キーコーカーコーン
授業の開始を知らせるチャイムが鳴り、クラスメイト達は私語をやめ、それぞれ自分の席へと座り始める。
(やれやれでしたわね、ありのままの事実を教えて差し上げただけですのに、逆上した挙句私に勝負を挑んで来るなんて、一体どこまで愚かになれば気が済むのかしら)
私の今の気持ちを一言で表すなら最悪の一言
以前よりも更に磨きを増した私を前にすれば、男などという下等生物は頭を垂れ、卑屈になるのが世の理。
だというのにあの豚、あろうことかこの私に噛み付いていましたわ。
戦線布告としては成功、先に勝負を挑まれたことは想定外でしたが、計画に影響はありません。
先程のことが無ければ満場一致で私がクラス代表に選ばれるのでしょうけど、あの猿が自選するとなれば話は別。
織斑千冬の案により私が織斑一夏と戦うことになる。
前回と大筋は変わりありませんわ。
後は如何にしてこの流れに織斑千冬を引き込めるか…ですわね。
考え事に熱中していると、いつの間にか教卓に織斑千冬が立っており、今にも授業が始まろうとしていた。
「それでは授業を始める訳だが、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めてもらう。クラス代表者の仕事は対抗戦、委員会、生徒会会議への参加、まぁ色々だ、クラス対抗戦はクラス全体の実力を示す物差しになる、必然的にクラス代表者に選ばれた者がクラスの顔になる訳だ、決め方は推薦、自薦、何でもいいお前達で決めろ」
ふふ、来ましたわ、さぁ皆さん私を推薦し褒めたたえなさい。
強く美しく気高い、この私と同じクラスを共に出来る奇跡を存分に噛み締めるのです。
「はいっ!セシリアさんを推薦します!」
「セシリアさん!お願いします!」
「「「「オルコットさんで!!」」」」
あぁ、心地いいですわ。
以前はあの豚を中心に全てが回っている様な錯覚を覚えましたが、それも過去のことですわね。
「む、私は一夏を推薦するぞ!」
「成る程な、こうゆうことか……織斑先生、俺は自選します」
「ほう、てっきり嫌だ嫌だと駄々をこねるかと思っていたが、自分から立候補するとはな」
先程の言葉の意味を理解できる程度の頭はあったようですわね。
織斑一夏は無駄にうっとおしい程力強く右手を挙げていた。
織斑千冬は自選するのが意外だったのか、表情が少し呆けるています。
「あらあら、こんな島国のお猿さんに代表など務まりませんわ、私にお任せなさい」
最終宣告ですわ。
私が決めた貴方の運命は変わりませんが。
ここで辞退すると言うのなら、無駄に恥を晒さずにすみますわよ。
「よくいうぜ、さっきまで散々煽っておいて……」
この私の優しさを睨みと悪態で返すなんて。
えぇ、いいですわ、所詮前座それが返事ならこちらも容赦しません。
「はい?煽ってなどおりませんわよ?全部事実ですわ、貴方たちみたいな後進国の方々がこの私に勝つなんて、万に一つもありえませんもの」
「さっきから後進国とか島国って言うのをやめろよ、ISを開発したのは日本人だぜ、先進国とはいかないが後進国なんかじゃない」
「ふふ、確かにISを開発したのは日本人ですけど、それは突出した才能を持った篠ノ之博士の功績ですわ、個が優れているからと言って集団が優れているなんてことはありませんでしてよ、ISを開発したのは日本人だから俺たちは偉い……とでも言うつもりですの?そういうのを虎の威を借りる虎の威を借る狐といいますのよ、恥しくありませんの」
はぁ、勘違いした愚か者とはこうゆう者のことを言うのですね。
篠ノ之束は私に及ばずとも優れた頭脳を持ち女尊男卑の世界を作り出した功労者。
天才エリートである私の次に有能な人物。
いずれは私のハーレムに入り、私の手足となり働く人間。
そんな篠ノ之束の権威を傘に着て威張り散らすなど博士、延いてはその未来の主人である私への侮辱ですわ。
「お前みたいのがそれを言うのかよッ、第一ここの学生は半数以上が日本人だぞ、よくわからないけど国の代表みたいなアンタがそんな発言ばかりしていると争いになるんじゃないか?」
猿は私に対し少し得意げな顔で訳のわからないことを宣った。
私みたいな?……何を言っているのでしょうこの猿、ちょっと本気意味がでわかりませんわ。
「はぁい?貴方、争いというのは同じレベルの者同士でしか起きませんのよ、知りませんでしたの?こんな小さな小島と歴史ある大英帝国が同列とでも?」
「なる程、お前の言うとおりなら確かにその通りだ、アンタとじゃ誰とも争いが起きない……」
ふふ、当然ですわね、この学園には結構な数の代表候補生がいるみたいですけど、私ほどの才能を持った天才は存在しませんもの。
つまりこのIS学園の頂点に君臨する者はこの私。
今は、代表候補生という立場に甘んじていますが、既に他の方々とは立っているステージが違いますわ。
争いなど起きよう筈もありません。
「あら、やっと理解できたのですわね、貴方みたいな猿で「アンタのレベルが低すぎてな」……なんですって?」
今、この猿なんとおっしゃいました?私のレベルが低い?この他の追随を許さないほどのステータスを持っている私が???
私は何を言っているのか理解できず無言で続きを促した。
「言った通りだ、お前とじゃここの皆どころか、日本の中学生とだって釣り合わないだろうさ」
猿は腹立たしい顔をニヤつかせ大げさな手振りでまたしても訳のわからないことを宣う。
しかし、流石に二度も言われれば、何が言いたいのかを理解出来た
はぁ?つまりこの私が、こんな島国の子供にも劣る?……――ブチッッ!!
豚の言っている意味を完全に理解した私は、自身の頭の中で何かが弾け飛ぶのを感じ、衝動のままに喚き散らした
「この無能な猿が私に向かってッ!!貴族である私がッ!セシリア・オルコットがこんな島国の庶民…それも子供に劣るですってッ!もう一度言ってみなさい豚!ただでは済ませませんわよ!!」
「ああ、何度だって言ってやる!アンタはその馬鹿にしている国の子供よりも幼稚で滑稽だぜ!!それと!猿も豚呼びも止めろ、俺はれっきとした人間だ!!」
織斑一夏は更に私を馬鹿にし、最後には此方を指差し滑稽だと宣った。
このッ!?くぅぅっ!我慢ッ!我慢ですわ!私ッ!!
理由はわかりませんけど、あの猿は明らかに私を煽ってきている。
どんな目的があるにせよ、このセシリア・オルコットが辺境の猿の思い通りになるなんてありえませんわ!!
「このッ!!いいですわ!精々憂さ晴らし程度にでもなればと考えていましたが気が変わりました!徹底的に嬲って泣いて謝罪させてあげますわ!」
私は湧き出る怒気を何とか押さえ込むために、何度も何度も足で地面を蹴り付けた。
「いいぜ!アンタの好きな土下座でも何でもやってやるよ!ただし、こっちが勝ったら千冬姉のことも含めてきっちり謝罪してもらうからな!」
ハッ、まっぴらゴメンですわ!
ですが…。
「いいですわよ、どの道私の勝利は揺るぎません、今の内にもっと要求しても構いませんわよ、どんな低俗な要求でも飲んで差し上げますわ」
「いいや、こっちは謝罪さえしてくれればそれでいい、アンタが勝てば土下座でも謝罪でも何でもやってやるよ」
「ふん、後悔しないことですわね、それで、ハンデはどの位付けてほしいかしら?お好きなだけ付けていですわよ、なんでしたらブレードのみで相手をしてあげましょうか?」
「馬鹿にしやがってッ!ハンデなんているか!俺とアンタは対等のはずだろ!!」
猿は顔を歪めこちらの発言に抗議をして来た。
わかっていたことですが、やはり馬鹿。
ハンデも無しに私に敵う筈がない、なにせこちらには手にするであろう専用機の情報がある
適正、共に操縦技術も私が優れている、対等であるはずがありませんのに。
「はぁ?対等?この私と貴方が?寝言は寝てから言ってくださいまし、確か貴方のIS適性はB程度でしたわね、その上ISの搭乗経験も無しに等しい、そんな貴方がIS適正Aのこの私と対等などありえません、わかったならさっさとハンデを言いなさいな」
周囲のクラスメイト達もハンデを断った猿と私の発言を聞いて、猿に苦言を呈し始めました。
「そうだよ織斑君、いくらなんでも無茶だよハンデ付けてもらいなよ」
「織斑君流石にそれは馬鹿にしすぎだよ……」
「織斑君は確かにISを操縦出来るかもしれないけど男なんだよ、無理しないほうがいいって」
「織斑君……男と女が対等って、いつの話をしてるの」
ふふ、いいですわよ。
皆さんもっと言ってやりなさい、織斑一夏がが責められる姿…中々良い見世物ですわよ。
「いいや、いらない、皆も確かに今世間では男が弱いとか色々言われているけど、それはISが強いってだけで女が強い訳じゃない、でも言葉で言っても分からないと思う、だから見ていてくれ俺は必ずセシリアに勝って男の強さを証明して見せる。同じ土俵で対等に勝負をして勝てば、皆も一方的に男が弱いなんて考えなくなるだろ」
はぁ~、IS抜きにしても男が女に勝てるなんてありえませんわ。寧ろ男の弱さが露呈するだけ……といいますか、そのキメ顔はなんですの?イラッとしますわ。
「それは……まぁ」
「でも、やっぱりやめといた方がいいよ」
「あぁ、心配してくれてありがとう、でも皆はただ見ていてくれ、俺が必ず今の風潮が間違いだと証明してみせる」
いえ、誰も心配なんてしていませんわ。
どうやら豚には今の世界が常識では無く風潮として写っているようですわね。
自分の見たいものしか見ない、都合の悪い真実は自分の都合のいいように捻じ曲げる……醜いですわ。
「う、うん、まぁ、そこまで言うなら……」
「それでこそ男だ!一夏!」
「おう!!」
「で?言いたいことはそれでけかしら?ハンデはいらず、私に勝つ、そして男が強いと証明すると……」
「あぁ、アンタには悪いが皆の目を覚まさせる為にもハンデ無しで勝たせてもらうぜ」
一体この豚の頭の中はどうなっているのでしょう。
目が曇っているのは貴方ぐらいで、貴方の勝利なんて誰も望んでいませんわ。
「いいですわ、いいですわよ、貴方には最上級の屈辱的敗北をプレゼントして差し上げますわ」
「おい!貴様らいい加減にしろッ!!はぁ、勝手に私戦を始めるな、そんなに戦いたいならこちらで用意してやる、勿論お前達がやりたがっているIS戦だ、それで勝利した方がクラス代表者、異論は無いな」
私と豚が試合の話を進めていると、見計らっていたのか織斑千冬が怒鳴り声が割り込んできた。
「はい、ありがとうございます」
「ふふ、ぎったんぎったんにしてやりますわ」
これで教師と本人同士の同意もあり私達の試合は公式ののものとなった。
後は…。
「まったく血の気が多い奴らだ、まぁいい試合は一週間後に行う、なおオルコットは勝敗問わず私と試合を行ってもらう」
――かかりましたわ♥
織斑千冬はいつものすました表情で私を睨み、強引に試合を取り付けた。
ふふ、身内贔屓の貴女が大事な大事な弟を貶されて黙っている筈がありませんものね?
もう少し手こずるかと思いましたが、流石はこの間抜けな猿の姉といった所ですわね。
「なっ!?千冬姉 『スパッーン!!』 ~~ッ痛ッッ」
「織斑先生だ、馬鹿者」
「私は全然構いませんわよ、寧ろ私の実力を全校生徒に知らしめるまたとない機会ですわ」
相手はブリュンヒルデ、世界最強の肩書きを持つ織斑千冬。
その最強が試合をするとなれば、アリーナは観客で埋め尽くされますわ。
そして、そんな場所でブリュンヒルデがまだ入学したての新入生に負けて醜態を晒す……。
いいですわ、悪くないのシチュエーション。
私の実力も知らしめられ、織斑千冬に一生消えない恥をかかせる事ができる。
まさに一石二鳥とはこのこと。
思わぬ好機の襲来に私の表情も緩み、頬がが釣り上がる。
「ほう、私を相手に当て馬扱いか……舐めるなよガキが、先程から聞いていれば舐めた発言ばかりしおって、貴様それでも代表候補生か?」
「ふふ、御免遊ばせ…ブレードを振り回すことしか能のない小山の大将の誇りに傷でもつけてしまったようですわね?謝罪いたいますわ…辺境で踏ん反り返る小国の雌猿さん♥」
――グシャ!
あらあら、出席簿を握りつぶしましたわ。
「どうした?身体が震えているぞ、安心しろ貴様には嫌という程の現実を教えてやる、それとな、これは対等な試合などではない、飽くまでも教育的指導だ。お前がさっき言っていただろう、同レベルの者同士でしか争いなど起きないと、私は教師でお前は生徒、争いなど起きようもない、よって貴様との試合は争いなどではなく、貴様の曲がりに曲がった精魂を矯正するための指導だオルコット」
この暴力教師、明らかに私情が混じっいるのに、堂々と指導と言い切りましたわ。
指導ではなく、自己満足の憂さ晴らしの間違いでしょうに……。
「織斑先生わかっているのですか?それだけの大口を叩いて私に敗北を許せば、貴女…一生私に偉そうな態度はとれませんわよ、私に負けるということは私よりも能力が低いと証明するようなもの、負けた暁には勝者である私にはそれ相応の態度で接してもらいますけど、本当によろしいのですか?」
「おやおや、ご忠告痛み入る、所でさっきから何を勝つを前提で話を進めている、私に勝てると考えるその根拠はなんだ?私に勝てるならお前は代表候補生などではなく国家代表、いや世界最強にだってなれるぞ?」
「いいですわ、教えて差し上げます、私は生まれてから一度も敗北と言うものを経験したことがありませんの、どなたも初めは今の織斑先生のように粋がって私に歯向かってきましたが、直ぐに私の踏み台となって消えて行きましたわ。そして、貴方はそんな私に勝負を挑んだ、今までの方々と同じように……勝てる根拠なんてこれで十分ですわ」
根拠ならいくらでもありましたが、私はあえて織斑千冬を苛立たせる返答を返した。
なぜなら、こう言えばあの教師が不快な気分になるとわかっていたからだ。
「開いた口が塞がらんとはこのことだな、はぁ…口調、態度、どれも教師に向けるものではないな、無意識か意識しているのか知らんが、貴様が本気で私のことを下に見ているのが十分理解できたぞ、しかも言うことかいて私が粋がっているだと?貴様の様なアホは久しぶりだ、どっちが粋がっているのかを言葉では無く体で分からせてやる。後、一度も負けたことがない?そんな自慢にもならんことを堂々と言うな糞餓鬼が」
私の煽りを受け織斑千冬はこれ以上ないほどに怒気を発する。
その隣にたっていた山田先生は今にも逃げ出しそうなほどビクビクしています。
「フン、もういいですわ、ハッキリ言って差し上げます、貴方教師に向いてないですわよ?体罰、贔屓、恐喝、いい加減にしてくださいませんこと、まだ私が教師をやったほうがマシですわ」
こんな脳筋の問題教師が指導するくらいでしたら私が教師をやったほうがまだマシですわ、まぁ、私にかかれば生まれ持っての指導者の資質を遺憾なく発揮することでしょうけど。
「貴様ぁッ……いいだろう、もし万が一でも私が敗北でもしようものなら貴様の言うことを何でも聞いてやる、ただし私が勝った場合死んだ方がマシだと思うほどの矯正を施してやる、覚悟しておけッ!!」
言いました、言いましたわね織斑千冬。
前回の屈辱と今回の愚行を合わせ、その身体でじっくりと精算していただきますわよ。
「オーホッホッホッ!!覚悟しておけ?その言葉そっくりそのままお返しいたしますわ!!姉弟共々地獄に蹴り落として、飽きるまでたっぷり遊んで差し上げますわ!今から精々惨めな命乞いでも考えておくことですわね!!」
復讐の機会がとうとう目の前までやってきましたわ。
相変わらず般若の様な顔をしている織斑千冬。
初め見たときは思わず恐怖を感じてしまってしまったが、今はむしろ気分がいい、何せあの顔を屈辱と羞恥に染められるのですから。
ふふ、そのすまし顔たっぷりと歪ませて私に媚を売らないと生きていけないようにしてやりますわ。
まずは、アリーナでぼこぼこにしてから、観客の見ている前で泣くまで尻をぶっ叩いいてやりましょう、ふふ……♡
「オルコット……貴様は人を苛立たせることに関しては間違いなく天才だ、あぁ、あの馬鹿兎よりも天才的だ、それでぇ……死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」
織斑千冬は額に血管を浮き上がらせる程激怒していた。
怒っているのはわかっていたが、まさか殺人予告が飛び出てくるほどとは。
「あっあの!!織斑千冬!そろそろ時間ですので、そのあたりで……」
今にも顔を青くして死にそうなほどビクついていた山田先生であったが、副担任の責任からか、単純に時間が押しているためか少し大きめの声で織斑千冬に注意した。
「……すまない山田先生、私は暫く頭を冷やしてきます、後は頼めますか?」
未だに血管と眉がピクピクしているが、どうやら幾分か冷静になったらしい。
しかし近くに居る山田先生にはダイレクトに怒気が伝わってくるのかその額からは冷や汗が滝のように流れていた。
「え、は、はい、大丈夫です!!」
その返事を聞いた織斑千冬は、そうか、と一言呟き無言で教室を後にした。
シン…と静まり返る教室。
そんな何とも言えない空気の中山田先生は
「は、はい!皆さん!授業を始めますよ!教科書の―――
何事も無かったかのように普通に授業を始めましたわ。