「GF、わざわざお越し頂きありがとうございます」
白衣を着た初老の男がGFに優雅に腰を折って頭を下げる。
顎髭を生やしたダンディーな男で白衣より執事服の方似合いそうである。
「よい、ジェミニ。
ミラーリンクシステム初の演習とあれば見に来ないわけには行くまい」
初老の男はジェミニ、ゾディアックの一人である。
現在ナチュラルの復権を賭けた幾つかのプロジェクトがあり、黄道十二星座を関したコードネームを持つ幹部ゾディアックがそれぞれのプロジェクトを推進している。その各プロジェクトの監視と統括が盟主であるGFの役目である。
一部を紹介しよう。
一つは、ジーニアス計画。
自然に生まれた天才を集めることによりコーディネイターを凌駕する計画。
計画では天才同士の交配も進め、あくまで自然による天才を生み出していく計画だが、如何せんコーディネイターに匹敵する天才は少なく、その子供が天才になるとは限らないばかりか、育成に時間が掛かるのが難点。
我等にそんなに時間は残されていない。
一つ、強化人間計画。
天才に期待すること無く平凡なナチュラルをもってコーディネイターを凌駕させる計画。
前組織ブルーコスモスで行われていた薬物だけでなく、機械的改造によるサイボーグ化から外科的手術による改造、または三種の複合などあらゆる手を加えている。
欠点として数々の同志の犠牲が生まれることである。
だがこの犠牲こそ明日のナチュラルの礎となると信じて臆すること無く推進している。
こういった計画の一つがミラーリンクシステムで、このシステムが完成すればコーディネイターを圧倒する軍隊が生まれる。
その基礎がついに完成し、今日実戦演習を行うというので来たのである。
わざわざ危険を冒して訪問すること無く報告書で十分との反対意見もあったが、私は報告書では伝わらない生の臨場感を味わいたい。
今後システムを運用する者として臨場感を知っていると知らないとでは、作戦の精度が変わる。能力が劣るナチュラルがコーディネイターに勝つにはどんなに小さい努力でも怠るわけにはいかない。
幸いここは旧地球連合本部アラスカ基地。忌まわしい地として今は放棄されているが、ここの地下空洞を使えば監視衛星に見つかること無く思う存分に実戦演習が出来る。
ミラーリンクシステムの真価をこの目に焼き付ける。
「よし、ジェミニ。実験を開始してくれ」
「分かりましたGF。
では」
ジェミニが実験開始を告げるより早く赤いランプと警告音が鳴り響いた。
「GF。ラクス軍です。
ミネルバ級三隻此方に向かってきます」
どうやら優雅に実験を観戦するわけにはいかなくなったようだ。