ピピピッと規則的に鳴るアラームに手を伸ばして止める。時計の針は朝の5時を指している。もはや実家と言っても過言ではなくなった宿直室の洗面台で顔を洗い歯を磨く。宿直室は狭いが、何でもある。布団があり、クーラーがあり、冷蔵庫があり、シャワーもある。なんならガスコンロも。設備が整い過ぎて生活に困らない。住めば都とは言ったもので、もはや住んでいるアパートよりも住み心地が良い。
この学校を作る際、教員が宿直室に寝泊まりできるように設計したんだと自慢げに語るのは前任の校長の弁である。
単純にこの小学校は田舎に作られたため、数少ない生徒に万全の対応を取れるように宿直室に住み込みで働く教員が欲しかったらしい。
その役目が教員三年目の新米の俺に渡ったわけだ。まぁ、住み込みだからキツイところはキツイ。生活の殆どを生徒に割り当てないといけないわけで、余程生徒のことを想う教員か若い教員にしか務まらない。
もし俺が後者ではなく前者で選ばれたのなら光栄の限りではある。いや、他の教員から前者だと褒め称えられたが大変な仕事を押し付けられられホッとした様子の教員もいたので両手を上げて喜ぶ事は出来ない…
などと考えているうちに歯も磨き終わり、着慣れたジャージに袖を通してラジカセを持って校庭へと走る。
真夏ではあるが朝は少しひんやりとしている。少し体を震わせながらも所定の位置にラジカセを置く。未だに生徒はいない。
それも当然の話で、ラジオ体操が始まるのは朝の6時から。まだ45分程ある。それでもこうして早く待つのは偶に早く来る生徒の対応のためだ。
(まぁ、朝飯食ってからでも良かったかな…)
軽い空腹に見舞われながらも生徒を待つ。ラジオ体操が終わってから食べたとしても丁度いい時間になるだろう。
今日の朝ご飯は何にしようかと考えながら校庭をぐるりと何周も走り回っていると次第に児童が集まり始める。
その五分後くらいには約50名近く生徒が集まり、数ある生徒の集団の割と奥の方に緩いタンクトップにショートパンツという涼しそうな格好の沙耶香の姿を見つけて視線が一瞬囚われる。
俺の視線に気づいた沙耶香は“あの笑み”を浮かべている。
(…いかんいかん、特定の生徒を意識するなどもってのほかだ…)
そう思いながらも視線が自然と沙耶香に向かってしまい、尚更意識してしまう。
自己嫌悪に陥る最中、腕時計の針が6時を指した。これ幸いとばかりに全生徒に届くように声を上げる。
「よーし!ラジオ体操始めるぞ!ぶつからない程度に広がれー」
指示に従って生徒がバラバラに距離を取るのを確認してからラジカセの電源を押す。
『ラジオ体操第1〜♫』
お馴染みの音楽のリズムと共にラジオ体操が始まる。先生である自分は生徒の手本になるように体を大きく使って体操の動きを見せる。
(まずは深呼吸だな……)
腕を大きくあげ息を大きく吸い込む、生徒がちゃんと出来ているか流し目で確認しようとして、意識的に意識しないようにしていた沙耶香に目を奪われる。
「…っ!?」
正確には深呼吸で腕を大きくあげた沙耶香の脇や胸にだが。
(なんで最前列に……というかあれってノーブラ…)
先程まで生徒の集団の後方にいた沙耶香がいつの間にか最前列でラジオ体操をしていた。
見てはいけない、だが視線は沙耶香の逸らされた胸の突起物に釘付けになる。ゆるいタンクトップの布を小さな膨らみが押し上げその中心の突起物は間違いなく乳くーー
ふぅぅぅぅぅぅっ…大きく息を吐く。邪な考えを頭から吐き出すように。
ラジオ体操に集中しろ…不謹慎だ…
見るな見るなと念仏を唱えながらラジオ体操を続ける。
『ーー体を横に曲げる運動〜♫』
体を横に曲げる。斜め正面にいる沙耶香が目に入る。
(ーーっぶっ!?アレ完全に乳首が…!)
1番先頭に並んでいるため他の生徒には見えてないだろう。だが相対する自分からは緩いタンクトップからピンク色がはみ出ているのが見ててしまっている。
右へ左へ体を曲がる度に小さなピンク色の誘惑が目を奪う。
最低な事に俺は可愛い教え子の乳輪を見て興奮してしまっていた。
普通の大人なら罪悪感を覚えるなり、目を逸らして決して見ないようにしたりするだろう。
だが、俺はその光景が目に焼きつくほど凝視してしまっていた。罪悪感を抱く前に興奮してしまった事に俺は酷く動揺した。
そしてその動揺を嘲笑うかのように、沙耶香はタンクトップの裾を掴んで直しながら俺を見て妖艶に笑った。
「ーーっ!?」
その瞬間、興奮によって鎌首をもたげていた自身の分身が一瞬にして萎えた。
自分の行為に気付き、ぶわりと脂汗が体から吹き出す。なんて事をしてしまったんだ。
(見ていたのがバレた…ッ!?)
俺は三年目となる教員人生が終わったと思わざるを得なかった。この後の課外講習で顔を合わすであろう生徒に性的な目で見られたと訴えられれば、一瞬で俺の輝かしい実績はロリコン野郎というレッテルを貼られて終わってしまう!
気が気でなく、尋常ではない汗を掻きながらラジオ体操を進める。きっとこの汗は夏の暑さだけではない。
俺はその後のラジオ体操中は沙耶香の方は一度も見なかった。否、見ないように努めた。
水瀬沙耶香と顔を合わせたら全てが終わる予感がしていたから。
非ロリコン「はい勝ち〜〜〜ッ!!!大人は女子小学生の乳首で興奮しないので。」
ロリコン「……(凝視)」