にゃあと申します。
一話 彼は、こうして落っこちた。
日の国日本では、古くから忍と呼ばれる存在がいた、彼ら、忍者、忍術は日本国内各地に分かれ、いくつかの集団を形成していた。
文献上にその名が見られる忍術流派は71流を数えるとも言われ、中でも甲賀や伊賀を本拠としていた忍者集団は有名である。
しかし時代が移り変わるにつれ、彼らはその姿を消し今では伝承の中でのみ、その姿を魅せる存在へと変わっていった。
・・・・しかし今も忍者が住む村があるという、その名は「古処村」といった。
◆◇◆
<日の国日本 古処村>
私の名は、千魔 十蔵ここ古処村に住み、長より上忍の役を賜った忍である。
この村は山の影に隠され原生林に囲まれる御蔭で外部からの敵を欺く隠れ里になっている。
そんな私は、今長より任じられた、重大な任務を遂行中でもある。
古処村の入口にある、木で出来た門の前に立ち、右手に忍具を持ち漆黒の忍び装束に身を包み、これよりこの村に侵入せんとする忍達を迎え討つ。
「っ!」
3人の人影が見える、私はごくり、と一度喉を鳴らし忍具を握る手を再度強く握り直した。
一つ目の人影は背が高く、その傍には寄り添うように頭一つ分背が小さい二つ目の人影。そして最後の人影は背丈が他の影に比べると腰までしかない、しかし彼は遠く離れたこの場所からでもその光る瞳がよくわかる。
狙うべきは最後の影だ。
私は、まるで風の様に走り迫ってくる彼目掛け、忍具を向ける。
そして・・・・
「わぁぁぁい♪忍者だぁ!!」
「ようこそいらっしゃいましたぁ!!忍び里古処村テーマパークへぇぇ!!」
私と彼の間に、赤い風船が閃いた。
――此処は日の国某所、古処村・・・テーマパーク。
◆◇◆
<古処村テーマパーク スタッフ休憩所>
まるで、戦国時代の武家屋敷のような畳の部屋で、肩まで伸びる黒髪を無造作に後ろで一つに纏めた青年がスポーツタオルで汗を拭っていた。
「・・・ふぅ。」
青年は満足気に切れ長の目を細め、一つため息をつくと、体を拭っていたスポーツタオルを脇に置いた、
がらがら・・
その時青年が背を向ける扉が開かれ髭の生えた山賊の様な出で立ちをした男が立っていた。
「おっ、四部お疲れさん!初日だったがどうだった?」
「あっ、お疲れ様です、藤堂さん、ちょっと緊張してしまいました。」
四部と呼ばれた青年は、藤堂と呼んだ山賊の様な男に答えた。
藤堂は四部の言葉を聞くとガハハと豪快に笑い出した。
「まぁ、初日なんてぇのはそんなモンだよ。要はナレだよナレ!」
藤堂は笑いながら四部の肩をバシッバシッと叩く、四部は苦笑いを浮かべながらも答える。
「あはは、ありがとうございます。また明日もよろしくお願いします。」
四部は早くこの場を去ろうと、急いで服を着替え、持ち物を詰め込んだボストンバッグを肩に背負う。
「おうっ!四部は高校生にしちゃあ礼儀正しいからな、俺たちも大歓迎だ!!」
藤堂は笑いながら、この部屋、事務所から出ていこうとする四部に声をかけ見送る。
「ありがとうございます。」
四部は最後に藤堂にそう言葉を返すと出入り口のドアを閉じた。
<古処村 山中>
日が落ち、暗くなった山道を四部は慣れたように歩き帰宅の道を急いでいた。
「(いかんな、早く帰らないと明日の学校に響いてしまう。)」
四部は携帯電話で時刻を確認し先程までより心持ち早く歩き出した。
「ん?」
ふと、四部はいつもの山道に違和感を覚えた。
「今夜はやけに静かだな・・。」
四部は辺りを見渡しそう呟いた、四部が住む古処村は家と家とが数キロも離れた山奥にある村で高校に行くのにも片道2時間以上もある場所にある、そして季節は夏、この時期であれば、山に住む虫達がうるさい程の鳴き声が響いているのだが今夜に限っては森は静寂を保っていた。
「(まぁ、うるさいよりかは断然いいか。)」
四部は少しの恐怖を自分を納得させる事で打ち消し、帰宅を急ごうと足を踏み出したその時、
ガサガサッ
「っ!!」
近くの茂みが急に揺れ、四部は体を硬直させた。
「(おいおい、まさか熊か!?)」
四部の頭に今朝見た野生の熊に襲われたというニュースが頭をよぎった。
その、四部の予想はあたっており、次の瞬間には、四部の背丈の倍はあるだろう熊が飛び出してきた。
「グルァァァァァァ!」
「う、うぁぁぁ!!!」
四部は硬直し動かぬ足を必死に動かし辛うじて避ける事に成功するも、そこまでがこの青年の運の尽きだった。
「あ、あぁぁあぁ・・・。」
四部はそのまま山の斜面を転がり続ける、巻き上げた土の枯葉に塗れながら転がる彼の視界が徐々に白に染まっていく。
「(・・あぁ、流石にこれはないって。)」
四部は最後にそう心の中で呟くと同時に、彼の視界は完全に白に塗りつぶされた。
◆◇◆
<???>
「うぁ・・ぁ。」
青年は、体中を落ち葉と土で汚しながら、顔に湿った土の感触を感じて目を覚ます。
「うぐぁぁあ。」
そして青年は痛む体に鞭を打ち、上半身を起こした。
「はぁ、はぁ(何処だ此処は、僕は確かあの熊に・・)っ!!」
青年は直前に感じた恐怖を思い出し慌てて立ち上がると周囲を探るように見渡した。
「(おぃ・・・・此処は何処なんだ?)」
しかし、その黒い瞳の中に写った物は、熊でも、青年のよく知る森でもなかった。
「カ・・・カエ・ル?」
青年の視線の先には、見上げる程の大きなガマの石像があった。
こうして青年、四部 忍(しぶ しのぶ)は"異世界"に落っこちた。
「」会話
<>場面場所
◆◇◆場面変更