※この作品はR-18です。

【R-18】男淫魔と元奴隷メイドの情愛   作:エヌット

30 / 39
第六話「陽光聖典 前編」

「なるほど……確かにいるな」

 

 家の影からガゼフは報告された人影を窺う。

 見える範囲にいる者たちは手に武器を持たず重厚な装備をしていないが、その一糸乱れぬ動きから相当訓練された者たちで、横に飛ぶように浮かんでいる光輝く翼の生えたもの──天使の存在が、彼らが魔法詠唱者であることを物語っている。

 

「あれが、騎士たちのバックについていた者たちですか。戦士長殿には心当たりはありませんか?」

「天使を召喚する魔法詠唱者がこれだけ揃えられるところを見ると、相手は恐らくスレイン法国の中でも噂に聞く六色聖典のいずれかだろうか」

「六色聖典?」

「ええ、噂ではあるが、スレイン法国の特殊工作部隊群としてそう呼ばれる存在があるらしい。こうしてみると、数にしても質にしてもあちらの方が上だな」

 

 厄介だと言わんばかりに肩を竦める。態度こそ非常に落ち着いたものだが、その内心は強い焦りと怒りを覚えていた。

 ガゼフは短い時間だがモモンガと会話した中で、理由は不明だが騎士たちは戦士長をおびき寄せるためにこの村を襲おうとしていたことは聞かされている。

 つまり、自分を始末するために村々は襲われて無辜の民が殺されていたことになる。

 

「戦士長という地位についている以上、貴族たちから疎まれるのは仕方がないことだが、それにしてもまさかスレイン法国にまで狙われるとは思ってもいなかったぞ」

 

 鼻で笑うが、この状況をどうにかするにはあまりにも何もかもが足りなすぎる。

 しかし、この状況でなお切札になりうる可能性があった。

 

「モモンガさん、あれって炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)ですよね?」

「そうですね。外見も非常に似ているけど、あの様子だと脇にいる魔法詠唱者が呼び出したモンスターでしょうか? そうなると……」

 

 ペロロンチーノと呼ばれた亜人の問いかけにぶつぶつと呟くモモンガに、ガゼフは僅かな希望を抱いて問いかける。

 

「モモンガ殿、ペロロンチーノ殿……良ければ雇われないか?」

「うーん。俺は──「申し訳ありませんが、雇われること自体はともかく、直接戦うのはお断りさせていただきましょう」──モモンガさん?」

 

 悩んでいるペロロンチーノの言葉を遮るようにモモンガが断る。

 

「……理由を聞かせていただいても、構わないだろうか?」

「いくつか理由はありますが、あの特殊部隊と戦うために戦士長も私たちも村を出てしまうと、この村を守る戦力がいなくなってしまうのが大きな理由ですね。村をがら空きにして人質にされてしまった場合、戦士長はいかがなさいますか」

「それは……」

「王国にとっての価値の大小で見れば村を見捨てるべきでしょうが、戦士長にはそれができないのでは? その選択ができる人物ならば、今回の謀が判明した時点で早々に調査を打ち切っていたでしょう。だからこそ、人質という手段は戦士長である貴方相手には通用するのではありませんか?」

「……そうだ、大局的には愚かな選択であることは理解している。全体のために一部を犠牲にしなければならないこともある。しかし、それを庇護すべき民に押し付けていいものではない」

 

 モモンガの返答に対して、ガゼフは直接の協力は得られないことを理解する。

 その上で、ガゼフは曲げることができない自分の考えを口に出した。

 

「それ自体は正しい事だと思いますよ。問題は、今回の相手はその部分を突いて戦士長を亡き者にしようとしている事ですから。それと、直接戦うことができない別の理由として、スレイン法国の国是との関係があります。あの国は、人間以外の他種族に対して敵対的な考えをしていると聞きました。そうなると、人間種ではない上に部外者である私たちが戦士長と共に戦う場合、後々の禍根を断つためにもあの特殊部隊は一人たりとも逃がすわけにはいかなくなります。しかし、相手の手の内が分からない段階で一人も逃がさないというのはとても難しいですし、できれば今後の旅に支障が出ないようにしたいのです」

「すまない、襲われた村々やあなた方にこのような迷惑をかけてしまって」

「お気になさらず。それに、最悪の場合は私たちが護衛となって村人を連れて、近くの都市に避難するように村長に説得するつもりです」

 

 しばしの沈黙が流れる。モモンガは言い過ぎたかと不安になったが、ガゼフの表情と行動は良い意味で予想から外れたものだった。

 

「……本当に、本当に感謝する。無辜の民を暴虐の嵐から守ってくれただけでなく、再び村の者たちを守ってくださることに!」

 

 表れた感情は感謝。予想外の思いを吐露されたモモンガ達は呆気にとられ、ガゼフの方からガントレットを外して差し出された手を思わず握る。

 

「もし王都に来られることがあれば、お望みの物をお渡しすると約束しようガゼフ・ストロノーフの名にかけて」

「え、ええ……分かりました。村人は必ず守りましょう。このモモンガの名にかけて」

「俺も村人たちを守りますよ。この、ペロロンチーノの名にかけて」

 

 三人の名を挙げての誓いに、ガゼフの心はスゥッと軽くなる。

 

「感謝するモモンガ殿、ペロロンチーノ殿。ならばもはや後顧の憂いなし。私は前のみを見て──」

「──ちょっと待って欲しいでござるよ」

 

 覚悟を決めて死地へ赴こうとするガゼフの言葉をハムスケが遮った。

 

「ハムスケ、どうした?」

「殿、某をガゼフ殿と共に戦わせて欲しいでござる」

「なっ!」

 

 ハムスケの提案にガゼフは驚きの声をあげる。

 

「森の賢王殿……お気持ちは嬉しいが──」

「──ガゼフ殿は某に対して恐怖も侮蔑の眼差しを見せずに純粋に感謝を告げてくれた御仁でござるから、某としては手助けしてあげたいでござるよ。それに……」

「それに?」

 

 言い澱むハムスケに対してモモンガは続きを促す。

 

「殿たちがガゼフ殿と話している時、言葉とは裏腹になんだか楽しそうな気配がしていたでござる。まるで、殿たち同士で話している時みたいだったでござる! そのような御仁をこのような形で喪いたくないでござるよ……」

 

 しょんぼりと項垂れるハムスケの言葉に、モモンガはしばし放心する。

 

 ──こいつは何を言っているんだ? 戦士長と話している時の俺が、ペロロンチーノさんと話している時見たいってどういうことだ? ただ事務的に話していただけのはずなのに、何処にそんな部分があったんだ? 

 

 混乱する思考を止めたのは、ペロロンチーノの言葉だった。

 

「……あーっ! 戦士長の雰囲気がだれかと似ていると思ったら、たっちさんだ! たっちさんと似ているんだ!」

「たっち……さん」

「ペロロンチーノ殿? そのたっち殿という人物は、どのような御仁なのか教えてもらえないだろうか?」

「たっちさんはね、昔モモンガさんが酷い目に遭っていた時に助けてくれた聖騎士で、『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』ってよく言っていたんだよ。懐かしいなぁ」

「そのような立派な御仁とも知り合いだとは、御二人が羨ましい限りだ。私も、それを堂々と言えればよかったのだがな……」

「そんな悲観することないって。戦士長だって自分の身が危ないって分かっていても村人たちを助けようとしていたんでしょ? だったら十分立派だよ」

「お気遣い、感謝する。しかしそれならばあなた方にもその精神は受け継がれているようだな」

 

 ユグドラシルでの自分(モモンガ)を形作っていると言っても過言ではない恩人の台詞を聞いたモモンガは、息を吐き出すと笑みをこぼす。

 この記憶を呼び覚まされたら、見捨てるなんてできるわけがないじゃないか。と。

 人間の肉体を失い、生物ですらなくなり、その精神が変質しても、変わらない思いがあったことを確認したモモンガはガゼフに向き直る。

 これから行う行為ははっきり言えば無駄な行為なのだろう。むしろ、戦士長達も敵に回る危険性さえある愚かな行為だ。しかし、ペロロンチーノがたっち・みーに似ているといった彼ならばあるいはと、希望を持って被っている仮面に手を伸ばす

 

「戦士長殿、私……いや、俺はあなたに隠していたことがあります」

「モモンガ殿が隠していた事?」

「えっ……モモンガさん、見せちゃうの!?」

「こんなタイミングで言うのも卑怯かもしれませんが……俺はペロロンチーノさんと違って、生物ですらないんです」

 

 仮面を外して骸骨の素顔を晒す。ガゼフには驚愕こそあったものの、騒いだり忌避したりするような様子はない。

 その事を確認したモモンガは、再び仮面を被って逸る気持ちを抑えてガゼフに尋ねた。

 

「……何か思う所は、ありますか?」

「ただの旅人ではないとは思っていたが、まさかアンデッドだったとは……。しかし何故、私に正体を明かしたのだ?」

「ペロロンチーノさんがあなたの事をたっちさんに似ていると言った時、ハムスケの言ったことの意味が納得できて、貴方ならば頭ごなしに否定しないで見てくれるんじゃないかって思ったんです」

「それは、モモンガ殿が仮面を外して素顔を晒した時、穏やかな表情に思えたからだ。通常のアンデッドは生者を憎み引きずり込もうとすると言われているが、モモンガ殿からはその様子は一切感じられなかった。稀に生者と取引を行う理性的なアンデッドがいるとは聞くが、モモンガ殿はそう言った利害関係だけの繋がりとは違う、そんな気がしたのだ」

「やはり、貴方には正体を明かしてよかった。ちなみに、この村の人たちは俺がアンデッドであることは知らないはずです」

「そうか……分かった」

 

 アンデッドという色眼鏡を通さずに自分を見てくれたガゼフにモモンガは安堵を覚えながら、これからどうするかの話を改めて切り出す。

 

「直接手助けすることはできませんが、代わりに魔法詠唱者らしく出来る支援をさせていただきます」

「というと?」

「戦士長とハムスケに対してできる限り補助魔法を掛けますので、その効果が残っている内に二人で相手を撹乱させてください。相手の力量がどこまであるのかは未知数ですが、どうやら第三位階の天使召喚魔法を主力としているようなので、相手がこちら側の実力を見誤っている内に一気に食い破りましょう」

「一騎当千という訳か」

「ええ、全体に薄く広く掛けるよりも少数に徹底して掛けた方が、効果は大きくなりますし効果時間も長くできます。それに、部下の騎兵を村に控えさせておくことで、相手にいつ奇襲を仕掛けてくるかを考えさせてプレッシャーを与えることにもなるでしょう。部隊全体に掛ける案も悪くはありませんが、戦士長の部下は物理耐性を持つ天使たちに単独で立ち向かえるほど精強ですか?」

「それは……おそらく難しいだろうな」

「であれば、防御魔法を多重に掛けた上で狙いを戦士長かハムスケに絞らせることで一騎当千の戦いに持ち込む方が有効でしょう。それと、餞別の品があるので少しお待ちを」

 

 モモンガがそう言って家屋の中に入り、少しして出てくると、その手にはグレートソードが握られていた。それもただの武器ではないようで、中央を走る溝からはぬらぬらとした液体が刃へと伝わっている。

 

「その武器は……?」

「これはこの村の近くにあるトブの大森林、その東側を支配していたと豪語していたグというトロールが使っていた武器です。魔法の武器なので戦士長殿が持てば最適なサイズに変化してくれます。特殊能力そのものは格下相手にしか効果がないので大したものではないですが、それでもただのロングソードよりは物理攻撃に耐性がある天使たちに有効なはずです。どのみち俺達では扱えない武器なので、いざとなったら使い潰しても構いませんよ」

「しかしこれほどの武器を……いや、かたじけない。ありがたく借りさせて(・・・・・)いただく」

「ふふ……律儀な人だ。それでしたら一つだけ約束を。何としてもハムスケと共に生き延びてください。でないと、王都に来た時の楽しみが減ってしまいますからね」

「ああ。その約束、何としても果たして見せよう」

「さて、あまり時間はありませんが、戦士長の部下と村長たちにも手短に説明して行きましょう」

 

 そう言って、三人と一匹は村の広場に向かって歩き出す。

 絶望的な状況のはずなのにガゼフは先ほどまでの後を託して死地に赴く気持ちとは違う、絶対に生き延びるという意志が沸き上がり、不思議と負ける気がしなかった。

 

 

 ────────────────────

 

 

「遅いな。奴の性格ならば村には立て籠らないと踏んでいたが、どうやら見込み違いだったようだな」

 

 陽光聖典隊長であるニグン・グリッド・ルーインは、静かで平坦な声で呟く。

 既に部隊の展開は完了し、獲物であるガゼフ・ストロノーフが出てくるのを待つだけになるが、なかなか出てくる様子が無い。

 

 ──所詮、腐った王国の戦士長も腐っていたという事か。

 

 少しの失望感を抱いて村への攻撃を開始しようとした時、部下からの報告が入る。

 

「隊長、獲物が村から出てきました。しかし、これは……」

「どうした……なんだあれは?」

 

 ガゼフを発見した部下の困惑する様子を見たニグンが標的を確認すると、その容貌が歪む。

 ニグンにとって想定外であったことはいくつかあった。

 一つは村から出てきた人間はガゼフのみであったことだ。最後に確認した時点では二十人近い部下とともに集団で行動していたにもかかわらず、部下を連れずに向かってきていることだ。村の守りに宛てているのか、あるいはガゼフに目が向いたところで強襲をかけさせるつもりなのか。

 もう一つは標的であるガゼフが手に持つ武器。王国に存在する伝説の五宝物はもちろん、魔法の武具やミスリルやオリハルコンの様な上質な武具だって王派閥の力を削ぎたい貴族の横やりで取り上げられているはずだった。しかし、防具こそ普通だが奴が今手に持っている武器は明らかに通常の武器ではない、魔法の武器だ。

 さらに、ガゼフ自身の様子もおかしい。元々ガゼフ・ストロノーフは表向き近隣諸国最強の戦士と言われているが、それでも英雄の領域を超える逸脱者ではなかったはずだ。しかし、今のガゼフは今にもはち切れんばかりの闘気と筋肉を内包した、伝説に描かれていそうな戦士となっている。

 そして最後はガゼフが騎乗している存在。彼らは馬で移動を行っていたはずで、当然馬による突撃を想定していた。しかし、そのガゼフが騎乗している存在というのが──

 

「何だ? あの白銀の魔獣は」

「あのような魔獣は見たことが無いぞ」

 

 部下の言葉を聞き、自らも魔獣の姿を確認したニグンはその容貌が伝承に伝わるある存在に酷似していることに気がついた。

 リ・エスティーゼ王国の王直轄領にある村々を襲わせていた部隊からの連絡が途絶えていた事と合わせると、ある可能性が思い浮かぶ。

 それを裏付けるように、ガゼフは戦いの口火を切るため雄叫びを上げる

 

「行くぞ、森の賢王よ! ともに奴らを打ち破り、この森と村に平穏を取り戻すぞ! うおおおおー!!!」

「承知でござる、ガゼフ殿!」

 

 森の賢王と呼ばれた魔獣はガゼフを乗せたままさらに加速して向かってくる。

 恐らくは、村を襲わせていた騎士たちはあの魔獣と鉢合わせして全滅したのだろう。それをガゼフは何らかの方法で魔獣の敵意を此方に向けさせて共闘に持ち込んだのかもしれない。

 伝説の魔獣と名高い森の賢王がガゼフと共闘して牙を剥いてくる事態に、ニグンは舌打ちしながら隊員に命令する。

 

「散開している部隊を集結させ、天使たちを前面に出して壁にせよ。足を止めさせた後に魔法による飽和攻撃を行う。最悪、ガゼフを始末するだけでも構わん」

 

 ガゼフと森の賢王の前に立ちはだかる天使たちの数は四十を超える。普段のガゼフならばこれだけの数の天使に塞がれればその足を止めてしまう所だが、今の彼は違った。

 

「邪魔だぁあああ!」

 

 森の賢王が天使たちの目前で右側に、ガゼフは飛び降りて反対側に向かうと、目前に迫る天使を一太刀で両断していく。

 ガゼフが使用できる武技の中には、武器を一時的に魔法の武器化させる《戦気梱封》というものがあることはニグンも既に知っている。しかし、その武技を使用している間は武器に微光が宿るのだがその様子は見られない。つまり、ガゼフは今、手に持っている武器の切れ味と己の膂力のみで天使を両断したことになる。

 森の賢王の方も蛇の様な鱗を持つ尻尾で天使たちを複数まとめて薙ぎ払い、鋭利な爪を持つ前足で引き裂いていく。

 構成体を破壊されて、天使が続々と溶けるように消えていく。その光景は幻想的だが、陽光聖典の隊員たちにとっては悪夢にも思えた。

 

「っく! 総員、魔法を放て!」

 

 本来はガゼフ達を完全に止めてから魔法の一斉掃射に踏み切りたかったニグンだが、天使たちがほとんど壁にならない以上、これ以上近づかれる前に開始しなければ接近されてしまう。

 しかし、そうして放たれた数々の魔法はガゼフと森の賢王に届くことなく、直前で霧散した。

 

「っなぁ!」

 

 まさかの事態にさすがのニグンも狼狽の色を見せる。

 第三位階魔法も含めた魔法の一斉掃射を防げるような方法は非常に限られてくる。それこそ魔法詠唱者殺しとして名高い骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の魔法耐性や、或いは六色聖典最強の部隊である漆黒聖典に与えられるような対魔のアミュレットぐらいだ。

 王国にそのような希少な装備があるとは考えにくいし、有ったとしても貴族派閥の連中が取り上げているはずだ。

 しかしガゼフと森の賢王に部隊の者たちの魔法が通用していないのが現実だ。

 隊員の内何名かは、魔法の効果が無いと見るやスリングを取り出して礫を放つ。人間の骨ならば容易く砕くだけの破壊力を持つ、鉄製のずっしりした重みがあるスリング弾は狂いなくガゼフ目掛けて飛んでいく。

 

「ふんっ!」

 

 数発のスリング弾をガゼフは最低限の動きで躱し、森の賢王に向かいそうな流れ弾はグレートソードで礫を放った部下にはじき返す。

 

「ぐあぁぁぁ! か、肩があぁぁ!」

 

 はじき返された礫を受けた部下が悲鳴を上げて倒れた。飛び道具対策の防御魔法を突き破ったそれを受けた部下は、威力が減衰していたおかげで生きてこそいるが、肩が砕かれて呻いている。体に走る激痛で治癒魔法を唱えられないためか、近くの同僚に治療してもらっている。

 陽光聖典隊員の魔法は無力化され、スリングも下手な攻撃ではこちらに被害が出る。それに対してガゼフと森の賢王は相当数の天使を薙ぎ払いながら疲れの色は全く見せていない。

 

(このままでは拙い! この状況を打破するには……!)

 

 こうしている間にも天使たちは再召喚されるそばから前線に出ている個体が次々と打ち倒されて消滅していく。その間隔は感覚は徐々に狭まっていき、隊員たちが再召喚に割かれる時間が伸びていくのに対応する様に、ガゼフ達の接近を許していっている。

 ニグンは決断し懐から今回の任務の切り札として神官長から渡された、スレイン法国の秘宝の一つであるクリスタルを取り出す。このクリスタルの中に封印されているのは、二百年前に魔神と呼ばれる存在が大陸中を荒らしまわった際に、その内の一体を単騎で滅ぼしたと言われるスレイン法国最強の天使を召喚する魔法だ。

 

「最高位天使を召喚する! 総員、時間を稼げ!」

 

 ニグンの言葉に対し、隊員たちは天使をさらに召喚しながら魔法やスリング弾による濃密な弾幕を形成する。

 ガゼフ達は召喚を阻止するために天使たちを切り伏せながら、防げる隊員の攻撃を無視して最短距離でニグンの下へ突き進んでいく。

 瞬く間にガゼフは数多くの天使たちを切り捨て、ニグンが召喚していた上位天使──監視の権天使(プリンシバリティ・オブザベイション)も森の賢王が仕留めてあと数十メートルにも満たない距離まで詰められる。

 このままでは最高位天使の召喚に間に合わない。ニグンが戦慄した時、

 

「ニグン隊長、掴まってください!」

 

 天使を再召喚した隊員の一人が炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)とは別の天使をニグンの下に向かわせる。その天使の直接戦闘能力自体は炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)と比べて劣るが、機動力に優れているので斥候や伝令などに利用されている。

 部下の狙いを察知したニグンが向かってくる天使の腕に掴まると、天使はニグンを伴って戦場の後方へと空高く飛んでいく。

 森の賢王は尻尾で天使を叩き落そうとするが、それをほかの天使たちが我が身を犠牲にして盾となり遮った。

 

「ははは! 惜しかったな、ガゼフ! 森の賢王! この戦い、我々の勝利だ!」

 

 そして、勝利を確信したニグンの手の中でクリスタルが規定の使用方法に従って破壊され、光輝いた。




プレイヤー視点だと羞恥プレイになるけど、現地の人たちからしたら森の賢王がガゼフを乗せて共闘するって英雄譚のの見せ場の一つとして映えると思うんですよね。
ちなみにこのガゼフとハムスケ、原作のモモンガVSシャルティアの時ほどではないけどバフ山盛りです。

今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか

  • 該当する章の最新話(今のまま)
  • 新たに最新話の章を設けて、そこに投稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。