※この作品はR-18です。

【R-18】男淫魔と元奴隷メイドの情愛   作:エヌット

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第四話「トブの大森林 後編」

「オオオオアアアァァァ!!」

 

 死の騎士(デス・ナイト)がグに対してフランベルジュで切りかかる。グはそれを手に持つグレートソードで打ち払う。

 ぶつかり合う両者の剣。弾かれたのは死の騎士(デス・ナイト)の方だった。

 しかし、グの追撃の振り下ろしを死の騎士(デス・ナイト)はタワーシールドで受け流し、すかさず引き戻したフランベルジュをグの脇腹に突き刺す。

 フランベルジュがグの皮膚を引き裂くが、みっしりと詰まった筋肉に遮られて奥までは届かない。

 

「グォオオオ!」

 

 グレートソードから片手を放したグは、死の騎士(デス・ナイト)を思いっきり殴りつける。

 死の騎士(デス・ナイト)はそれをタワーシールドで受け止めるが、今度は受け流せずに数歩後ずさった。

 その間にグの腹部は瞬く間に再生して傷が塞がっている。

 その後の数度、死の騎士(デス・ナイト)とグは切り結ぶが、互いに決定打を与えられない。

 

(新手……にしては、某ではなくてあの亜人ばかりを襲っているでござるな。かと言って、あのアンデッドの騎士が某を襲わない保証がない以上、無暗に協力するのも危険でござる)

「何をしに来た、アンデッド! 邪魔をするなら、お前も森の賢王諸共頭からバリバリと食ってやる!」

「クゥオオオオ!」

 

 状況の変化に対して静観する森の賢王と、グを狙う死の騎士(デス・ナイト)。そして諸共に糧にしようとするグ。

 三者のにらみ合いによって状況が停滞する。

 

「ふむ、あの東の王と推察されるトロールは俺の作った死の騎士(デス・ナイト)とほぼ互角か。力は彼方が上で防御力は此方が勝るが、攻撃力に劣る死の騎士(デス・ナイト)では再生力の突破は困難だな……」

「ひょっとして、あのトロールの話しぶりからして森の賢王ってあのござる口調のハムスター? あっちは警戒しているけど、横合いから攻撃しないだけの理性はあるようだね」

 

 その様子をモモンガとペロロンチーノは観察して戦力を推察していたが、特殊技能(スキル)による囮兼盾として使うつもりで生み出した死の騎士(デス・ナイト)と拮抗した強さという事から、他に自分たちが知らない何かが無い限りは問題ないことを確認できた。

 

(とりあえず一当てしてみるか。やまいこさんも「どの程度の難易度なのか殴ってから考えても良いじゃない?」ってユグドラシルではよく言っていたっけ)

 

 基本的にかなり慎重派なモモンガだが、ギルドホームであったダンジョンであるナザリック地下大墳墓を初見攻略しようと、クランからギルドに変わったばかりの当時のアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーに提案したりと、理由次第でははっちゃけることがある。

 それに、ここまで実力差がありすぎることが分かってしまうとペロロンチーノが村の子供たちを待たせているのもあって、さっさと問題を片付けてカルネ村に戻りたいという気持ちもあった。

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

「ええ」

 

 モモンガとペロロンチーノは軽い口調で森の支配者たちの戦いの場に乗り込む。

 相手に侮られないようにするためにもう一体の死の騎士(デス・ナイト)を連れた上で、ある程度ロールプレイすることも忘れない。

 

「死の騎士(デス・ナイト)よ、そこまでだ」

 

 臨戦態勢であった死の騎士(デス・ナイト)の動きがピタリと止まる。

 

「このアンデッドの主のようでござるが、一体何をしに──」

「──何をしに来た、人間!」

 

 森の賢王がモモンガ達に問いかけようとするのを遮ってグが進み出た。

 

「食われたくて来たのか! だったらお前たちは運が良い! 東の地を統べる王である、グ、の腹に納まることを光栄に思うがいい!」

「「──グ?」」

「どうやらこの亜人の名前のようでござるよ。ゲホッ」

 

 教えてくれたのは、森の賢王と思しきハムスターだった。先ほど木をぶつけられたのが痛むのか、時折咳込んでいる。

 

「ああ、そう言う名前なのか。この森の東側を支配しているグとやらがどうして南側のこの辺りに来ているんだ?」

「少し前にこの森の近くで起きた凄い光と音を、某が起こしたものと勘違いして襲ってきたのでござるよ。げふっ、尤も、ただ攻め入る口実にしたかっただけだとは思うでござるが……」

「あぁ、あれかぁ……ここでもやっぱり影響していたかぁ。やっぱ調べに来て正解だったわ」

 

 ペロロンチーノはユグドラシルで自分たちの行った行動による影響が、予想よりも大きく出ている事に頭を抱える。

 

「俺を無視するとはいい度胸だ! お前たちは生きたまま頭からバリバリと食ってやる!」

 

 無視される形となったグがモモンガ達を掴もうとするが、二体の死の騎士(デス・ナイト)がそれを阻む。

 

「うわー、如何にも頭悪そうな言葉だなぁ」

「このまま時間をかけるのもばからしいですし、あっちはさっさと終わらせるか。──《死(デス)》」

 

 モモンガが魔法を唱えたのと同時に、大きな爆発も身を溶かし切るような酸もなしにグが崩れ落ちた。

 森の賢王は尻尾で恐る恐るグをつつくが、大地に付したグはピクリとも動かない。体温を残しながら、命という炎がかき消されたのは明白であった。

 

「な、何をしたで、ござるか?」

「モモンガさんは即死魔法を使ったんだ。トロールは火属性か酸属性がない限りは再生し続けるけど、即死耐性が完璧な訳じゃないからね。俺の弓で燃やしても良かったんだけど、そうすると森が焼け野原になりかねなかったから、トロールの相手はモモンガさんにお願いしていたんだよ」

 

 森が焼け野原になりかねないという言葉を聞いた森の賢王は、全身の毛を逆立ててその柔らかな銀の体毛に包まれた腹部を曝け出す。

 

「こ、降伏でござる! 某の負けにござるから、燃やさないで欲しいでござる! ゲホッゲホッ!」

「え、えぇ……。まあ、敵対しないなら殺す理由もないからいいけどさぁ」

「何脅かしているんですか、ペロロンチーノさん。森の賢王よ、ひとまずこれを飲んで傷を癒したほうが良い」

 

 モモンガは下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)を取り出してハムスケの口元に近づける。

 

「これは血でござるか? それにしてはそう言う匂いがしないような」

「これは治癒の薬だ。完治するかは分からないが、マシにはなるだろう」

「かたじけないでござる」

 

 森の賢王が口を開けたので、モモンガは下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)の中身を注ぎ込む。そして森の賢王は驚きの表情を浮かべて姿勢を直した。

 

「おお! 先ほどまでの痛みが綺麗になくなったでござる! 正直なところ、あの亜人──確かトロールと言ったでござるか? あれから受けた一撃が痛くて困っていたでござる。殿は恩人でござる!」

「と、殿? まあ、それは良かった。代わりと言ってはなんだか幾つか聞きたいことがあるんだが、良いか?」

「勿論でござる! この森の賢王、殿のお役に立つ所存でござる!」

 

 森の賢王はモモンガに顔を擦りつけながら質問を了承する。その様子を見ている二体の死の騎士(デス・ナイト)はうなり声を上げているが、彼らと繋がっているパスから嫉妬のようなものを感じ取る。多分気のせいだろう……そうであって欲しい。

 

「それじゃあ、まずはそこでコソコソと不可視化して様子を見ている奴に覚えはないか?」

「??? ああ、確かによそ者の匂いが微かにするでござるな。某はこの辺りから出たことがないゆえ、その外にいる者の事は分からないでござる……」

「確かにいますね。微妙な音や匂いまでは消せてないから完全不可知化ではないみたいですけど」

 

 既に気づかれているのを指摘されたからか、不可視化を解除して現われたのは蛇の胴体を持つ上半身は人間の老人の姿をした異形であった。

 

「東の巨人を屠り、儂の透明化を見破るとは、おぬしはただの人間ではないな?」

「ナーガか。お前もこの近辺を狙ってやってきたのか?」

「東の巨人に大きな動きがあると知って駆けつけてきたんじゃ。状況次第では選択肢にあったが、それはもうなくなったわ。ああ、儂の名はリュラリュース・スぺニア・アイ・インダルンじゃよ。この森から見て西側を支配しておる」

 

 リュラリュースと名乗ったナーガは自己紹介を交えながら自分が来た理由を伝える。

 平然としているように見えるリュラリュースだが、その内心はいつ東の巨人を屠った即死魔法を自分に向けられないか気が気でなかった。

 

「西側にこのようなものがいたとは、某は知らなかったでござる」

「……なあ、お前。森の賢王って呼ばれているんだよな?」

「昔、某の縄張りに入ってきた人間の戦士が某の事をそう呼んだでござるよ。そういえば、中々カッコいい名前だったからその戦士だけ生かして返してやったでござる。懐かしいでござるなー」

「人間から見たら、獣の姿をしたモンスターが人の言葉を介して魔法を使えれば賢き者と思っても仕方がないじゃろう。特にこやつ以外に同種を見たことが無ければなおさらのぅ。ちなみに儂は西の魔蛇と呼ばれておる」

 

 森の賢王と呼ばれる由来にモモンガはがっくりと肩を落とす。

 

「なるほどなぁ。森の賢王というよりは、森のジャイアントハムスターの方がしっくりくるなー」

「そのジャイアントハムスターというのは、某の種族の事でござるか?」

「ああいや。昔仲間が飼っていたペットにお前を掌サイズにしたようなのがハムスターっていう種族だったから、そこから勝手に考えただけ」

「なんと! 某に似たものをペットにしていた御仁がいたとは! ……でもその大きさでは子孫を残すのは無理そうでござるな……。他に某と番になれそうな同族は知らないでござるか?」

「ごめん、俺が知ってる範囲だと大きくても数十センチがやっとだから、お前とは厳しそうだわ」

「そうでござるか……。ではやはり某は一人なのでござるかなぁ……。子孫を作れなくては生物として失格でござる……。どこかに同族がいるならば、会いたいでござる……」

 

 ペロロンチーノの言葉で髭が力なく垂れる森の賢王に、モモンガはかつて独りぼっちでギルドを維持し続けていた自分を思い出す。

 かつて仲間がいたかどうかという過去の違いはある。現在ペロロンチーノがいるという違いもある。

 しかし、この森の賢王は独りぼっちだった頃の自分をどうしても思い出してしまい、放置することはできなかった。

 

「森の賢王、リュラリュース。提案があるんだけど、いいか?」

 

 

 ────────────────────

 

 

 夕方過ぎ、モモンガ達はカルネ村へ戻ると、村の村長や村人たちと出会った。

 

「おお、モモンガ殿。ご無事で何よりです。森の方から聞いたことがない咆哮が聞こえてきたので、心配しておりましたぞ」

 

 モモンガ達の無事を安堵する村長に対して、村人たちの中にいたラッチモンは顔が引き攣ったままだ。

 

「なあ、モモンガさんたち。俺も野伏(レンジャー)のはしくれだから分かるんだけどよ……、後ろに何を連れてきたんだ?」

「森を調べていたら、森の賢王がここからずっと東を支配しているトロールのリーダーに襲われていまして。助けたら懐いたので連れてきたんです。来てくれ」

 

 モモンガに呼ばれ、ゆっくりと物陰からパールホワイトの毛を持つ、森の賢王が姿を見せる。村人たちは驚愕の表情で数歩後ずさった。

 

「まあ、この図体ならば普通は初見だとビビるよね」

「ラッチモンさん、安心してください。森の賢王もといハムスケには、私たちの方から村の人たちを襲わないようにしっかり言い聞かせてあります」

「ハム……スケ?」

「ええ、森の賢王という通り名では堅苦しいと思いまして、親近感を抱きやすいようにと名前を付けさせていただきました」

 

 モモンガか危険性がないことをアピールするように、ハムスケに近づくとわざとらしく体を撫でまわした。

 

「まさに殿の仰る通りでござる。このハムスケ、殿たちに誓って、皆々様にはご迷惑をおかけしたりはせぬでござるよ!」

 

 モモンガを主と仰いで宣言するハムスケ。

 モモンガ達としては、初めはこの巨体から警戒心を抱くのは仕方ないが、見慣れてしまえば元々の外見は可愛らしいハムスターなのだから警戒心も薄れるだろうと考えていた。むしろ、森の賢王を騙っていると思われる可能性の方を心配していた。

 しかし、その予想は大きく外れることになる。

 

「……凄え、これが森の賢王! なんて立派な魔獣なんだ!」

「「……えっ?」」

「今まで森の賢王の縄張りのおかげでカルネ村は無事だったが、こんな立派な魔獣ならば村ができて100年たっても危険なモンスターに襲われなかったのも頷ける!」

「なんと深い英知を秘めた瞳なのでしょうか。ありがたやありがたや……」

 

 村人は口々に森の賢王を称賛し、村長などその場で感謝の祈りを捧げ始める。

 長年、森の賢王の恩恵を受けてきた村の住人だからありがたがるのは分かるが、いささか過大評価しすぎではないだろうか? 

 

「こいつの瞳とか、可愛いと思うんだけどなぁ……」

 

 ペロロンチーノのぼやきに、その場にいた村人手たちは大きく目を見開いた。

 

「ペロロンチーノ殿、貴方はこの魔獣を可愛らしいと思うのですか!」

「人間と亜人だと、見え方や感じ方も大分違うのか……!」

「モモンガ殿もこれほどの魔獣に名前を付けるくらいに親しみを覚えているし、さすがとしか言いようがありません」

「えぇ……!?」

 

 村人たちの驚きの言葉に、モモンガとペロロンチーノは自分達との美的センスの違いに戸惑う。

 モモンガもペロロンチーノも、異形種となったことで自分たちの美的センスが変わってしまったのかと悩んでいると、何かに気が付いた村長が不安そうに問いかけてきた。

 

「それで、モモンガ殿は森の賢王を連れてきて如何するおつもりなのでしょうか? もし森から連れ出すとしたら、森の賢王の縄張りが無くなることでこの村にモンスターが襲い掛かったりしないでしょうか?」

 

 村長の不安に対して、ハムスケは話し始める。

 

「その事についてでござるが、実は東の巨人を討ち取った後にやってきた西の魔蛇と呼ばれるナーガと相談して、森に近い村や比較的森の浅い所にやってきた人間を襲わない事などの幾つかの条件を呑ませる代わりに、某や東の巨人が支配していた縄張りを譲ったのでござる」

「その取り決めには私たちも立ち会っています。討伐した東の巨人と違って西の魔蛇は理性的でしたので、約束を破ったりはしないでしょう」

 

 実際はモモンガがハムスケとリュラリュースに提案した内容なのだが、村に来たばかりの魔法詠唱者(マジック・キャスター)よりも、結果的にだが長い間カルネ村に平穏をもたらしていたハムスケから話させた方が契約の信頼性は高く感じるだろうと考え、ハムスケに話させたのだ。

 この契約を結ぶ際にモモンガは自分が人間ではなくてオーバーロードであることをハムスケとリュラリュースに伝えて素顔を晒し、ハムスケが腹を見せてひっくり返ったりしたが割愛する。

 ハムスケにとってはどこかにいるかもしれない同族を探しに行けて、リュラリュースにとっても森の強者と敵対することなくトブの大森林を支配下に置ける。モモンガ達から見てもトブの大森林の生き物たちにかけた迷惑を有耶無耶にしながら騒ぎを終息できるし、村人にとっても森の浅い所安全を以前より楽に確保できると様々な方面で得をする契約になったのではとモモンガは考えている。

 ちなみに2体いた死の騎士(デス・ナイト)の内1体は制限時間を過ぎて消滅したが、死体を取り込んで召喚されたもう1体は残ったままだったので、監視と護衛を兼ねてリュラリュースに付き従わせている。

 

「それと、ハムスケを連れて如何するつもりかという事についてですが、あと数日程村で宿泊させていただいた後は準備が整い次第、旅を続けようかと思っています」

「村の子供たちと遊ぶのも楽しいけれど、俺もモモンガさんも色々な所を見て回りたくて旅をしているからね」

「某も殿たちの旅のお供をさせていただくでござる!」

 

 モモンガ達の言葉に、村長やラッチモンを含む村人たちがザワザワと相談をし始めて、やがて村長がモモンガ達に向き直った。

 

「分かりました。皆様の言葉を信じさせていただきます」

「ありがとうございます。出発するまでの間はハムスケも村に置かせていただきますが、その間の食事は森の中で採らせますので大丈夫です」

 

 村長の言葉にモモンガは内心でガッツポーズをとりながら、平静を装う。

 ハムスケを森から連れ出すのは、言ってしまえば自分の我儘なのだ。

 ハムスケを連れていくことにペロロンチーノが難色を示していたならば諦めていたが、彼も結構乗り気だったことも後押ししていた。

 孤独だったハムスケに同情したのもあるし、現地で有名な存在を引き連れていれば他にもいるかもしれない他のユグドラシルプレイヤー、正確に言えばギルドメンバーの耳に入るかもしれないという打算もある。

 こうして、トブの大森林で起きた出来事を解決したモモンガ達はハムスケを連れて宿泊している家に戻っていった。

 




ちなみに、ペロロンチーノがハムスケをジャイアントハムスターと評していましたが、現実にクロハラハムスターという名称の野生のハムスターがそう呼ばれているそうです。

今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか

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