※やまもおちもいみもなく、キスはあるけどエロはない
---2019.01.27 ハーメルンでのみの追記---
ちなみに、この話の前にふたつほど小話がありますが、(前書き、後書きを含めた)本文の文字数が投稿最低文字数の1000文字にも満たないので、投稿を断念しました。
ふたつの小話は大した話ではないのですが、個人サイトかムーンライトノベルズさんでお楽しみください。
今日はハロウィンだから、ちょっと頑張ってみた。ちょっとだけだけど。
肌寒いから長袖に八分丈ズボンという格好にネコミミのカチューシャを着けてマンション入り口に立つオレは随分怪しい。自分でもこう思うんだから、端からはどう見えるんだろうか。……謂わずもがな怪しく見えますね。はい。オレ以外はいないけども。
オオカミのミミがないからネコミミだ。いやまぁ、オオカミのミミを売ってるのは見たことないけどな。
コンビニまで行った皐月さんは、袋を提げながらこちらに向かっている。あと少し。もう少し。
ドアを潜ってオレを見据えた皐月さんは、目を見開く。単純に驚いているようだ。そりゃ、部屋にいるはずなのにここにいるからな。
「――比呂ちゃんっ!?」
「お菓子ちょうだい! じゃないといたずらするからな」
体当たりに近い小走りに、皐月さんのバランスが崩れてしまう。オレも一緒に崩れ落ちた。勢いが止まらなかったから。尻餅をつきつつオレを抱きしめて、皐月さんは問う。
「比呂ちゃんのその格好は化け猫?」
「違うし! 狼男だっつの」
「そっか。ネコミミだから化け猫かと思ったんだけど、違ったね」
ネコミミのカチューシャに触れ、髪に指を滑らせていく。
「雑誌買ってきただけだから、お菓子はないよ?」
「えぇー、つまんねぇの。てっきりお菓子も一緒に買ってきたと思ったんだけど」
「ごめんね」
指に絡めた髪にキスをするその仕草はどこか紳士にも見える。
「……っ」
「比呂ちゃん顔、赤い」
「さ、皐月さんが変なことするからだろっ」
「比呂ちゃんは、お菓子持ってる?」
「いや、オレは貰うこと前提だから持ってないよ」
「なら、いたずらしていいよね?」
「えっ……え、ちょっ、と……」
絡めた指をほどいて、頬に添える。刹那、そこから唇に滑らせ、人差し指の先が触れた。
「キスしよ」
「そ、れが……いたずら?」
「単直に言えば。嫌?」
「……嫌、じゃない。わ、解ってるくせにっ」
「さぁ、どうだろう」
皐月さんは目を細め、顔を近づける。触れたのは数秒間。
「可愛い」
「可愛くないっ! 皐月さんのバカ野郎」
フイと顔を逸らせば、、腰を掴む腕に力が込められた。
「本当はね」
「――なに?」
「あるんだよ、お菓子。お菓子っていうか、いつも持ち歩いてる眠気覚まし用の飴だけど。でも、比呂ちゃんにいたずらしたかったから、ないことにした」
「暴露したら意味ないじゃん」
「比呂ちゃんには隠し事したくないし。だから比呂ちゃんも、俺にはなるべく隠し事しないで?」
「皐月さんはバカだな」
「そうかもね」
「でも――オレは嫌いじゃない、よ」
ゴニョゴニョと小さな声で言えば、皐月さんは首を傾げた。
「なに?」
「なんでもない。もういいから、早く戻ろう」
腕を無理矢理外して立ち上がれば、皐月さんも徐に立ち上がる。この身長差はなんとかしたいが、伸びてくれないのでなんともならない。
「ネコミミで上目遣いは犯罪級だよな」
「はぁ? ――っ」
なにをわけ解らんことを言っているんだと思えば、皐月さんが顔を寄せてきた。髪が頬を撫でてすぐに離れていく。
「帰ろうか、比呂ちゃん」
「皐月さんっ!」
「キスぐらい減らないでしょ。せっかくだからもう一回」
「しねぇし! 皐月さんなんか知らない」
皐月さんを押し退けて、大股で進む。だがしかし、皐月さんはいとも簡単に追い付いていた。背丈の差は足に出るんだよな。虚しいけど!
「比呂ちゃん」
「知らない」
顔を逸らせば手を握られ、振りほどこうとすれば、楽しげに笑う。――くそ、これじゃあなにも出来ないじゃないか。
「比呂ちゃん」
「知らない、知らない、知らないっ」
とにもかくにも頭を振れば、皐月さんは握った手を口元へと上げた。軽く押し当てられた唇は、すぐに離れていく。
「ごめんね。我慢出来なかったから」
「――ばっ、か、やろ……」
なんでそんなことを平気でするのか。慣れないオレは顔を赤くするしかない。
「可愛い」
「……っ、も、バカ野郎」
にこにこと笑う皐月さんの方が可愛いなんて、とてもじゃないけど言えなかった。
end.
2011/10/31
(公開 : 2011.10.31)