陽光聖典をガゼフとハムスケが撃退した翌日、モモンガが提供したポーションで傷を癒しカルネ村で身体を休めたガゼフは、モモンガ達が捕縛した騎士たちを移送するために戦士団と共にカルネ村を出発した。
ガゼフ達が出発するまでにモモンガは最高位天使との戦いで最後に放った武技はどういったものなのかを尋ねていたが、ガゼフにとってライバルともいえるとある剣士のオリジナル武技とあの時の自分の全身全霊の一撃を組み合わせた際に無意識に叫んでいた新しいオリジナル武技で、ガゼフ自身もどういった武技なのか把握しきれていないという。
ただ一つ感じ取ったことは、モモンガの幾つもの強化魔法による恩恵を受けた状態でないと発動することができないほど発動のための難易度が高い武技だという事だ。
モモンガ達も近い内に出発する予定だがそれまでの間、モモンガ達は村人からの歓待を受けながら思い思いに過ごしていた。
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「次はあのポイントにこの丸太を持っていくのだ」
「ウォォォ……」
この数日、
運んだ先では別の
不可視化した
「
「はい、モモンガ様。カルネ村を柵で覆う作業工程は殆ど完了し、明日にでも完成します。物見櫓も我らが必要な作業は全て完了しました。残りは村人だけで翌日の昼頃までには出来上がる見通しです」
「そうか、それは良かった。お前たちの働きには感謝しているぞ」
「ありがたき幸せでございます。その言葉だけで、我ら一同にとっては至上の喜びとなります」
モモンガは、今回の一件で自衛の必要性を痛感した村長と相談し、村を囲む柵などを作っていた。
木を切り出して村まで運んだり、柵がより丈夫になる様な設計を行う為に、モモンガが様々なアンデッドを召喚した時には、村人たちも驚いて腰を抜かした者もいた。
しかし村人たちも逞しいもので、これまでのモモンガの人柄や行動のおかげで召喚されたアンデッドが完全にモモンガの支配下にあることを信じてくれているのもあって、この数日でアンデッドに慣れて共に作業を進めている。
モモンガとしてはアンデッドたちを農作業に利用する農法も朧気ながら思いついていたが、あまり手を貸し過ぎて頼られっぱなしになってしまっては旅に出られなくなってしまうので、このくらいが丁度良いだろうというのが村長と相談した上での結論である。
村人の感情を考えて死体などの触媒無しに召喚・創造した個体なので時間制限があり、ずっと作業させ続けることはできないが、それでも村人だけで作業するよりもずっと早く作業が進んでいた。
創造した
(それにしても、この
モモンガがアンデッドの不思議について考えながら村を開拓している中、一方のペロロンチーノは子供たちと遊ぶ傍らで、ラッチモンや志願した人たちに求められて我流であるという前置きをした上で弓の扱い方を教えていた。
村人たちは素人だし、使う弓矢も木から掘り出した粗悪な品ながら、彼らは真面目に練習して短い距離ながらちゃんと矢を飛ばせるようになっているのは大きな成長だ。
ユグドラシルを一度引退してブランクがあったので、モモンガが残したままにしてくれていたマニュアル本を所持したままだった事が、こんなところで役に立つとはペロロンチーノも思ってはいなかった。ユグドラシルの頃はカーソル操作の仕方などで表記されていたマニュアル本も、この世界に来てからは弓の扱い方などが日本語で事細かに表記されていたのも大きい。
村人たちは日本語を読めないので、ペロロンチーノが読んで現地の文字を書ける村人に書き写してもらいながら教えている。
「ペロロンチーノ殿、今日採れた果物を持ってきたでござるよ」
「おっ、サンキュー。みんな、ハムスケが御裾分けを持ってきてくれたから、いったん手を休めて休憩にしようか」
「分かりました。森の賢王様からの大地の恵みに感謝いたします」
ハムスケは村人から貰った大きな風呂敷──本来は家具などを運ぶ際に使う物──を背負って早朝に森に入っては、人が足を踏み入れないような森の奥地にある果物を風呂敷に包んで持ち帰り、村人たちに分けたりしている。
如何に体が大きいハムスケでも、村人全員分を一度に持ってくることはできないため、何日かに分けて配っているようだ。ちなみにハムスケ的には村人一人当たり大きな果物1個と考えているようで、実は村人たちが考えていたよりもずっと多くの果物を持ってきていたりしている。
やっていることが完全に旅人のそれではないが、モモンガ達は特に気にしていない。
そんな日々を過ごして出発が翌日に迫ったある日の昼前、
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向かう馬車の一団は特にモンスターと遭遇することなくカルネ村に近づいていた。
馬車を護衛しているのはリ・エスティーゼ王国の城塞都市エ・ランテルに拠点を置く冒険者チーム“クラルグラ”。馬車の前を歩くフォレストストーカーのイグヴァルジをリーダーとしたチームで、結成から今までチームメンバーを一人も失わずにミスリル級まで上り詰めた実力者だ。
馬車の御者をしている少年はンフィーレア・バレアレという都市では有名な薬師の孫で、今回カルネ村に行くにあたっての護衛と薬草採取の依頼をクラルグラが引き受けた形になっている。
本来ならばこの近辺への護衛依頼はミスリル級よりもずっと下の階級──高くても金級あたりまで──が引き受ける依頼なのだが、ある理由によってトブの大森林に近づける冒険者は白金級以上に限られていた。
その理由というのも、数日前の深夜にトブの大森林の上空を中心とした闇を完全に消し去るかのような謎の発光現象である。大地を揺るがすような爆音が連続して鳴り響いたかと思ったら、その音と光は瞬く間に消えていったという。
エ・ランテルからも観測されたこの異常事態を受けて、冒険者組合はトブの大森林近辺へ赴くことは正式な調査が行われるまで自粛するように金級以下の冒険者や依頼人に要請している。
そんな中で貼りだされたのが、バレアレ薬品店からの依頼である。
本来ならば自粛するように要請する立場の冒険者組合も、エ・ランテルでも大きな力を持つ名士であり、優れたポーションによって冒険者たちも大きな恩恵を与えているバレアレ氏からの依頼は、さすがに受けられる階級は白金級以上でそれに見合った報酬に増額はされているが、拒否しにくかったようだ。
エ・ランテルを出発して特にモンスターと遭遇することなく一夜を野営して過ごし、朝に出発した彼らは、草原に隠されているような街道を歩む。
ンフィーレアの胸中にはある不安がよぎっていた。
それは依頼を出すきっかけになった出来事。エ・ランテルを出発した王国戦士団が戻ってきた時に聞こえた内容であった。
それは周辺の村々を襲っていた、帝国騎士に偽装した者たちを捕らえたというもの。
その話を聞いた時、ンフィーレアにはある不安が生まれた。カルネ村は無事なのだろうか、と。
カルネ村にはンフィーレアにとって初恋の少女がいる。騎士に扮した者たちが襲った村々の中にカルネ村が含まれていたら、その少女が無事なのかが不安でいっぱいだった。
さすがに戦士団に直接訪ねる勇気は無かったので、それを確かめるために祖母を説得して今回の依頼を貼りだしてもらったのだ。そんなことを知らずに依頼を引き受けた冒険者たちに対する罪悪感も含まれている。
「──なあに。このミスリル級冒険者チームのクラルグラ、さらに言えばそのリーダーの俺がいるんだ。心配なんかしなくても大丈夫だぜ」
「あっはい……ありがとうございます」
表情が固いンフィーレアの様子を見たイグヴァルジの自信満々な言葉に、ンフィーレアはぎこちなく答える。
「カルネ村はそろそろ……」
努めて明るい口調で言いかけたンフィーレアが急に口を閉ざした。
クラルグラの全員が前方に姿を見せつつあった村へと移る。それは森のすぐそばに広がる質素な村で、ンフィーレアの口を閉ざさせるような雰囲気は無い筈だ。
……いや、フォレストストーカーとして鋭敏な感覚を持っているイグヴァルジには、言葉では表現することが難しい違和感があった。
「何か気になる事でもあったのか?」
「あ、いえ。あんな頑丈そうな柵、前は無かったんですけど……」
「そうか? 辺境の村でこんな森の近くにあることを考えたら、当たり前じゃないのか?」
「うーん、そうかもしれませんけど……カルネ村は森の賢王と呼ばれる存在のおかげでこれほどの柵は作ってなかったんですよね……」
再び全員で村を眺めると、見える範囲ではあるが、村の周囲を折れにくそうな太い木を使った柵でしっかりと囲んでいる。
「おかしいなぁ……やっぱり、何かあったのかなぁ……」
不安げなンフィーレアの声を耳にして、イグヴァルジは彼に質問する。
「なあ……聞きたいんだけれどよ、あんたが最期にこの村に来たのはいつ頃だ?」
「えっと……大体一か月ぐらい前です。その時にはこんな立派な柵はありませんでした」
「それじゃあよ、森の賢王ってのは、この村にやってきたりはしていたのか?」
「いえ、森の賢王の住処は森の奥地だと聞きますし、カルネ村の人たちからもそう言った存在がやってきたという話を聞きません」
「おい、イグヴァルジ。どうしたんだ?」
「……村の中に、何かやばい気配をしているのが居やがる。それが森の賢王なのかは分からねえがな」
「「「なっ!」」」
イグヴァルジの言葉に、一同は固まった。
「そんな! エ……カルネ村は無事なんですか!」
「少なくとも、悲鳴や血の匂いとかはしねえが、それ以上は村に入ってみねえと分からねえ。俺としては依頼人であるあんたの安全を優先して一旦エ・ランテルに引き返してから、他の冒険者と一緒に調査したほうが良いと判断するぜ」
「それは……そうですけど。……けど──」
ンフィーレアが理性と感情の狭間で迷っていると、村の家屋の影から何かが姿を現す。
それは、蛇の様な鱗を持つ長い尻尾の生えた白銀の四足獣であった。
イグヴァルジはもちろん、他のメンバーもその魔獣を一目見た瞬間、自分達では太刀打ちできない、それこそアダマンタイト級の冒険者でようやく相手になるような存在であることを悟った。
魔獣は此方を見ると、後ろ足で立ち上がって前足を左右に振り始めた
「──っち! 悩んでいる暇はないぞ! でかいのがこっちに気づいた! 下手すると仲間を呼ぼうとしてやがる! お前ら、逃げる準備をしろ!」
「わ、分かりました!」
各々が慌てて武器を抜き放ちながら馬車に掴まり、ンフィーレアは馬車を急いで反転させる。
本音を言えば初恋の少女の安否を確認したいところだが、エ・ランテルにいる冒険者の中でも最高クラスの冒険者であるミスリル級冒険者が撤退を指示した以上、これ以上迷惑はかけられない。
悔しい思いを胸の内に必死にしまい込んで、逃げるために馬車を走らせ始めたところで、村の方から深みのある声が聞こえてきた。
「待って欲しいでござる~~~! 某はエンリ殿の御友人であるそなたの敵ではないでござるよ! 村も安全でござる! だから帰らないで欲しいでござるよ!」
「エンリ! どうして彼女の名前が!?」
「おいっ急に馬車を止めるな! ~ったく!」
魔獣が初恋の少女の名前を出してきたことでンフィーレアは思わず馬車を止めてしまう。
イグヴァルジは依頼人の行動に毒づくが、そもそも走ってくる魔獣の速度は馬車に繋がれた馬の全力疾走よりも速く、このまま逃げ切るのは不可能と言ってもいい。
勝ち目はない、逃げることも困難。だとすれば、後はあの魔獣が話している事が間違っていないと信じるしか生き残る道はない。
やがて魔獣は馬車の前で速度を落として止まるが、イグヴァルジは武器を魔獣に向けて警戒しながら問いかける。
「おい。さっき言ったこと、本当なのか?」
「この森の賢王ことハムスケ、殿に連れられて村に降りてきたのはつい数日前なれど、誓って嘘は言わないでござるよ」
森の賢王、そして殿という言葉にクラルグラの面々とンフィーレアは、伝説の大魔獣を使役している存在がこの村に居ることを察する。
「森の賢王。あなたはエンリの名前を出していたけど、どうして彼女を知っているんですか?」
「エンリ殿は某がこの村で初めて名前を覚えた村人でござるよ。っあ、ちょうどエンリ殿が来たでござる」
相手を刺激しないよう逸る気持ちを抑えてンフィーレアが尋ねると、森の賢王はそう言って、顔を村の方角へと向ける。
街道沿いに走ってきたのは確かに初恋の少女──エンリ・エモットであった。
思っていたよりも村から離れていたようで、少し息を切らしながらこちらに向かってくる。
「はぁはぁ……すぅはぁ。ハムスケ様、知らない方がハムスケ様の姿を見たら驚くから、私も一緒に行くって言ったじゃないですか」
「面目ないでござる」
呼吸を整えたエンリが森の賢王に注意すると、森の賢王は申し訳なさそうな表情をしてエンリに謝る。
その様子を見たクラルグラの面々は、こう思った。──女傑だ。
「エンリ!」
姿を見せたエンリに対し、ンフィーレアは力強く名前を叫ぶ。
その声に応えて、エンリも親しい友人の名を呼ぶ様な優しく好意に溢れた声で名前を呼ぶ。
「一か月ぶりね、ンフィーレア」
ここまでくればクラルグラの面々も今回の依頼の目的が理解できた。
「今回の依頼、女絡みかよ……」
ちなみに土木工事に従事していたアンデッドたちは、ンフィーレアたちの到着前にモモンガが帰還させています。
アンデッドの巣窟と思われたらカルネ村に迷惑がかかるからね。
今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか
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