは思いませんでしたよ」

 

 そう言うモモンガの視線の先にいるのは、身長2.3mほどの左手に巨大なタワーシールドを持ち右手にフランベルジュを握る、血管のような紋様があちこちに走っている漆黒の全身鎧(フルプレート)を纏ったアンデッドの騎士だ。

 

「モモンガさん、この先にトロールが四体いますね。うち一体は他よりも大きくて棍棒じゃなくて大剣を持っています」

 

 ペロロンチーノの鳥人間(バードマン)としての優れた視力ではるか先にいる存在を確認する。本来ならば鬱蒼と生い茂る木々が視認を邪魔するが、《透視化》の特殊技術(スキル)でそれらを無視して見たい対象を見ることができるのだ。ちなみにR18行為に対して厳しかったユグドラシルでは、これを応用しても女性キャラや女性型モンスターの裸を覗くなんてことは出来なかったりする。

 

「他と違う個体という事は、トロールたちが言っていた東側を支配する王でしょうか? その周囲には他に何かいますか、ペロロンチーノさん」

「ちょっと待って……って、えぇ……トロールたちと対峙する様に馬ぐらいの大きさのハムスターが戦っています」

 

 ペロロンチーノの言葉にモモンガは首を傾げた。

 ハムスターって大人でも掌サイズじゃなかったか? そういえば、ギルドメンバーの一人がハムスターを飼っていて、ハムスターが死んだショックでしばらくログインしなかったこともあったっけ。

 モモンガはここにはいないギルドメンバーの事を思い出しながら、気を取り直してどうするか考える。

 

「……とりあえず、トロールはカルネ村のために仕留めましょう。あいつら、俺達を初見で食料と見なして襲ってきたから村人も見つけたら襲うでしょうし」

「そうだね。あの様子だとハムスターがトロールに襲われているっぽい。戦っている様子を見る限りでは大剣を持っているトロールとハムスターの強さは同じくらいだね」

「ハムスターとトロールが同格って、この世界のパワーバランスはどうなっているんだ……。まあいい、死の騎士(デス・ナイト)よ、この先にいるトロールを襲え。ハムスターの方は攻撃してこなければ放置だ」

「オオオアアァァァアアアアァァ──―!!」

 

 モモンガは死の騎士(デス・ナイト)にトロールへの攻撃を指示すると、死の騎士(デス・ナイト)は効く者の肌があわ立つような叫び声をあげて駆けだした。視界の悪い森の中を迷いなく走る様子から、アンデッド特有の生に対する憎悪という知覚能力が働いているようだ。

 瞬く間に小さくなっていく死の騎士(デス・ナイト)の後姿に二人は呆然とする。

 

「いなくなっちゃったよ……。盾が守るべきものを置いて行ってどうするよ。いや命令したのは俺だけどさぁ……」

「まさかこんな形でユグドラシルとの違いを再発見するとはなぁ……。それでどうします? もう一体作っておきます?」

「ええ、一日の使用回数に制限がある特殊技術(スキル)はできるだけ温存したいところですが、盾役がいないよりはましですからね」

 

 口の中でモゴモゴと己の失敗を零したモモンガは、改めて中位アンデッド作成の特殊技術(スキル)でもう一体の死の騎士(デス・ナイト)を生み出す。

 今度は周囲に死体が無かったが、無事に生み出すことができた。見た感じでは戦闘能力に差異はないようだが、死体の有無にかかわらずこの特殊技術(スキル)を使えるとなると、どういった違いがあるのだろうか? 調べる必要があるが、それは時間ができた時にやっておこう。

 実験の方に傾きかけた思考を戻しながら、モモンガ達は先に向かった死の騎士(デス・ナイト)を追いかけ始めた。

 

今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか

  • 該当する章の最新話(今のまま)
  • 新たに最新話の章を設けて、そこに投稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。