「校長として……生徒諸君の命が無事だったのは大変にうれしいことであり……」
全学年の生徒は特に混乱することもなく避難を終えられた。
避難訓練が役に立った瞬間ね。
外に出てこうして整列し校長の話を聞くときには、普段通りの全校集会のように欠伸や雑談をしたり、締まらない態度が目立つ。
中には……snsにアップしたら映えるなぁ。など不埒な生徒もいる。
火事の方は、ほぼもう鎮火していた。
煙が薄く昇るだけで、火は見えない……消防車が来る前に火の勢いは大分弱まった。
「水属性の適合者が鎮火してくれたみたいね。」
隣の結子がひっそりと話す。
消したとしても見返りがもらえるわけじゃないのに、よく消化する気になったな。
東校舎も体育館も、中庭に通路を介し30mほどで隣接しているため、2つの建物を消化することじたいはわけないのだろう。
校長の話が終わった後、担任から本日の行程は普通にこなすと呼掛けがありクラスからは悲鳴が上がった。
今後の対応を協議するため自習となった。別にどちらでも構わない私はまた1組に行こうか迷うと結子が血相を変え私に駆け寄った。
「彩菜!恵美が……恵美が居ないわ!。」
「……嘘でしょ。」
立ちあがり教室を見回すがいない。
どこかでサボって写真でも撮ってるの?。
「校舎見てみましょ!。」
「分かったわ!。私は東側から探ってみる!。彩菜は反対の方からお願い!。」
「ええ!。」
別れ探索に向かう私達、教師に鉢合わせないか心配だったけどいない。みんな職員室にいるようだ。
っていうか、他クラスの生徒達も普通にみんな廊下に出てた……。
顔を見るが恵美は何処にもいない。
「3階東側はなし……。」
2階、1階と2年生、1年生の方もチェックしたけど……やっぱりいない……。
「彩菜……!……はぁ、はぁ、はぁ……。」
息を切らした結子がこちらに駆け寄る。
こんなかくれんぼじみたこと意図してやってるのなら怒ればすむけど、恵美が意識してこんな行いをするとは……有り得ない。
まさか彼女は……。
「こっちは居なかったわ……そっちは……?」
「居なかった……。恵美は今日普通に登校してた……、そうよね?」
「教室に恵美が入ったら、挨拶されて私も返したし……確実に恵美は登校して来てるわ……恵美が休みだったら確かに悩まずすんだことだったけど……」
そう窪田恵美は明確に本日白咲高校に登校している。
今、私達がいる乗降口からは3年生の場所の上履き入れが見え、上履きは無いが靴はちゃんと置かれた状況だ。
ますます自分の嫌な予感が現実味を帯びて行く。
「火事場のどさくさに恵美は連れさらわれたのかも」
この台詞を荒唐無稽な言葉と捉えることは今の結子には不可能だ。
そもそも彩菜達は人間だが、同時に人間離れした力を有する……勾玉の適合者なのだ……。
「この火事も恵美を拐うための布石……。仕組まれたものといいたいの……?」
「まだ私の推測でしかない。けれどね今までのクラスの環境を考えれば……イジメを受けクラスの序列が最下位だった私がラ・ロと適合しあまりからかわれなくなったでしょ?。……今まで私にぶつけて来た鬱憤が他者へ向かう……」
「そのターゲットに恵美が……だとすればことは深刻よ!。早く手がかりを掴んで場所を探しあてましょう!」
結子はすかさずスマホを手にした。
何回か試すが着信音のあとに機械的な電話が通じないとのアナウンスに辿り着く。
「電話は駄目……ね」
「恵美が教室に置いた可能性だってあるわ……名目上では校内でスマホの使用は駄目だからね」
昼休みなどバンバン使ってるが。
「何処の誰だか知らないけど……私達の親友に手を出したのを必ず後悔させる!。彩菜早く早退手続き出しに行きましょ!」
「えぇ、もちろんよ」
恵美と結子はクラス替えで知り合った私や美穂より友としての歴史が長い。
……そんな友に掛ける情熱は本物だ……。
私と美穂にもまた情熱が甦ればいいのだけれど。
先ずは荷物の準備のため、3年3組へ移動する。
「助っ人を一人呼ぶわ」
「助っ人?」
そう言って立ち止まったのは3年2組。
2組の助っ人って誰かしら?。
「陽太!、いる?」
戸を開け、叫んだ結子に一人の男子生徒が駆けよった。
「よぉ、結子!。キスでもするか?」
「馬鹿!!。緊急事態なの貴方も手を貸して陽太!」
「わー、落ち着けって……、何があったんだ」
「私達の友人が拐われたの……探すのを手伝って……!」
「私達……?。そっちの君は?」
陽太が彩菜に問い掛ける。
「藤沢彩菜よ。私からもお願い貴方の力を貸して!」
「彩菜……そうか。あんたが彩菜なんだな。俺は炎帝陽太。こいつの彼氏だ!」
「か、かれし……」
衝撃的な発言に頬が赤く染まった。
彩菜に聞こえないぐらいの声で陽太は結子にひそひそと会話した。
「この様子だと彩菜との件は大丈夫みたいだな」
「まぁね彩菜とはもう大丈夫、今は恵美の居る場所を見つけたいわ。お願い陽太……」
「オッケー、んじゃさっさと学校から出ようぜ!」
こうして3人は早退を決意し荷物を纏め職員室に向かった。
不審がって真莉グループの三人はその様子を見る。
「おい、真莉。あいつら早退するみたいだ……」
「早退しようがどうでもいいわ……あの女を地獄に落とす方法を確実に実行するから」
「あー……だよなぁ……、つか思ったんだけどさ」
「あん?」
「どうしたの詩織」
「二人同時に早退届け出したら怪しまれんじゃん。理由とかどうすんだろ?」
確かにと二人は返した。
廊下を移動する中、早退理由は?。と彩菜の問に、腹痛でいいでしょ要因は様々だし便利よと聞いた時には笑いそうになった。
「……そうか、滝嶋も藤沢も気を付けるように乾燥してるから火元に注意してな」
「はい」
「はい。気を付けます。それじゃ……」
意外と行けるものだ。
靴を履き替え、今日の行程は終了である。
普通だったら仮病で早退出来た高校生はゲーセンやプリクラに行くんだろうが自分達は人探しだ。
「やっぱ着替えるべきよね。こんな格好だったら補導してくださいって言ってるようなもんだし……」
「だね。じゃあ公園で落ち合おう。20分後には着くわ」
「分かったわ。陽太も連れてくる……彩菜!」
「なに?」
決した表情で結子は彩菜を見つめた。
「今度はちゃんと行くから!。待ってて!」
「……勿論。信じてるわ」
頷き、別れた。
=====
氷崋はベットで横になる浮空竜の適合者、窪田恵美の身体に触り悪いところがないか見ていた。
「わけありの浮空竜の適合者か」
服がはだけていた時点で充分わけありだ。
今は白衣に変えさせた……飛高とあの獰竜アビオルグの
少年との間に何かが……。
飛高とは長い仲だ周囲を顧みず破壊する力を持ったから親に捨てられ一緒のセクションに入り様々な教育を受けた。
このセクションというのは国が用意した適合者専門の教育部門だ……孤児員のような場所で他の適合者と生活をともにし高校生になると普通の生活を選ぶか研究員になるかの二択を迫られる。
……氷崋は後者を選んだ、だからここにいる……ここが彼女の存在する場所なのだ。
「……う……ん」
「お目覚めのようね。窪田さん」
「あなたはだれ……ここは!?……大輔とあの男は……!!……いやぁぁぁ!!」
命を落としかけた戦時の記憶を思いだし、PTSDを発症し震えを起こしながら精神を病む兵士が多いときくが、彼女の場合は……飛高とあの大輔に犯されたことによるものだろう。
このままじゃトラウマに……いえもうなってるかも。
「安心してここにいる限り私があなたを守るから」
「本当にぃ……。もう乱暴されるのはいやぁ……」
「信じて私の名前は燈極氷崋。そんじょそこらの勾玉使いには負けない自信は少なくてもあるよ」
恵美を優しく抱き締めた。
飛高君と川本君……お灸を据えるどころじゃすまないわよ。
「ありがとう……燈極さん」
「大丈夫よ窪田さん。そんな堅苦しくならず名前でいいよ」
「じゃあ……氷崋ちゃん」
「なに恵美ちゃん」
恵美を安心させるため笑顔で返事した。
彼女もほんのちょっと心に余裕が出来たのか笑った……。
「ここはどこなの?」
「勾玉研究所と呼ばれる場所……。公になってない特別な機関で一般人はおろか、適合者でも知ってるのは一部だけ。ここに来れたのは運が良かったわね」
氷崋の言葉に少し複雑になるが、同い年ぐらいの子と出会えたのはうれしい。
研究所とか難しい話は右から左だ。
混乱がある程度落ち着いた今氷崋を見ると綺麗な顔でスタイルも凄くよく前にあった瑠奈といい勝負だ。
「氷崋ちゃんみたいな可愛い娘とあっただけでもツイてるよ……」
「ありがとう嬉しい♪でも恵美ちゃんも凄く可愛いよ」
頭を撫でられた。
……蒸発しそうである。
「……恵美ちゃん今からあなたにとって辛いかも知れないことを聞くよ。あなたのはだけた服……多分あなたは犯されたのだと思う……誰がやったの?ここに運んできたあの二人?」
身体がぴくりと震える。
……そう、あの二人だけどどうしよう。正直に答えて今度は彼女が巻き込まれたら……。
「怖がらなくていいのよ。今心に浮かべてることを話してくれればいいからね」
「……川本大輔って男と……飛高って男、大輔には高校の屋上で暴力を受けて、廃虚に連れさわられて……二人に……犯された……」
やっぱり……確証はとれた。
「辛かったね恵美ちゃん。あなたの仇は私が討つ」
お遊びじゃすまないわよお二人さん。
恵美を寝かせ氷崋は研究室に入った。
飛高の姿が見当たらない……やられた。
「舞。飛高君は?」
「帰ったよ」
「そう」
一人は取り残したがもう一人は
『絶対に逃さない』
大輔の部屋の前に移動した氷崋は右手に場を覆い尽くさんばかりの炎をため、ドアをぶっ壊した。
「な、なんだっ!」
飛び上がる大輔、その腹を……。
「ガァッ……!」
鋭い通常の氷柱をバスケットボールほどでかくした氷塊が貫く。
「親しきものにも礼儀ありよね……。たかだか10年ぐらい家族同様に過ごしたからって……精神が腐った下衆な行為をしたら矯正しなきゃ」
さらに氷塊が左手から放たれ、大輔の顔をぐちゃぐちゃにした。
「アブっ……アブゥ……!」
「脳みそってこんな風に潰れるんだぁ。でもさこういう光景見て食欲出ちゃうような人間もいるみたいだからね。あ、私は違うよ」
潰れて顕になった脳を焼き言葉にならない悲鳴が場に鳴る。
バタバタと手足がもがく姿は陸にあがって呼吸が出来ない魚のようだ。
「君の場合赤の他人だからなにも感じないけどね……勾玉の再生力は異常なのは君も知ってるよね。だからその傷も治る……いっぱいたのしみがいがあるねぇ。一人の研究者としても人間としても……君がどこまで続くか見ものだよ?」
『壊れないでね私の玩具』
=====
「やっぱり雲を掴むような行為だわ」
「あぁ。情報が少な過ぎるな」
探してから早4時間周囲も暗くなって来ており今日の捜索はもう無理だ。
「結子、陽太君。今日はもう捜索終わりにしよう。暗すぎるわ」
「だな……。なんせスマホも教室にあったんだろ?」
「えぇ、私が恵美の机で確認した。あの子は自分が連絡取れる手段もない……神隠しにあったみたいだわ」
見上げながら結子らしからぬ弱音を吐いた。
とりあえず三人は今日の捜索はやめ帰ることとなった。
……恵美どこにいるのよ……結子も私もみんな悲しんでるのよ……。
悲壮にうちひしがれ歩いてると彩菜の目の前にある男が現れた。
「へへへ……へへへへへへへ……」
口からは涎を垂らし、粗相の匂いが漂う。
川本大輔……何故この男が廃人同然の姿になり自分の目の前にいるんだ……。
彩菜に気付いたのか目の焦点がこちらを向いた。
「お、おぉぉ……あ、やなかぁ……。またいっぱい楽しいことヤらせて……くれヨォ……」
怒りの感情が増大された。
「分かったわ……ここであんたへの試練としてやる!」
2回、岩盤が砕くほど足踏みしたあとに青いオーラを纏った咆哮をし瞬時に後ろに下りその際発生した暴風の煽りで大輔は空に打ち上げられた。
「すげェ、ソ……ラとんでやがる……」
まともな判断も出来ないのか。
なんにせよこれで決めさせてもらおう。
蓮の命令で私を犯した屑に超滑空と毒で。
暴風と青いオーラを纏った彩菜が超速で大輔に滑空を当てた。
これは第7形態の技だがまだ自分は第6形態までしか到達してない……あまりの怒りで使えたのか。
大輔は最早見るも無惨な姿だ。
彩菜にあう直前から大輔は崩壊していた。
「古龍種にでも目をつけられたのかしら……大方この馬鹿が挑発したんだろうけど。いい気味よ。あんたなんか野垂れ死ねばいい……」
彩菜は去った。
姿が見えなく遠退いたあと一人の人間が現れた。
「あの子凄く強そうね。大輔君、あなたのお友達?」
「…………うぅぅ」
「あら、呻き声しかあげられないんだ。君の脳幹も私の氷によって思考も儘ならなくなってるものね。でも勾玉があったんじゃいくら思考力0でも超人的な能力は失われない……今の子みたいに私もあなたには死んでほしいの」
変わらず大輔は呻き声をあげるだけだ。
「勾玉って適合者の身体から取り除けるのよ。こんな風にしてね」
「グフッ!」
心臓を背中から氷崋に掴まれた。
「あった」
氷崋は無理矢理勾玉を引っこ抜いた。
「グゥゥ……」
「これであんたは1分足らずで適合者としての力を失う……1分かあなたの足であの歩道橋の中間ぐらいまで移動出来る距離ね。移動しなさい大輔君」
脳幹に残された氷崋の氷が大輔の行動を操る。
読み通り1分で大輔は歩道橋の中間にたどり着いた、この橋は歩道橋にしては広いほうだ真下は車がどんどん走る。
「クズに洗礼を……自我を失い死ねるというのは幸福なことよ。それがせめてもの私の手向け、チャオ川本大輔」
大きく……何かが凹む音が聞こえ……道路はクラクションでパニックになった。
後日警察の死体解剖の結果……脳幹が破壊され頭の内側から破裂している事故と無関係の傷が見つかったそうだ……。