帝国魔法省からの依頼を終え、地上船内の食堂でラキスケとツアレ、ビアンゴの三人が食卓を囲んでいた。
かつては彼らに加えて、ビアンゴの部下である5人のエルフの冒険者チーム「森妖」が同居していたのだが、現在彼らは帝国の帝都にある上位の冒険者が利用する酒場を拠点とし、この地上船を離れている。
ビアンゴとツアレが作った根菜類のたっぷり入ったシチュー、皿によそった分の最後の一口を頬張るラキスケ。柔らかくそれでいて崩れないように煮込まれた具材を咀嚼し、飲み込む。
「ご馳走様。美味しかったよ、ツアレ」
「ありがとうございます、ラキスケ様。私もその言葉が聞けて嬉しいです」
「今日の料理は私も一緒に作ったけど、ツアレちゃんってばシチューとかの煮込み料理は、私よりも美味しく作れるようになってきているから助かるわぁ」
鍋に残したシチューは《
これが一般的なワーカー係の住居とする酒場なのであったらばこみ入った話はできないが、ここは個人所有の地上船の中。普通ならば話に出せない内容も団欒の話題に出てくる。
「フールーダお爺ちゃんってば、今度は自分も乗せてカッツェ平野の例の遺跡に行きたいって言ったのね?」
「うん、他の遺跡では出てこなかった高位階のスクロールやマジックアイテムが出てきたからね。好奇心が抑えられなかったんじゃないかな。一応、ジルクニフにはちゃんと許可は得てからにしてとは言っておいたけど……」
「皇帝陛下に一声はかけるでしょうけど、許可が出るかは関係なしに来そうよねぇ」
「だろうなぁ……」
「そ、その場合お出しする料理は食べやすい柔らかいものにしたほうが良いでしょうか?」
「うーん……。固くなくてのどに詰まりにくくなければ、そこまで気を使わなくても大丈夫じゃないかしら?」
「後は、その時にはこっちからもジルクニフに連絡しておくことかな」
フールーダに関する話題を切欠に、団欒から次回の調査の時にやるべきことの相談に移る。
予定は未定だが一通り話を詰めたところで、ラキスケが帰りの話を振る。
「そういえばビアンゴ、そろそろツアレに俺たちの昔の話をしようと思うんだけど、どの辺りの話が良さそうかな?」
「あら、いきなりねぇ」
「ご、ごめんなさい。私がラキスケ様の昔のお話を聞きたいと話したからです」
「大丈夫よ、ツアレちゃん。そうねぇ……、どのあたりのお話がいいかしら」
ビアンゴは頬に手を当てながら考える。
まずは自分たちとラキスケが出会ったエイヴァーシャー大森林でのお話……。これはさすがに自分たちの都合に巻き込みすぎる。それにツアレの境遇が簒奪王関連でどのような影響を与えるかも未知数だから却下。
次は30年前にこの地上船を手に入れた話……。手に入れるところまではともかく、その後のごたごたはあまり気持ちのいい話ではないから却下。
となるとカッツェ平野でフールーダと自分たちが初めて出会った話……、この辺りがいいだろう。
「それじゃあ、私たちやラキスケがフールーダお爺ちゃんと初めて会った時の、カッツェ平野での出来事辺りを話すのはどうかしら?」
「いいね。今日はちょうどツアレもフールーダと顔合わせもしたことだし、昔はどんな人だったかもしれていいと思う。ツアレもそれでいいかな?」
「はい、よろしくお願いします。ラキスケ様、ビアンゴ様」
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ラキスケとビアンゴはその時のことを振り返って話始める。
「それは、私たちが祖国を出て行って、ラキスケと出会ってから間もない頃だったわ。出て行った理由とかは今回は端折るけど、祖国や法国からいったん離れるために、アンデッドが出現する呪われた地、カッツェ平野を徒歩で渡ろうとした時のことね。そこで私たちは、帝国騎士たちやフールーダお爺ちゃん及びその高弟たちと出会ったの」
「確かあの時は帝国騎士やフールーダの高弟たちは俺を見るなり臨戦態勢に入っていたっけ。後で聞いた話では、当時のカッツェ平野にアンデッドの軍勢が出現して集結しているのを察知して、それに対処するためにフールーダも含めて動員された兵力がそのアンデッドの軍勢の所に向かっているところだったそうだよ。そこにエルフを何人も連れた亜人と遭遇ときた。まあ、実際は亜人じゃなくて淫魔だけども。彼方からすれば俺らがその案件に何かしらかかわっている可能性が高いって思ってもおかしくないんじゃないかな」
「尤も、私たちはそのことを知らなかったから法国がすでに手を回していたって勘違いしちゃってね。帝国まで動員してくるなんてって思ったわ。お互いに勘違いしたまま一触即発の状態になったところで私を見たフールーダお爺ちゃんがいきなり言い出したのよ」
『あ、ありえない! この巨大な力の奔流は私の力を超えておる。よもや……第七位階の領域に到達しているというのか! これはきっと魔法を司るという小神の思し召し。失礼と知りながらも伏してお願いいたします! 私、このフールーダにあなたの教えを与えてください! 何卒、何卒!』
「あの時は正直驚いたわねぇ。故郷でも私が使える魔法の最大位階を知る者は少ないって言うのに、それを一目見て言い当てたのもあるけど、いきなり地面に額を擦りつけて弟子入りを懇願してきたのだもの。思わずポカーンとしちゃったわよ」
「まあ、それ以上にフールーダの周りにいた
『パラダイン様、お気を確かに! お前たち、パラダイン様を誑かすあの者達を捕らえろ! パラダイン様が到達していない第七位階を使えるなど、デマカセに決まっている!』
『ええい、離さぬか! お前たちもそのような無礼なことを止めよ! 今まで私の
『えっええ、私は別に構わないけれども……。貴方たちのこの大所帯、何か探しているの?』
『ええ、その通りでございます。このカッツェ平野に出現したアンデッドたちが一か所に集結しつつあるという情報が入り、それを討滅するために編成・投入された帝国軍にございます』
『パラダイン様ぁー! 機密、機密情報!』
「あの時、必死にツッコミ入れていた高弟にはちょっと同情しちゃったなぁ」
「適当にはぐらかされるだろうって私自身も思っていた質問に答えられたら、配下の者達も焦るわよ」
「そ、そうだったのですか。私がお会いしたフールーダ様とはだいぶ印象がその……、違いますね」
「ツアレ、正直に言っても良いんだよ。当時のフールーダは魔法キチだったって」
ラキスケたちが初めて出会った時のフールーダの事を聞いたツアレは、帝国魔法省で話をした彼とのギャップに戸惑い、ラキスケは優しい眼差しで答える。
「今でこそ大分丸くなったけど、当時のフールーダお爺ちゃんは、魔法のためならば他の全てを投げ売っても構わないっていう危うさがあったものねぇ」
「そうだなぁ。なまじ、
「
ツアレは自分の胸に手を当てながら呟く。今でこそ自分の
「俺は好きだよ、ツアレの
「うぅ……。言葉だけだと嬉しいのに、内容を知っていると恥ずかしいです」
「ちょっと、ラキスケってばそれはセクハラよ?」
「あっ……その、ごめん」
「話が逸れちゃったけど、カッツェ平野での話だったわね。そんな感じで帝国軍と一悶着があったけど、そうこうしている内に騒ぎを聞きつけたのか、それとも生きている命が集まっているのを感づいたのか、アンデッドの軍勢がやってきたのよね」
「ああ、それも十や二十じゃない。明らかに作為的に産みだされ、集められた千に届きそうな数のアンデッドが奇襲してきたんだよな」
『パラダイン様! わが軍の両側面よりアンデッドの軍勢が突如出現、攻撃を仕掛けてきました! 数は目視できるだけでともに百を超え、
『何? この地は常に薄い霧が張っているとしても何故そこまで接近を許した! ……そうか、広範囲化した《
『フールーダお爺ちゃんで良かったわよね? 明らかにやばい状況だけども、私たちも手を貸しましょうか?』
「明らかに放置できるような状態じゃなかったから、こっちから協力を申し出たのよね」
「あの状況で我関せずと言って逃げても、安住の地は無かっただろうしなぁ。副官と思しき軍人は拒絶していたけど、フールーダが執成してくれて助かったよ」
『貴様らごときに我らが手を借りるだと、ふざけるな! そもそも、このアンデッドも貴様たちの差し金ではないだろうな!?』
『そのようなことを言っている場合ではなかろう! 恥を忍んでお願いいたします。強力なアンデッドを含む軍勢に挟撃され、このままでは全滅する恐れもあります。どうか我らに協力してはいただけないでしょうか?』
『そんなに畏まらなくていいのに、分かったわ。報酬とかは後で相談するとして、まずはこの場を切り抜けましょう。私たちはフールーダお爺ちゃんと一緒の方に行くから、ラキスケは反対側の方をお願い』
『分かったよ。生きている兵たちを治療してアンデッドたちを殲滅したら、そっちの方に行くから』
「とまあ、こんな感じでフールーダからの緊急依頼っていう体裁をとって帝国軍と共同でアンデッドの討伐に参加することになったの」
「ここからは順番的にまずは俺が担当したほうを思い返していくか。そのあとビアンゴ達の方を話して、合流後の話という順番かな」
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──スケルトンにモーニングスターを振るい砕く、砕く、砕く。
──剣を振るいスケルトンウォリアーを切り裂きながら、剣から放たれた炎で周囲のスケルトンを燃やし尽くす。
──
スケルトン系で構成されたアンデッドたちには戦場を駈ける暴風として、帝国兵には傷を癒す施しの風としてラキスケは任された戦列を駆ける。
ラキスケが左手に持つモーニングスタ──―グッドモーニングver5.1は特別な効果を持たない
右手に持つ剣──シグナルバスターも同じ
他にも様々な装備で基本的な状態異常には完全耐性を、属性攻撃や特殊な状態異常に対しても高い耐性を持つラキスケを止められる手段は、アンデッドの軍勢はもちろん辻斬りならぬ辻ヒールを受けている帝国にも持ち合わせていなかった。
「守りながらこの数を相手にするのはさすがに面倒だな」
始めは帝国兵たちに群がり、接近したラキスケにも攻撃を仕掛けていたアンデッドたちだったが、瞬く間に100体近く滅ぼされてからは
アンデッドたちを一か所に固めずに分散させているのも嫌らしい。ラキスケが突っ込めばその分帝国兵たちから離れることになり、残るアンデッドたちに再び襲われることになる。スケルトンは一体一体は弱いが、未だに数百入るうえに帝国軍の精鋭でも複数でかからないと危険だと言っていたスケルトン・ウォリアーも10体以上混ざっている。
(こういう時、モモンガさんならばアンデッドたちを支配するなりスキルで生み出したアンデッドたちで手数を増やして一掃することもできるんだろうなぁ)
ふとユグドラシルで所属していたギルドの長であるモモンガのことを思い浮かべる。他にもワールドチャンピオンのたっち・みーならば白兵戦だけでも守りながら殲滅はできるだろうし、ワールドディザスターのウルベルトならば一撃で殲滅することも容易いだろう。ペロロンチーノだって有翼の爆撃王の二つ名に恥じない活躍を見せるはずだ。
ラキスケは回復型タンクというビルドの都合で殲滅力に関してはあまり高くないと自覚している。第十位階の信仰系魔法でまとめて一掃することも考えたが、この殲滅戦が終わった後に友好的なままとは限らない相手を前に手の内はあまり晒したくない。単純に、レベル一桁から高くても20台程度の相手に使うのがもったいないし恥ずかしいというのもある。
(考えてみれば俺だけで殲滅する必要はないし、帝国軍の兵士たちを強化してやれば楽になるかな?)
そう考えて助けた帝国兵たちの方に顔を向けると、相手は此方をまだ警戒しているのか、怯えながらも剣を構える。
ラキスケはちょっと失礼だなと思いながらも、自分が逆の立場だったらばしょうがないかと思うことにして声をかける。
「今からあなたたちに強化魔法をかけてからアンデッドたちに突っ込むので、私がいない間は耐えてくださいね」
帝国兵たちが口々に何かを言っているが、気にせずに順次《
《
これだけ掛ければスケルトン・メイジやスケルトン・アーチャーの援護を受けたスケルトン・ウォリアー相手にも遅れはとらないだろうとラキスケは判断する。
上位魔法で彼らを強化しないのはこのくらいでも十分と判断したことと、手の内を明かさないためである。
「それでは、
そう言って、ラキスケは幾つかに分かれたアンデッドのグループの内、
2体の
「く、来るなっ! 《
「いや、効かないから。それじゃあね」
「お許しを……、アップ……アウト様」
「アップアウト? このアンデッドたちを支配している奴の名前か?」
滅びゆく
────────────────────
「ラキスケ様が戦った方は随分あっさりしていましたね」
「まあ、この時点でやっていたことと言えば、砕いて切って回復してばっかりだったからねぇ。帝国兵たちへの支援の効果がどのくらい影響したかとかもあまり見ないで残りも挟み撃ちにして殲滅しちゃったし。そのあとすぐにビアンゴと合流しに行っちゃったから帝国兵がどういうことを言っていたかとはよく聞いていなかったんだよ」
淡々とした内容に、ツアレは感想を漏らす。
この場面、実は帝国の劇で美化されたうえで吟遊詩人などによって繰り返し脚色された結果、流離の騎士が危機に瀕した都市を帝国の騎士たちと共に守るため、首魁である
「次は私たちが担当した戦線の方ね。こっちはフールーダお爺ちゃんたちと協力していたことともあって、帝国兵とは比較的スムーズに協力できたわね。役割も下級のスケルトンたちは帝国兵と『森妖』のみんなが、
「こっちの敵は俺が尽く倒したからなぁ。協力らしい協力はしなかったな」
「
「なにそれ、凄い見たかった」
この世界では位階魔法に対する絶対耐性を持つとされていた
当時はフールーダでも第六位階であったことから結局は召喚魔法でないと位階魔法では倒せないという認識が多数だったが、第八位階まで上り詰めた今では「
「問題は、フールーダお爺ちゃんが
「それって、ラキスケ様の話の方で最後に出ていた……」
「そう、ズーラーノーンの十二高弟の一角にして
フールーダが落ち着くようになる前の、魔法キチな表現が難しい。
今後、最新話を投稿する際の投稿場所は、何処が良いか
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該当する章の最新話(今のまま)
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新たに最新話の章を設けて、そこに投稿