【BL】魔王と大災厄の魔 作:腐エロのひと。
sideモモンガ
バレンタインには、ウルベルトさんに俺の長年の夢を叶えて貰ってすごく素敵な夜を過ごした。なので、ホワイトデーには気合いを入れてお返しをしないと!!って思ったんだけど……。ウルベルトさんが好きそうな物って、何かあるんだろうか?ナザリックには現時点でかなりの量の財宝がある訳で。俺もウルベルトさんもレベルカンストしているし、お互いの個人資産もかなりの物だ。それに、俺もウルベルトさんも正直財宝にはあまり興味が無かったりする。ナザリックを維持する費用は勿論必要だけど、この世の財を全て自分たちの物に、とかは思わないし。
ヘロヘロさんは温厚なヒトだから、自分から攻め込むとかしないし……平和な生活が一番だ、と自分が創ったメイドを愛でて幸せに暮らしてる。ペロロンさんだって今は自分がリア充なので他人がリア充でも気にしなくなったし。俺は俺で、ギルドの仲間が一部とはいえ一緒に居てくれて、それだけでも幸せなのに可愛い恋人まで出来て幸せもピークな感じだったりする。ウルベルトさんはちょっと恥ずかしがり屋さんだけど、ちゃんと俺が好きだって言ってくれて……俺の想いに応えてくれてるのが本当に可愛らしい。
(……って、あー!もう、本当にダメだな、俺!今日はちゃんと仕事しないと今夜と明日ウルベルトさんとイチャイチャ出来ない……!)
昨日の夜、ウルベルトさんの方から今晩のお誘いを受けて。その時から沈静化が追い付かなくなってしまっていた。だって、ウルベルトさんと付き合って初めてのホワイトデーだし!!金銀財宝じゃなく、素材になるようなアレコレとか珍しそうな植物とか色々集めたりしてチョコのお返しもたっぷり用意したし……帝国の美味しい料理のレシピも仕入れてきて料理長に渡してあるから夕食もバッチリだ。準備は万端だ。帝国の伝でウルベルトさんが好きそうな美味しいと評判のワインもゲット済みだし、今日中に全ての仕事を終わらせないとせっかく空けたスケジュールが台無しになってしまう。
そう思い、俺は慌てて仕事に集中することにした。
「……その、ウルベルトさん。どうでした?今日の食事は」
あの後少し遅れ気味だった仕事を必死でブーストを掛けて終わらせて。ウルベルトさんの部屋に真っ直ぐに向かってホワイトデーのお返しを渡すと、ウルベルトさんは柔らかく微笑みながら受け取ってくれた。そして、そのまま二人で食事をして、軽くワインも呑んで……。お酒が好きなウルベルトさんは、珍しいワインに目を輝かせていて本当に可愛かった。
(ウルベルトさんがこんなに喜んでくれるのなら、もっと本腰入れてこっちの地酒を探してみようかなぁ。カッツェ平野辺りを大耕作地にして葡萄を植えるのも良いかな。アンデッドの労働力はレンタル出来るくらい大量にある訳だし)
そんな事を考えながらウルベルトさんにそう訊けば、ウルベルトさんはグラスに残ったワインを一息に飲み干して俺に笑顔で答えてくれる。
「中々新鮮で美味しかったですよ。ありがとうございます、モモンガさん。俺のためにわざわざレシピを貰ってきてくれたんですか?」
「えぇ。ウルベルトさん、食べ物を美味しそうに食べてますし……喜んでくれるかな、って思って。あっちの大抵の料理は古代図書館にレシピが収蔵されていますけど、こっちの料理は全然ありませんから。これからも、色々増やす予定ですよ」
俺がそう言うと、ウルベルトさんは大きな耳をぴるぴる震わせながら喜んでいた。本当にウルベルトさん、俺の前だと正直だよなぁ。デミウルゴスの尻尾のこと言えないんじゃないだろうか?ナザリックの外では魔導国の外交官としてクールに格好良く対応してるけど。(耳とかも殆ど動かさないし、笑顔もすごく優雅でいかにも上位の悪魔って感じで、俺はそっちのウルベルトさんも好きだったりする)
「そうですか!今からすごく楽しみです。俺もデミウルゴスに命じてレシピ集めますね。……まぁ、聖王国と法国の方と交易が出来るようになったら、の話ですけどね。何十年後かの事になるとは思いますけど。俺たち異形種に対する偏見とか恐怖心とかは、力無き人間からはそう簡単に取り去ったり出来ませんからね」
そう言って笑うウルベルトさんの瞳は、すごく優しくて。こんなに穏やかなヒトが、敵対者は笑いながら殺すとか想像も出来ない。
(……って、そうは言っても実際目の当たりにはしたけど……。人間とは種族が違うし、ウルベルトさんの大災厄の見事さを褒め称えたい衝動の方が強かったけどな、あの時は)
漆黒の毛皮が映える、真紅のマントを翻し。指先の動きが良く見える、あの長い爪の装備品を身に着けて、踊るような優雅な動きで魔法陣を空に描き……オーバーキルとも言えるような大火力で全てを焼き尽くした彼。ストックしていた宝石の魔力を注ぎ込んだから、恐らく最大強化は最低でもしてただろう。空を埋め尽くす、巨大な黄金の魔法陣。その煌めきは、きっと一生忘れないだろう。俺以上に火力のあるウルベルトさんだから出来る、魔力と炎の織りなす芸術。幾層にも重なった、多重魔法陣の美しさ。俺の超位魔法よりも大きく広がったそれは、ユグドラシル時代よりも遥かに広範囲に影響を及ぼした。その圧倒的な火力を目の当たりにして、俺たちの建国を阻む勢力は一斉に沈黙したのだ。
(建国までがちょっと面倒だったけど……ウルベルトさんの魔法のお披露目もあって、あの後からは本当にスムーズだったよなぁ、色々と。うちの戦力、ウルベルトさんだけじゃ無いって知った時の他国の対応がまた面白くて)
「そうですね。まぁ、慌てる必要もありませんし、あっちの料理だけでもかなりレシピ数ありますから……ゆっくり集めていきましょうか」
そんな事を考えつつ、ウルベルトさんを見つめる。これから、永遠にウルベルトさんと一緒に過ごせると思うと嬉しくて仕方ない。ずっとウルベルトさんを俺だけの物にしておける……。そう思うと、心の奥底から満たされてゆくような気がした。
「えぇ。異形種の俺たちには時間は永遠にありますからね。適度に楽しんで、一生を飽きないように面白おかしく暮らしましょう。ねぇ?モモンガさん」
悪戯っぽく笑いながらそう言うウルベルトさんは、やっぱりものすごく可愛らしくて。見ているだけで、胸がキュンとする。もう心臓なんか無い筈なのに。沈静化だって、してる筈なのに……何だか、ウルベルトさんの前だと全然効いてないように思える。
「ウルベルトさん、その……」
「モモンガさん。俺からも、細やかですけどお返しがあるんです。貰ってくれますか?」
俺が最後まで言う前に、ウルベルトさんはそう言うと椅子から立ち上がって俺の方にやって来る。椅子に座ったままの俺のすぐ横に立ったウルベルトさんは、アイテムボックスから可愛らしいサイズの硝子瓶を取り出す。中には、様々な色合いの透き通る綺麗な丸い球がギッシリと詰まっていた。瓶の口には、艶やかな紫色のリボンが掛かっている。
「ウルベルトさん、それは?」
「ホワイトデーのお返しです。オーソドックスなキャンディーにしてみました。……手作りなんですけど、味は問題無いですから」
ウルベルトさんはそう言うと、瓶を空けて中から綺麗な薄桃色のキャンディーを取り出して口に含む。
「……ん、甘い。ちゃんと、成功してるみたいですよ?モモンガさん」
そうして、ウルベルトさん自ら毒味をすると、そのままウルベルトさんは俺にキスしてきた。……めちゃくちゃ、嬉しい!!だって、恋人にこんなに積極的に迫られて、嬉しくないヤツなんて居る訳無いと思うし。衝動的にそのまま抱き締めると、ウルベルトさんは小さく笑って俺の口の中にキャンディーを押し込むとそっと唇を離す。俺としては、もっとキスしてたかったんだけど。
「美味しいですか?」
可愛らしく小首を傾げながら俺にそう訊いてくるウルベルトさん。耳もぴこぴこと小さく揺れていて、すごく愛らしい。きっと、しっぽも同じ様に揺れているに違いない。ウルベルトさんの体は本当に正直だから。
「はい、とっても。……桃ですか?これ」
口の中に広がる甘い香り。特徴的な香りは、殆ど飲食しない俺でもわかるくらい有名な果実の物だ。
「当たりです。他にも色々な味があるので、俺の事を思い出しながらじっくりと味わって下さいね、モモンガさん」
そう言って笑うウルベルトさんがあんまりにも可愛すぎるから……一気に、理性が飛んだ。俺は即座に立ち上がると、ウルベルトさんを抱き上げる。
「……ウルベルトさん」
「はい?」
小さく笑いながらそう答えるウルベルトさんは、俺のこれからの言動を見通しているように見える。何だか、それがちょっと悔しいような気もする。
「今、目の前にウルベルトさんがいるのに……ウルベルトさんを味わえないとか、あり得ないでしょう?だから、これからウルベルトさんを味わいたいんですけど」
相変わらず細くて軽いウルベルトさんを抱き上げながらそう言えば、ウルベルトさんは笑いながら俺の首に手を回し、俺の頭を引き寄せる。
「……いいですよ。俺の全部……しっかりと味わって下さいね、モモンガさん」
唇が触れそうなくらいの至近距離で甘くそう囁かれて、冷静でなんか居られない。俺はそのままウルベルトさんを連れて寝室へ飛び込んだのだった。
ちなみに、ウルベルトさんは内心自己嫌悪で死にそうになっております。
こんなベタなのやるの、俺のキャラじゃねーよ!!と(笑)