※この作品はR-18です。

【R-18】男淫魔と元奴隷メイドの情愛   作:エヌット

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第九話「告白と冒険者」

「そんなことがあったんだ……」

 

 ンフィーレアは村に亜人を含めた二人組が宿泊していて、カルネ村の土木工事に協力している事に驚いたが、エモット家の家に向かいながらこの数日間にカルネ村で起きた出来事を聞いて、茫然としながら言葉を紡ぐ。

 エ・ランテルでも話題に上がっている森での発光現象を切欠としたトブの大森林の勢力図の大きな変化や、数日前に起きた帝国の騎士に成りすました者たちによる襲撃未遂。そしてその背後にいた魔法詠唱者の集団を王国戦士長が森の賢王と協力して追い払った話と、他にも驚かされることが多い。

 村に犠牲者がいなかったのは奇跡としか言いようがなく、ほんの少し違っただけでこの村は滅んでいたかもしれないと思うと、ンフィーレアはこの奇跡に感謝するとともに安堵する。

 

「うん。それでね、王国戦士長とハムスケ様の雄姿を見て、村の人たちもこのままじゃいけないって思うようになったの。今はモモンガさんたちの力を借りて村の周囲に柵を作ったり、自衛のために弓の練習をしたりしているのよ。あの方たちには本当に感謝してばかりだわ。どんなお礼をすればいいんだろうってみんなが悩んでしまうくらいよ」

「そ、そうなんだ……。み、みんな無事でよかったよ」

「心配してくれてありがとう! ……本当にンフィーレアは私には勿体ないぐらいの友人だわ」

 

 ンフィーレアは相槌を打ちながら、こみあげていた言葉を心の内にしまう。ここで「君が無事でよかった」なんて言ったら、エンリの事しか見ていないような薄情な男と思われてしまうかもしれない。

 エンリに異性として見られていないのは少々悲しいが、それでも満面の笑みを浮かべている彼女を見ると、やっぱりエンリは可愛いなあ、とささくれた心が癒される。

 近況を語り合った後は幼い頃の話になって、その話も一段落着いた頃、ンフィーレアは近況の中で出てきた話について、ある質問を投げかけた。

 

「そういえば、モモンガさんとペロロンチーノさんだったっけ? 赤いポーションを使ってくれたっていう旅人は。薬師だからそう言うのに興味があるんだ」

 

 薬師でありポーションの製造にも携わっている身としては、癒しのポーションの色は青色が当たり前の知識である。しかし、話題に出てきたモモンガが戦士長に使用したというポーションの色は赤かった(・・・・)という。

 赤いポーションというと、薬師の間で言い伝えとして“真なる癒しのポーションは神の血を示す”と言われる劣化しない完成されたポーションを指す。

 さすがにそれそのものではないとは思うが、その手掛かりになり得る情報に、ンフィーレアはエンリへの思いとは別に内心興奮していた。

 

「そうよ。綺麗な色をしていて体中怪我をしていた戦士長とハムスケ様が、そのポーションのおかげで怪我も無くなってすぐに元気になったの。それに、私は直接見た訳じゃないけど、森で大怪我を負ったラッチモンさんもそのポーションのおかげで治ったんだって」

「なるほど、沈殿物が無くてすぐに効果が表れたという事は、魔法で生成したポーションかな……。でも普通の製法だと癒しのポーションは青色になる。という事は制作過程が従来のものと全く違う? もしそうだとしたら、今の治癒薬の精製技術を根本から変えるかもしれない。時間経過とかによる効能の劣化はどうなんだろう? それに……。ひょっとしたら……」

 

 赤いポーションについてぶつぶつと言葉に出しながら思考に耽りだすンフィーレアに対して、エンリは幼馴染のポーションに対する熱意を知っているので、しょうがないなと思いながら口を挟まないで見守っている。

 やがて、考えがまとまらないのかンフィーレアは頭を掻きながら呟いた。

 

「──うーん、駄目だ。情報が少なすぎる。でも初対面で本人に赤いポーションを見せて欲しいなんて言うのは失礼だもんなぁ。おばあちゃんだったら気にしないで聞き出そうとするのかもしれないけど……」

「あはは……、確かにリィジーおばさんはンフィーレアよりもポーションに対する熱意は凄いもんね。でも、だからって無理矢理とか盗んだりとかは駄目よ。ンフィーレアが悪い人になるのは見たくないもの。私にとってンフィーレアは大切な友人なんだから」

「エ、エンリ……」

 

 エンリの微笑みにンフィーレアは自分の心臓が高鳴っているのが容易にわかった。そして自分はそんなエンリだから心惹かれたのだと再認識する。

 本当ならばエンリに対して初めて村に来た時から抱き続けている思いを口にしたい。

 ──好きだ、愛している。

 しかしその言葉を言い出せないでいるのは、ゴメンナサイと言われるのが怖いから。もしそうなってしまったら、今の関係にも戻れなくなってしまうから。

 ンフィーレアが長年の思いに悩んでいると、前方からハムスケが器用に前足で大きな果物を抱えてやってきた。

 

「エンリ殿。今日の弓の練習をしていた村人たちに分ける分の果物が余ったから、御裾分けに持ってきたでござるよ」

「ありがとうございます、ハムスケ様。ンフィーレア、折角だからハムスケ様が持ってきてくれた果物、一緒に食べない? 瑞々しくてとても美味しいのよ」

「え……あ、ありがとう、エンリ」

 

 エンリからの誘いにンフィーレアはドギマギしながら答える。

 その様子を見ていたハムスケが、ふと尋ねた内容はンフィーレアにとって爆弾発言だった。

 

「そういえばエンリ殿、ンフィーレア殿は御友人と言っていたでござるが、人間は異性の友人から番になる生き物なのでござるか?」

「つ、つがい!? ハ、ハムスケ様! な、何をおっしゃっているんですか!?」

「おや、違ったでござるか? ンフィーレア殿はエンリ殿に求愛したがっている様子でござったから、てっきりそう言うものかと」

「きゅ、きゅ、きゅ、求愛!?」

 

 エンリはハムスケの生々しい表現にパニックになりながら、ンフィーレアの顔をしばしじっと見る。

 顔を真っ赤にして慌てた様子のエンリにじっと見つめられて、先の言葉で冷静さを失っているンフィーレアは、挙動不審になりながらも自らの震える手でエンリの両手を握る。

 これはエンリに自分の思いを伝える千載一遇の機会であり、最後のチャンスだ。ここを逃したら、自分は一生エンリに自分の思いを告げることができなくなる。

 エンリに断られたらどうしようとか、エンリが断りにくいような言い方は何だろうかと悩む余裕はもうない。ンフィーレアは、茹で上がった思考でただ思いをぶつける。

 

「ン、ンフィーレア……?」

「エ、エンリ……。ぼ、僕は……き、君の事が……す、好きゅ(・・・)だ!」

 

 ……、肝心要な所で噛んだ。ンフィーレアはそう自覚した瞬間、数秒前の自分に自分が使えうる攻撃魔法を可能な限り叩き込みたい衝動にかられる。

 震えて崩れ落ちそうな膝を意志力で支えてエンリによる審判の時を待つ。

 

「ね……ねえ、ンフィーレア。一つ聞いても……良いかな」

「う、うん」

「ンフィーレアは有名人だから、私なんかよりももっと綺麗な人とか偉い人とか、私よりもンフィーレアにぴったりな人がいると思うの。それなのに、どうして私なの?」

「ぼ、僕は……エンリに初めて会った時から、ずっと好きだった。一目惚れ……だったんだ」

「……そっか。ずっと私の事想ってくれていたんだ。ずっと、気づかなくてごめんね」

 

 ごめんねとは言われたが、それは拒絶の言葉ではなかった。

 

「大丈夫だよ、こうして言えたから。……それで、返事を聞かせてもらえるかな?」

「うん。ンフィーレア……不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 顔を赤く染めながらのエンリの返答に、ンフィーレアは長年の思いが成就した喜びを噛み締めて嬉し涙を流してエンリを抱きしめる。

 そしてエンリと結ばれるきっかけを与えてくれたハムスケに、ンフィーレアはお礼を言う。

 

「森の賢王様、ありがとうございます! あなたが後押ししてくれていなかったら、僕はずっと踏ん切りがつけられなかったと思います」

「いや~、それほどでもないでござるよ~」

 

 なお、エモット家の家族に二人の交際を伝えたところ、エンリの妹のネムから「やっとお姉ちゃんに言えたんだね」と言われ、ンフィーレアは自分のエンリへの恋心がエンリ以外の周囲にバレていたことを知って膝から崩れ落ちたりしている。

 

 

 ────────────────────

 

 

 ンフィーレアがエンリに一世一代の告白を行っている頃、モモンガ達はンフィーレアを護衛していたクラルグラの面々に冒険者について様々な質問をしていた。

 クラルグラの面々は依頼人(ンフィーレア)が惚れている村の少女であるエンリから、この村には亜人を連れた二人組が数日前から宿泊していることは事前に聞かされていたので、警戒こそしているが武器は取り出していない。

 モモンガとペロロンチーノが身にまとっている装備が一目見ただけで分かるすさまじい逸品であることに、嫉妬心を燻らせているイグヴァルジを他のメンバーがフォローしながら、彼らの目的を探るために注意深く観察しながら質問に答えていく。

 やがて、一通り聞きたいことを聞き終えたのかモモンガは一息つくと、残念そうに答える。

 

「冒険者って……思ったより夢のない職業なんですね」

「おい、散々人を質問攻めにしといてその反応はねえだろ。まあ、俺も子供(ガキ)の頃に詩人の英雄譚(サーガ)で英雄に憧れて冒険者になった口だから、気持ちは分からなくはないけどよ」

「おお! イグヴァルジさんは立派な夢を持っていますね。羨ましいなぁ……」

 

 モモンガの感心しているような声色と反応に、イグヴァルジは先ほどまでの不機嫌な気持ちが幾分か薄れて上機嫌に語る。

 

「大抵の奴らは現実に打ちのめされて諦めちまうもんだが、俺達は違う。今はまだエ・ランテルに三組いるミスリル級だがいずれはオリハルコン、最高位冒険者の証であるアダマンタイト。そして世界を救ったと言われる十三英雄と同等になるんだからな」

「つまり、イグヴァルジさんは伝説の再臨を目指しているってことか。……だったらさ、俺達は俺達でこっちでも自分が思い描く冒険者になってみるのも良さそうじゃないかな、モモンガさん?」

「あん? お前らはどんな冒険者を思い描いているんだ?」

「そうだねぇ……例えば世界中の分からない事、知らない事。つまりは未知を見つけ出して既知に変えて、世界を狭めていくことかな? ユグドラシルでもそういう冒険をして楽しんでいたし」

「……ああ、それ良いですね。あそこでは未知を楽しむことを目的とした冒険を奨励していましたっけ。私達がこれこそが冒険者だっていう感じの冒険をして、そうした旅の思い出を冒険譚として広めていく。……うん、おもしろそうだ」

「ユグドラシル? 聞いたことがないが、何処なんだそりゃ?」

 

 聞いたことが無い言葉に、話の流れから国か何かの名前だと当たりをつけながらイグヴァルジはモモンガ達に説明を求める。

 

「うーん、なんて言えばいいかなぁ。今はもう無くなってしまった国、いや……組織が近いのかなぁ」

「大雑把に言えば、ある神話にある9つの世界になぞらえた地名を持つ領域を管理・運営していた組織が、その領域をまとめた総称です。以前は私やペロロンチーノさん、それに他の仲間と一緒にそこで冒険とかしていたんですよ」

 

 モモンガ達の返答に、イグヴァルジは直感で富や名声の気配を感じ取った。

 モモンガ達の装備はこの辺りでは一度も見たことが無いような、それこそ神話や伝説に語られるような圧倒的な存在感を放っている。もし、これらの装備に話に出たユグドラシルという場所が関わっているとしたら、自分が英雄となるためにも是非ともその地に行ってみたい。

 気がかりなのは、ペロロンチーノの無くなってしまったという言葉だ。強大なモンスターに滅ぼされたりしたのが原因だとしたら、相当危険な旅路になるからだ。

 

「そんな場所があったなんてな。無くなったって言っていたが、何があったんだ?」

「探せる未知が枯渇して参加者が減った事で運営が維持できなくなって解散したんです。ユグドラシル自体がずっとずっと遠い所ですし、最後は誰も彼も持ち出せるだけ持ち出していたので目ぼしい物はもう残っていないと思います」

「マジかよ、世知辛えなぁ……」

 

 破産した商人のような幕切れにイグヴァルジは肩を落とす。嫉妬深く目先の利益に釣られがちなイグヴァルジにも好奇心や童心は残っているのだ。

 その様子を見た他のメンバーが、「あの様子だと何か一儲けしようとしてたな」「こういう所が治れば、リーダーとしては優秀なんだけどな」と苦笑している。

 

「それで、クラルグラの皆さんは薬草採取と護衛の依頼でこの村を訪れたと聞きましたが、村を出発するのはいつ頃になりますか?」

「なんでそんなこと聞くんだよ」

「実は私たちも近々この村を出発する予定なのですが、次の町や都市まで同行させて頂こうかなって思いまして。この辺りの土地勘がある方と一緒だと心強いですし」

「そこは俺達じゃ判断できないから依頼人に聞いてくれ。っていうか、エ・ランテルに着いたとしてもお前らは入れるとは限らないぞ」

 

 イグヴァルジが指摘しているのは、ペロロンチーノについてだ。明らかに人間ではない、おそらくは亜人の彼を門番が快く迎え入れるとは思えないからだ。

 

「そこはまあ当てがありますので大丈夫なはずです。ダメだったらその時はその時で考えます」

「出来れば普通に入れるといいな~」

「当てが何なのかは分からねえが、俺達や依頼人には迷惑をかけるなよ」

「ええ、そちらには迷惑はかけないようにします。それでは私たちはこれで。色々とお話を聞かせて下さってありがとうございました」

「それじゃ~ね~」

 

 話を聞き終えたモモンガ達はクラルグラに会釈すると、その場を後にするのであった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 クラルグラとの会話を終えてモモンガとペロロンチーノは宿泊している家屋に戻ると、緊張をほぐすようにしながら椅子に座る。

 

「……ふぅ。危なかった」

「ペロロンチーノさんがユグドラシルの名前を出した時にはびっくりしましたよ」

「ごめんね。また冒険したいなっていう思いでついポロリと口走っちゃった」

「まあ、ユグドラシルについての設定(・・)を事前に決めておいたおかげで問題なかったたから良いですけど」

 

 モモンガとペロロンチーノは旅人という設定を補強するためのアンダーカバーとしてユグドラシルを利用することにした。

 ユグドラシルからこの世界に来たこと自体は間違ってはいないし、おそらくだが既に存在していないのも嘘ではない。

 周囲と比べて装備や常識が異なる部分も、はるか遠い地にいたからという事にすればある程度は緩和されるだろう。

 問題があるとしたらユグドラシルのアイテムを使用していたスレイン法国のように、プレイヤーの存在が疑われる勢力には見破られる可能性があることだが、それはそれでプレイヤーの存在を炙り出すことに利用できる。

 

「……それで、モモンガさんはこの世界でも冒険者をやります?」

「ええ。話では旅人のように定住しないで国々を回る冒険者もいるそうですし、そういう意味では俺たちにぴったりかなって思います」

「そうと決まれば、クラルグラの依頼人の少年にカルネ村を出発する時に一緒について行って良いか確認をしてくるね。エンリちゃんの話だとンフィーレア君っていう幼馴染で有名な薬師の孫だっていうから、俺達が持っているポーションで話題の取っ掛かりは作れるし」

「それなら俺も一緒に行きますよ。現実世界(リアル)では営業職でしたからそういう交渉は多少なら出来ますし」

 

 ペロロンチーノはそう言うと、ンフィーレアの所に向かうためにアイテムボックスからポーションを取り出すと布袋に入れてからモモンガと共に外に出た。

 二人は知らない。自分たちが持っているユグドラシル製のポーションが、この世界の薬師の間では“真なる癒しのポーションは神の血を示す”と言われる劣化しない完成されたポーションを指している事に。落ち着いた雰囲気だったンフィーレアがそのポーションを一目見た瞬間、強く興奮し始めた事にモモンガ達は驚かされるが、後日、彼の祖母の反応によってさらに驚かされることになるのは知る由もなかった。

 




この作品ではイグヴァルジが悪態をつかなかったおかげで、クラルグラの全滅ルートは回避されました。
気ままな二人と一匹の旅なので原作より警戒感が薄れ、核心には触れない範疇ではユグドラシルの情報を出していくスタイルになっています。

今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか

  • 該当する章の最新話(今のまま)
  • 新たに最新話の章を設けて、そこに投稿
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