その日も一晩かけてたくさんの男たちの精を浴び――自宅への帰路すらプレイの一環。膣にはふたつ、クリトリスにはひとつ。性感帯への甘い刺激は、男たちから離れてなお止むことはない。そんな、ローターによる振動に耐えながら、三葉は朝の電車に揺られている。あの人たちのおちんちんはどんなだろう……と、乗り合わせた乗客たちを視姦しながら。
そんな
すぐに走り出そうとするも……
――瀧君……!
懐かしい想い人――初恋の相手――そんな男と出逢ってしまっては……三葉は想いを抑えきれない。
「…………っ❤」
じっと目を合わせただけで――絶頂。三葉は砕けた腰を、手すりに掴まり何とか支えた。
しかし、そこから先はまさに視姦。瀧君……瀧君……瀧君……の、おちんちん……❤
三葉は、それをはっきりと覚えている。柔らかく垂れ下がるところも、力強く上向きに憤っているところも。
メスの目には、もはやそこしか映らない。
まるで、透視するように、ズボンの皺一つひとつから、中の様子を思い描く。
おちんちん……いまは、寝てる……
でも……
三葉は階段の頂きで、瀧が上がってくるのを待っている。
ただただ、愛する
それを受け入れるために自分の性器を濡らして。
そこまでしっかりと見つめられれば、瀧とて人違いや勘違い、記憶違いを疑うことはない。潤んだ瞳を真っ直ぐに受け止め、一段一段着実に、それでも
なればもう、三葉には自らの想いを押し留めることなどできようもない。
瀧もまた、胸へと飛び込んできた女性を優しく抱きとめる。
だが……?
どこか様子がおかしい。熱っぽく息が荒いだけなら体調不良を疑うところだろう。しかし、それはもたれかかるというより擦り付けるように。それも股間を、胸を。
このように発情する女を、男子はよく見知っていた。ゆえに、瀧はその名を呟く。どうしても、確かめずにはいられなかったその名前を。
「……
動画で何度も観てきている。きっかけは、何故だか彼女のサムネイル画像に惹かれて。ファンになるのに時間はかからず、気づけばすべての作品を網羅していた。
みみみが出演するのは決まって乱交モノ。それもとびきり淫乱で、嬉々として男根を咥えこんでいた。穴さえあればどこへでも、という勢いで。
そんなえげつない痴態を
だからこそ、車窓越しでも見過ごすことはない。その雰囲気だけで本人だと察し、思わず我を忘れて食い入っていた。それを感じて三葉もまた、外を見る。
瞬間、交錯する視線と視線。
それで――記憶が蘇ってきた。
同時に、当時の想いまで。
三葉の中に先ず過るのは罪悪感――大切な相手と一度は心を繋ぎ合わせていながらそれを忘れ、他の男との肉欲に溺れていたことを。
だが、続いて押し寄せてくるのは恋心――そして、性的本能――!
知られたくはなかった――こんな汚れた自分など。
それでも、この気持ちには逆らえない。
欲しい――瀧君が欲しい。
裸になって――瀧君も裸にして、抱き合いたい。
おまんこにおちんちんを
いますぐ、ずっと、何度でも……!
こんな醜い欲望を、再開したばかりの男のコにぶつけても良いものか、と三葉は迷う。けれど、彼はその名を呼んだ。乱れた自分につけた名前を。
だったら。
少なくとも、知った上でこうして抱きしめてくれているのなら……!
「犯して……ください……」
それはまるで、AVのワンシーンのように。
「私、もう我慢できないんです! おまんこに……おまんこに、おちんちん下さい……っ!」
カメラに向けられていた熱っぽい視線。見慣れたモニタ内での光景が、いままさに現実として瀧の目の前に存在している。だが、男子の胸中は複雑だ。かつて、恋した少女が、大きくなって乱れている――口噛み酒であんなに狼狽し、変態呼ばわりしていた本人が、それとは比べ物にならない変態的な誘惑で。
「欲しい……欲しいのぉ……んん……っ❤」
顔と顔とが繋がり合えば、中から唾液を吸い出すかのような厭らしい口づけ。舌を絡ませながらも――その手付きは完全に慣れている。男の股間をスっとなぞると、ズボンは一筋に切り開かれた。その隙間から
すると、男の
「……っ!」
女の指にしっかりと握りしめられ、瀧は性感の前に辺りを窺う。幸い、間近に人はいないようだが……先程、階段の下から上がってこようとした人が、引き返していったのが見えた。遠目でもマズイ状況なのだろう。なのに……
「んふ、ん、ふっ、ん……」
唇にも、舌にも、そして激しく揺さぶられる右手にも、男の
理性と本能の間で葛藤する瀧に対して、三葉にとってはいつものこと――どころか、この程度はまさに茶飯事だ。男が傍にいるならば、そこを咥えずにはいられない……!
「はぁ……はぁ……っ! おちんちん……おちんちん舐めたぁい……❤」
唇を離し、間近で息を吹きかける。その生温かい風は顎へ、襟元へ、目指している先へと急降下。
「あ、あぁ……おちんちん……おちんちん大好きなのぉ……❤」
すっぽりと口の中へと収めたと思えば、今度は離して舌先でくすぐる。外気に触れる冷たさを感じるほどに、再び吸い付いてくる温かさはどこまでも心地良い。
「んふ、んふぅ……、あはぁ……❤」
嬉しそうに瀧の顔を見上げる三葉だったが、ふいに視線を横へとそらす。瀧もつられてそちらを見やると……
「……っ!」
今度は間違いない。階段の上側、ふたりのすぐ傍を――間違いなく瀧とも目が合った。T字路を横切りながらこちらを覗き込んできた女性は、即座に足を速める。それは、恐ろしいものから逃げるように。
だが、三葉はいまも笑顔のまま男を咥え続けている。
これ以上は……もう……!
「ホっ……ホテルへ行きましょう……!」
こんなところで続けるのはあまりに危険だ! 不安に押し潰された瀧に対して、三葉はむしろ悦びを膨らませる。
「はい……っ!」
やっと、一番欲しいところにもらえるんだ……❤ その期待が、再び彼女を絶頂へと誘おうとする。
が、締まる内側の異物感で思い出した。家に着くまで
「……あ、ちょっとだけ待っててもらえる?」
卑猥な行為の途中とは思えないほど自然に、三葉は鞄からスマホを取り出した。そして通話の先は、いつもの相手。先方も三葉からの報告を待っていたため、その発信にはすぐ応じてくれた。
しかし――
「え……」
帰る途中でどうしてもおちんちんが欲しくなってしまった――せめて膣の方だけでも取り除きたい。そんな懇願に対する返事は――
「ごめんなさい、その、取るなら、
瀧には、三葉が何を言っているのかわからない。取るも何も、彼女の身に何が起きているのか知る由もないのだから。
しかし。
「駅前のホテルならともかく、自宅までなんて我慢できない。だから……その……ごめんなさい!」
と謝りながらも、三葉の頬はみるみる緩んでいく。これから、瀧君の前で
瀧が三葉から押し付けられたスマホには、石畳の階段が映っている。通話先の顔は見えないが、どうやらこの景色が送られているようだ。
「こっち! 早く……こっちに向けて!」
三葉に急かされるがままに、瀧はその姿を枠に収めた。
「おちんちんは、そのまま魅せててね? 私を
少なくとも、撮影者の股間がカメラに入ることはないだろう。だが、こんなものを放り出して撮影などしてるところを通行人に
瀧は周囲が気になりつつも、これから三葉が行おうとしていることから目が離せない。
「あは、じゃあ……脱ぐね」
ベルトを緩め、サブリナパンツを下ろしていく。中に、下着は穿かれていない。代わりに見えるのは……丸い、何か。それが、割れ目へと食い込み、しっかりとテープで貼り付けられている。コードの類は見られないが、いまもブルブルと振動を続けているようだ。いつからこうだったのか、瀧は知らない。が、少なくとも、ここで言葉を交わしていた間は、ずっと。
剥き出しになっていく下半身を見ていると、まるでトイレの個室を覗いているかのようだ。それでも瀧には、これを止めることはできない。その意図がまったく理解できず、そして、あまりにも魅力的すぎて。
そんな視線を受けながら、三葉は靴を脱ぎ、パンツをしっかりと脱ぎ捨てた。完全にそこから足を抜いたところで……再び靴を、履き直す。下半裸とも違う――靴だけ残した異様な姿で、三葉はそこに立っていた。これはもう、男をズボンからこっそりはみ出させるどころではない。すぐ横の直進路は当然、階段の下からだって、その異様さに気づくだろう。
それでも、瀧に三葉を止めることはできない。そんなことをしては、通話の向こう側の男たちからより酷いことをされてしまうに決まっているから。ならば、これからしようとしていることを、最後まで見守るしかない。このまま、カメラ越しで。
「頑張って
少し足を開き、トップスの裾を捲り上げると……それは股間を顕にするだけでは留まらない。おへそを越えるのは明らかに過剰。そしてそのまま、鎖骨の下まで……!
「あはぁ……はぁ……あぁ……」
股間から胸まで、すべてを魅せている。恥ずかしいところを、すべて。そしてこれから、もっと恥ずかしいことをするのだ。
それを、瀧君に
「ん、ん……」
三葉は、下腹部に力を込める。すると――
コロン。
その音を、瀧の目は思わず追っていた。それは未だ、ビクビクと三葉の足下を跳ね回っている。あの球体がどこから落ちてきたかは明らかだ。
そして、それを再確認するように。
「もう一個……あるから……」
三葉はさらに力み続ける。手に握る服もまどろっこしく、そのまま上まで引き抜いてしまった。自分の頭上で高々と両腕はまとめ上げられ、裸の三葉はすべてを曝け出す。残るひとつの障害を取り除くために。
「あっ……はぁ……っ❤」
コロン。同じものがもう一つ、糸を引きながら飛び出してきた。これで彼女を妨げるものは何もない。
そう、何も。
「あ、あ……❤」
おしっこ、
ビチャビチャビチャビチャ……
「はぁ……あぁ……あぁ……❤」
それを隠すことなく、むしろ腰を突き出すように。迸る飛沫をカメラに、そして大好きな男のコへと魅せつける。
ここまでやる必要はなかったけれど……瀧君のおちんちんが悦んでくれるのなら、三葉としてもやり甲斐はあった。
「ありがとう、もう……大丈夫」
両腕をモゴモゴさせたまま、三葉は自分のスマホを受け取る。だが、床にこんな痕跡まで残してしまっては、もうここに留まることなどできない。すぐさま服を着せて、どこか安心できるところまで逃げたいところだが――
ヴヴヴ……ヴヴヴ……ッ!
新たなバイブレートが瀧をこの場に縛り付ける。
そういえば、出社の途中だった! 瀧は慌ててポケットからスマホを取り出す。
「も、もしもし……」
出逢った瞬間は、懐かしい愛しさから。しかし今は、こんな彼女をそのままにして良いのか、という不安から。どちらにせよ、今日は仕事などしていられない。
それに加えて。
『立花さん、今朝は社外清掃の日ですよ』
しまった、
「すいません、通勤途中で体調が悪くなりまして……」
その虚言を聞き、三葉に悦びが込み上げてくる。きっと、これからずっと瀧君は自分のことを可愛がってくれるはずだ。もしかすると、週末もずっと。そんなの……幸せすぎる……❤
先は長いのだから、などという余裕は三葉にない。盛り上がった気持ちのまま、背を向けお尻を突きつける!
だが、さすがにここでは……。瀧は二歩三歩と後ずさるが、三葉に諦める様子はない。さらに追い詰め、まとめられたままの両腕を股の間に差し入れてきた。片手が埋まっていても男のコの誘導くらい造作もない。まさに超至近距離で。そのまま三葉は自分たちの局部を映し続ける。
それに気づかず、瀧は通話を続けていた。
『でも、今日はミーティングでしょ? どうするのよ』
そんな先輩からの問いかけを受けつつ、瀧は唸る三葉の背中を眺める。
「ん、ん、ん……❤」
相手にとってはいつものことだが、瀧にとっては初めてのこと。童貞卒業は、電話を掛けながら。それも、こんな道端で。あたかも立ち小便を済ますかのごとく。男性器は、女性の膣にすっぽりと収まっていた。
気持ち良くないはずはない。かつて、夢にまで思い描いていた行為だ。しかし、本当にこんな……呆気なく……?
そのまま壁に押し込まれては逃げ場もない。下がることができないのなら、あとは前に進むだけ。耳には受話器を当てながら、瀧は腰を前へと突き出す。快楽に、流されるまま。
「資料なら、共有フォルダに、上げて……ますから……っ」
三葉の
『あ、そうなんだ。確認するからちょっとだけ待っててね』
「は、はい……」
無言で待つのは身体に堪える。意識がすべて敏感なところへ持っていかれてしまうから。三葉は、腰を振りながらスマホをいまも自分に向けている。それで瀧も気がついた。まだ、見知らぬ誰かからの視姦は続いていることに。
心配して三葉の様子を窺うも……それは杞憂。
「……、……ん、……❤」
嬉しそうに喉を鳴らしながら、顔だけでなく、胸や股間を様々な角度で。三葉は、この危険な行為を心から楽しんでいるのか……! 瀧の中でも、少しずつ良識が崩れていく。これまで、心のどこかでみみみの動画は演技であり、
「ん、ふ、ん……んん……♪」
これは現実なのか。それとも、脚本のある撮影中なのか。ただ、気持ち良くて――何より、気持ち良さそうな三葉が嬉しくて――またしても階段の下から覗かれたのも構わず、瀧は目の前の女性を愛で続ける。
これに、三葉の悦びはさらに大きくなっていた。会話が中断されたことで、自分への打ち込みも力強くなっている。話半分ではなく、一心不乱に自分を求めてくれていることが嬉しくて堪らない。その快感を伝えるように、女もまた男を締め上げる。だが、それだけではまだ足りない。腕を拘束する邪魔なものを取り除き、ついに――全裸。自由になった指先で、瀧の空いた手を引き寄せる。
自分の胸へ。
その先の乳首へ。
もっと強く、握り潰させるように!
「んんっ、ん、んん……っ」
その手触りは、瀧にあの頃を彷彿とさせる。自分の身体として、密かに
「ぁっ! ……ん、んん……❤」
思わぬ快感に、三葉から少しだけ声が漏れた。それで、改めて確信する。私たちは、身体を入れ替えていた。そして――私の身体を吟味していた。
そこに憤怒や羞恥はない。あるのは、歓喜だけ。瀧君が、自分の
でも、ここだけは知らない。
おちんちんを咥えこむ、おまんこの気持ち良さだけは。
「んっ、ふっ、ふっ、ぅん……」
胸へと向けて身体を倒しているので、三葉の息との距離も近い。新たな性感帯への愛撫も加わったことで、さらに熱くなっているようだ。それは瀧からも余裕を奪っていく。早く、早くしてくれ……! いや、この際逆に時間をかけてくれればそれまでに――
そんな瀧の思惑は叶わず、最悪のタイミングで返信が来る。
『もしもし立花さん、ミーティングの資料見つけたわ。中身も確認させてもらったけど、これなら、私でも引き継げそうね』
「あ、ありがとうございます……」
自分は今まさに、女の人を犯しているというのに。上司とはいえ女の人の声が聞こえると、まるで見せつけているように思えてくる。
『ホントに体調悪そうね。大丈夫?』
「あ、は……ぁ……っ!」
ドクン、ビュクン、ビュクル、ビュクル……
当然のような
『じゃあ、あとは私が任されたから、今日はゆっくり休んでね』
「はい、ありがとうございます。すいませんでした……」
こんな、破廉恥なことをしてしまって。
身体的な満足感は、あった。
精神的な充実感も。
だが、このような場所で、
会社の人間と話しながら――
瀧は己の弱さを猛省する。
しようとした。
が――
「あはぁ……あったかセーエキ、ありがとうございましたぁ……❤」
肩越しに魅せる三葉の笑顔に瀧は――理性のすべてを溶かしていく。
今日のところは、これで良かったのだろう。
何故なら、三葉がこんなにも嬉しそうだから。
赤の他人に
上司と――女性と通話しながら性行為に及んでいようと、
三葉が、それを求めているのなら。
これまで他の男から得てきた幸せに負けないくらい、自分が三葉を幸せにしてやりたい。
そう割り切れたことで――瀧の中からも恥じらいは消えた。
スマホはもう、自分たちを撮していない。さっきの射精をもって、ようやく終えてくれたようだ。
ならば……どこまででも付き合おう。
少しだけ弱気になったことで、ふたりの繋がりは抜け落ちていた。それで、絶頂した
「ん、んふ……♪」
場所も的確で、力加減も丁度いい。できれば、このまま二度、三度と飽きるまで抱き合っていたいけど――
「タクシー、呼ぶね。あ、お金は心配しなくていいよ。
その言い回しに、瀧は少しだけ心を濁す。だが、それさえも受け止めることができた。三葉は――初矢津みみみは、きっと自分ひとりに収まる
三葉が呼び出したタクシーは自称――などではなく、意外なことに、れっきとした会社所属だった。にもかかわらず、メーターを回すことはない。料金はいつでもどこまででも定額である。
そのうえ、三葉が言うように、理解のある顔見知りらしい。
「はぁん、あぁっ、ん……❤」
きっと三葉は、これまで何度もこのようなことを繰り返してきたのだろう。瀧以外の男を連れて。だから、裸で乗ってきた女に驚くこともまったくない。そのまま車内で抱き合い、舌と舌どころか、性器と性器で愛し合っていても。
どこまでも理解があるようで、外からの視線を避けるように大通りではなく細道を選んでゆく。車両は三葉の住むマンションの駐車場へと辿り着いた。しかしここで、瀧だけ降ろされ、三葉はそのまま車内に残っている。これから、運賃の支払いを済ますために。
「んっ、はぅん、はぁっ、あはぁ♪」
ここまで瀧を咥えていたところに、続いて運転手のモノを。だが、大好きな相手の前で続けるほど酷ではない。
「私の部屋、102号室だから」
鞄から取り出したのは、自室の鍵だと思われる。動画で
室内に椅子の類は見当たらない。なので、瀧はベッドに座って家主を待つ。風俗店の待機室ってこんな気持ちなのかな、と下らないことを想像しながら。
ここまで送り届けてくれた中年男は年相応に射精も速い。ただ、三葉にも
「三葉……」
「やっぱり……瀧君だ……」
その髪型――二本の三つ編みを束ねてのポニーテール――これは、東京に来てから辞めていた。それに戻すのは七年ぶりである。互いに身体を交わしていた頃に戻るために。
一方瀧にとって、それは初めて見る姿だった。彼自身にこのような髪型を作るだけの技量はない。ゆえに、裸の彼女と、その頭部が一致することはなかった。
それで、改めて理解する。これが三葉――俺の愛した宮水三葉なのだと。
だからこそ悩む。いまさら彼女を、彼女と呼んでいいのか。
瀧にとっては、動画の中での存在の方が大きい。
女優としての三葉を、どうしても重ねてしまう。
ならば、いっそのこと――
「みみみさん……?」
一度は本当の名を呼んでくれたのに……三葉は少し寂しく思うが、彼から軽蔑は感じられない。
あるのは、むしろ気遣い。自分に対する深い配慮。
だからこそ、三葉は瀧に甘えたい。
「ふたりきりのときは……三葉って呼んでもらっていい?」
「三葉……」
みみみという名のAV女優は自分のもうひとつの顔。別人格だと切り分けるつもりはない。
「ごめんね、瀧君……ごめんなさい……」
理性が快楽に負けてからというものの、他人に裸を魅せることに迷いはなかった。しかし、本当の相手と、本当の名を呼び合ったことで少しだけ恥じらいも芽生えてくる。
しかし、やはりその先にある期待の方が、遥かに大きい。
「私はね……」
三葉は座る瀧の足下に跪く。それは
「宮水三葉は、おちんちん大好きなの」
そう囁きながら股間のファスナーに手を当てるが、もう瀧も抗わない。
「危険日まんこに
ペロリ、ペロリと少しだけ味わうが、もっと欲しくなってくる。それを求めるために、三葉はベルトに指をかけた。
「赤ちゃん産めなくなっても、それでもおちんちんが……おまんこに
腰回りを緩めると、瀧は自らお尻を浮かせる。その下を通すように、三葉がズボンを引いていくと、下着の穴へと大好きなものが吸い込まれていった。
「きっと、これからもいっぱいおちんちん
ピョコン、とソレは再び飛び上がる。今度は申し訳なさそうに覗くだけでなく、根本を包む毛まで顕にして。
「おちんちんは、みんな大好きなの。おまんこに
そこに唇を付けながら、自らの割れ目を指でなぞる。男性器がそこにある限り、三葉の女性器は発情し続ける。その快感を求めて、いつ、いかなるときでも。
「おまんこだけじゃない。おくちにも、おしりにも……手でもシコシコしたい……」
ぎゅっと両手で幹を握り、膨らんだ頭をチュポンと咥える。
「おっぱいでも挟みたいし、乳首やクリトリスでもおちんちんコリコリしたい……」
身を乗り上げると、今度は手ではなく胸の間で。そこから飛び出してきたところに、三葉はキスの雨を降らせる。
「こんな淫乱まんこだけど……瀧君も、
もう……我慢できない……三葉はついにベッドへ乗り上げる。
「瀧君のおちんちん……三葉のおまんこに
男の両膝に跨がり、男根に指を添えて導いていく。
しかし――
ガバリ、と三葉はベッドの上に倒された。他ならぬ、瀧の腕によって。驚いて見上げる三葉の瞳に、瀧は穏やかに愛を告げる。
「ああ、三葉が欲しがるのなら、俺も、いつでも三葉に
それは、女が奪うものではなく、男の方から求めるもの。
残る上半身の衣服を脱ぎ去り、その間、三葉はただ待っていた。これから訪れる幸福を夢見て。
そして男もまた、女と同じ姿になった。
「だから、いつでも俺を求めて欲しい」
ゆっくりと倒れてくる男の上半身を女は自分の胸でしっかりと抱き締める。
「……ああ……っ!」
ベッドの上でふたりきりで抱き合っていた――撮影でさえ、こんな生ぬるいシーンはない。
ゆえにこれは、三葉にとって初めてのこと。男と女による、愛を紡ぐための抱擁は。
***
AV女優としての旬が過ぎても、熟女モノとしての需要はある。が、さすがに撮影の外で当時ほど人を集めることはできなくなった。
けども彼は、そこにいる。いつでも三葉の、一番近くに。
そんな中で知らされた……父の訃報。勘当された身として、葬儀に出席することは許されない。が、せめて仏壇に手を合わせたいと、三葉は実家に赴いた。
「……どのツラ下げて来たわけ?」
四葉からの視線はどこまでも冷たい。そして、男連れでやってきたことでさらに不愉快な気持ちにさせる。
「うわ、いい歳こいてまだ男囲ってんの? まさか、こんなところでやらかす気?」
妹は姉を女として――人として見ていない。性欲に飢えた野蛮な獣――いつでもどこでも発情し、誰彼構わず食い散らかす淫乱なメス。そんな汚らわしい生物がオスを連れてきているのだ。本来ならば、すぐにでも追い出したい。
にもかかわらず強硬手段が憚られたのは――その男が予想外に礼儀正しく、そして気が弱そうだったから。
「あ、いや、その……」
もしかすると、女の色香に騙された童貞のひとりかもね、と四葉は内心男を憐れむ。三葉はそれに気づいたから、男の名誉を自ら守った。己の沽券と引き換えに。
「もう……囲えるほど男もいないわよ」
それは紛れもない事実ではある。だからこそ、四葉の中に新たな疑問が湧いてきた。
「じゃあ何でソイツいんの? 関係ないなら帰ってくれない?」
四葉から詰られて……瀧と三葉はふいに見つめ合う。
「どこから説明すればいいんだろう」
「うーん……」
あれからずっと一緒に暮らしてきた。
すでに家計も共にしている。
さらには、夜の営みも欠かしていない。
その関係は――たった一言に集約される。
ただ、手続きを行っていないだけで。
ならば。
「結婚しようか」
「……え」
三葉にとって、それはとうの昔に諦めていた願い。
人として壊れてしまった自分に叶うはずがない、と。
だから、最初は瀧の言葉を理解できなかった。
それが心に届いたのは、むしろ、四葉が苦言を漏らしてくれたとき。
「うわ、オッチャン、この女の本性知ってんの? ソイツ……」
「知っているよ。もう一〇年以上犯し続けてきたんだから」
男の言いように、四葉は心底顔を歪める。だからこそ、三葉には受け止めることができた。自分はもう、女に戻ることはできない。それでも、女として見てくれる相手がここにいる。
嬉し涙を流す姉に、妹は――久方ぶりに、故郷を失う前の面影を見た。が、いまさら態度を変えることもできない。
「……その女の相手らしいわ。好きにすれば。式には呼ばないでね」
途端に居心地が悪くなり、仏間から出ると四葉はピシャリとふすまを閉ざす。
そして静かに、亡き父の前に三葉は頭を下げた。
娘として期待に応えられなかったことを心から詫びて。
だとしても……これまでの行為自体を謝るつもりはない。
何故なら――こんな自分でも、愛してくれる人はいるのだから。
「それじゃあ、行こうか」
「……はい」
ふたりは揃ってふすまに指を掛ける。そして、左右へ開くと――そこには、光に満ちた世界があった。
その眩さに、三葉は思わず目を細める。けれど、顔を背けはしない。何故ならそこは、ふたりで踏み出す新たな門出なのだから。